事業多角化する理由とは?多角化する方法やヤマチの事例を紹介!

多角化・新規事業

山地 章夫
山地 章夫

こんにちは、ヤマチユナイテッドの山地です。

事業多角化をして、企業を成長させたいと考えている経営者の方は多いのではないでしょうか。

当初ヤマチユナイテッドは、木の建築資材を扱う卸売会社でした。

そこから、輸入住宅建築会社、住宅ボランタリーチェーンなどに挑戦し、今に至ります。

今回は中小企業が事業を多角化する理由や多角化する方法、ヤマチの事業を多角化した最新事例などを解説していきたいと思います。

Business-diversification.jpg

目次

  1. 「事業多角化」する理由とは?
  2. 事業多角化する方法とは?
  3. 事業多角化で、初めて新規事業開発に着手する場合の段階
  4. 【ヤマチの事例】2024年最新!事業多角化の事例
  5. 事業を多角化することで、企業を大きく成長させる

「事業多角化」する理由とは?

ヤマチユナイテッドは、多角化することで規模拡大をしてきました。

今回は、その流れについてアンゾフのマトリクスを使って解説していきたいと思います。

アンゾフのマトリクスの活用事例については「「アンゾフのマトリクス」を使って多角化戦略の事例を紹介!」の記事もあわせてご覧ください。

なぜ私たちは「事業多角化」をするのか?

課題感の克服とも関係が深いその理由を、私たちは大きく4つ考えています。

事業多角化する理由①規模拡大

既存事業がいくら好調でも、やがて成長曲線が緩やかになる時がやってきます。

まして既存事業の利益率があまり高くない場合、それを続けていくだけでは業績アップを見込めません。

これから会社の規模を拡大していこうと考えるなら、利益率の高い新規事業で全体の業績を上げていかなくてはならないのです。

うちの建材卸業の場合もそうでしたが、卸売りだけでは数パーセントだった利益率を、オリジナル建材を持ったり、販売先を広げていったりすることで十数パーセントまで引き上げることができました。

新規事業開発は既存事業に付加価値をのせることにつながり、利益率を上げる工夫でもあるのです。

事業多角化する理由②リスク分散

近年のコロナ禍の影響で、リスク分散の大切さを身に染みて実感した中小企業経営者の方々も多いと思います。

かくいう私もその一人です。

企業として大きな環境変化を乗り切るためには、単一事業では心許ないと思うのです。

異なる業種、異なるビジネスモデルで事業ポートフォリオを組んでおくことで、会社を支える柱が2本、3本、4本となり、もしどれかの事業が打撃を受けても他でカバーすることが可能になります。

事業多角化する理由③社員のやりがい

事業が増えるに伴って、ポストも増えます。

社員に早い段階から役職を付け、役割を増やして、少しレベルの高いことにも挑戦させてあげられるようにすると、社員はやりがいを感じて働いてくれるようになります。

うちでは介護事業から派生した24時間型ジム「O-STYLE(オースタイル)」の店舗も持っていますが、1号店の店長は新卒2年目の若手社員に任せました。

彼は元々介護事業のスタッフでしたが、24時間フィットネスという新規事業ができたことによって新しい領域にチャレンジする機会を与えられ、大いにやりがいを感じてより一生懸命仕事に取り組んでくれています。

事業拡大に伴って、ポストのほかに管理すべきことや思考すべきことも多くなり、チャレンジングな事案も増えます。

社員の成長のスピード感や視野の広がり方は、既存事業だけをやっているときと比べると、多角化したときのほうが確実に大きく進歩するでしょう。

既存の強みを整理しながらこれまでと違うビジネスモデルを経験しておくと、自分たちで新たなものを作る力がかなりつくはずです。

事業多角化する理由④経営者の負担を減らし、本来の仕事に専念する

経営者というのは、日々様々な領域にアンテナをはっているはずですから、「あんなことをやりたい」「こんなことをやりたい」など、アイデアを含めてやりたいことがたくさんあるのではないでしょうか。

それを実現するためにはタスクもたくさんあるわけですが、新規事業を増やして多角化するとその辺の業務はもう任せるしかない領域になります。

経営者のみなさんはやりたいことを実現するために任せられることはどんどん社員に任せて、自身の負担を軽くした上で本当に経営者としてやりたいことに手を出せるようになるのではないでしょうか。

うちでは社員全員参加型のシステム経営を取り入れているので、事業部ごとの経営計画策定は現場の社員に任せています。

ここがおそらくキーポイントで、任せるための風土や任せて良い範囲の設定、任せられるだけの理念共有ができている社員の育成といった環境や条件が整っていないと多角化しても任せられず、社長の仕事はいつまでも減りません。

事業多角化にあたっては、ここもセットで進めていく必要があると思います。

事業多角化する方法とは?

Office-members-sharing-diverse-opinions.jpg

事業多角化の方法は大きく3つあります。

事業多角化する方法①フランチャイズ加盟

ヤマチユナイテッドのイベント業もフランチャイズ加盟から始めたのは前述の通り。

すでに確立されたノウハウを得て運営できるので、成功事例を早めに体感することができます。

逆に、仕組化された運営ノウハウが既存事業に良い影響を与えることも。

「このやり方は良いな」と思ったら、それを既存事業に生かしていっても良いでしょう。

また、運営ノウハウはパッケージとして購入するので、既存人材の活用はもちろん新規採用でいろいろな人が入ってくるのも組織にとっても良い刺激になると思います。

うちでは家庭用レンタル事業がフランチャイズ加盟したところから始まりました。

最近では幼児教育の分野で「アクティメソッド」「コペル」という2つのフランチャイズ展開をしています。

ちなみに、自社のオリジナル事業が成功したら、そのノウハウを他社へ売ることでも事業多角化が可能です。

機能訓練専門のデイサービス「きたえるーむ」や住宅販売の「ジョンソンホームズ」などは、事業部の一つとしてフランチャイズ本部を構えています。

直営もしつつフランチャイズ本部の運営もするため、BtoBとBtoC両方のノウハウを確立しておく必要はありますが、イチから新規事業を立ち上げるよりはずっと楽に多角化に臨むことができます。

事業多角化する方法②M&A活用

うちのM&A事例はあまり多くありませんが、企業再生や救済といった目的のほか、最近では後継者不足も深刻で、事業承継先を探している会社とのM&Aを検討するケースが増えているようです。

2014年に当グループとM&A契約を結んだ「沼田椅子製作所」は、現在「ジョンソンホームズ」と合併し、オーダーソファ専門ブランド「blocco(ブロッコ)」の名を残したまま製作を続けています。

M&Aによる多角化を視野に入れる場合は専門の仲介会社に登録するほか、銀行や同業者に声をかけておくと驚くほど電話がかかってきます。

ほかにもネット上の無料情報サイトもありますから、情報収集も兼ねて一度見てみると良いでしょう。

一つの別会社と組むわけですから、企業風土をならすといったようなひと手間はかかります。

シナジー効果によるメリットと考え合わせて検討をしましょう。

ヤマチユナイテッドの場合は、システム経営を一から学ぶ「連邦・多角化経営実践塾」という外部向け研修を用意しているので、沼田椅子製作所の幹部陣にはそこに参加してもらい、理念共有から経営手法のノウハウまでしっかり伝えることができました。

このように、M&A契約を結ぶ会社との間で基盤を整えることのできる仕組みを用意しておくと、経営方針の食い違いでゴタゴタすることなどを避けられます。

事業多角化する方法③新規事業自社開発

成功確率から考えると、やはり自前で新規事業を開発するのがベスト。

現在持っている経営資源やビジネスモデルの掛け算でいろいろな物が生まれたり、中間プロセス排除、近隣事業進出、垂直・水平展開も自由だったりというメリットは大きいと思います。

また、休眠資産の活用方法を考えることも新規事業につながる可能性を秘めています。

自前とはいえコンサルタントに入ってもらっても良いし、フランチャイズ本部を作るならフランチャイズチェーン協会のようなところに本部機能構築のお手伝いをお願いしても良いでしょう。

うちでは「ジョンソンホームズ」の「COZY」「アメカジ工務店」といった各ブランドは、社員が起案して事業化してきました。

社員が新規事業を提案できる環境を作っておくことも大切です。

事業多角化で、初めて新規事業開発に着手する場合の段階

初めて新規事業開発に着手しようとする場合、4つの段階を踏んで進めていくのがおすすめです。

1. 社長が発想したことを、社長自身が着手する

これはもう、経営者がやりたいことを実現するために自分で動くというそのままの意味です。

2.社長が発想し、社長命令で幹部以下の社員が着手する

社長がやりたい事業を社長命令として幹部以下の社員にやってもらうようにします。

1と2はトップダウンの図式で行われます。

3.社長が発想し、社長と幹部で相談して着手する

社長のアイデアに対して幹部社員に感想やアドバイスを求めたり、相談に乗ってもらったりという形で行います。

2からここへ移行するのはけっこう大変かもしれません。

初めはトップダウンで下ろしていただけに、相談することによって反対・反発されるケースもよくあるようです。

できれば新規事業開発のための視察に出るときは幹部に同行してもらい、少しずつ巻き込んで、少しずつ「一緒にやっているんだ」という形を取って、幹部陣にも我が事になるように仕向ける...。

このように言えばずるいようですが(笑)、幹部といろいろな話を共有するにつれて少しでも前向きな発言が出てきたら「これ、良いんじゃないか。どう思う?」と話ができるようになると思うのです。

私が「inZONE」のインテリアショップを作ったきっかけは、リフォーム会社の視察に行った際、時間が余ってたまたま隣にあったインテリアショップに入ったことでした。

このときは幹部社員も同行していて、「インテリアの店舗はこういう形でやっている」という話を一緒に聞いたため、新規事業としてインテリアショップを出したいという私の要望が通りやすかったのだと思います。

一緒に異業種視察に行ったりして『これ良いよね』って言っているうちに、自分のアイデアを幹部がだんだんやってくれるようになるのです。

4.幹部や社員が発想し、社長に相談して着手する

これが一番難易度が高いと思いますが、ヤマチの新規事業開発はだいたいこの段階になってきています。

会社の承認を受けるためには利益を見込んだ事業計画を立てておかなくてはなりませんし、そのための下地作りにはある程度の時間も手間もかかります。

ヤマチユナイテッドでは経営人材を一人でも多く育てるため、入社1年目から決算書の数字の読み方などを学ばせ、ビジネスモデル分析や事業計画作成といった実践を通じて教育を施しています。

このような制度や仕組みの積み重ねにより、現場からの事業発想が進むというわけです。

【ヤマチの事例】2024年最新!事業多角化の事例

ヤマチユナイテッドで近年始めた新規事業の事例を紹介します。

事例1:The JOHNSON BURGER

johnson-burger.jpg

ジョンソンホームズの飲食事業部に属するハンバーガーショップ「The JOHNSON BURGER」の事例です。

inZONE TABLE」で培った飲食事業のノウハウを生かしながら、事業責任者の発案で「グルメバーガーをやりたい」という現場の声は前々から出ていたのですが、顧客ニーズを踏まえたときに、採算や「inZONE TABLE」の立地条件が合わないという理由で棄却になっていました。

それでも彼らは諦めず、「さっぽろオータムフェスト」などの食のイベントに出店する際はハンバーガーもメニューに加えて実績を重ね、それがSNSで話題になったりして手ごたえを感じていたころ、ちょうどチャンスが訪れたのです。

「札幌ステラプレイスに空きが出たから入りませんか」とお声がかかり、会社側としても「バーガー良かったからやってみようか」という流れでついに店舗がオープン。

運が良かったのもありますが、何度も棄却になっても諦めずにイベントで実績を重ね、技術もあり、事業を実際に回す人もいたように、事業を実現するために必要なものがきちんとそろっていたことが大きかったと思います。

むしろ満を持して準備を整えていたから運が向いてくるというか、こうやって準備ができていたからこそ、運を引き寄せたと言ってもよい出来事だと思います。

棄却されても事業案を作り続けていたからこそ「やってみるかい」と話が来た時に、これまで積み重ねてきたものをパッとまとめて、パッと出すことができ、結果として話がすぐにまとまりました。

この事例は、しっかり積み重ねてきたものがあったこと、そして幹部社員が新規事業案をいつでも出しやすい環境にしてあり、かつ先輩のプレゼンを見ながら社員も事業を作る練習をしてきたことの賜物だろうと思います。

事例2:O-STYLE

Gym.jpg

「事業多角化する理由」でも紹介した、24時間型ジム「O-STYLE」。

基本事業に位置付けられる「きたえるーむ」は、機能訓練専門のデイサービス店舗です。

「きたえるーむ」はフランチャイズ事業を展開していますが、直営店もあるため、この店舗運営のノウハウを生かして健康産業の新たな可能性を探ろうとしたことが「O-STYLE」誕生のきっかけの一つ。

もう一つは、新規事業を始めるなら「きたえるーむ」との間にシナジー効果が得られるものとしたいという考え方で、「きたえるーむ」で働く柔道整復師のマッサージ技術を強みにした24時間型の事業ができないかという話が以前からしばしば出ていたことです。

「フィットネス、ダンス、マシントレーニングもできる複合型ジムでマッサージまで受けられるのは良いじゃないか」ということで事業計画が動き出し、このような形にしておけば健康に関わるいろいろな発想を埋め込んでいけるところも魅力的。

「きたえるーむ」で柔道整復師の手が空く時間に「O-STYLE」でマッサージをしてもらうという、パズルのようなスケジュール調整は必要ですが、スタッフの時間を有効に使うことができます。

さらに、フランチャイズ事業として全国120以上の店舗展開をしているので、その土地土地で行う市場調査のノウハウを「O-STYLE」に応用しやすいメリットもあります。

このように事業部同士が連携して新規事業立ち上げの協力体制ができるのも、「連邦・多角化経営」の良いところだと思います。

事業を多角化することで、企業を大きく成長させる

事業を多角化する4つの理由と3つの方法は以下の通りです。

【事業を多角化する4つの理由】

  1. 規模拡大

  2. リスク分散

  3. 社員のやりがい

  4. 経営者の負担を減らし、本来の仕事に専念する

【事業を多角化する3つの方法】

  1. フランチャイズ加盟

  2. M&A活用

  3. 新規事業自社開発

初めて新規事業開発に着手しようとする場合、4つの段階を踏んで進めていくのがおすすめです。

  1. 社長が発想し、自分でやる

  2. 社長が発想し、社長命令でやる

  3. 社長が発想し、幹部と相談してやる

  4. 幹部や社員が発想し、社長に相談してやる

新規事業の発想はあらゆるところにヒントがあるとはいえ、自社の経営資源を生かし、なおかつ既存事業とのシナジー効果を得られるものという観点から考えていったほうが、グループ全体の業績の向上につながりやすいと思います。



事業が増えれば増えるほどセクト主義が足かせになってくるケースもありますが、ヤマチユナイテッドが取り入れている「連邦・多角化経営」によってグループオールでの業績アップを目指す環境を作っておけば、そういったデメリットも回避できます。

当グループの経営ノウハウを詰め込んだ「連邦・多角化経営実践塾」は、コラム内でおすすめしたように「幹部と一緒に」参加していただくことになっています。

「これから幹部陣を新規事業開発に巻き込んでいきたい」という経営者のみなさんにも、参加をご検討いただければ幸いです。

SHARE! この記事を共有する