会社での委員会の役割。社内で委員会活動を行う3つのメリットとは?
採用・育成
こんにちは、山地です。
「多角化したいけれど、うちには適任者がいない」という悩みの声を聞くことがあります。
確かに、経営者がすべての事業でリーダーシップを発揮することは不可能ですから、多角化が急ピッチで進めば進むほど、経営幹部の育成が急務となります。
人材育成は、多角化経営の一番の悩みどころであり、成功させるために避けては通れないポイントといえるでしょう。
では、多角化した事業を任せられる人材を育てるには、どうしたらいいのでしょう?
私がおすすめしたいのは委員会活動です。
今回は会社における委員会の役割、委員会活動を行うメリットについて私たちの会社の実例をもとにご紹介します。
目次
- 会社における委員会活動の役割とは?
- 会社を活性化させる委員会活動の実例
人材育成委員会
経費削減委員会
クリーン(社内美化)委員会
顧客満足委員会
ライフスタイル委員会 - 委員会活動がもたらす3つのメリット
(1)リーダーを任せられる人材が増える
(2)重要だけど急ぎではない課題を解決できる
(3)セクト化を防ぎグループの全社意識が芽生える - 会社で委員会を立ち上げる際のポイント
社内満足系の委員会からスタートを!
委員会活動を通じて社員を褒める機会を設けよう - 会社会社委員会活動を導入して多角化人材を育てよう!
1.会社における委員会活動の役割とは?
多角化した事業を任せられる人材を育てるために、経営幹部には「経営者意識」をもってもらう必要があります。
ですが、経営者が自ら経営計画をつくって「言われた通りにやればいい」という姿勢では、部下の経営感覚は磨かれません。
部門ごとあるいはチームごとに既存事業の経営計画をつくらせて、それを社長が承認するという方法をとっている会社もあるでしょう。
確かにそれも方法のひとつですが、効果的な方法としておすすめしたいのが委員会活動です。
当社では委員会活動には次のような役割があると考えています。
●成長機会の醸成→チャンスを与える
●間接部門の仕事の受け皿
●事業間コミュニケーションの活性化
社内に「委員会」を作って、全社員に経営を分担してもらう。
上手に取り組めば、全社員に経営者意識を浸透させることも不可能ではありません。
2.会社を活性化させる委員会活動の実例
私たちの会社にはさまざまな委員会がありますが、そのうちのいくつかの活動内容を紹介しましょう。
◎人材育成委員会
内部の力で社員を成長せるをテーマに、内定者研修の企画・実施のほか、新卒入社・中途入社向け研修等の実施、知識やスキルアップのための社内勉強会などを開催しています。
◎経費削減委員会
会社のムダをなくすことを目的に、経費削減の啓蒙活動のほか、経費削減に向けた改善アクションを行っています。
ひとつの例としては、職場の照明をLEDに変えることによって、月間3万円、年間36万円の節約を達成したという成果も報告されています。
◎クリーン(社内美化)委員会
社内外の清掃活動の推進やオフィス内のパトロールを実施しています。通常は総務部長などが社内を回って「ここが散らかっているから片づけなさい」と指導するのが一般的です。
この場合、社員に「やらされ感」があるため、いくら言っても改善されず、「いたちごっこ」になりがちです。
しかし、委員会が美化活動を行うことによって、社員が自主的に職場環境の美化に努めようとしてくれます。
◎顧客満足委員会
お客さま向けのイベントを企画するほか、電話対応など接遇・サービスの向上につながる活動を行っています。
たとえば、当社で住宅を購入されたお客さまを無料でバーベキュー大会やクリスマスパーティーに招待するといった取り組みも顧客満足委員会の発案で始まったものです。
一般的に、住宅会社は家やマンションは売ったらおしまいで、それ以降、お客さまとの接点はなくなってしまいます。
しかし、当社の場合は、こうした顧客満足につながるようなイベントを積極的に企画・実施してるため、家を建てたあともお客さまに喜んでいただく機会があります。イベントを通じて、お客さま同士の交流が生まれたり、お客さまが知人に「家を建てるなら面白い会社がある」と紹介してくださったりすることもあります。
当然それなりのコストとエネルギーはかかりますが、顧客満足委員会では、お客さまに喜んでいただくことにフォーカスしているので、コスト以上のプラス効果をもたらしてくれます。
◎ライフスタイル委員会
当社の住宅部門は「お客さまにライフスタイルを売ろう」というキャッチフレーズを掲げて、家そのものだけではなく、住んだあとのライフスタイルを売ることをモットーとしています。
しかし、それを目指す自分たち社員のライフスタイルを振り返ってみると、「仕事をするか、お酒を飲む程度しかできていない。これではお客さまに理想のライフスタイルを提案することはできない」と。
そうした問題意識から生まれたのが「ライフスタイル委員会」です。
委員会のメンバーは農園を借りて作物を育てたり、どうすればおいしいコーヒーを淹れられるかを研究したり、楽しい人生を満喫する方法を模索しています。
仕事も大事だけれど、お客さまに満足してもらうには自分たちが楽しく過ごすことや遊びも大切だということを再認識するきっかけとなっているようです。
3.会社の委員会活動がもたらす3つのメリット
序盤で委員会活動には次のような役割があることを述べました。
①成長機会の醸成→チャンスを与える
②間接部門の仕事の受け皿
③事業間コミュニケーションの活性化
委員会活動を取り入れることによって、こうした役割から次の3つのメリットを得ることができると考えます。
(1)リーダーを任せられる人材が増える
一番のメリットは、社員が自発的に良い会社づくりに関わることで、人材育成が進みリーダーを任せられる人材が増えることです。
当社では、管理職でなくても「委員長」になれるというルールを設けています。
なかには入社1~2年目の若手を委員長に抜擢するケースもあるくらいです。
若手が委員長になれば、自分より社歴が長いメンバーの上に立たなければならないため、リーダーシップやフォロワーシップを学ぶ絶好の機会になります。
委員会の立ち上げ段階に幹部やリーダークラスが委員長を務めるのは構いませんが、経営者や幹部は委員会活動に参加しないことを原則にすべきでしょう。
「顧問」「オブザーバー」という立場で相談に乗るくらいはいいですが、いけないのは役員や幹部クラスが「これをしなさい」「これはNG」などと指示を始めること。
途端に「やらされ感」が生まれ、メンバーはやる気を失ってしまいます。
多角化経営を進めるうえでは、関係者にきちんと根回しをしたり、積極的にアイデアを出したり、主体的に動ける人材が必要になります。
上司から言われたことをこなすばかりでは、受け身の人材ばかり増えてしまいます。
その点、委員会での活動は、上司の指示を待つのではなく、自主的に動くのが基本なので、自分で考えて実行するような若手が次々と育っていきます。
当社の見学にいらっしゃった方々に「やる気がある社員が多いですね」と言っていただけるのは、委員会を通じてこのような「多角化人材」が育つからだと思います。
委員会は仮に失敗しても、経営に大きなダメージを与えることはありません。
だから、若手にとっては絶好の実験・訓練の場。委員会を人材育成の場として積極的に活用するといいでしょう。
(2)重要だけど急ぎではない課題を解決できる
委員会のしくみを取り入れると、重要だけど急ぎではない課題を解決できるというメリットもあります。
私たちの会社では社員全員がなんらかの委員会活動に参加しているので、本業の稼ぐポジションと、委員会のポジションの一人二役を務めている事になるわけです。
委員会は5~10人のメンバーで構成されます。
取り組むテーマは、経営要素の中で「重要だけれど緊急ではない内容のもの」が中心です。
委員会ごとに定期的に会合を開いて、会社に活動計画や改善案を提案し、承認されたものは実行に移していきます。
もちろん、必要に応じて活動予算もつけます。
委員会では社内美化から人材育成まで、本来なら間接部門で取り組むことが多い経営課題を解決していくことになるので、直接的な利益を生まない間接部門が肥大化することを防ぐことができます。
したがって、よほど困難なテーマ以外は、委員会の仕事に落とし込んでしまうといいでしょう。
なかには「委員会の負担が増えると、利益を出すべき本業がおろそかになるのでは」と心配する方がいるかもしれません。
もちろん、本業がおろそかになっては本末転倒ですが、委員会にかける時間は業務全体の5~10%程度にすぎません。
現実的なことをいえば、100%の時間を稼ぐことだけに充てていると案外退屈するものですし、ずっと集中して仕事ができるわけでもありません。
どんなに仕事ができる人でも、ときどきボーっとする時間や集中できていない時間があるはず。であれば、全体の時間の10%くらいを委員会に充てれば良い気分転換になり、結果的に本業でも100%に近いパフォーマンスを上げられるのではないでしょうか。
(3)セクト化を防ぎグループの全社意識が芽生える
委員会のもうひとつの大事なメリットは、組織に横串を通すことによって、横、あるいは斜めのコミュニケーションを強化できることです。
これは多角化が進めば進むほど、大きな意味をもってきます。
多角化によって事業が分かれていけば、どうしても縦割りの組織になり、セクト化しがちです。
「自分の事業さえうまくいけばいい」「他の部門が何をやっているか知らない」
というのが当たり前になっていきます。
ところが、委員会はさまざまな事業部門から横断的に人が集まってきます。
単純に他の部署の人と交流するのは楽しいですし、お互いの部門のことも良く分かるため、グループ社員の中に全社員意識が芽生えます。
ある程度の多角化が進んだ会社なら「社内広報委員会」を立ち上げるのをおすすめします。
中小企業でも外に向けた広報を積極的にする会社は多いですが、内部向けの広報は後回しになりがち。総務部が社内広報を担っている会社もありますが、せいぜい人事情報の発表くらいしかできていないのが実状です。
そこで「こんな事業がスタートした」「こんな活動をしている人がいる」といった社内向けの情報を発信する委員会を立ち上げる。紙ベースでもイントラネットでも構いませんが、「社内で何が起きているか」を伝える仕組みがあると、多角化が進んでも、グループとしても一体感を保つことができます。
ちなみに、当社には「視える化委員会」という組織があって、業績やデータなど会社の情報やスローガンをわかりやすくポスターなどにして貼り出すといった活動をしています。
この委員会もまた、多角化したグループの一体感を醸成するのに一役買っています。
4.会社で委員会を立ち上げる際のポイント
最後に実際に社内で委員会を立ち上げる場合のポイントについてご紹介します。
社内満足系の委員会からスタートを!
初めて社内で委員会を立ち上げるという場合、テーマは経営課題の中から経営者が幹部と一緒に決めるといいでしょう。
委員会の仕組みが定着し、上手く機能すれば、いずれは社員の間から主体的に「こんな委員会をやりたい」という声があがるようになります。
ただし立ち上げ段階では、経営陣主導で「こういう委員会をやってほしい」と提案するかたちで構いません。
ただし、まずは立ち上げやすい委員会から設置するのが成功のコツです。
私がおすすめするのは、社員満足系の委員会。当社には「社員満足委員会」という委員会があって、社内イベントや交流会、懇親会などの企画と運営を担っています。
要は、飲み会や社員旅行、花見などの企画を実施させるのです。
会社の予算を使って、社員が自ら楽しめるようなイベント作りをするわけですから、自主的に関わってくれるでしょう。
大切なのは、社員に「やらされ感」を抱かせないことです。
「余計な仕事が増えた」「私はこんな仕事をするためにこの会社に入ったわけではない」という気持ちが払拭されなければ、委員会の仕組みは根づきません。
飲み会などの社内イベントの場合、各部署から「宴会部長」タイプの社員を5~10人集めれば、とりあえず委員会制度をスタートさせることができます。
このように立ち上げやすい委員会実績をつくり、その効果を実感したあとだと、そのほかの委員会も増やしやすくなるはずです。
委員会活動を通じて社員を褒める機会を設けよう
委員会を通じて、良い会社づくりに自発的に関わることの楽しさを社員に知ってもらうと同時に、経営陣がその活動を評価したり、称賛してあげたりすることもメンバーのモチベーションの維持につながります。
当社では、経営幹部の前で、委員長や副委員長に1年間の活動や成果を発表してもらう場を設けて、すばらしい活動や成果は手放しで褒めます。
委員長にはわずかばかりの手当てもつきますが、私の経験からいえば、彼らのモチベーションはお金ばかりではありません。称賛や評価が原動力となるのです。
5.会社委員会活動を導入して多角化人材を育てよう!
事業が多角化すればするほど、組織は縦割りに分断されがちです。
グループ横断型の委員会活動は、そうした縦割り組織にきっと風穴を開けてくれるでしょう。
社員のリーダーシップスキルを身につけるにも、委員会は良い機会となりますよ。
また、社員それぞれの当事者意識、経営参加意識の醸成にも役立ちます。
自分たちで問題を発見し、その解決に取り組むなかで、自主目標・自主管理というシステム経営の基本が自然に身につくからです。
あなたの会社が多角化を進めているなら、ぜひ委員会の導入を検討してみてください。
ヤマチユナイテッドでは企業視察やワークショップなど様々なイベントを開催しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
SHARE! この記事を共有する
Authorこの記事の著者
ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。