自律型人材とは?育成方法やメリット・デメリットを徹底解説!

採用・育成

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。

経営者として「自分で何でもやりたい」「できることなら自分が何人もいれば良いのに」と考える方もいらっしゃると思います。

実際には、社員の存在があってこそ会社の業務を回すことができているのですが、その反面、思うように業績が上がらないことに心が乱される場面もあるでしょう。

会社の規模が大きくなればなるほど、全てを経営者の思い通りに動かすことは難しくなっていきます。

そこで注目されているのが「自律型人材」です。

自律型人材とは、指示しなくても自ら考え、状況に応じて適切な行動できる人材を指し、会社にとって非常に頼れる存在と言えるでしょう。

今回は、自律型人材の定義や育成方法についてご紹介。

自律型人材の育成するメリット・デメリット、育成のポイントについても解説していきます。

目次

  1. 自律型人材とは?その定義や求められている背景から確認
  2. 自律型人材の育成には環境整備が重要!育成方法をご紹介
  3. 自律型人材を育成するメリット・デメリットは?会社組織にどう影響する?
  4. 自律型人材を育成するポイントもご紹介
  5. 自律型人材とは自分で考えて自分で行動できる人材

自律型人材とは?その定義や求められている背景から確認

自律型人材とは、どのような人物を指すのでしょうか。

まず、「自律」とは「自らを律すること」を意味します。

自律型人材は、自分なりの規範を持ちつつ、組織のルールや方針、周囲との関係性を踏まえた上で、その中で適切な検討・行動ができるところがポイントです。

この点が、「自己責任で動く」という意味合いとは違う部分であり、自律型人材の本質とも言えます。

あらためて定義するとしたら「物事を自分で考えて自分で行動できる人」と言えるでしょう。

自律型人材は、指示がなくても主体的に判断・行動する力を持ち、責任感を持って粘り強く物事に取り組むのが特徴です。

さらに、自分の価値観を大切にしながら意思決定ができるため、個性を生かした働き方が可能になります。

ヤマチユナイテッドが実践する「社員全員参加型」の経営

ヤマチユナイテッドでは「自主計画」「自主管理」「自主分配」を三本柱とした「システム経営」という経営手法を取り入れています。

「システム経営」とは、経営者一人に依存せず、ビジョンを共有した社員全体で経営を担う仕組みです。

組織の拡大とともにトップダウン型経営の限界が見えてくる中で、経営の一部を社員に任せることで社長の負担を軽減し、より健全な経営体制を実現します。

幹部や社員が高い経営意識とやりがいを持って業務に取り組むことで、組織の成長や企業体質の改善、さらには収益性の向上にも貢献するのです。

つまり、システム経営とは「社員全員参加型の経営」であると言えます。

このような前提を踏まえると、自律型人材とは「業務の中で自主性や主体性を発揮できる人」と定義できるでしょう。

基本的には、「受動的というよりは能動的に」「他責ではなくて自責で」行動できる人材というイメージです。

ヤマチユナイテッドの経営手法の始まりについて、詳しくは下記コラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。

ヤマチの連邦多角化経営と自主自律型の経営はいつから始まった?

自律型人材が求められている背景

急激に変化する市場環境や多様化する働き方の中で、組織には従来以上の柔軟性とスピードが求められています。

リモートワークや時短勤務など、働くスタイルが多様化する中で、上司の指示を待たずに自ら考えて行動できる人材が、より重要視されるようになりました。

加えて、専門性を重視した人材活用が進み、自ら学び、成長する姿勢も欠かせません。

こうした背景から、環境の変化に適応しながら自分の役割を果たせる「自律型人材」の存在が、企業の競争力や持続的な成長を支える要となっているのです。



自律型人材の育成には環境整備が重要!育成方法をご紹介

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自律型人材を育てるためには、個人の主体性を尊重しつつ、組織全体で支える体制が欠かせません。

具体的なポイントと育成方法を解説します。

自律型人材の定義と目標設定

まず、自律的に働く人材とはどのような特徴を持つのかを、企業の戦略や経営目標に照らし合わせて明確にします。

社内にすでにいる模範的な社員の行動やスキルを参考に、育成の目標を具体化しましょう。

組織のビジョンと個人の仕事の意味づけ

社員が組織の方向性を理解し、自身の仕事が会社の目標にどう貢献しているかを実感できる仕組みや機会を作ります。

経営層や管理職が、ビジョンや目標をわかりやすく伝え、個々の役割と結びつける機会を設けることで、社員のモチベーションと主体的行動が促されます

個人の内省とキャリア支援

自律型人材の育成は、個々が自分の価値観や強みを見つめ直すことから始まります。

自己理解を深める研修や1on1面談を活用し、将来のキャリアを具体的に描くサポートを行いましょう。

キャリアの目標設定は固定的なものではなく、変化に合わせて柔軟に見直す姿勢も大切です。

学習環境の整備と経験の提供

社員が主体的に学び続けられるように、オンライン学習や外部セミナーなどの学習機会を提供することも重要です。

その際には、学んで終わりではなく、実務を通じて新しいスキルや経験を積む場を意図的に設けることも、成長を促す要素となります。

安心して挑戦できる職場環境の整備

自律型人材を育てるために一番重要なのは、育つための環境を整えてあげること。

社員が自由に意見を述べ、失敗を恐れず挑戦できる心理的な安全性を担保することが不可欠です。

挑戦したことを正当に評価し、フィードバックを通して振り返りを促す仕組みを整えることで、社員の主体性を育てる土壌がつくられます。

ヤマチユナイテッドでは「権限移譲(けんげんいじょう)」という言い方をしていますが、システム経営を通じて個人の裁量の範囲をできるだけ広くするように働きかけています。

階層によって範囲や条件は違えど、「自分で決めて動ける範囲」「部下に任せておける範囲」を広げていけるような環境作りが大事だと考えています。

自律型人材育成のために、必要な環境作りのポイントを2つご紹介します。

環境づくりのポイント①トップダウンからの脱却

経営者が「何でも決めたい」「何でも指示したい」「言う通りにしてほしい」という意識のままでは、自律型人材は育ちません。

トップダウンが悪いわけではありませんが、自律型人材を求めるならば、環境整備が必要です。

そうはいっても「じゃあ明日からみんなで決めて自主的に進めてください」というのは現実的でなく、なかなか難しいですよね。

管理会計の整備

何から始めれば良いかというと、まずは管理会計の整備から始めましょう。

どんぶり勘定でなく、営業利益のベースでしっかり計算された正確な数字を出し、かつそれを部門別・事業部別に見られるような状況にしておくこと。

経理や管理部門にとっては手間や負担もありますが、これをあえてやっておくことがシステム経営の土台となります。

その上で、ヤマチユナイテッドで実践している三本柱「自主計画」「自主管理」「自主分配」の流れを組み込み、会社の状況の良し悪しに関わらず、数字も含めた情報を全社員に公開する。

このような、いわゆるオープン経営の手法が、管理会計と共に環境作りの基礎になります。

トップダウン経営とボトムアップ経営の違いについては、こちらのコラムをご確認ください。

トップダウン経営とボトムアップ経営(社員参加型経営)の違いとは?

環境作りのポイント②新卒者・若手社員教育の強化

ヤマチユナイテッドにおいては、1995年頃からシステム経営を取り入れてきました。

私はその頃(1996年)に新卒で入社しましたが、当社ではすでに管理会計だとか数字をオープンにするようなことはその前からやっていたので、土台はできていたように思います。

折しも不景気で、1997年には北海道拓殖銀行の倒産などもあり、うちも大変な時期が数年続きましたが、私自身、新人ながら「利益を出せるようにならないと...そのためにはどうしたら良いか」と考えながら動いていました。

これはやはり、会社の状況が見えるようにしてもらっていたからなんです。

不振の数年間は新卒採用も控えていましたが、社員一人ひとりが考えて行動するということを繰り返していました。

山地 章夫が代表取締役社長に就任した1998年あたりから、全社員参加型の色がより濃くなり、新規事業を立ち上げたり、事業が増えたり、それに伴って社員が増えたりと好循環に入っていきました。

この流れに並行してシステム経営の仕組みがより機能していくことも体感しましたし、新卒採用を再開すると、さらに効果が加速した感がありました。

新人の彼らだからこそ、すでに構築されている「システム経営」という環境になじみやすいのでしょう。

こうなると採用に力を入れていき、業績もだんだん回復し「成果分配が出るようになる」=「自主分配」が実現し、全体の仕組みががっちり機能し始めるという構図です。

そこからはこの好循環を続けるために仕組みを強化し、流れを加速させるということを繰り返しながら今日までやってきています。

新入社員が自主的に考えて動くための下地を養う「フレッシャーズキャンプ」などは代表的な取り組みですね。

これは「しっかりした新人が入ってきたな」と、若手社員が気を引き締める機会にもなり、組織全体の自立度向上につながっています。

財務に関する教育の重要性

経営に関わる数字を読み解くためには、財務に関する教育も必要です。

基礎的なことはすぐ覚えられるので、実地的な部分は、繰り返しになりますが「自主計画」「自主管理」「自主分配」の流れの中でちゃんと自分たちで回せるように任せてあげること。

「ここまでやらせるのはちょっと...」と抵抗感を覚える経営者もいらっしゃるかもしれませんが、数字の意味や「なぜ利益を出さなきゃいけないのか」といったことを知っているのと知らないのとでは、大きく差が出ます。

また、数字を読み解く知識を知っていてもそれを発揮できる環境がないと意味がないので、意思決定のプロセスに社員を巻き込み、参加する機会を与えることが重要となります。

例えば、会議や事業計画作成、対策立案や戦略を練る場に参加してもらうのです。

社員に自分事として検討させることは、実践的で有効な手段となります。

環境を整えることで自律型人材が育つ

こうした取り組み全てをセットとして環境を整えることで、自律型人材が育っていくと実体験をもって確信しています。

仕組み作りのノウハウはいろいろとありますが、自律型人材を育成するには、トップダウンからの脱却と新卒者(あるいは若手社員)教育をセットで考える必要があります。

経営者が「自分で何でもやりたい」と思うタイプであるなら、まず「自律的な会社にしていこう」という方針をしっかり打ち出し、幹部にも伝えて経営陣ごと意識チェンジをするのが最重要です。

上層部が変わらなければ、組織全体も変わりません。

経営者一人で全て背負っている状態では、幹部も育たず、組織も成長しづらくなります。

社員の自主性を育てる方法は、下記コラムもあわせてご覧ください。

社員が自主的に業績アップを目指す組織風土づくりとは?

社員の自主性を育てるには?システム経営・自主計画の導入方法とポイント

また、企業ビジョンを浸透させ、社員のモチベーションアップを叶える方法については「なぜビジョンが浸透しない?企業ビジョンの重要性とヤマチの成功事例」もあわせてご覧ください。



自律型人材を育成するメリット・デメリットは?会社組織にどう影響する?

自律型人材を育てることには、会社にとってさまざまなメリットがあります。

メリット①経営者としての業務に集中できる

自律型人材を育てるメリットはいろいろあるのですが、やっぱり一番大事なのが幹部の意識が変わることによって、経営者が本来担うべき業務に集中できるようになることです。

トップダウンとまでいかなくても「部下に任せるのは難しい」と思っていませんか?

「自分のほうがうまくできるし、自分のほうが仕事も早いからなかなか任せられない」と思うかもしれませんが、そこは少し我慢してみましょう。

トップダウンには、限界があります。

社長がいくらスーパーマンでも、1日24時間しかない中で全てを自分一人でやろうとするとどこかで破綻してしまいます。

現場から目を離せないせいで、本来社長にしかできない業務に手が回らないというのでは、経営者のキャパシティ以上に会社が成長することはありません。

そこを突破していくには、同じ意識で働いてくれる幹部を育て、チームを作り...というように、次の世代に渡せる部分は渡していくこと。

「言われたことだけやれ」「余計なことはするな」では、「仕事をやらされている」だけの受け身の社員にしかならず、新しいことをやって会社を大きくしていこうというときに成果が上がらないのです。

上の指示を待たずとも自ら考えて適切な行動が取れるのが、自律型人材です。

メリット②現場の「リアル」に即した対応ができる

本社で働く経営陣と、店頭で働く現場の社員との間で認識に相違があるというのはよく聞く話です。

現場にいない経営陣から「ああしろ、こうしろ」と指示や対策が下りてきても、それが当たっているとは限らないんですね。

ヤマチユナイテッドでは、現場の社員に業務計画や対策を立てさせ、階層を上げて話し合いを繰り返しながら幹部会議にかけ、また下ろしていく仕組みを採用しています。

現場の意見をベースにしているので、幹部としては計画の甘い部分を指摘するとか疑問点を問い合わせるとかするくらいで、ただ上から「こうしろ」ということはまずありません。

一見すると時間も手間もかかるように思えますが「ここまでは現場のチームで判断して良い」という感覚も養えるので、課題克服への着手も早いというメリットもあります。

メリット③ピンチをチャンスに変えられる

近年のコロナ禍のような予測不可能な事態に陥ったときも、自律型人材が大きな役割を担ってくれました。

ヤマチユナイテッドのグループ会社には、イベント事業を手掛ける「アンカー」がありますが、感染拡大防止のための外出自粛要請のあおりを受けて売り上げが大幅に落ち込んだときがありました。

その時は、既存のイベントが今後しばらくできないかもしれないという状況でしたが、この会社の社員たちは自分たちまで落ち込むことなく、新しいイベントを考えました。

事業責任者が中心になって「ドライブスルー形式のフードイベント」を企画したのです。

それがきっかけで大手企業とのパイプができて、大きな仕事につながったという後日談もあります。

さらに、時流を読んで「コロナ禍でニーズがあるだろう」とウェブ配信のスタジオ事業を始め、現在では新しい収益を生み出してくれています。

こうした動きは、上から指示されたわけでなく、現場が自発的に行動を起こした事例です。

普段から自律型で業務に臨むことが習慣づいているからこそ、次の手を考えるための発想力や行動力が身についているのでしょう。

コロナ禍ではほかにも打撃を受けた事業部がありましたが、やはりそれぞれで考えて動いてくれたことで乗り越えられました。

これにはヤマチユナイテッド代表の山地 章夫も「うれしかったね」といって、幹部一同喜びを分かち合いました。

自律型人材を育成することのデメリットはある?

自律型人材を育成することについて、逆にデメリットはほぼないといって良いと思います。

「好き勝手やられては困る」という見方をする人もいるかもしれませんが、経営方針に沿った行動を自らの判断で取れる人材が自律型人材です。

意に沿わない言動があるとしたら、経営方針の伝え方を見直してみる必要があります。

また、トップダウンから自律型へと方針転換するにあたっては「言われたことだけやるほうがラク」という社員は辞めてしまうかもしれません。

これはデメリットというより「仕方がない」と割り切るしかありません。

あとは時間と手間がかかることをデメリットと捉える向きもあるようですが、一朝一夕のものではないのは確かです。

いざ会社を大きくしようというときに、幹部の手を借りたいのに誰も育っていないのではチャンスを逃してしまいます。

トップダウンから自律型へ転換すると、今いる社員の中には負担に感じる人もいるかもしれません。

特に幹部のメンバーが「自律型なんてうちには無理だ。変えるべきではない」といってしまうと、変わるものも変わりません。

自律型人材育成の進め方が分からない場合は?

「自律型人材を育成したいと思うけれど進め方がわからない」「幹部みんなにも理解してもらいたい」とお考えの方もいらっしゃると思います。

自律型人材を育成するには、ノウハウやリソースの準備もしなければなりませんが、そこはヤマチユナイテッドの「連邦・多角化経営実践塾」にぜひお任せください!

自律型人材を育成する上で実際何が一番難しいかというと、トップと幹部の意識を変え、意思統一、価値観を共有することが重要なポイントです。

連邦・多角化経営実践塾を実践的なツールとして使っていただければと思います。

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自律型人材を育成するポイントもご紹介

社員が自ら考え、行動できるようになるには、単なる研修にとどまらず、日常的な働きかけや組織全体の姿勢も重要です。

ここでは、自律型人材を育成するポイントを紹介します。

長期的な視野で育成を進める

自律的に行動できる人材は、一朝一夕で育つものではありません。

過去の経験や価値観を土台に行動している社員に対し、新たな考え方を根づかせるには一定の時間がかかります。

変化には段階があり、焦らず着実に取り組む姿勢が求められます。

責任ある業務を任せて経験を積ませる

社員の自律性を伸ばすには、実際に判断や対応を求められる仕事を任せることが有効です。

自分で考え、選択し、行動する経験を重ねることで、「指示を待たずに動く力」が自然と養われていきます。

企業理念や方針への理解を深める

自律的な行動を促すには、組織の目的や価値観を正しく理解していることが前提です。

会社のビジョンや経営方針、人事制度の背景などを共有し、それらに基づいた判断ができるようにサポートすることが重要です。

上司の関わり方を見直す

自律型人材を育てるには、管理職自身のマネジメントスキルも問われます。

部下の挑戦を後押しし、失敗を責めるのではなく学びに変える姿勢が求められます。

フィードバックやコーチングのスキルを高めることで、部下が安心して成長できる環境が整います。



自律型人材とは自分で考えて自分で行動できる人材

自律型人材とは、自ら考えて行動し、組織のビジョンと自分自身の価値観を両立できる人材を指します。

変化の激しい現代においては、指示を待つのではなく、状況に応じて柔軟に動ける人が求められており、企業の持続的な成長にも不可欠な存在です。

こうした人材を育てるためには、トップダウン型の指示体系からの脱却や、情報の透明化、一定の裁量を委ねる仕組みづくりが欠かせません。

特に新卒や若手社員の段階から、裁量を持った業務や数字に触れる機会を設けることで、主体性や経営的視点が育まれていきます。

自律型人材の育成は一見遠回りに感じられるかもしれませんが、組織の持続的な発展にとっては最も確実な投資といえるでしょう。

ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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