社員の自主性を育てるには?システム経営・自主計画の導入方法とポイント
組織・給与制度

こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
手前味噌ではありますが、ヤマチユナイテッドの社員は一人ひとりが主体的に経営を考え、当事者意識を持って業務に取り組んでいます。
与えられた業務をこなすだけの受け身の社員にならず、自ら考えて動ける社員を育てるにはどうしたら良いのでしょうか?
その答えは、社員に計画づくりから関与してもらえば良いのです。
誰かに押しつけられた計画や目標を盲目的に遂行するよりも、自分たちで決めた目標に突き進むほうが、より力を発揮できる。
これは当たり前のことです。
今回は、自主性のある社員の特徴や、社員の自主性を育てるメリットをご紹介。
社員の自主性を育てるための「システム経営」「自主計画」の導入方法や、成功させるポイントについても解説します。
目次
- 自主性のある社員の特徴は?社員の自主性を育てるメリットも確認
- 社員の自主性を育てるために知っておきたい「システム経営」とは?
- 社員の自主性を育てる「自主計画」の導入方法を解説
- 社員の自主性を育てる「自主計画」を成功させるポイント
- 社員の自主性を育てるためには「システム経営」「自主計画」の導入がおすすめ!
自主性のある社員の特徴は?社員の自主性を育てるメリットも確認
一般的に「自主性のある社員」とは、次のような特徴を持つと考えられています。
- 自ら考えて行動する
- 成長するために努力・挑戦を続ける
- ポジティブに捉え、自信を持って行動する
- 責任感がある
- 周囲を巻き込む力がある
自主性が高い社員は、与えられた仕事に対して積極的に考えて行動します。
指示を待つことなく、自分で解決策を模索し、行動に移すことができるのです。
また、自分の成長を大切にし、困難に直面しても前向きに取り組む姿勢を持っています。
効率的な方法を自ら見つけて仕事をより良くしようとするとともに、高い目標を設定し、失敗を恐れずに挑戦し続けるのも特徴です。
さらに、失敗を恐れず、ポジティブに捉えて学びに変えることができ、失敗を次に生かすチャンスとして捉えることができます。
これは、自分の能力を信じ、行動に自信を持っているからと考えられます。
自主性が高い社員は、組織全体を意識し、周囲と協力して目標を達成しようとするため、自分だけでなく、チーム全体を巻き込んで動くことができるのです。
社員の自主性を育てることの企業へのメリット
社員の自主性を育てることは、企業にとって様々なメリットがあります。
組織全体の成長を加速する
自主的に行動する社員が増えると、社員は自ら考え、行動する力を身につけます。
社員のスキルや経験が早く身につくことにより、人材育成のスピードも向上することから、組織全体の活力が高まり、成長が加速します。
社員が自主的に業績アップを目指すようになるための方法については、下記コラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
新しいアイデアが生まれやすくなり、イノベーションを促進する
社員の自主性を育てると、自ら課題の解決策を考え、積極的に意見を出すようになります。
これにより、柔軟な発想が生まれ、企業はイノベーションをより円滑に進めやすくなります。
従業員エンゲージメントの向上が離職率の低下につながる
従業員が自ら判断し自律的に行動することで、仕事への主体性が高まるでしょう。
達成感ややりがいが生まれ、従業員エンゲージメントが向上します。
社員が意欲的に業務に取り組むことで、会社への愛着や満足度も向上し、離職率の低下・定着率の向上につながることが期待できます。
社員の自主性が育たないのは「受け身」の意識があるから
皆さんも感じたことがあるかとは思いますが、幹部を含めた多くの社員はそもそも経営や業務に対して受け身になりがちです。
与えられた計画や数字を達成するため、盲目的に指示された業務をこなしている人も少なくありません。
ですが、ヤマチユナイテッドは違います。
一人ひとりの社員が主体的に経営を考え、当事者意識を持って業務に取り組んでいます。
これは、社員が全員参加で経営計画をつくり、進捗を自分たちで管理し、最終的な利益の分配まで関与できる体制を構築しているからなのです。
社員の自主性を育てるために知っておきたい「システム経営」とは?
システム経営とは、いわゆる「全員参加型経営」のことです。
「全員参加型経営」とは、幹部や社員たちが自ら経営計画を作成し、業務管理を自分たちで回し、評価や成果分配も自分たちでルールを決めて実施する、要するに「自分たちのことは自分たちで決める」仕組みです。
この全員参加型経営をヤマチ流にシステム化したものを「システム経営」と名付けました。
このような社員参加型のシステム経営が実現すれば、会社は劇的に変わります。
社員の意識も変わり、業績も驚くほど上がる。
あなたの会社でも、ぜひ取り入れていただきたいおすすめの仕組みです。
詳しくは「社員が経営参画できる「システム経営」とは? 《連邦・多角化経営概論》第2回」でお話していますので、こちらもあわせてご覧ください。
社員の自主性を育てる「自主計画」の導入方法を解説
さて、もともと受け身の社員の意識をどのようにして変えていけば良いのでしょうか?
社員の自主性を育てる自主計画の導入方法について、順番にご説明しましょう。
①トップから社員へ、まずは明確な経営ビジョンを提示する
いきなり「来期の計画を立てろ」と幹部や社員に指示しても、どこに向かって何を考えたら良いのか分かりません。
今まで社長が一人で経営計画を立て、営業に数字を割り振っていた会社なら、なおさら戸惑うことでしょう。
そこでまずはトップがビッグビジョンを提示することからスタートします。
経営幹部たちと一緒に考えるとなお良いでしょう。
例えば、このようなビジョンがあるかと思います。
「○○で日本一の会社になる」
「業界シェアナンバーワンになる」
ビジョンはなんでも構いません。
「地域で一番を目指す」でも良いです。
いずれにせよ、社員が夢を持てるビジョンを示すことが必要です。
ビジョンが定まったら、次にそのビジョンに即した中期計画を経営幹部主導でつくります。
3年くらいのスパンならリアルに考えやすいでしょう。
そして、事業責任者にその中期計画から落とし込んだ単年度の計画を立ててもらうようにすれば考えやすいはずです。
ちなみにヤマチユナイテッドでは、2006年から「THE 100 VISION」というビジョンを掲げていました。
100の事業を立ち上げ、100人の事業責任者を創出し、100年企業になるという目標です。
その後、2022年に創業65周年を迎えた際にビジョンなどを見直し、2023年秋に達成期限を設けていなかった「THE 100VISION」の「2030年達成」を宣言。
また、2024年度からは「北海道から色んな世界を変えていく」という新たなパーパスを設定しました。
それを実現するために「THE 100VISION」をグループビジョンからグループミッションに据え直し、14のコアバリューを定めています。
そして、パーパス、ミッション、コアバリューに経営方針、経営計画を加えたものが2025年1月現在のヤマチユナイテッドの「グループビジョン」となっています。
詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご確認ください。
ビジョンとは?会社も社員も前向きになれるビジョンの作成方法と事例を紹介
ヤマチの連邦多角化経営と自主自律型の経営はいつから始まった?
②社員みんなで話し合いながら、ボトムアップで計画する
社員の自主性を高めるには、各事業の責任者は部下と話し合いながら計画をつくり、経営陣が顔を揃える幹部会議に持ち寄ります。
最初のうちは手堅く達成できそうな従来通りの計画か、あるいは具体的な実行計画のない無謀な計画や達成根拠の薄い計画が多く出てくるかもしれません。
しかしそこであきらめず、会議で数字の根拠を尋ねたり、実効性に対する疑問を指摘したり、プラスアルファのアイデアを出し合ったりしながら、再考を促します。
大切なのはその場で決めてしまわないこと。
事業責任者はいったん自分のチームに持ち帰り「みんなどう思う?」と意見を聞いた上で計画案をまた持ち寄ります。
このキャッチボールを何度か繰り返すプロセスを踏むことが大切なポイントです。
トップが一方的に決めた計画で「お前は今年いくら目標ね」と数字が割り振られたとします。
そのとき、意見を言う場すらない会社と、「来年はなんぼできそうだ?」「これくらい売れると思います」「よし、それでまとめて上にあげるわ」など上司と話し合いができる会社なら、やる気が全く変わってくると思いませんか。
手間暇を掛ける、時間とパワーは必要になりますがこのキャッチボールこそが、幹部、社員の主体性をあげる一番のポイントになります。
そうして各事業部の計画を積み上げ、中期計画に沿っているかを確認して、最終的に幹部会議で承認します。
③社員全員が納得できる目標利益を設定する
事業責任者が立てる計画には、目標利益、組織体制、商品・サービスラインナップ、実行計画、予算などが盛り込まれます。
なかでもキモとなるのが目標利益です。
どのくらいを目指すべきなのか、基準となる数値をあらかじめ提示しておくと考えやすいでしょう。
目標利益設定の、代表的な手法は次の4パターンです。
- 必要キャッシュフロー基準
- 売上高経常利益基準
- 一人当たり生産性基準
- 投資基準
それぞれの手法についてみていきましょう。
①必要キャッシュフロー基準
借入金の返済や投資案件が決まっていたり、設備の更新にお金がかかったり、前年にはなかったキャッシュ投資が見込まれる場合、それを捻出するために必要な利益額を導き出す考え方です。
税金分も含めて必要金額の倍の利益が必要と考えて、数字をはじき出すと良いでしょう。
スタートしたばかりの事業など、あまりお金のない事業はこの基準を当てはめます。
②売上高経常利益基準
売り上げに対する経常利益率を目安にする考え方です。
現状は2%なので来年は2.5%もしくは3%にしようなど、収益性の面から考えていきます。
事業が始まって何年かしてお金がたまって、「①必要キャッシュフロー基準」の方法では目標が低いと感じてきたら、この基準で考えてみると良い按配の数字を出すことができます。
一般的な数値では5%以上、例えば住宅メーカーなら10%はほしいところです。
一般公開されているデータから同じ業界の優良企業の基準を調べ、それを目指すのも良いでしょう。
③一人当たり生産性基準
収益性ではなく生産性を基準にする考え方です。
たとえ売り上げが増えても、それ以上にコストが増えているのなら、コストを抑えて小さい売り上げでいたほうが、生産性は高くなります。
従業員一人がどのくらい経常利益を生み出しているかを測る指標として、「従業員一人当たりの経常利益」があります。
一般的な優良企業では、一人当たり経常利益は70〜80万円が平均だといわれています。
※ただし、一人当たりの経常利益は、業種(業界)、会社の規模、地域によっても異なります。
目標設定においてはこの水準を参考に、例えば「一人当たり100万円」といった目標値を設定することが考えられます。
それに従業員数を割って計算しますので、一人当たりの経常利益の計算式は「経常利益(円)÷ 従業員数(人)」となります。
事業間の比較にも使いやすいので、事業別に算出して、特別に生産性の悪い事業があるのなら、経営課題として捉え改善策を考えることも必要でしょう。
一人当たりの生産性を上げる取り組みについて知りたい方は「一人当たりの生産性を上げて利益を向上するには?ポイントやヤマチの事例も」をご確認ください。
④投資基準
バランスシートには、総資産額に対する経常利益率の割合を示す「総資本経常利益率」という指標があります。
総資本経常利益率は、「どれだけの資産・財産を使って、どれだけの利益を出したか」という数値で、要するに「投資効率が良いかどうか」を判断します。
株式投資をする際に参考にされる指標ですが、このパーセンテージを上げていくという考え方もあります。
ヤマチユナイテッドも最初は借入金が大きかったので「何年で返すにはこれだけの利益が必要だね」と、必要キャッシュフロー基準を中心にした財務からのアプローチをしていました。
「自己資本比率を何年で10%上げよう」と議論していた時期もあります。
そうした計画を一つひとつクリアして、今は売上高経常利益基準と一人当たり生産性基準をミックスして目標を設定を行なっています。
今回は4つの手法についてお話しましたが、いずれにせよ、誰もが納得のいく、根拠のある数字でなければなりません。
管理会計とオープン経営についてはそれぞれ「管理会計を導入する目的やメリットは?システム経営の仕組みも確認」と「全員参加型経営に必須の「オープン経営」のメリットと導入のコツ 〜全員参加型経営の基礎:後編〜」で解説していますので、こちらもぜひご覧ください。
社員の自主性を育てる「自主計画」を成功させるポイント
自主計画の導入方法についてお話してきましたが、計画を立てる中で社員の自主性を育てるためにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?
自主計画の2つのポイントについて説明しましょう。
全社員に経営計画を浸透させるため、半年前から計画づくりに着手する
計画策定のスケジュールですが、ヤマチユナイテッドでは2月の年度末から逆算して半年前から経営計画の策定に取りかかります。
初めて取り組む担当者もいるので、策定自体に想像以上に時間がかかるからです。
事業責任者は9月の段階で期末の決算予測をし、同時に翌年の見通しを部下と話し合います。
目標数字だけではなく組織体制、人事異動なども検討します。
11月には一度グループ経営会議で議論して、再び各事業部へ差し戻し、最終的に1月末にとりまとめます。
経営計画は冊子にまとめて社員全員に配布。
3月の期首のキックオフで計画の発表を兼ねた勉強会を行います。
時間はかかりますが、経営計画を全社員に浸透させるには、こうした一連のプロセスを省くことはできません。
社長の我慢が社員の自主性を育てる
これまで一人で短期間に計画を策定してきた社長なら、社員が計画策定に時間をかけることをまどろっこしく感じるかもしれません。
途中で計画に口を出し、パパッと簡単に決めてしまいたくなるはずです。
しかし、それでは結局宛てがい扶持(あてがいぶち)の計画になってしまい自分事として捉えられなくなりますし、社員の自主性は育ちません。
だからといって、放任するというわけではありません。
計画策定を完全に委ねるのではなく、社員をサポートをしていきましょう。
適切な指導やサポートを行いながら、うまく社員をリードしつつ、社員が自分で考えて計画を策定できるように持っていくのです。
社員の自主性を育てるには、時間とパワーと忍耐が必要ですが、こうしたコミュニケーションが、社員の意識を少しずつ変えていくのです。
これまでは不満や要求ばかりだった社員が、経営者と同じ視線で、会社と事業の成長を考えられるようになったらしめたもの。
時間や手間はかかりますが、長期的に見ればきっと想像以上のリターンが望めるでしょう。
社員の自主性を育てるためには「システム経営」「自主計画」の導入がおすすめ!
自主性のある社員は、自ら考え行動し、挑戦を続け、失敗から積極的に学ぶ姿勢を持っています。
また、責任感があり、チームを巻き込んで目標達成を目指します。
社員の自主性を育てるためには、受け身の意識を変える必要があるでしょう。
経営計画に全員が参加する「システム経営」を導入するのが効果的です。
システム経営では、社員自らが主体的に経営計画を作成し、進捗を管理します。
このアプローチにより、社員は自分の役割に対する意識や責任感を高め、ひいては業績向上に貢献することが期待できます。
社員の自主性を育てる具体的な方法として、「自主計画」の導入が挙げられます。
まず、経営トップが明確なビジョンを示し共有した上で、社員同士で計画を話し合い、ボトムアップで進めます。
また、目標設定は社員が納得できる数字に基づいて行い、定期的に議論を重ねることが成功のカギです。
社長は、社員が自主的に計画を策定し、実行できるような環境を整備し、根気強く指導やサポートをすることが求められるでしょう。
時間や手間はかかりますが、長期的に見れば想像以上のリターンが望めるはずです。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。