中小企業はなぜ多角化すべきか?ヤマチの事例に学ぶ成長戦略のヒント
多角化・新規事業

こんにちは、ヤマチユナイテッド代表の山地です。
このサイトをご覧になっているあなたは、次のような願いを持っているのではないでしょうか。
- 「業績を拡大して儲かる会社にしたい」
- 「永続的に成長できる会社をつくりたい」
- 「経営者意識を持つ社員を育てたい」
こうした願いを実現する選択肢の一つが「多角化」戦略です。
一方で、「余計なことに手を出さず、本業に専念するのが一番だ」という考えも、根強くありますよね。
ただ、昨今のように日本経済の国内総生産(GDP)の実質成長率が1%前後にとどまる状況では、本業一つだけで成長していくのは、言わば「下りのエスカレーターを上る」くらい至難の業ではないでしょうか。
私はそれよりも、新規事業と業務改革を繰り返す「変化こそ常道」の経営こそ、持続的に成長できるスタイルだと考えます。
今回は、どうしてこのように考えるようになったのか、私自身の知識や失敗から得た学びを交えながら、「中小企業における多角化の重要性」や「ヤマチユナイテッドでの具体的な事例」「中小企業が多角化戦略を成功させるコツ」を中心にお話しします。
また、中小企業が多角化を経営戦略に取り入れるメリットもあわせてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 多角化とは?中小企業こそ多角化経営・多角化戦略に取り組む価値がある
- 中小企業・ヤマチユナイテッドの多角化事例を紹介!経営戦略に取り入れたワケも
- 中小企業の多角化経営「実践3つの柱」とは?成功へ導く方法も確認
- 中小企業が多角化を経営戦略に取り入れるメリット
- 中小企業こそ事例を参考に多角化に取り組み、より良い成長を
多角化とは?中小企業こそ多角化経営・多角化戦略に取り組む価値がある
多角化とは、企業が現在の主力事業の他に、新しい製品やサービスを、既存あるいは新規のマーケットに展開することで、売上や利益の拡大を目指す経営戦略です。
本業を一つに絞らず、ほかのマーケットにも進出してシェアを取ることは、企業の成長につながるだけでなく、生産・販売ノウハウや工場設備など、既存の経営資源も有効に活用できるので、相乗効果を高めることが可能になります。
「多角化は、経営リソースが豊かな大企業だからできるもの」と思われがちですが、むしろ小回りが利く中小企業だからこそ実現しやすく、取り組む価値がある戦略だといえます。
中小企業が多角化を実現すると、アイデア次第ではニッチ市場での首位を狙うことも可能となるのです。
多角化の種類
事業の成長やリスク分散を目的として、新たな分野へ挑戦する多角化戦略。
これは、自社の技術的な強みや市場との関係性に注目することで、以下の4つに分類されます。
- 垂直型多角化戦略
- 水平型多角化戦略
- 集中型多角化戦略
- 集成型多角化戦略(コングロマリット型)
同じマーケットで多角化を狙う方法には「垂直型多角化戦略」と「水平型多角化戦略」があります。
【垂直型多角化戦略】
「垂直型多角化戦略」は、これまで複数の企業が担ってきた上流・下流工程の分野を、一つの企業に集約する戦略のこと。
例えば、当社が建材卸から建材輸入の貿易事業へ、そして輸入住宅の建設事業へと多角化させたことは、この垂直方向への多角化だといえます。
【水平型多角化戦略】
「水平型多角化戦略」は、企業が持っている既存の技術やノウハウを活用し、類似の市場をターゲットにして、新たな商品やサービスを開発・提供する戦略です。
当社では、輸入住宅を多ブランド化させ、さまざまな顧客層の多様なニーズに応えられるようラインナップを増やしてきたことが、水平方向への多角化に該当します。
【集中型多角化戦略】
「集中型多角化戦略」は、自社の強み、得意分野を生かして、まったく新しい市場へ進出する戦略です。
例えば、商品開発力を活用して異業種に参入するケースが該当します。
ただし、商品開発は得意でも、販路の確保など新たな課題が生じやすい側面もあります。
【集成型多角化戦略(コングロマリット型)】
「集成型多角化戦略(コングロマリット型)」は、現在の事業と関連性のない、異なる分野に進出する戦略。
リスクは比較的大きいものの、成功すれば大きな成長を見込める可能性もあります。
多角化の種類や進め方については「事業の多角化戦略の失敗例・成功例とは?成功させる条件もご紹介」でより詳しくお話ししているので、ぜひご参考ください。
中小企業・ヤマチユナイテッドの多角化事例を紹介!経営戦略に取り入れたワケも
多角化戦略は、中小企業においても環境変化に柔軟に対応し、持続的な発展を実現するために有効な手段といえます。
中小企業であるヤマチユナイテッドが、これまでどのように多角化を実践し、経営危機を乗り越えてきたのか、その戦略的な背景と成果をご紹介します。
苦境をきっかけに多角化へ
1997年、北海道拓殖銀行の経営破綻により、北海道は底なしの不況に陥りました。
毎週のように得意先の倒産が相次ぎ、不良債権は膨らむばかり。
その当時、私は輸入住宅会社を経営していましたが、新規住宅の着工数は激減。
いくら考えても、明確な打開策は見つかりませんでした。
そして、やりたくはなかったものの、やむを得ず選んだ手段は自社の規模を縮小するリストラだったのです。
それまでの7〜8年間は、アメリカスタイルの輸入住宅がヒットし、輸入住宅事業の業績は順調に伸びていました。
しかし、その間に事業リスクを分散する準備ができていれば、これほど痛い思いをすることはなかったはずだと後悔したものです。
多角化を考えるなら、本業が順調なうちに準備しておくことをおすすめします。
「連邦・多角化経営」が生んだ安定した経営基盤の確立
その後、起死回生をかけて、ヨーロッパスタイルの新しい住宅ブランドを発表。
それをフランチャイズ展開したことで経営が軌道に乗り、経営の危機を脱することができました。
もし私が、父の創業した建材卸業に専念し、専業でやり続けていたとしたら、会社は今頃存在していなかったかもしれません。
建材卸から建材の輸入、さらにその建材を使った輸入住宅の建設と、事業を多角化させてきたことが、結果的に会社を救ったのです。
ここで、ヤマチユナイテッドが2025年5月までに興した事業をピックアップしてご紹介します。
- 住宅建築
- リフォーム事業
- インテリアショップ運営
- イベントプロデュース
- 機能改善デイサービス事業
- カフェ・レストラン運営
- セミナー教育事業 など
さらに、住宅業界や介護業界では、フランチャイズ本部としてもビジネス展開を進めており、これまでに50を超える事業を成功させてきました。
私たちの経営スタイルは、単一の事業に絞るのではなく、売り上げ規模でいえば数千万円から数億円程度の事業や会社を次々と興していく形です。
そして、複数の事業を有機的に連結させながら、一つの会社のように運営していくというもの。
これが、私たちの目指す「連邦・多角化経営」です。
それぞれの事業が独立採算で管理・運営されており、経済的ショックや業界の変化といったあらゆる危機に柔軟に対応できる体制が整っています。
また、事業同士の連携により相乗効果が生まれ、業績アップにもつながる。
結果として、安定した経営基盤の確立につながっています。
ヤマチユナイテッドについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
ヤマチの連邦多角化経営と自主自律型の経営はいつから始まった?
中小企業の多角化経営「実践3つの柱」とは?成功へ導く方法も確認
中小企業が多角化経営を成功に導くためには、どのような視点や取り組みが必要なのでしょうか。
ここでは、ヤマチユナイテッドが実践する「3つの柱」と、それを活かした成功へ導く方法についてご紹介します。
中小企業の多角化経営には「実践3つの柱」が重要
中小企業の多角化経営を成功へ導くのが、「実践3つの柱」です。
これは、ヤマチユナイテッドが行う「連邦・多角化経営」で行なっている手法であり、試行錯誤を経て編み出してきたノウハウがぎっしりと詰まっています。
(1)事業多角化
企業の成長を加速させ、なおかつ安定させるための手段の一つが、多角化経営です。
多角化をするにあたっては、自社の現在の事業と関連性の高い事業や分野、企業・グループのミッションやビジョンに沿った事業を展開することが重要なポイントです。
(2)システム経営
「システム経営」とは、社員が経営に主体的に参加し、全員で良い会社をつくる仕組みのこと。
これを実行することで、企業の収益性と組織体質が劇的に変わります。
社員全員が良い会社をつくるための仕組みである「システム経営」については、こちらのコラムでご紹介しています。
社員が経営参画できる「システム経営」とは? 《連邦・多角化経営概論》第2回
(3)連邦経営
事業が増えてきた際に、ただ分社化を行うだけでは、結局縦割りの組織構造になってしまいがちです。
「連邦経営」では、連邦制という一つの横軸を通すことで、グループ全体に共通の価値観やルールをつくりだすことができます。
この3つの柱は、中小企業が多角化経営に取り組み成果を得るために、どれも欠けてはならない要素です。
中小企業の多角化経営を成功へ導く方法
中小企業が多角化経営を成功へ導くための進め方とポイントについて、ステップごとにご紹介します。
中小企業の多角化経営の進め方
多角化経営は計画的に進めることが大切です。
リスクを抑えつつ、新しい市場に進出するために以下のステップを踏みます。
①市場調査と分析
まずは、自社の現行事業の強みや弱みを把握した上で、ターゲット市場の競争状況を調査します。
あわせて、自社の保有するリソース(人材・設備・ノウハウなど)をどう活用するかを検討することが重要です。
②戦略設定
新しい市場へ進出する目的を明確にし、リスク分散や競争優位性の獲得を目指します。
この際、既存事業と関連性のある分野に展開するのが一般的で、スムーズな立ち上げにつながります。
③リソース確保
新事業の立ち上げに必要な資金や人材を確保します。
必要に応じて、他社とのパートナーシップや業務提携を活用し、効率的な運営体制を整えます。
④段階的実行
初期段階ではスモールスタートを意識し、小規模に試行した上で結果を分析しながら段階的に拡大します。
進捗を継続的にモニタリングし、必要に応じて柔軟に戦略を見直すことが求められます。
⑤評価と改善
実行後は、成果を客観的に評価し、課題を洗い出した上で必要な改善を加えます。
そのうえで、全体戦略の中での位置づけを再確認し、経営の方向性と整合性を取ります。
事業多角化の方法については、こちらのコラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
事業多角化する理由とは?多角化する方法やヤマチの事例を紹介!
事業の多角化戦略の失敗例・成功例とは?成功させる条件もご紹介
中小企業の多角化経営のポイントと注意点
多角化戦略を成功させるためには、まず市場調査や顧客分析を行い、新たな市場における機会やリスクを正確に把握することが重要です。
また、必要なリソースを適切に確保するとともに、外部パートナーとの連携を活用することで、リスクの分散と効率的な推進が可能になります。
さらに、既存事業との関連性が高い分野へ展開することで、シナジー効果を得やすくなり、リスクを抑えながら成果を早期に出すことができるでしょう。
進行中は、定期的に進捗を評価し、必要に応じて改善策を講じることで、状況に応じた柔軟な戦略調整が可能になります。
中小企業が多角化を経営戦略に取り入れるメリット
中小企業が多角化に取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょう。
代表的なメリットをご紹介します。
企業規模が拡大し、生産性と利益がアップする
多角化戦略を採ることで、企業は一つの事業に依存せず、複数の成長サイクルを持つことができます。
多角化によって事業が増えていくと、その数の分だけ大きく数字を伸ばすことが可能です。
たとえ主力事業が成熟期に入り成長が鈍化したとしても、新規事業への進出により、継続的な成長が可能となります。
結果として、収益基盤の多様化が進み、企業の安定性が高まります。
ビジネスの規模が大きくなって会社が成長していくと、当然、経営は楽しくなっていきます。
収益源の多角化で、リスクを分散できる
一つの事業が突発的な環境の変化にさらされたとしても、多角化しておくことでリスクを分散できるようになります。
売り上げの柱となる事業を複数持つことによって、ほかの事業でカバーしたり、人員をほかの事業に配置転換したりと柔軟に対応できます。
これにより、経済環境や市場の変化に対する耐性が強まり、安定した経営基盤を築くことができます。
事業間のシナジー効果が生まれる
多角化戦略によって、既存事業と新規事業との間で相乗効果(シナジー)が生まれることも、多角化の大きな魅力です。
例えば、共通の生産設備を複数事業で活用することでコスト削減につながったり、既存の販売チャネルを新たな事業にも応用することで、販売促進の効率化が図れます。
このように、事業間の連携をうまく活かすことで、限られた経営資源をより効果的に活用することが可能です。
社長の負担や心配が減り、幸せになれる
事業責任者に権限委譲し、現場を任せていく仕組みを築くことで、社長は本来注力すべき経営判断や将来構想などといった自分の仕事に専念できます。
幹部・社員が成長していく多角化の仕組みは、結果的に経営者の負担を減らし、精神的なゆとりにもつながります。
社員の幸せ、顧客満足度がアップする
積極的に現場を任せることにより、社員はやりがいと充実感を得ることができます。
こうした前向きな気持ちは、顧客へのサービスにも良い影響を与えます。
働く社員が幸せなら、お客さまにも幸せを届けようとするはず。
顧客満足度を向上させ、業績アップにつながるという好循環を生み出します。
ポスト増とやりがいで人材採用・定着にも好影響
多角化でポストが増え、多様なキャリアパスが生まれることで、社員が活躍できるステージが広がります。
社員にとって認められるチャンスや、やりがいのある仕事ができる環境が整っていることは、人材採用においてもメリットをもたらします。
いろいろな経営ができて楽しい!経営のやりがいと楽しさが増す
何よりも、多角化することで経営者自身にとっても、「挑戦の楽しさ」を感じられる機会になるため、仕事が楽しくなります。
- 新しい分野に挑戦できる
- 自分の情熱を傾けられる領域に進出できる
経営の本質的な楽しさを体感できるのも、多角化経営の魅力のひとつです。
経営者として、これほどわくわくすることがほかにあるでしょうか。
これ以外にも多角化を経営戦略に取り入れるメリットはたくさんあります。
「多角化経営とは?多角化戦略のメリットと成功へ導くポイント」にて詳しくお話しているので、あわせて読んでみてください。
中小企業こそ事例を参考に多角化に取り組み、より良い成長を
多角化とは、企業が主力事業に加えて新たな製品やサービスを展開し、売上や利益の拡大を図る経営戦略です。
特に中小企業にとっては、成長の加速だけでなく、事業リスクを分散する手段としても注目されています。
多角化には大きく分けて、「垂直型」「水平型」「集中型」「集成型」の4つの戦略パターンがあり、企業が持つリソースや市場環境に応じた適切な方向性の選定が求められます。
例えば、北海道を拠点とするヤマチユナイテッドでは、建材卸~建材輸入の貿易事業~輸入住宅の建設事業へと垂直方向への多角化を展開しました。
その後、多角化を進めることで経営の危機を乗り越え、現在では50を超える事業を展開するグループへと成長しています。
多角化を成功させるためには、市場調査、戦略の明確化、必要な人材や資金の確保といった計画的なステップを踏むことが重要です。
また、複数の事業間でのシナジー効果を生かすことでコスト削減や効率化が進み、リスクの分散や社員の成長にもつながります。
そして何より、多角化経営の魅力は、経営者にとって「経営の本質的な楽しさ」を体感できること。
変化の激しい時代だからこそ、事例を参考にしながら、自社に合った多角化の道を模索してみてはいかがでしょうか。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。