コングロマリットとは?ヤマチの経営戦略・連邦多角化企業の秘訣を紹介
多角化・新規事業

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
企業が大きく成長するためには、事業を増やして多角化し、すべてを連携させる「連邦多角化経営」が有効な戦略の一つとなります。
既存事業をベースに、そこからどのように新規事業を開発し、多角化していくか。
方法はいろいろありますが、中小・中堅企業においては、地元にしっかり根を張って、周辺事業を広げていく、いわゆる「地域のコングロマリット」を目指していくのが非常に効果的ではないかと考えています。
私たちヤマチユナイテッドは北海道のコングロマリットとなるべく、今まさに多角化を加速させているところです。
ヤマチユナイテッドが推進する連邦多角化経営は、単に事業を多角化するだけでなく、事業を有機的に連携させてシナジー効果を生み出すことができるのが大きな特徴です。
本コラムでは、私たちの連邦多角化経営を構成する7つの経営戦略をご紹介します。
連邦多角化企業になるための11ステップについてもお示ししますので、みなさんもぜひ事業の多角化、連邦経営への取り組みにチャレンジしてください。
目次
- コングロマリットとは?多角化経営との関係を確認
- ヤマチの連邦多角化経営の秘訣とは?7つの経営戦略をご紹介
- 連邦多角化企業になるには?迷わず進める11ステップのロードマップ
- 着実な多角化によって「地元になくてはならない地域コングロマリット」を目指そう
コングロマリットとは?多角化経営との関係を確認
「コングロマリット」は日本語では「企業複合体(複合企業体)」とも呼ばれ、一般的には分野の異なる多彩な業種や事業を展開する企業、あるいは企業グループのことであると説明されます。
大手企業グループならエンタメからインフラまで幅広い事業を手がけ、日本全国、場合によっては海外のニーズにも応える事業展開を行っている企業を指します。
一方で、私たち中小・中堅企業においては、地元における「地域のコングロマリット」をまずは目指していきたいもの。
言い換えれば、ニッチでちょっとユニークな事業を多数展開し、お客様に喜ばれ、地元でキラリと光るような複合企業体を創っていくということです。
私達が経営コンサルティングの講演などで、聴講者のみなさんによくお話しするのが「地方の豪族になりましょう」という言葉です。
もちろん「地元を牛耳る」というような乱暴なニュアンスではないですよ。
かつて「豪族」と呼ばれた人々は、それぞれが拠点とする地域で大きな勢力を持ち、住民の暮らしと地域経済を全面的に支える存在でもありました。
それと同じように、私たちは地元の人々の普段の暮らしに欠かせない、生活に紐づくさまざまなモノやサービスを提供することで地域に貢献し、「その土地で輝く企業になりましょう」ということです。
「コングロマリット」を目指すのですから単一事業にとどまらず、自分たちの得意分野の範囲で周辺事業も含めて、多角的に事業を展開していくのです。
場合によっては地域を面で押さえていく、あるいは一つの事業やサービスの延長線上を押さえていくことができれば、地域貢献度や社会貢献度も高まるでしょう。
例えば、私たちヤマチユナイテッドなら住宅関連事業があり、その周辺事業としてインテリアショップや飲食店を運営しています。
また、異業種にも進出しており、イベント事業、福祉事業も手がけ、最近ではスポーツジムや警備会社、オンデマンド印刷のプリントショップなども立ち上げました。
BtoB、BtoCどちらの事業も存在しているので、対企業ばかりでなく「あの会社もこの店もヤマチが運営しているのか」と一般のお客様に認知していただける機会も増えていると思います。
こうして地域に広く根を張り、社会に貢献していくためのコングロマリット化をどうやって実践的に経営に落とし込むか。
その手法こそ、ヤマチユナイテッドの「連邦多角化経営」だと考えています。
ヤマチの連邦多角化経営の秘訣とは?7つの経営戦略をご紹介
ヤマチユナイテッドが推進している「連邦多角化経営」は、7つの戦略で構成されています。
私たちのような中小・中堅企業がいかに大きく稼ぐか、そしていかに楽しく経営するかというテーマについて、これまでおよそ30年間、研究と実践を繰り返してきました。
その成果をノウハウとして体系化したものが、以下にご紹介する7つの戦略です。
①会社の背骨を太くする「理念経営」
企業として、組織として、目指すところやありたい姿を明文化した理念は、いわば「企業の背骨」。
理念を持って進むべき方向を明示し、社員と共有することは組織運営においても絶対に必要ですし、1本の軸を持つことは「経営の一丁目一番地」です。
まずは、理念を整備することが会社経営の第一歩だと考えています。
②社員が経営に参加する「システム経営」
「システム経営」はトップダウンとボトムアップをミックスした経営手法。
現場の社員にある程度の権限と責任を与え、経営計画、事業計画の立案から進捗管理、成果分配まで任せることが特徴です。
もちろん、そのためには組織体制や制度、仕組みの構築といった環境整備が必要です。
会社の文化や社風にも通じるところがあるので、ヤマチユナイテッドでは「①会社の背骨を太くする『理念経営』」で示した「理念」や「ビジョン」に基づいて、システム経営を推進しています。
③小さな起業をたくさんやる「事業多角化戦略」
企業の成長と発展のため、既存事業に業績を上乗せする手段の一つとして事業多角化を図ります。
「小さな起業」としたのは、小さく生んで大きく育てるという意味です。
事業をたくさんやると同時に、以下のメリットがあります。
-
異なる事業部同士が協働することによってシナジーが生まれ、より大きな利益を得る
-
新規事業の幅が広がって多角化が加速する
また、事業の柱を複数持つことによって、今後の環境変化に対するリスクヘッジにもつながります。
こちらのコラムもあわせてご覧ください。
シナジー効果を生み出す多角化企業の成長戦略!効果的なグループ連携会議の設計と運営方法
新規事業ができるまでをフェーズごとに解説!ヤマチユナイテッドの成長の旅路
④たくさんの事業をまとめる「連邦経営」
事業が多角化していくと、縦割り組織になりやすいというデメリットもありますが、それを防ぐのが「連邦経営」です。
縦だけでなく、横や斜めの連携が取りやすい仕組みを整え、グループとして一体感のある組織運営を行なっています。
縦横斜めの連携につきましては、こちらのコラムで詳しく説明しています。
縦横斜めの連携がシナジーを生む!オンライン朝会がグループ経営の連携を強化
⑤人材採用が第一優先「採用戦略」
多角化を進めるためには、各事業を担う人材の育成が欠かせません。
ヤマチユナイテッドでは会社の将来を見据え、そこから逆算した採用計画を立て、有望な人材を戦略的に獲得することを非常に重要視しています。
採用につきましては、「採用計画・育成計画の立て方とは?経営計画と紐づけるポイントも確認」「新卒採用の時期やスケジュールを確認!準備や内定のコツや心構えも」で詳しくご紹介しています。
⑥たのもしい若手幹部があふれる「育成戦略」
ヤマチユナイテッドでは、新入社員全員を幹部候補と捉えています。
入社1年目から幹部教育を実施することにより、将来の事業責任者として十分な力を備えた若手社員が次々と育っています。
⑦楽しくすると儲かる「社風戦略」
会社の業績を上げるためには、良い社風を作ることも大事です。
和気あいあいとした職場環境を作ることはもちろんですが、それだけでなく「仕事そのものが楽しい」「結果を出すまでのプロセスも楽しい」というように、経営の本質的な楽しさを追求する社風づくりに努めています。
社風は勝手に形成されるものではなく、経営者と幹部陣が作り上げているものですから、こうした環境を意識的に戦略的にコントロールするのです。
良い社風を作るメリットについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムで解説しています。
良い社風とは?メリットや作り方を解説!「社風経営」で多角化経営の加速化を
これら7つの戦略で構成される「連邦多角化経営」。
私たちヤマチユナイテッドは、この経営手法を駆使しながら、札幌および北海道のコングロマリットを目指しています。
みなさんも自社を大きくし、かつ儲かり、かつ楽しい経営を目指すのであれば、「連邦多角化経営」を導入することをおすすめします。
次の項目では、連邦多角化経営を導入するためには何から始めて、どのように進めれば良いかを段階的にご紹介します。
連邦多角化企業になるには?迷わず進める11ステップのロードマップ
みなさんの会社を連邦多角化企業とするにはどのように進めれば良いか、具体策を11のステップとして段階的にご紹介します。
数年かけて取り組むイメージで、焦らず着実に進めていけば、連邦多角化企業への道が拓けます。
ステップ1:ビジョンを考える
ビジョンは、企業として目指す方向性や将来的にありたい姿を示すもの。
「どのような方法で、どのような道をたどって、どのような事業に取り組むか」を改めて整理してください。
粗々でも良いので、これを社員にビジョンを明示することから始めましょう。
企業におけるビジョンの考え方と重要性については、こちらのコラムをご確認ください。
ビジョンとは?会社も社員も前向きになれるビジョンの作成方法と事例を紹介
ステップ2:既存事業を安定させる
新規事業に着手する前に、まずは既存事業を強化する必要があります。
これによって得られる利益が新規事業の原資となります。
もし「既存事業が伸び悩んでいる」、または「下降気味」という状況であれば、既存事業の立て直しからスタートすべきでしょう。
自分たちで現状を打破できない場合は、コンサルタントなどといった外部の知見を借りてでも、既存事業で利益を出さなければなりません。
ステップ3:組織を整備する
自社で取り組んでいる事業を推進・発展させるためには、必要な機能や役割を組織に落とし込みます。
この段階では、いわゆる組織デザイン、組織図をきちんと描くことが大切。
例えば、営業部門、経理部門、生産部門など、会社にとって必要な組織構成を整備しましょう。
このときポイントとなるのは、社長が各部門の責任者を兼任しないこと。
中小・中堅企業では社長が責任者になってしまうことがよくありますが、社長以外の社員から各部門の責任者を選出することを考えてください。
ステップ4:管理会計と経営数字を公開する
ここでいう「管理会計」は、部門別利益管理、もっと言えば事業別の営業利益管理を行います。
事業単位で営業利益まで正確に把握できるように、会計の体制を整えましょう。
また、チームや個人単位においては、少なくとも粗利益管理がわかるようにします。
そして、これらの経営数字の情報を全社員に公開します。
前項の「7つの経営戦略」でもご紹介しましたが「システム経営」においては、経営計画、事業計画の立案から進捗管理、成果分配まで、幹部主導のもと現場の社員が自分たちで行います。
数字の情報がなければこうした取り組みは実現できません。
そのため、ステップ4は「システム経営の導入」と言い換えても良いでしょう。
ステップ5:部下を事業責任者に任命する
「ステップ3:組織を整備する」でも触れたように、社長が事業責任者を兼任していてはいけません。
社員を事業責任者に任命する前提として、「経営幹部となりうる人材」を社長の責任において育成することが求められます。
幹部候補に経営を学ばせる際に身につけさせたいのが、以下の5つの責任です。
- ①経営者と同じ目線で会社経営を考え、メンバーへ伝えるためのビジョン浸透責任
- ②損益を理解し、業績を達成させる営業利益責任
- ③次世代の事業責任者を輩出するための部下育成責任
- ④事業の進捗やさまざまな問題を社内で共有するための報告責任
- ⑤仕事を作り、事業を育て、業務の改善や効率化を図る業務開発・改革責任
このような役割を担える人材を育て、事業責任者、経営幹部に任命していくのがこの段階。
人材育成にもしっかり目を向けましょうということです。
ステップ6:新規事業を企画し多角化を開始する
このあたりでようやく環境が整い、新規事業を企画して多角化を開始します。
新規事業が百発百中で成功することはありません。
失敗はつきものですが、その失敗を糧にして、成功率を高めていくことが大事です。
最初は既存事業に近い分野からスタートし、徐々に事業を広げていくと上手くいく確率も高いはず。
新規事業へのアプローチには、以下の4つのパターンがあります。
- ①社長主導型:社長が発想し、社長が先頭に立って事業を立ち上げる
- ②命令型:社長が発想し、社長命令で社員が事業を立ち上げる
- ③協力型:社長が発想し、幹部と相談しながら事業を立ち上げる
- ④幹部主導型:幹部が発想し、社長に相談しながら事業を立ち上げる
これまでトップダウンでやってきた会社なら、社長としては①の「社長主導型」が最も取り組みやすいと感じるかもしれません。
しかし、この方法では社長のパワーと時間を相当取られて、消耗してしまいます。
連邦多角化経営においては④の「幹部主導型」が理想形ですが、いきなりそこから始めるのは難しいでしょう。
そのため、①→②→③→④と順番に進めていくと良いと思います。
段階が上がるごとに事業開発のレベルが上がり、それに伴って成功確率や社内の納得度も向上します。
事業運営を通じて、幹部のレベルも上がり、社員の経営参加度も上がる。
また、事業規模や進出できる分野の幅も広がります。
こちらのコラムでは、ヤマチユナイテッドの成長の経緯をフェーズごとにお話ししています。あわせてご確認ください。
新規事業ができるまでをフェーズごとに解説!ヤマチユナイテッドの成長の旅路
ステップ7:ビジョン体系の整備
「ステップ1」では企業として目指す方向性や将来的にありたい姿を考える段階だったため、ビジョンが粗くても問題ありませんでした。
しかし、多角化が進み、事業数や社員数が増えてくると、グループ全体を包括するようなビジョン体系を改めて整備する必要があります。
これと同時に、各事業ごとのビジョンも、グループ全体のビジョンに紐づく形で作成、あるいは再設定するようにしましょう。
単に多角化を進めるのではなく、連邦化を実現していくためには、組織の規模や事業展開の成長に合わせて、都度ビジョンを見直していくことも重要なのです。
ステップ8:人材の採用・育成、ブランディング
人材の採用・育成
連邦多角化経営において、人材育成は非常に重要です。
特に新卒採用に取り組むとなると、中途採用に比べて相当な準備が必要です。
就業規則を整理、研修制度、教育制度、面談などのフォロー制度の構築はもちろんのこと、新卒採用に関するノウハウ構築や人員配置についても事前に考えておかないとなりません。
また、職場環境については、ハード面だけでなく、意識改革を含めたソフト面にも目を向けましょう。
グループ代表の山地 章夫は、社内へ向けて以下のメッセージを発信しています。
「人材育成は会社の将来を考えた上で大変重要な業務であり、だからこそ新卒の社員をゼロから育てることを面倒と思わず、全社員が協力して取り組むのだ」
この考えのもと、現場の社員も新人研修に快く協力してくれます。
ブランディング
ブランディングにおいては、「ビジョンに紐付いているか」という根幹の部分から、「ネーミングやロゴがアイキャッチとして機能しているか」といった細部に至るまで、しっかりとチェックをしましょう。
ブランディングにこだわってしっかり整えていくと、自社の魅力を伝えるツールの一つとして機能しますから、採用にも非常に良い効果があります。
こちらのコラムもあわせてご確認ください。
ステップ9:本部機能を作る
組織の規模が大きくなってきたら本部機能を作り、事業のさらなる発展と推進を目指し、事業開発のバックアップなどを円滑に進めましょう。
間接部門や支援部門を集約・統合し、業務の効率化を図るのもおすすめ。
例えば、秘書を配置した社長室なども、その一例です。
さらに、各事業部、各法人にそれぞれ存在している間接部門、支援部門を集約・統合して、「マーケ室(マーケティング室)」「管理本部」といった部署を設置すると、より効率的な運営が可能になります。
加えて、本部にガバナンス機能を持たせることで、グループとして一体感のある経営や、安心感のある経営を実現できます。
ステップ10:連邦経営を開始する
社内コミュニケーションの仕組み、会議の仕組みを整えましょう。
シナジーの創出に取り組みながら、グループ全体の最適化を追求していきます。
ヤマチユナイテッドでは経営層、幹部クラスの横連携を会議やプロジェクトでつないでいます。
また、社内SNSを活用し、階層の違う他部署の社員とも「斜め」のコミュニケーションが容易に取れるようにしています。
ステップ11:ホールディング会社体制にする
資本と経営の分離を図り、次なる事業承継に備えます。
企業が永続発展するために、今のうちに組織固めをしておきましょう。
以上の「連邦多角化企業になるための11ステップのロードマップ」に沿って、組織づくりを進めてみませんか?
「これから多角化を進めたい」と考えているみなさんの会社も、連邦多角化企業として一歩目を踏み出しましょう。
着実な多角化によって「地元になくてはならない地域コングロマリット」を目指そう
「コングロマリット」は「企業複合体(複合企業体)」と訳されます。
近年のビジネスシーンでは、地元の人々の生活に紐づく、さまざまな事業によって地域一円に大きく貢献する「地域コングロマリット」という言葉が注目されています。
この考えを具体的に経営に落とし込む手法として私たちが提案したいのが、複数の事業を連携させてシナジーを生み出し、「地方の豪族」になる事を目指す「連邦多角化経営」。
単一事業から始めるにはある程度の時間はかかりますが、今回のコラムでご紹介した「連邦多角化企業になるための11ステップのロードマップ」を一つひとつ着実に踏んでいくことによって、みなさんの会社もきっと連邦多角化企業へと成長を遂げられると信じています。
地域に貢献するということは、そこに暮らすお客様に喜ばれるということ。
そうした会社で働く社員は誇らしい気持ちになるはずですし、それがモチベーションとなって楽しく働くことができるので、結果として業績も上がるという好循環が生まれます。
私たちが主催する「連邦・多角化経営実践塾」では、11のステップをより詳細に解説し、多角化の実践のみならず、みなさんが抱える経営課題を解決するためのお手伝いをしています。
もし興味を持たれたなら、これまで受講してくださった企業様のインタビュー「塾卒業生の声」などもホームページで公開していますので、ぜひご覧ください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。