社員の自主性を育てるためには計画づくりに参加させよう!《システム経営の3本柱》 第1回:自主計画

組織・給与制度

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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手前味噌ではありますが、当社の社員は一人ひとりが主体的に経営を考え、当事者意識を持って業務に当たっています。
与えられた業務をこなす受け身の社員ではなく、自ら考えて動ける社員を育てるにはどうしたらいいのか?

その答えは、社員に計画づくりから関与してもらえばいいのです。

誰かに押しつられた計画や目標を盲目的に遂行するより、自分たちで決めた目標に突き進むほうが力を発揮できる。当たり前のことです。


当社の提唱する<システム経営>では、自主計画・自主管理・自主分配の3大自主システムが社員の自律に機能しています。

そこで、これから3回に分けてこの「システム経営」について詳しくお話していきます。

第1回はまず社員の自主性を育てる「自主計画」の導入法をご紹介しましょう。

目次

  1. そもそも「システム経営」とは?
  2. 社員の自主性が育たないのは「受け身」の意識があるから
  3. 社員の自主性を育てる「自主計画」の導入方法
    1・トップから社員へ、まずは明確な経営ビジョンの提示から
    2・社員みんなで話し合いながら、ボトムアップで計画づくり
    3・社員全員が納得できる目標利益の代表的な設定法
  4. 社員の自主性を育てる「自主計画」を成功させるポイント
    1・全社員に経営計画を浸透させるため、半年前から計画づくりに着手
    2・社長の我慢が社員の自主性を育てる
  5. 社員の自主性を育てて業績アップ!

1.そもそも「システム経営」とは?

シリーズ第1回目なので、まずはシステム経営とはどのようなものか簡単に触れておきましょう。

システム経営とは、いわゆる「全員参加型経営」のことです。

「全員参加型経営」とは、幹部や社員たちが自ら経営計画を作成し、業務管理を自分たちでまわし、評価や成果分配も自分たちでルールを決めて実施する、要するに「自分たちのことは自分たちで決める」仕組みです。

この全員参加型経営をヤマチ流にシステム化したものを「システム経営」と名付けました。

このような社員参加型のシステム経営が実現すれば、会社は劇的に変わります。

社員の意識も変わり、業績も驚くほど上がる。あなたの会社でも、ぜひ取り入れていただきたいお勧めの仕組みです。

詳しくは「社員が経営参画できる「システム経営」とは? 《連邦・多角化経営概論》第2回」でお話していますので、こちらも併せてご覧ください。

2. 社員の自主性が育たないのは「受け身」の意識があるから

お話を今回のテーマ、社員の自主性を育てる「自主計画」の導入に戻しますね。

皆さんも感じたことがあるかとは思いますが、幹部を含めたいていの社員はそもそも経営や業務に対して受け身です。

与えられた計画や数字を達成するため、盲目的に業務をこなしている人も少なくありません。

ですが、当社は違います。

一人ひとりの社員が主体的に経営を考え、当事者意識を持って業務に当たっています。

これは、社員が全員参加で経営計画をつくり、進捗を自分たちで管理し、最終的な利益の分配まで関与できているからなのです。

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3. 社員の自主性を育てる「自主計画」の導入方法

さて、もともと受け身の社員の意識をどのようにして変えてゆくのか?

社員の自主性を育てる自主計画の導入方法について、順番にご説明しましょう。

1・トップから社員へ、まずは明確な経営ビジョンの提示から

いきなり「来期の計画を立てろ」と幹部や社員に指示しても、どこに向かって何を考えたらいいのか分かりません。

今まで社長が一人で経営計画を立て、営業に数字を割り振っていた会社なら、なおさら戸惑うことでしょう。

そこでまずはトップがビッグビジョンを提示することからスタートします。
経営幹部たちと一緒に考えるとなお良いでしょう。

「○○で日本一の会社になる」
「業界シェアナンバーワンになる」

ビジョンはなんでも構いません。「地域で一番を目指す」でも良いです。

いずれにせよ社員が夢を持てるビジョンを示すことが必要です。


ちなみに当社では「THE 100 VISION」を掲げています。

100の事業を立ち上げ、100人の事業責任者を創出する、利益100億を出す、100年企業になるという目標です。

ビジョンが定まったら、次にそのビジョンに即した中期計画を経営幹部主導でつくります。
3年くらいのスパンならリアルに考えやすいでしょう。

そして、事業責任者にその中期計画から落とし込んだ単年度の計画を立ててもらうようにすれば考えやすいはずです。

2・社員みんなで話し合いながら、ボトムアップで計画づくり

各事業の責任者は部下と話し合いながら計画をつくり、経営陣が顔を揃える幹部会議に持ち寄ります。

最初のうちは手堅く達成できそうな従来通りの計画か、あるいは具体的な実行計画のない無謀な計画や達成根拠の薄い計画が多く出てくるかもしれません。

しかしそこであきらめず、会議で数字の根拠を尋ねたり、実効性に対する疑問を指摘したり、プラスアルファのアイデアを出し合ったりしながら、再考を促します。


大切なのはその場で決めてしまわないこと。

事業責任者はいったん自分のチームに持ち帰り「みんなどう思う?」と意見を聞いたうえで計画案をまた持ち寄ります。

このキャッチボールを何度か繰り返すプロセスを踏むことが大切なポイントです。

トップが一方的に決めた計画で「お前は今年いくら目標ね」と数字が割り振られ、意見を言う場すらない会社と、「来年はなんぼできそうだ?」「これくらい売れると思います」「よし、それでまとめて上にあげるわ」など上司と話し合いができる会社なら、やる気が全く変わってくると思いませんか。

手間暇を掛ける、時間とパワーは必要になりますがこのキャッチボールこそが、幹部、社員の主体性をあげる一番のポイントになります。

そうして各事業部の計画を積み上げ、中期計画に沿っているかを確認して、最終的に幹部会議で承認します。

3・社員全員が納得できる目標利益の代表的な設定法

事業責任者が立てる計画には、目標利益、組織体制、商品・サービスラインナップ、実行計画、予算などが盛り込まれます。

なかでもキモとなるのが目標利益です。

どのくらいを目指すべきなのか、基準となる数値をあらかじめ提示しておくと考えやすいでしょう。


目標利益設定の、代表的な手法は次の4パターンです。

(1)必要キャッシュフロー基準
(2)売上高経常利益基準
(3)一人当たり生産性基準
(4)投資基準

それぞれの手法についてみていきましょう。

(1)必要キャッシュフロー基準

借入金の返済や投資案件が決まっていたり、設備の更新にお金がかかったり、前年にはなかったキャッシュ投資が見込まれる場合、それを捻出するために必要な利益額を導き出す考え方です。

税金分も含めて必要金額の倍の利益が必要と考えて、数字をはじき出すといいでしょう。

スタートしたばかりの事業など、あまりお金のない事業はこの基準を当てはめます。

(2)売上高経常利益基準

売り上げに対する経常利益率を目安にする考え方です。

現状は2%なので来年は2.5%もしくは3%にしようなど、収益性の面から考えていきます。事業が始まって何年かしてお金がたまって、(1)の方法では目標が低いと感じてきたら、この基準で考えてみるといい按配の数字を出すことができます。

一般的な数値では5%以上、例えば住宅メーカーなら10%はほしいところです。

一般公開されているデータから同じ業界の優良企業の基準を調べ、それを目指すのもいいでしょう。

(3)一人当たり生産性基準

収益性ではなく生産性を基準にする考え方です。

たとえ売り上げが増えても、それ以上にコストが増えているのなら、コストを抑えて小さい売り上げでいたほうが、生産性は高くなります。

一般的な優良企業では一人当たり経常利益は70〜80万円が平均なので、たとえば目標を一人当たり100万円に設定。×従業員数で計算します。

事業間の比較にも使いやすいので、事業別に算出して、特別に生産性の悪い事業があるのなら、経営課題として捉え改善策を考えることも必要でしょう。

(4)投資基準

バランスシートには、総資産額に対する経常利益率の割合を示す「総資本経常利益率」という指標があります。

「どれだけの資産・財産を使って、どれだけの利益を出したか」という数値で、要するに「投資効率がいいかどうか」を判断します。

株投資をする際に参考にされる指標ですが、このパーセンテージを上げていくという考え方もあります。


当社も最初は借入金が大きかったので「何年で返すにはこれだけの利益が必要だね」と、(1)必要キャッシュフロー基準を中心にした財務からのアプローチをしていました。

「自己資本比率を何年で10%上げよう」と議論していた時期もあります。

そうした計画を一つひとつクリアして、今は(2)売上高経常利益基準と(3)一人当たり生産性基準をミックスして目標を設定するようにしています。


4つの手法についてお話しましたが、いずれにせよ、誰もが納得のいく、根拠のある数字でなければなりません。

管理会計とオープン経営についてはそれぞれ「「管理会計」を導入するメリット 〜全員参加型経営の基礎:前編〜」と「オープン経営のメリットと導入のコツ 〜全員参加型経営の基礎:後編〜」で解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

4. 社員の自主性を育てる「自主計画」を成功させるポイント

自主計画の導入方法についてお話してきましたが、計画を立てる中で社員の自主性を育てるためにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか?

自主計画の2つのポイントについて説明しましょう。

1・全社員に経営計画を浸透させるため、半年前から計画づくりに着手

計画策定のスケジュールですが、当社では2月の年度末から逆算して半年前から経営計画の策定に取りかかります。

初めて取り組む担当者もいたりするので、策定自体に想像以上に時間がかかるからです。

事業責任者は9月の段階で期末の決算予測をし、同時に翌年の見通しを部下と話し合います。

目標数字だけではなく組織体制、人事異動なども検討します。

11月には一度グループ経営会議で議論して、再び各事業部へ差し戻し、最終的に1月末にとりまとめます。

経営計画は冊子にまとめて社員全員に配布。3月の期首のキックオフで計画の発表を兼ねた勉強会を行います。

時間はかかりますが、経営計画を全社員に浸透させるは、こうした一連のプロセスを省くことはできません。

2・社長の我慢が社員の自主性を育てる

これまで一人で短期間に計画をつくってきた社長なら、まどろっこしく感じるかもしれません。

途中で口を出し、パパッと簡単に決めてしまいたくなるはずです。

でも、それでは結局あてがいぶちの計画になってしまい、社員の自主性は育ちません。

うまく社員をリードしつつ、社員が自分で考えて計画をつくれるように持っていくのです。

時間とパワーと忍耐が必要ですが、こうしたコミュニケーションが、社員の意識を少しずつ変えていくのです。

これまでは不満や要求ばかりだった社員が、経営者と同じ視線で、会社と事業の成長を考えられるようになったらしめたもの。

時間や手間はかかりますが、きっと想像以上のリターンが望めるでしょう。

5. 社員の自主性を育てて業績アップ!

今回のコラムでは、システム経営の3本柱の1つ「自主計画」のお話をしました。

自主計画によって社員の自主性が高まると、社員の成長だけではなく会社自体の成長にもつながり、結果として業績アップに期待ができます。

しかし、計画づくりだけでは「システム経営」としては、まだ十分に機能しているとは言えません。

システム経営の3本柱は「自主計画」「自主管理」「自主分配」。これらはセットで同時に実行する必要があります。

次回は「自主管理」について、くわしくご説明したいと思います。


シリーズ《システム経営の3本柱》では、ヤマチ流「システム経営」の仕組みを全3回にわたって解説。

ヤマチユナイテッドが実践する全員参加型経営「システム経営」について知りたい方は、ぜひこちらを合わせてご覧ください。

第1回:社員の自主性を育てるためには計画づくりに参加させよう!(この記事)
第2回:業績管理の方法とポイント。社員自らが管理を行う自主管理とは?
第3回:インセンティブで、社員の底力を引き出す!

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