社員が経営参画できる「システム経営」とは? 《連邦・多角化経営概論》第2回

多角化・新規事業,組織・給与制度

山地 章夫
山地 章夫

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私がトップダウンの経営を見直したのは40歳のときでした。

すべての事業を一人で管理する経営に限界を感じ、行き詰まっていたのです。

ある日、たまたま参加したセミナーで聞いた「トップダウンとボトムアップのミックス型の経営」に興味を持ち、私なりに試行錯誤しながら編み出したのが「システム経営」です。

幹部を中心とした社員たちにどんどん権限を委譲し、社員が自主的に経営に参画できるようにした仕組みなので、社長が長期不在でも経営がスムーズにまわります。

今回は「連邦・多角化経営」を成功に導く3要素のひとつ、経営参画の仕組みである「システム経営」についてご紹介しましょう。

経営参画の基本や導入効果についてお伝えします。

「システム経営」の中身となる3本柱と「システム経営」を成功させるポイントについても解説していきます。

目次

  1. 経営参画とは?社員が経営参画する必要性や効果
  2. 経営参画の取り組み事例「システム経営」とは?
  3. 社員全員が経営参画できる「システム経営」を成功させるポイント
  4. 社員全員が経営参画できる「システム経営」で人材と企業の成長を

1.経営参画とは?社員が経営参画する必要性や効果

経営参画とは、社員が実行段階からではなく計画段階から経営に関わることです。

社長だけが経営に携わるトップダウン型の企業によくある課題が、社長は一人で膨大なタスクに追われて疲れ果て、社員は指示をこなすだけで成長しないということでしょう。

ヤマチユナイテッドでは、社員が経営に参加し全員で良い会社をつくる仕組み(経営参画)として「システム経営」を行っており、仕組みを整えることで、このような悪循環を断ち切ることができると考えています。

システム経営が浸透すると、これまで会社に「○○してほしい」と要求ばかりしていた社員たちが変わり始めます。

「どうしたら改善できるか」「どうしたら目標を達成できるか」を自分の頭で考えて、実行していくようになるのです。

「やらされ感」がなくなり、仕事にやりがいと楽しさを感じる社員も増えるでしょう。

もちろん、一朝一夕で社員の意識が変わるわけではなく、時間はかかります。

それでも改善を繰り返し継続することで、社長のトップダウンに頼らない経営が可能になっていき、いつしか幹部主体で会社をまわすことができるようになっていくのです。

そうなれば、あとはこっちのもの。

社長は本来の仕事である「多角化」に専念できます。

気持ちと時間に余裕のある社長でなければ、新しくて面白いビジネスのネタを見つけることはできないでしょう。

中小企業の経営戦略・多角化については事例とともに「中小企業の活路は多角化戦略にあり 《連邦・多角化経営概論》第1回」でもご紹介しています。

ぜひあわせてご覧ください。

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2.経営参画の取り組み事例「システム経営」とは?

ヤマチユナイテッドで取り組んでいる、経営参画の仕組み「システム経営」をご紹介します。

「システム経営」誕生のきっかけ

システム経営を一言でいうと「全員参加経営」です。

幹部や社員たちが自ら経営計画を作成し、業務管理を自分たちでまわし、評価や成果分配も自分たちでルールを決めて実施する。

要するに「自分たちのことは自分たちで決める」仕組みです。

かつては、私もよくあるトップダウン型の経営スタイルでした。

目標通りの数字を出せない部下を「なんでできないの?」と、問い詰めることもありました。

当時は建材卸、貿易、住宅メーカーの経営をすべて一人で管理していたので、次々と出てくる経営課題をやっつけるだけで精一杯のモグラ叩き状態。

まるで心の余裕がなく、誰にも弱音もはけずに、一人孤独でした。

このままでは身が持たないし、会社も良くならない。

そう分かっていても、どうにもできずにいたときです。

たまたま参加したセミナーで、こんな話を聞きました。

「社長業を楽しむには、ボトムアップとトップダウンのミックス型の経営に変えましょう。

社員が経営に参加し、決定にも参加する。

これが新しい経営スタイルです。

そして社長に集中している権限と責任を、思い切って社員に分担させましょう。

経営計画もチームメンバーにつくらせて、自分で管理させましょう」

私は心底驚きました。

本当にこんな経営ができたら良いだろうなあ、と本気で思いました。

このとき私は40歳。

それから長いこと試行錯誤しながら、幹部や社員と話しあってつくりあげてきたのが、ヤマチユナイテッドでも取り組んでいる「システム経営」です。

システム経営の3本柱

システム経営は経営計画システム、業績管理システム、成果分配システムの3つを大きな柱としています。

3本柱のそれぞれに具体的な手法がありますが、ここでは簡単に説明しましょう。

①経営計画システム

目標数値をはじめとする経営計画を現場のチーム主導でつくり、自ら実践してもらう仕組みです。

経営陣がつくって強制されるトップダウンの計画とは違い、自分たちでつくりあげた計画だからこそ、当事者意識を持って実行できるはずです。

②業績管理システム

自分たちでつくった経営計画を達成できるよう、自分たちで業績を管理していく仕組みです。

定期的な業績検討会で数字をチェックし、計画目標に達していないようであれば対策を検討し、軌道修正を図ります。

これを繰り返し、1年をかけて目標を達成していきます。

③成果分配システム

自分たちでつくった経営計画を基に、自分たちで業績を管理したのち、最終的に自分たちで業績評価、人事評価をして、業績に応じた利益を受け取る仕組みです。

公平感と透明性が求められるでしょう。



そしてこの3本柱を、ワンセットで同時に実施することがとても重要です。

3本の柱はすべて連動しているので、ひとつでも抜け落ちると、仕組みが骨抜きになってしまいます。

これらの3本柱について、詳しい手法などは別シリーズでひとつずつ解説しています。

シリーズ《システム経営の3本柱》の第1回の「社員の自主性を育てるためには計画づくりに参加させよう!《システム経営の3本柱》 第1回:自主計画」では、社員の自主性を育てる「自主計画」の導入方法をご紹介しています。

ぜひあわせてご覧ください。

3.社員全員が経営参画できる「システム経営」を成功させるポイント

「システム経営」を成功させるには、2つの前提条件があります。

これらのポイントを外すと、せっかくの経営参画の仕組みがうまく機能しなくなる可能性もあるので、しっかり実行していくことが大切です。

①経営数字をオープンにする

前提条件のひとつは「経営数字をオープンにする」こと。

経営人材を育てたいなら、会社の損益構造や目標利益、PLやBSはオープンにしなければなりません。

目標を達成するために、どれぐらいの売上と営業利益が必要か、原価や経費はどれくらいか、失敗した場合はどれくらいの営業利益の損失になるのか、すべて社員に公開しましょう。

自分の仕事が経営に対して、どのくらいのインパクトになるかを自分で計算できなければ、経営人材は育ちません。

②管理会計を行う

「管理会計」を行うことも重要なポイントです。

中小企業の会計には「税務会計」と「管理会計」があります。

税務会計は納税のための会計なのに対し、管理会計は経営に必要な情報(業績や生産性)を把握するのが目的です。

社員の中には、間接費や設備費については考えず、売上=利益だと思っている人もいるでしょう。

その状態では、自分で目標を立て、自分で管理し、自分で評価して、自分で成果を分配するのは無理な話です。

経理業務が煩雑になるという理由で、管理会計の導入をためらう方も多いようですが「システム経営」の導入には欠かすことができない要件だとご理解ください。

「システム経営」を行う際には、いかに「幹部や社員を巻き込めるか」がポイントになります。

そのためには、経営者と同じ土俵で話ができるように必要な情報を開示していく必要があるのです。

プロセスが妥当であれば、幹部や社員が当事者意識をもって経営に関わるようになるはずです。

主体的に経営に参画するようになれば、多角化経営を担う人材はどんどん育つでしょう。

企業の継続発展にもつながります。

下記コラムもあわせてご覧ください。

「管理会計」を導入するメリット 〜全員参加型経営の基礎:前編〜

オープン経営のメリットと導入のコツ 〜全員参加型経営の基礎:後編〜

4.社員全員が経営参画できる「システム経営」で人材と企業の成長を

中小企業の経営戦略の要となる「多角化」、それを支える柱のひとつである経営参画の仕組み「システム経営」をご説明しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

経営参画とは、社員が計画段階から経営に携わることです。

これを継続することで、社長のトップダウンに頼らなくても幹部や社員を中心に会社を回せるようになり、負担が減った社長は「多角化」に集中することができます。

社員は自分の頭で改善策や目標達成までの道のりを考えられるようになり、仕事をやらされている感覚がなくなるだけでなく、やりがいや楽しさも感じられるでしょう。


シリーズ《連邦・多角化経営概論》では、連邦・多角化経営の仕組みを全3回にわたって解説。
ヤマチユナイテッドが実践する100VISION経営、さらに連邦・多角化経営の全容を知りたい方は、まずこちらのシリーズからご覧ください。

第1回:中小企業の活路は多角化戦略にあり
第2回:社員が経営参画できる「システム経営」とは(この記事)
第3回:分社化のメリットを活かしデメリットを補う連邦経営とは?連邦化の方法

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