中小企業の活路は多角化戦略にあり 《連邦・多角化経営概論》第1回
多角化・新規事業
このサイトをご覧になっているあなたは、このような願いを持っているのではないでしょうか。
「業績を拡大して儲かる会社にしたい」
「永続的に成長できる会社をつくりたい」
「経営者意識を持つ社員を育てたい」
こうした願いを実現する選択肢のひとつが「多角化」戦略です。
一方で、余計なことに手を出さず、本業に専念するのが一番だという考えも根強くありますよね。
でも、どうでしょう?
日本経済の実質成長率が1%前後の時代に、本業ひとつだけで成長していくのは、下りのエスカレーターをのぼろうとするくらい至難の業ではないでしょうか。
私はそれよりも、新規事業と業務改革を繰り返す「変化こそ常道」の経営こそ、持続的に成長できるスタイルだと考えます。
今回は、どうしてこのように考えるようになったのか、私の知識や失敗の数々を交えながら中小企業における多角化の重要性や事例、成功させるコツを中心にお話しします。
また、多角化を経営戦略に取り入れるメリットもあわせてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 多角化とは?中小企業こそ経営戦略に取り組むべき
- 中小企業のヤマチユナイテッドが多角化を経営戦略に取り入れたワケ
- 中小企業の多角化経営を成功へ導く「実践3つの柱」とは?
- 中小企業が多角化を経営戦略に取り入れる6つのメリット
- 中小企業こそ多角化に取り組んでより良い成長を
1.多角化とは?中小企業こそ経営戦略に取り組むべき
多角化とは、企業が現在の主力事業の他に、新しい製品やサービスを既存あるいは新規のマーケットに展開し、売上や利益を拡大することです。
本業をひとつに絞らず他のマーケットにも進出してシェアを取ることは、企業の成長につながるだけでなく、生産・販売ノウハウや工場設備など経営資源の相乗効果を最大化できます。
多角化は「経営リソースが豊かな大企業だからできるもの」というわけではなく、むしろ小回りが利く中小企業において、やる価値があるものだといえます。
中小企業が多角化を実現すると、アイデア次第ではニッチ市場で首位をとることも可能となるのです。
同じマーケットで多角化を狙う方法には「垂直型多角化戦略」と「水平型多角化戦略」があります。
「垂直型多角化戦略」は、これまで複数の企業が担ってきた上流・下流工程の分野を、ひとつの企業に集約する戦略のこと。
当社が建材卸から建材輸入の貿易事業へ、そして輸入住宅の建設へと多角化させたことは垂直方向への多角化だといえます。
「水平型多角化戦略」は、企業が持っている技術を活用し、類似の市場をターゲットにして商品やサービスを開発・提供することです。
当社では輸入住宅を多ブランド化させ、さまざまな顧客層の多様なニーズに応えられるようラインナップを増やしてきたことが水平方向への多角化となっています。
多角化の種類や進め方については「事業の多角化を成功させるポイント。今のままで会社は永続できますか?」でより詳しくお話しているので、ぜひご参考ください。
2.中小企業のヤマチユナイテッドが多角化を経営戦略に取り入れたワケ
今から20年前の1997年、北海道拓殖銀行の経営破綻により、北海道は底なしの不況に見舞われました。
毎週のように得意先倒産の知らせが舞い込み、不良債権は膨らむ一方。
当時私は輸入住宅会社を経営していましたが、新規住宅着工数も激減して、いくら考えても打開策が出てこない。
やりたくないが、やれることはただひとつ、自社の規模を縮小するリストラだけでした。
それまでの7〜8年は、アメリカスタイルの輸入住宅がヒットしたことで輸入住宅事業の業績は順調に伸びており、もしその間に事業リスクの分散ができていれば、これほど痛い思いをすることはなかったはずだと後悔しました。
多角化を考えるなら、本業が順調なうちに準備しておくことをおすすめします。
その後、起死回生をかけてヨーロッパスタイルの新しい住宅ブランドを発表。
それをフランチャイズ展開したことで経営が軌道に乗り、経営の危機を脱することができました。
もし私が父の創業した建材卸に専念し、専業でやり続けていたとしたら、会社は今頃つぶれていたかもしれません。
建材卸から建材の輸入、その建材を使った輸入住宅の建設と、事業を多角化させてきたことが、結果的に会社を救ったのです。
現在までに興した事業は、注文住宅、住宅リフォーム、インテリアショップ、イベント、通所介護、レストラン、セミナー教育事業、など、マーケットもさまざま。
さらに、住宅や介護業界ではフランチャイズ本部としてもビジネスを展開するなど、約50の事業を成功させています。
ひとつの事業に絞るのではなく、売り上げ規模でいえば数千万円から数億円程度の事業や会社を次々と興していく。
そして、複数の事業を有機的に連結させ、ひとつの会社のように運営するのが、私たちの目指す「連邦・多角化経営」です。
それぞれの事業が独立採算で管理されており、あらゆる危機に対応できる一方で、相乗効果による業績アップも期待でき、安定した経営基盤の確立につながっています。
3.中小企業の多角化経営を成功へ導く「実践3つの柱」とは?
中小企業の多角化経営を成功へ導くのが、"実践3つの柱"です。
これは私たちが行う「連邦・多角化経営」で行っている手法であり、試行錯誤を経て編み出してきたノウハウがぎっしりと詰まっています。
(1)事業多角化
企業の成長を加速させ、なおかつ安定させるための手段のひとつが、多角化経営です。
多角化をするにあたっては、自社の現在の事業と関連性の高い事業や、企業・グループのミッションやビジョンにのっとった事業を展開することが重要なポイントです。
(2)システム経営
社員が経営に参加し、全員で良い会社をつくる仕組みのこと。
実行することで、企業の収益性と体質が劇的に変わります。
(3)連邦経営
事業が増えてきた際に分社化を行うだけでは、結局縦割りのシステムになってしまいます。
連邦制というひとつの横軸を通すことで、グループ全体に共通の価値観やルールをつくりだすことができます。
この3つは中小企業が多角化経営をし、成果を得るためには、どれひとつ欠けてはならないものです。
それぞれの内容は、このコラムを初回とする全4回のシリーズ《連邦・多角化経営概論》で詳しくご説明していきます。
第2回目の「社員が経営参画できる「システム経営」とは?《連邦・多角化経営概論》第2回」ではシステム経営について、社員全員が良い会社をつくるための仕組みをご紹介しています。
4.中小企業が多角化を経営戦略に取り入れる6つのメリット
では、中小企業が多角化に取り組むと、どのような良いことがあるのでしょう。
代表的な6つのメリットをご紹介します。
(1)企業規模が拡大し、生産性と利益がアップする
多角化によって事業が増えていくと、その数の分だけ大きく数字を伸ばすことが可能です。
ビジネスの規模が大きくなって会社が成長していくと、当然、経営は楽しくなっていきます。
(2)収益源の多角化で、リスクを分散できる
ひとつの事業が突発的な環境の変化にさらされたとしても、多角化しておくことでリスクを分散することができるようになります。
売り上げの柱となる事業を複数持つことによって、他の事業でカバーしたり、人員を他の事業に配置転換したりと柔軟に対応できます。
(3)社長の負担や心配が減り、幸せになれる
事業責任者に権限委譲し、現場を任せていく仕組みを築くことで、社長は本来やらなければいけない自分の仕事に専念できます。
幹部・社員が成長していく多角化は、社長の仕事を楽にしてくれます。
(4)社員の幸せ、顧客満足度がアップする
積極的に現場を任せることにより、社員はやりがいと充実感を得ることができます。
働く社員が幸せなら、お客さまにも幸せを届けようとするはず。
顧客満足度を向上させ、業績アップにつながるという好循環を生み出します。
(5)ポスト増とやりがいで人材採用にも好影響
多角化でポストが増え、社員が活躍できるステージが広がります。
社員にとって認められるチャンスや、やりがいのある仕事ができる環境が整っていることは、人材採用においてもメリットをもたらします。
(6)いろいろな経営ができて楽しい!
なによりも経営者自身、仕事が楽しくなります。
「新しいことに挑戦できる。」
「情熱を傾けられる分野に進出できる。」
経営者として、これほどわくわくすることがほかにあるでしょうか。
これ以外にも多角化を経営戦略に取り入れるメリットはたくさんあります。
「多角化戦略12のメリット。多角化経営が可能にすることとは」にて詳しくお話しているので、あわせて読んでみてください。
5.中小企業こそ多角化に取り組んでより良い成長を
中小企業が持続的に売上を伸ばして事業を拡大するには、新規事業と業務改革を繰り返す「多角化経営」が必要だと考えています。
そして、多角化のメリットを最大化させるために重要なのが、複数の事業を連結させて会社を運営する「連邦経営」です。
ヤマチユナイテッドではこの2つを掛け合わせて「連邦・多角化経営」と呼んでいます。
私はさまざまな失敗の上にたどり着いたこの成功のセオリーを、中小企業の経営者の皆さんへお伝えすることが、いま自分に与えられた使命のように感じています。
ヤマチユナイテッドは「世の中に、幸せをばらまく」をモットーにしています。
お客さまはもちろんのこと、取引先にも、社内にも、家族にも、幸せをばらまきながら仕事ができたら最高です。
そして私はいま「世の中の中小企業の経営者に、私のように幸せになってもらおう」という思いを強く持つようになりました。
このサイトを立ち上げたのも、そうした思いからです。
孤独におちいりがちな経営者のみなさんが、経営と人生をとことん楽しめるようになるために私は応援団になりたいと願っています。
多角化によって大きく成長する企業がどんどん増えれば、日本の地方が元気になると信じています。
最後にまとめとなりますが、中小企業が多角化を経営戦略に取り入れるメリットは、企業規模の拡大とリスク分散によって安定した経営基盤を確立できることです。
また、何より働く社員のやりがいや幸せにつながり、そして社長が負担を減らし経営をより楽しめるようになることも大きなメリットでしょう。
多角化経営を成功に導くには「事業多角化」「システム経営」「連邦経営」の<実践3つの柱>が必要です。
次回は「システム経営」についてお話ししていきますので、ぜひお付き合いください。
シリーズ《連邦・多角化経営概論》では、連邦・多角化経営の仕組みを全3回にわたって解説。
ヤマチユナイテッドが実践する100VISION経営、さらに連邦・多角化経営の全容を知りたい方は、まずこちらのシリーズからご覧ください。
第1回:中小企業の経営戦略は多角化がカギ!事例もあわせてご紹介 (このコラム)
第2回:社員が経営参画できる「システム経営」とは?
第3回:分社化のメリットを活かしデメリットを補う連邦経営とは?連邦化の方法
SHARE! この記事を共有する
Authorこの記事の著者
ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。