多角化のメリットを最大限に引き出す「連邦経営」とは?《連邦・多角化経営概論》第3回

多角化するノウハウ

山地 章夫
山地 章夫

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「ヤマチユナイテッドグループの『ユナイテッド』とはどんな意味ですか?」と尋ねられることがあります。

Unitedとは「結合した」「協力した」「ひとつになった」という意味の形容詞。

アメリカ合衆国も英語ではUSA(ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ)と表現されます。

アメリカでは州ごとにそれぞれ独自の法律があっても、ひとつの国として機能しています。私たちヤマチユナイテッドグループもそれと同じ。

50を超える事業や子会社の多くは独自採算制でも、グループ全体をひとつの組織とみなして統制しています。

こうした仕組みを私は「連邦経営」と呼んでおり、今回はそのアウトラインについて解説したいと思います。

目次

  1. 連邦経営に踏み出すきっかけ
  2. 連邦経営のメリット
  3. 連邦化までの6ステップ
  4. 全社員の集まる機会が必要
  5. まとめ

1.連邦経営に踏み出すきっかけ

これは私が経験して学んだことですが、社長がひとりで複数の会社や事業を統制するのは、とてつもなく困難なことです。

なにか問題が起こるたびに、自ら火消しに奔走。収束するころには別の事業で経営課題が出てくる。まるでもぐら叩きゲームのような忙しさでした。

これでは大局的な見地から経営戦略を考える、社長本来の仕事は十分にできません。ですから私はまず、幹部を事業責任者として育て、それぞれの事業がお互いに助け合える組織を築きたいと考えました。

そこで「グループ全体が大きなひとつの会社である」と宣言。100の事業を立ち上げて100人の事業責任者を生み出すというグループビジョン「THE100VISION」を提示して、連邦経営につながる取り組みを始めたのです。

2.連邦経営のメリット

連邦経営の最も大きなメリットは、多角化が進んで子会社や事業が増えても、縦割りのセクト主義に陥ることがないという点です。

一般的に各事業が独立採算で運営されるようになると、それぞれの事業の縦割り化が顕著になります。

「自分たちの事業部がうまくいっていればいい」と考える社員が多ければ、せっかく多角化しても、グループとしての相乗効果は発揮できません。

一方、複数の会社や事業をひとつの会社のように運営する連邦経営なら「自分たちだけがよくてもダメだ」と、連帯責任の感覚を持つ幹部が増えます。

困ったときはお互いに知恵を出し合い、助け合うようになるのです。

もうひとつのメリットは、資本と経営を分離できることです。

当社では、ホールディング会社の「山地ユナイテッド(株)」が、各事業会社の株式を100%保有する持ち株制で運営されています。

私自身は基本的には山地ユナイテッド(株)の社長で、オーナーの立場。事業会社の経営は基本的に幹部に任せています。

そして、各子会社は資本金の最低10%程度を配当として、株主である山地ユナイテッド(株)に還元することになっています。

ホールディング会社はこの配当金収入から、子会社への出資や支援をするルールです。

こうして資本と経営をはっきり分けることによって「親会社がなんとかしてくれる」というような甘えはなくなります。また、株式をホールディング会社にまとめておけば、後々の事業承継もスムーズに進めることができるでしょう。

3.連邦化までの6ステップ

では、どうすれば連邦経営は可能になるのでしょうか。

もちろん私も一朝一夕に実現できたわけではありません。

ここでは当社がたどってきたプロセスを、6つのステップに分けて説明しましょう。

◎第1段階/機能別組織

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事業がひとつの企業の場合、「営業」「購買」「業務」「工事」「製造」「管理」などの機能で部署を分けるのが一般的です。経営判断はトップに集中しまうため、どうしてもトップダウン型の経営になってしまいます。

◎第2段階/事業別組織

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事業収益単位をA事業部、B事業部といくつかに分割して、その責任者に権限を委譲する経営形態です。それぞれの事業部長に権限を与えるのが、多角化経営の第一歩です。

◎第3段階/事業部別の分社化

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各事業部を組織から切り分けて、独立子会社を設立する方法です。独立採算で経営数値が明らかになるため、各事業の責任が明確になるほか、どこに問題があるかもタイムリーに把握できるようになります。一方で、組織の縦割り化が進んでしまうデメリットがあります。

◎第4段階/ホールディング経営体制

傘下にある会社の株式を保有するホールティング会社(持ち株会社)をつくり、グループ各社の事業活動を管理します。縦割りのセクト主義を防ぐとともに、資本と経営を分離できるメリットがあります。

◎第5段階/グループ経営推進会議の設置

グループ各社の役員、事業責任者など経営幹部が出席する「グループ経営推進会議」を設けて、会社間に横のつながりをつくります。

いわば縦割りのグループに横串を刺す仕組みです。

トップは複数の子会社の経営会議をはしごする必要がなくなり、時間的余裕ができます。

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◎第6段階/グループ横断型組織

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「グループ経営推進会議」から一歩進め、縦・横・斜めのコミュニケーションを促し、さらに高いレベルでの連邦化を図った組織体系です。

具体的な手法でいうと「グループ役員会」、「グループ経営会議」、「グループ管理本部」などの設置、全社横断型の「委員会・プロジェクト」の組織化などがあげられます。

こうした事業をまたいで行う会議や委員会については、また別の機会にあらためて詳しく紹介したいと思います。

4.全社員が一度に集まる機会も重要

当社の経営形態はいま第6段階のステージにありますが、連邦経営を実践するうえで欠かせない行事として位置づけているのが「グループキックオフ」です。

年度末の2月末に、グループの全従業員600人以上を一堂に集めて行っています。

プログラムは、トップによる経営方針の説明から、グループ経営戦略の発表、各社・各事業部の来年度の経営計画発表、成績優秀者の表彰、委員会活動の成果発表まで盛りだくさんの内容。

さすがに600人を超えると互いに知らない社員も増えます。「うちの会社はこんな事業も手掛けているのか」「○○さんはすごい頑張っているな」など、社員間の情報共有やモチベーションアップにつなげてほしいと考えています。

ちなみに、キックオフの会場では、全社員が並んで集合写真を撮影するのが恒例行事。この記事の冒頭に今年度の写真を掲載しましたが、毎年人数が増えていくのを実感でき、経営者にとってはこのうえなく幸せな瞬間です。

5.まとめ

「連邦化」はイコール「分社化」ではありません。

それぞれの事業で現場責任者に権限を委譲した上で、横の連携を強化して、グループ全体をひとつの企業のように運営すること、それが「連邦経営」なのです。

もちろん、私たちが行っている組織図は最終形ではありません。

現在も、グループの成長に合わせてどんどん変化しています。最近ではグループを横断して事業領域ごとにまとめ、業務の効率化や新規事業アイデアを出し合うユニットをつくり、グループ内の人とアイデアの行き来を活性化させようと取り組んでいます。

しかし、多角化のメリットを最大限に引き出すのが連邦経営であることは変わらないでしょう。

あなたの会社でこの先、事業の多角化が進むようなら、あわせて連邦経営に取り組んでみてはいかがでしょう。まずは持ち株会社をつくることからスタートです。


シリーズ《連邦・多角化経営概論》では、連邦・多角化経営の仕組みを全4回にわたって解説。
ヤマチユナイテッドが実践する100VISION経営、さらに連邦・多角化経営の全容を知りたい方は、まずこちらのシリーズからご覧ください。

第1回:中小企業の活路は、「連邦・多角化経営」にあり
第2回:社員全員が経営に参加できる、とっておきの仕組み「システム経営」とは?
第3回:多角化のメリットを最大限に引き出す「連邦経営」とは?(この記事)

第4回:成功する会社には「良い社風」がある。「社風経営」で多角化経営を加速しよう

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