多角化経営とは?多角化戦略のメリットと成功へ導くポイント
多角化・新規事業

こんにちは、ヤマチユナイテッド代表の山地です。
経営戦略の一つとして、多角化経営はメリットの大きいものだと考えられています。
しかし、多角化によりどんな良いことが起こるのかを、具体的にイメージできていない方も多いかもしれません。
そこで今回は、多角化戦略の12個のメリットについてご紹介します。
あわせて、多角化戦略の分類や成功させるポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 多角化経営とは?
- 多角化経営を実現するための多角化戦略とは?12のメリットをご紹介
- 多角化戦略の4つの分類も確認
- 多角化経営を成功させるために知っておきたいポイント
- 多角化経営・多角化戦略のメリットを知って、自律的に事業が回る「安心できる経営」を実現しよう
多角化経営とは?
多角化経営とは、企業が既存の主力事業に加えて、新しい分野へと事業の幅を広げる経営戦略の一つです。
変化の激しい社会環境や多様化する顧客ニーズに対応するため、企業は自社の強みや資源を多方面に応用しながら、新しい商品やサービス、さらには新たな市場に挑戦しています。
これにより、収益の柱を複数持ち、成長機会を拡大しようとしています。
こうした戦略的な取り組みは「多角化戦略」とも呼ばれ、安定した経営基盤を築く手段として注目されています。
また、複数の事業を独立して採算管理しつつも、相互に連携を図ることで全体としての相乗効果を生み出す「連邦型経営」という形態もあります。
このような体制を整えることで、企業は一体感を持ちながら多様な領域で成果を出し、外部環境の変化にも柔軟に対応することが可能になります。
なお、ヤマチユナイテッドでは「連邦・多角化経営」に取り組み、北海道札幌市を拠点に住宅産業を中心に50以上の事業を展開しています。
ヤマチユナイテッドが多角化経営をする理由については、下記コラムをご覧ください。
事業多角化する理由とは?多角化する方法やヤマチの事例を紹介!
多角化経営を実現するための多角化戦略とは?12のメリットをご紹介
「多角化戦略にはこんなにもメリットがあるのか!」と驚くかもしれませんが、これからお話する12のメリットは、すべて私が実際に経験して実現してきたことばかりです。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
①経営基盤が安定する
1つの事業に絞るのではなく、売上規模でいえば数千万円から数億円程度の事業や会社を次々と興していく。
もちろん、コストもかかりますし、リスクがゼロというわけではありません。
しかし、1本の本業という柱だけではなく、2本・3本と事業の柱を作っておくことで柔軟性が生まれ、時代の変化に対応することもできますね。
特定の事業に依存していると、外部環境の変化によって企業全体が大きな影響を受ける可能性があります。
そこで、複数の事業を展開することで、ある分野で業績が振るわなくてもほかの事業で補うことができ、リスクを抑えながら安定した経営が実現しやすくなります。
しかし、それぞれが独立採算で管理されているのでリスクヘッジにも対応できますが、こうなると組織の縦割り化が進みがちです。
そこで私たちは、複数社・複数事業を束ね、グループ全体が効率的かつ効果的に運営されるように統制管理する経営の手法を取っています。
異なる分野の事業でも、グループ全体を1つの会社のように運営することで、相乗効果による業績アップも期待でき、安定した経営基盤の確立につながります。
②多角化により可能性が広がる
事業が3本、4本、5本と増えていっても、1つの会社のような仕組みで経営することがポイントです。
総合商社のようなイメージですね。
例えば、それぞれの事業部が業種別で人材を採用するのもアリですが、共通して採用する仕組みが持てれば合理的な運営が可能です。
1つの事業のみで突き進んでいくと社員の成長や昇進に上限があるため、ポストが空かずキャリアアップが難しくなることが起こり得ます。
しかし、複数の事業にまたがっていれば、社員の可能性は大きく広がり、モチベーションの向上にもつながります。
理念やコンセプトをもとに、複数の事業にまたがっても仕組み全体を貫くことが重要です。
③シナジー効果が期待できる
事業Aと事業Bとの間には、それらをつなぐ事業Cが存在するべきです。
つまり、多角化を行うと連鎖的に事業が増えていくイメージ。
このように事業同士の横のつながりがある多角化経営にはシナジー効果(相乗効果)が期待できます。
既存の事業と接点のない多角化は、たとえ新規事業が成功しても、成長スピードに加速がつきません。
事業間に連携があることで、より高い成長と効率的な運営が実現できるのです。
シナジー効果については、こちらのコラムもご覧ください。
シナジー効果を生み出す多角化企業の成長戦略!効果的なグループ連携会議の設計と運営方法
縦横斜めの連携がシナジーを生む!オンライン朝会がグループ経営の連携を強化
④社員が納得できる経営が実現できる
自分たちで目標を設定し、自分たちで実行管理し、自分たちで結果を評価する、そして自分たちで利益を配分する。
社長からのトップダウンではなく、社員が自ら主体的に取り組むので、社員が納得できる経営が実現します。
誰かから与えられたものをこなすほうが楽ですが、自分で決めて自分の思い通りにコントロールできる人生のほうが楽しいですよね。
それをビジネスの現場でも実現できるからこそ、社員が楽しんで取り組むことができるのです。
⑤チャレンジする社風が出来上がる
「あまり成長はしていなくても、安定しているからこのままで良いや」
それで本当に良いのでしょうか?
「1つのピラミッドが出来上がっているから、このままいけば部長止まりだな...」
そんな状況では、社員は面白くないですし、やる気も高まりませんよね。
仕事や職場が楽しければ社員のモチベーションは向上し、新しいアイデアやチャレンジもどんどん湧いてくるでしょう。
もちろん「楽しい」だけではなく「厳しさ」も必要です。
上司や先輩から厳しい意見を投げかけられ、ビジネスの難しさを痛感することもあるでしょう。
しかし、その経験が社員の糧となり、新しい考えに触れることで上司にとっても刺激にもなるのです。
⑥「オートマチック経営」が実現する
私は、社員のレベルや業績が自動的に上がっていく経営のことを「オートマチック経営」と呼んでいます。
社長が常にアクセルとブレーキをコントロールしなくても、組織が自律的に動き、自動的にスピードが上がっていくようなイメージですね。
社長1人の1馬力で走るのと、5人の5馬力で走るのとでは推進力が全然違いますよね。
仮に「力のある社長は1人で3馬力出せるんだ」といっても、社員1人が0.5馬力から1.5馬力まで発揮できる環境が整っていれば、社員2人で3馬力を担えるのです。
社員が10人集まれば15馬力、20人集まれば30馬力と、人数に比例して組織全体の力がどんどん加速して、経営の加速度も増していくのです。
⑦結果につながる管理会計が実現する
税務署に納税するためだけの会計であれば、年に1回の決算だけでも十分かもしれません。
しかし、日々の経営に活かすためには、会計を細かく管理し、毎月の数字を修正・確認していくことが重要です。
これにより、なるべく早いタイミングでPDCAを回して対策を講じることができるわけです。
この考え方は、前述した「④社員が納得できる経営が実現できる」にもつながります。
社員が自ら考えて目標設定をし、実行管理していくことで、会計の管理もできていくのです。
納税決算のための財務会計ではなく、「得たい結果を得るための会計」、つまり結果につながる管理会計が実現します。
⑧多様な視点や考え方が身に付く
上場企業であれば、株主と経営者(社長)は分かれており、執行役の社長が経営をして、株主には配当で還元します。
逆に一般的な中小企業の場合は、株を持っている株主と経営者が同一人物、いわゆる「オーナー社長」になっています。
この関係を、あえて上場企業のように分けて考えてみましょう。
実際に分けなくても構いません。
分けたフリをするだけでもOKです。
あるときは「経営者」として社長の視点で、またあるときは「株主」の視点で物事を考えるということです。
こうすることで、資本(オーナーシップ)と経営(マネジメント)を分けて考える力を身につけられます。
特に、社長自身に「社員に任せて、自分は経営から離れる」という感覚がないと、分けて考えることは難しいものです。
しかし、任せられる社員が育つことで、社長にも自然と多様な視点が身につきます。
⑨余裕が生まれて人生が楽しくなる
オーナー経営者はとにかく忙しいものです。
ただでさえ忙しいのに資金繰りもして、もしかしたら営業やクレーム処理まで担っている方もいるかもしれません。
もちろん、仕事のことだけを考えていれば良いわけではありません。
家庭のことも考え、社員のことも考えていかなければならないのです。
しかし、これらを全てオールマイティーに対応することは難しいでしょう。
任せられる社員が育ってきたら、どんどん社員に任せてみてください。
今まで大変な思いをしていた分、これらの対応から少しずつ解放されると心にも時間にも余裕が生まれ、社長自身の人生も変わっていきます。
人生が楽しくなっちゃいますよ。
社長は「社長でなければできないこと」「社長でなくても良いこと」を整理して、後者を少しずつ手放していきましょう。
⑩やる気のある社員を採用しやすい
やる気がある社員は「任せられたい」「自分で成果を出して褒められたい・評価されたい」と思っています。
そうした人材が採用できる仕組みは出来ていますか?
「良い人材が欲しい」「うちは人材不足だ」と口にする社長さんに限って、組織の仕組みがワンマンだったりします。
そのような環境では、社員のやる気は失われ、辞めてしまうことも少なくありません。
「言われたことを二つ返事でこなしていれば、なんとなく給料がもらえる」という仕組みであれば、それで良しという人ばかりが集まってしまいます。
「②多角化により可能性が広がる」でもお話ししたように、多角化で事業が増えるとその分ポストが増えます。
ポストが増えると、社員の成長や昇進に対するモチベーションアップが期待できる。
良い受け皿があれば、良い人材が入ってきて育っていくのです。
⑪「脱・孤独感経営」が実現できる
「社長は孤独だ」とよく言われます。
なぜ孤独かというと、社長に権限も責任も全て集中するからです。
しかし、社内にブレーンのような存在であり、「戦友」と呼べるような幹部社員が居ることで、社長特有の孤独感を脱することができます。
とはいえ、あまりにも力の差がある相手や、相談してもなぁ...と思うような相手なら「戦友」にはなれません。
社長に対して意見できる、深いところまで相談ができる、新たな気付きを与えてくれるような、対等に話せる存在であることがポイントです。
例えば、「こうしたほうが会社にとっては絶対良いですよ」「この対策をして一緒に乗り切りましょう」といった建設的な会話ができる相手がいれば、社長は孤独を感じることはありません。
そのためには、社員にもさまざまな知識が必要です。
例えば、財務の数字がしっかり読めて「この目標に対して、このように進捗している」ということがわかっている。
そうすることで毎月の経営会議で会話が成立し、段々と戦友に近づいていくことができます。
⑫究極の安心経営が可能になる
私は、どんなに環境の変化があっても、弊社は「なんとかなる」と思っています。
それは、事業を分散しているから安心という点ももちろんありますが、それよりも「人が育っているから何とかしてくれる」という信頼が土台にあるからです。
仮に、自分の身に何かあっても、会社の運営が大きく崩れることはまずないでしょう。
もし社長の私がずっと寝込んでしまって「よっぽどの重要事項以外の決裁ができない」「長期間現場に行くことができない」などという事態になったとしても、むしろそのほうが良い方向に動くかもしれないとさえ思います。
安心して任せられる人材が育つ環境づくりが、どのような環境の変化にも柔軟に対応できる。
それこそが、究極の安心できる経営につながるのです。
多角化戦略のメリットは下記コラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
中小企業の活路は多角化戦略にあり 《連邦・多角化経営概論》第1回
多角化戦略の4つの分類も確認
企業が成長や経営リスクの分散を目指す際に採用する「多角化戦略」には、主に4つの型があります。
それぞれの特徴を把握することで、自社にとって最適な戦略を選ぶ手がかりになります。
①水平型多角化戦略
同じ業界・市場で事業の幅を広げるタイプ。
自社がすでに持っている技術やノウハウ、販売網などを生かして、既存事業と関連性の高い製品やサービスを、同じような市場で展開する方法です。
例えば、バイクを製造している企業が、自動車の開発に乗り出すようなケースが該当します。
技術的な共通点が多いため、初期投資を抑えながら事業の拡張が可能であり、既存の資産を有効活用できる点が強みです。
また、関連性のある事業間で相乗効果(シナジー)が期待できるのもメリットです。
②垂直型多角化戦略
バリューチェーンの上下に展開していくタイプ。
これは、自社の事業に関連する「upstream(上流)」や「downstream(下流)」に新たに参入する戦略です。
具体的には、原材料の調達、製造、物流、販売などを一貫して自社で担うようにすることで、供給体制の強化、コスト削減、品質管理の向上を目指します。
例えば、食品スーパーが自社で飲食店を運営したり、飲食チェーンが農業や食材加工に取り組んだりする例がこれに当たります。
既存の取引先や顧客とつながりやすい利点がある一方で、新たな設備投資や専門知識の獲得が必要になる場合もあります。
③集中型多角化戦略
自社の技術力を生かして異分野へ挑戦するタイプ。
これまで蓄積してきた技術や知見などの強みを、既存事業とは異なる新たな市場で活用する戦略です。
例としては、写真フィルムメーカーがその技術を応用し、化粧品分野に進出したケースが挙げられます。
競合が少ない分野で独自性を発揮しやすく、差別化しやすいという利点があります。
ただし、新たな市場ニーズへの対応が必要であり、販路やブランド構築に時間がかかることもあるでしょう。
④コングロマリット型(集成型)多角化戦略
既存事業と無関係な分野へ展開するリスク覚悟のチャレンジ型タイプ。
最もチャレンジングなのがこの型で、現在の事業とは全く関係のない分野に進出する戦略です。
例としては、衣料品企業が金融サービス、保険、旅行業などへ参入するケースが挙げられます。
全く異なる市場へ進出することで、新たな収益源の獲得や経営の幅の拡大が可能になります。
ただし、ノウハウの蓄積がない状態での挑戦となるため、初期コストや失敗のリスクは高めです。
コングロマリットについては下記コラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
コングロマリットとは?ヤマチの経営戦略・連邦多角化企業の秘訣を紹介
多角化経営を成功させるために知っておきたいポイント
メリットの多い多角化経営を進めるには、目先の拡大だけにとらわれず、自社の強みや経営資源を冷静に見極めた上で、戦略的に取り組むことが求められます。
ここでは、実行前に押さえておきたい主要なポイントをご紹介します。
既存事業の土台を整える
新しい分野に進出する前に、まずは自社の主力事業が十分に機能しているかを確認しましょう。
収益力や組織体制が不安定な状態では、新たな挑戦がリスクとなりかねません。
既存の価値を最大化できているか見直し、必要であれば改善を施してから、次の一手を考えることが多角化の成功率を高めます。
関連性の高い分野から着手する
全く新しい業界に飛び込むよりも、現在の事業とつながりがある分野から始めるほうが、既存事業のノウハウやリソースを活用しやすくなります。
これにより、新事業でも比較的早い段階で成果を出しやすく、失敗のリスクも抑えることができます。
スモールスタートでリスクを抑える
新規事業は、初めから大規模に展開するのではなく、小さく始めて段階的に育てていくのが効果的です。
市場の反応を見ながら柔軟に対応できるため、方向転換や改善もしやすく、投資の無駄を最小限に抑えることができます。
企業理念に基づく判断を徹底する
どれほど有望なビジネスチャンスがあっても、自社の理念や方針から逸脱していては、長期的に見て企業の方向性にブレが生じます。
意思決定に迷いが生じたときは、原点である企業理念に立ち返ることが、戦略の一貫性を保つ上で重要です。
理念については、こちらのコラムで詳しくご説明しています。
グループ全体に統一感を持たせるグループ理念とは?構築事例を紹介!
理念経営とは?「楽しく儲かる社風」をつくるヤマチユナイテッドの事例
外部資金やM&Aも選択肢に入れる
新規事業には資金が必要となるため、必要に応じて外部からの資金調達も検討しましょう。
融資、補助金、クラウドファンディングなど、多様な手段があります。
また、よりスピーディーに多角化を進めたい場合には、M&Aの活用も有効です。
他社の強みを取り入れることで、自社にはないノウハウを短期間で獲得することができます。
ただし、M&Aには専門的な知識が求められるため、慎重な検討と専門家の協力が必要です。
「事業多角化する理由とは?多角化する方法やヤマチの事例を紹介!」もあわせてご確認ください。
多角化戦略の成功例については、下記コラムでご紹介しています。
事業の多角化戦略の失敗例・成功例とは?成功させる条件もご紹介
多角化経営・多角化戦略のメリットを知って、自律的に事業が回る「安心できる経営」を実現しよう
多角化経営とは、企業が主力事業以外の分野にも展開し、収益の柱を複数持つことで安定性と成長性を高める戦略です。
変化の激しい社会環境や多様な顧客ニーズに柔軟に対応するために有効な手法とされています。
特に「連邦型経営」では、各事業が独立しながらも連携することで、シナジー効果や効率的な運営が可能となります。
多角化経営の主なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 経営基盤の安定
- 多角化により可能性が広がる
- シナジー効果の創出
- 社員の納得感を高める経営
- 挑戦を促す社風の形成
- 自律型組織の構築 など
また、これらは社長の業務負担軽減や、「脱・孤独経営」にもつながります。
最終的には社員が育ち、自律的に事業が回る「安心できる経営」の実現が可能になります。
ヤマチユナイテッドでは、実際に社員研修の現場をお見せしている視察ツアーや、経営セミナー・イベントを随時開催しています。
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ぜひ運営の参考にチェックしてみてください。
またシリーズ《連邦・多角化経営概論》では、ヤマチユナイテッドの連邦・多角化経営の仕組みを全4回にわたって解説していますので、こちらも合わせてご参考ください。
第1回:中小企業の活路は多角化戦略にあり
第3回:分社化のメリットを活かしデメリットを補う連邦経営とは?
第4回:良い社風とは?メリットや作り方を解説!「社風経営」で多角化経営の加速化を

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Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。