一人当たりの生産性を上げて利益を向上するには?ポイントやヤマチの事例も
組織・給与制度

こんにちは、ヤマチユナイテッド代表の山地です。
今さら言うまでもありませんが、どの会社にとっても「生産性」は経営の重要課題のひとつ。
それは、多角化経営についても同じです。
しかし、多角化を進めていくと、それぞれの事業間で重複する仕事が発生してしまい、経営効率が下がり、生産性が落ちていくという事態になりがちです。
例えば、それぞれの事業部門に経理や人事などといった管理部門を設ければ、その分人件費が高くつきます。
これをどう解決すれば良いのでしょう?
ポイントは、たったひとつ。
社長が口出しをぐっと我慢し(これが実はけっこう難しい)、現場の社員にトコトン考えさせること。
これだけです。
「ほんと?」とお考えのあなた。
「一人当たりの生産性」を高める工夫について一緒に考えていきましょう。
目次
- 一人当たりの生産性とは
- 一人当たりの生産性を上げ、利益を向上するには?ヤマチの事例をご紹介
- 一人当たりの生産性を上げることは現場の改善にもつながる!ヤマチの住宅建築事業の事例も確認
- 一人当たりの生産性を上げるために大切なポイント
- 一人当たりの生産性を上げ、利益を向上させることは経営の重要課題
一人当たりの生産性とは
一人当たりの生産性とは、社員一人または総労働時間に対する成果の量、つまり産出量を示します。
生産性は、投入された労働力や資源に対して、どれだけ効率的に成果を上げたかを測る指標です。
特に労働力不足や資源の制約がある現代においては、生産性向上が重要な課題となります。
なお、2023年の日本の一人当たりの生産性は、92,663ドル(877万円/購買力平価(PPP)換算)。
OECD加盟38カ国中32位、主要先進7カ国の中では最下位となっています。
※参考:公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター「労働生産性の国際比較2024 概要」
生産性の種類
生産性には「物的生産性」と「付加価値生産性」があります。
物的生産性は生産した物の量に対して、どれだけの「投入資源(労働力や資本など)」を使ったかという効率を測る指標。
労働生産性は次の計算式で算出します。
物的労働生産性=生産量÷労働者数
一方、付加価値生産性とは、企業がどれだけ効率良く価値を生み出しているかを測る指標です。
ここでの「付加価値」とは、企業が外部から仕入れた原材料やサービスに対して、自社の活動を通じて新たに付け加えた価値のことを指します。
企業の売上高は、外部から仕入れた物にかかった費用と、企業が加えた付加価値を合わせた金額で成り立っています。
付加価値生産性は次の計算式で算出します。
付加価値労働生産性=付加価値÷労働投入量
これらを向上させることで、企業や経済全体の効率性が高まり、利益最大化や競争力の強化が図れます。
一人当たりの生産性が重要な理由
一人当たりの生産性を重視する理由は、以下のような社会的・経済的な変化が関係しています。
市場のグローバル化による競争の激化
インターネットの普及により、私たちは世界中の商品やサービスを購入することができるようになりました。
消費者の選択肢が広がった今、これまでと同じやり方で売上を伸ばしていくことは難しいです。
商品を選ぶ基準の一つとして「価格」が挙げられます。
資源価格の値上がりが続いていく中、良い商品・サービスをできるだけ安価に提供したい場合、コストカットしやすいのは人件費です。
一人当たりの生産性を上げることで、人件費にムダなコストをかけることがなくなります。
労働人口減少への対応
将来、労働力人口が減少することが予測される中で、一人当たりの生産性を向上させることはとても重要です。
日本では少子高齢化が進行しており、単純に言うと「少ない人数でこれまでと同等、もしくはそれ以上の仕事をする必要がある」ということ。
一人当たりの生産性を向上させない限り、経済成長に悪影響を与えることは間違いないでしょう。
働き方改革の推進
国が進めている「働き方改革」。
これは、非正規雇用の処遇改善や賃上げ、働きやすい環境整備、労働生産性向上、長時間労働の是正などを進める取り組みです。
働き方改革を進めるための法整備なども行われ、国がかなり力を入れていることがわかります。
働き方改革を進めていくためには、労働環境の改善は必須です。
労働環境の改善には、一人当たりの生産性の向上が鍵となります。
一人当たりの生産性が高ければ、限られた時間内に多くの仕事をこなせるため、残業が減少し、労働環境の改善にもつながるのです。
一人当たりの生産性を上げ、利益を向上するには?ヤマチの事例をご紹介
生産性を上げるのが重要だとわかっていても、システム変更など大がかりなことは費用もかかりますし、難しいこともあるでしょう。
ここからは、ヤマチユナイテッドで実際に行なっている生産性向上のための3つの取り組みをご紹介します。
どれも今からすぐに始められるものですので、一人当たりの生産性を向上させるヒントになれば幸いです。
(1)生産性を上げるための取り組みは現場からスタートしよう
ヤマチユナイテッドでは、ボーナスや昇給、採用などの原資はすべて生産性アップに左右されます。
ヤマチユナイテッドの給与制度については「給与制度の設計ポイントを解説!肝となる「成果分配」の仕組みも確認」をご覧ください。
それこそ新入社員にも、フレッシャーズキャンプなどの研修の場で、生産性の大切さを頭に叩き込んでもらいます。
グループ全体でも、1事業につき1人の経理担当者を張りつけるのではなく、複数事業を1人に兼任させたり、生産性に寄与するようなシステムに投資したりしています。
各事業で生産性アップに効果的だったアイデアや情報は、グループ内で開示・共有するなどといった工夫も当然行なってきました。
特に、管理などの間接部門、採用や仕入れ、ブランディングは、グループ全体で一括して進めたほうが生産性アップに寄与します。
しかし、グループ全体でできることには限界があります。
私もスーパーマンではありませんから、各現場の生産性アップの秘訣まではなかなか閃かないことも。
しかし、実際には生産性アップのヒントは常に現場にあるものなのです。
そこで、私の基本スタンスは「各事業の現場のメンバーに知恵を絞ってもらう」という方向へシフトしました。
(2)少なくても一人100万円以上稼げる会社目指そう
ヤマチユナイテッドの社員の給与額が生産性に左右される理由を簡単に説明しておきます。
給与制度上、社員には通常のボーナスとは別に、期末に「成果分配」という決算賞与がプラスされます。
事業部の「営業利益」に比例して分配されるため、その多寡により事業部間で大きな差が生じます。
個人レベルでも、年収で何百万円も差がつくことがあります。
分配は、「一人当たり生産性(一人当たり営業利益)」を基準としています。
少人数でたくさんの営業利益を出していれば、配分が多くなるというわけです。
この業界の一般的な一人当たり生産性の基準は「100万円」とされているので、ヤマチユナイテッドでは「少なくとも一人100万円より稼げる会社(事業)を目指す」ことを原則としています。
100万円以上稼げなければ成果分配が少なくなってしまうので、社員は自然と「どうしたら一人当たり生産性を上げられるか」を考えるようになります。
(3)生産性を上げる近道はコスト削減ではなく、粗利を増やすこと
「生産性を上げる」ためには、以下の2つの視点があります。
- 粗利益(付加価値)を増やす
- コストを削減する
一般的には粗利を上げるよりも、コストを下げるほうにベクトルが向きがちです。
例えば、「コピーの裏紙を使う」「電気をこまめに消す」というように...。
しかし、この程度のコスト削減をしても、生産性への影響はごくわずかです。
それよりも粗利を1%上げたほうが、はるかに生産性向上に寄与するインパクトは大きい。
したがって、現場のメンバーには「どうやって粗利を上げるか」を、普段から考えてもらうことが重要です。
ヤマチユナイテッドの場合、各会社や事業部で、現場の幹部会議やチーム会議が毎週行われていますが、こうした会議の場でも「どうしたら生産性をアップできるか?」を題材にみんなで議論し、知恵を絞っています。
「生産性を上げるには、粗利を上げるのが一番。では、粗利が上がらないのはなぜか?」と分析していくと、自ずと答えが見えてくるものです。
社員が業績を意識して働いてくれる仕組みづくりについては、下記コラムでご紹介しています。あわせてご覧ください。
社員が業績に興味がない...業績を意識して仕事に取り組んでもらうには?
一人当たりの生産性を上げることは現場の改善にもつながる!ヤマチの住宅建築事業の事例も確認
「一人当たりの生産性アップ」を考えることは、現場の改善にも直結しています。
ヤマチユナイテッドの住宅建築事業における、一人当たりの生産性を上げた事例をご紹介します。
(事例①)プラン提案の事例
ヤマチユナイテッドの住宅建築事業では、お客さまの要望に合わせてプランを出していました。
イチから住宅の設計をすれば当然コストがかかります。
そのプランが採用される確率が3割程度しかなければ、7割の作業がムダに終わることになり、当然生産性は下がります。
実はここに生産性向上のヒントがあります。
つまり「7割のムダを減らせば生産性は上がる」わけです。
例えば、お客さまとプランを決定したものの、そのあと銀行の融資が通らず、結果としてプランが台なしになるケースが多かったとします。
この場合、プランを作成する前に融資の事前申請を行うよう営業プロセスを変えれば、ムダな作業を避けることができます。
また、お客さまが銀行からいくら借りられるかも事前に分かるので、その融資額に見合ったプランを作成でき、さらにムダはなくなります。
(事例②)本図面作成の事例
住宅建築事業では、図面の作成にも改善の余地がありました。
注文住宅の場合、お客さまはいろいろとリクエストしたくなりますし、営業担当もそれに応えようと新しい図面をイチから作成しがちでした。
しかし、初めての図面で家を建てれば、小さな不具合やミスが発生し、どうしてもコストが上がります。
なんでもかんでもイチから図面を描いていたら、生産性は下がってしまうのです。
そこで、ほとんどのお客さまが満足するような図面の「王道プラン」を用意して、選んでもらうことにしました。
そうすれば、新しい図面を作成する手間が省けて、その分お客さまにリソースを向けることができるからです。
(事例③)コーディネート過程の事例
もうひとつ住宅建築事業の例をご紹介しましょう。
ヤマチユナイテッドの住宅建築の事業部門には、インテリアコーディネーターが在籍しています。
お客さまの要望を踏まえ、打ち合わせを重ねながら家の内装を決めていくため、お客さまから大変喜ばれていました。
問題なのは、時間がかかることです。
「自宅の内装にこだわりたい」というお客さまは多いので、1回2時間の打ち合わせを10回ほど重ねるケースがあり、ときには内装の決定に計30時間も費やすことがありました。
お客さま満足も大切ですが、生産性の面から言えば問題があったのです。
そこで現場のメンバーは、生産性にフォーカスして「これまで平均5回打ち合わせをしていたが、平均3回で完了させるにはどうすれば良いか?」と知恵を絞っていきました。
すると、以下のアイデアが上がってきました。
- 「1回目の打ち合わせでは、必ずこのような提案をしよう」
- 「お客さまの喜ぶツボは外さないようにする一方で、それ以外の部分は短縮しよう」
- 「迷っているお客さまはこのようなトークをすると決心してくださるので、その文言をメンバーで共有しよう」
このように、打ち合わせの時間を短くすると同時に、なおかつお客さまの満足度が上がる方法を日々研究していったのです。
こうした小さなイノベーションの積み重ねの結果、粗利は22%から30%に上昇しました。
20%の販管費を使ったときに、2%しか利益が残らない場合と10%も利益が出る場合とでは、天と地ほどの差があります。
「生産性アップ」にフォーカスし、そこから逆算すると、仕事のプロセスを改善せざるをえないので、結果的に生産性はアップしていくのです。
今回は改善がメインの事例をご紹介しましたが、これからさらに新しい事業アイデアへとつながるイノベーションが起こるかもしれません。
それも単なるコスト削減ではなく、より質を高め、労力を減らす方法を「生産性」というキーワードから現場が考え続けることにより可能となるのです。
一人当たりの生産性を上げるために大切なポイント
ヤマチユナイテッドの生産性向上のための取り組みについて紹介してきましたが、どの取り組みにも共通しているのが「考えさせる」ということです。
一人当たり生産性をアップさせるために大切なのは「ああしろ、こうしろ」と社長が指示を出すのではなく、現場の社員やメンバーに考えさせること。
社長が「他の会社ではこんなことやっていたぞ」と情報を出したとしても、効果はたかが知れています。
それよりも社員が自主的にセミナーに出たり、書籍を読んだりして、積極的に情報を取りにいき、「自社の現場に当てはめて考える」といったプロセスのほうがずっと効果的です。
現場のメンバーに自分で考えさせるために「ワークショップ形式」の会議をして、生産性アップをテーマに話し合ってもらっても良いでしょう。
生産性向上のためにコンサルタントを入れる場合も、いっそのこと「丸投げ」したほうが生産性は上がります。
コンサルタントからアドバイスを受けた社長が、「こんな方法でやれば良い」と指示を出しても、社員は言われたとおりに動くだけで、その場しのぎの対応になるからです。
それよりも、コンサルタントに現場に入ってもらい、直接社員が質問したり、相談したりできるような環境をつくれば、社員は率先して動くはず。
このほかにも、業務フローやマニュアルを作成して業務を標準化したり、営業支援ツールなどのITツールを導入したり、社員が集中できる環境をつくることも生産性アップに効果的でしょう。
こちらのコラムもあわせてご確認ください。
業務標準化のメリットとは?個人的なスキルに頼らない仕組みづくり
一人当たりの生産性を上げ、利益を向上させることは経営の重要課題
一人当たりの生産性とは、労働力に対してどれだけ効率的に成果を出しているかを示す指標です。
現代の労働力不足や資源の制約において、一人当たりの生産性の向上は重要な課題となっています。
生産性には「物的生産性」と「付加価値生産性」があり、企業が効率的に価値を生み出すことが求められます。
生産性向上には、現場のメンバーが積極的に改善を考えることが大切なポイントです。
例えば、ヤマチユナイテッドでは業務効率化を図るために、現場の知恵を生かした改善活動を行ったり、粗利を増やすために普段から考え、議論したりするなど知恵を絞っています。
さらに、従業員の給与を生産性に連動させ、成果を分配する制度を設けることで、社員が自発的に一人当たりの生産性をどうしたら向上できるか考えるようになります。
また、生産性向上のためには、業務の標準化やITツールの導入なども効果的です。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。