効果的なインセンティブの決め方とは?自主分配を導入するメリットも解説

組織・給与制度

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。

インセンティブを導入しようと考えているものの、決め方について悩んでいるというお声をいただくことがあります。

インセンティブを導入するのであれば、公平かつ納得感のある制度を導入したいものです。

今回は、インセンティブの決め方についてお話していきます。

効果的なインセンティブ制度を導入するには、インセンティブの決め方と仕組みづくりが大切です。

どのような仕組みで社員に利益を分配するのか、社員の貢献度をどう測り、人事考課に反映するのか、インセンティブの仕組みの作り方について、当社の実例を交えてご紹介しましょう。

当社で導入しているインセンティブ制度である、社員が自分たちで作成した経営計画を自ら管理し、目標を達成した場合、利益の一部を還元・分配する仕組み「自主分配」を導入するメリットも解説します。

目次

  1. インセンティブとは?
  2. インセンティブ「自主分配」を導入するメリット
  3. 効果的なインセンティブ制度は決め方と仕組みづくりが大切
  4. インセンティブの決め方で注意するポイント
  5. インセンティブの決め方・仕組みづくりが重要!効果的なインセンティブ制度「自主分配」がおすすめ

インセンティブとは?

営業職の求人情報などで「インセンティブ有り!」なんてワードを見かけませんか?

インセンティブとは一般的には、会社側が提示したノルマや目標を社員が達成した際に、会社から支給される報酬のこと。

通常、給与とは別に支給されるちょっとしたボーナスのような特典です。

表現は良くないかもしれませんが、「鼻先の人参」といったところでしょうか。 

当社の「自主分配」もいわゆる「インセンティブ」のことを指します。

インセンティブの種類

インセンティブには、さまざまな種類があり、社員(従業員)のモチベーションを引き出すためにそれぞれ異なるアプローチが取られます。

  • 金銭的インセンティブ・物品インセンティブ:給与、賞与、特別手当といった金銭報酬や、旅行券や高級品といった物品などで社員の成果を評価する最も一般的な方法
  • 評価的インセンティブ:表彰や昇進など、社員の業績を認める方法
  • 人的インセンティブ:上司や同僚との人間関係を通じて、モチベーションを高める方法
  • 理念的インセンティブ:企業理念や価値観に共感を促し、仕事への意欲を高める方法
  • 自己実現的インセンティブ:社員の夢や目標を実現できる環境を提供し、自己成長を促す方法

インセンティブとボーナス・歩合制との違い

インセンティブと混同されやすい制度に、ボーナス(賞与)と歩合制があります。

インセンティブは「目標達成によって支給される個人の成果に応じた報酬」であるのに対し、ボーナスは「企業全体の業績に基づいて一律で支給される報酬」です。

そして、歩合制は「業績に応じて一定の金額が支給される仕組み」です。

ボーナスや賞与は企業の業績を反映して支給されるものであり、全社員にそれぞれ決まった割合で一斉に支給されることが特徴です。

歩合制は契約数や金額などの業績に基づいて、一定の金額が支払われる制度。

支給額は個人の成績に直接関連しますが、インセンティブとは異なり「一律の金額」という点で違いがあります。

給与制度設計の肝となる成果配分の仕組みについては「給与制度の設計ポイントを解説!肝となる「成果分配」の仕組みも確認」でご紹介していますので、あわせてご覧ください。

ヤマチのインセンティブ制度「自主分配」について

ヤマチユナイテッドでは、「自主分配」というインセンティブ制度を導入しています。

社員が自分たちで計画をつくり、進捗を管理する。

そして、その結果が良くても悪くても、自分たちで評価して受け止める。

これが「自主分配」の原則です。

成果の分配なので、利益が出なければ分配はありません。

反対に、利益が大きければ大きいほど、自分たちの処遇に反映されます。

 

当社の場合、基本的には夏・冬の年2回、通常賞与(いわゆるボーナス)が赤字でなければ支給されるのが原則です。

通常賞与(ボーナス)とは別に、決算期末に業績の一部から「成果分配」として支出するのが「決算賞与」。

年度末決算の業績に応じて支給するプラスアルファの賞与です。

この「決算賞与」が、当社のインセンティブにあたります。



インセンティブ「自主分配」を導入するメリット

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インセンティブ、そして自主分配にはさまざまなメリットがあります。

インセンティブのメリット

インセンティブのメリットは次のとおりです。

①即効性と短期間での業務改善

インセンティブ制度は、迅速に社員(従業員)の意欲を刺激できるため、短期間での業務改善を期待できます。

営業成績や目標達成度に応じた報酬が、社員に即座にモチベーションを与え、業務の改善を促進します。

②コスト効率と柔軟性

インセンティブは一時的な報酬であるため、固定給に比べてコストを抑えることができます。

また、報酬額を変動させることが可能なため、経営状況に応じて調整しやすく、企業の財政負担を軽減できます。

③目標の明確化と高いコミットメント

インセンティブによって評価基準が明確になり、社員は何を目指すべきかがはっきりします。

これにより、目標達成への意欲が高まり、目標に向けたプロセスも明確化され、迷いなく業務に取り組むことができます。

④健全な競争とチームワークの促進

成果に基づく評価が行われることで、社内での健全な競争が促進されます。

仲間の努力を見て「自分も頑張ろう」という意識が高まり、チーム全体の成果を上げるために切磋琢磨する文化が生まれるでしょう。

チーム単位での報酬を設けることにより、協力や連携も強化されます。

⑤社員と求職者のモチベーション向上

インセンティブ制度は、社員へ成果に応じた報酬を提供することで、業務へのモチベーションを高めます。

また、高い報酬を得られるチャンスを示すことで、目標達成意欲が高い人材の採用につながることも期待できます。

インセンティブ制度「自主分配」のメリット

当社で導入しているインセンティブ制度「自主分配」。

社員が自分たちで作成した経営計画を自ら管理し、目標を達成した場合に、利益の一部を還元・分配する仕組みです。

社員にとって、通常賞与(ボーナス)とは別に、決算期末に利益の一部が「成果分配」される「決算賞与」のインセンティブは大きなモチベーションになります。

制度の設計の仕方はさまざまなことが考えられますが、営業個人で競わせるのではなく、チームで協力できる関係づくりに力を入れたほうが有意義です。

自分だけ、自分の部署だけではなく、「みんなで達成するとご褒美がある」という仕掛けにすると、いつも以上の底力が発揮できるはずです。

企業の利益アップにもつながりますし、社員のやる気を刺激することや、仕事を頑張る動機付けにもなります。

インセンティブを上手く活用すると企業と社員が、Win-Winの結果をもたらすことができるのです。



効果的なインセンティブ制度は決め方と仕組みづくりが大切

ただ単にインセンティブ制度を取り入れるだけでは、インセンティブの効果を最大限に発揮することはできません。

その点、ヤマチユナイテッドのインセンティブ「自主分配」の仕組みは社員の関与度が違います。

当社の実例を挙げながら、効果的なインセンティブ制度の仕組みづくりについてご紹介します。

超過利益と分配原資を確定する基準づくり

成果分配は、給与や通常賞与とは異なり、超過利益という成果に対する報酬です。

大事なのは、超過利益の基準となる予定利益の設定です。

少し頑張れば達成できるような、ほど良い基準を設定できるかどうかがキモになります。

基準の設定バーが高すぎても低すぎても、社員はやる気を失ってしまうからです。

そして、予定利益をクリアしたら、超過分のどのくらいが還元されるのか、年度が始まる当初に発表しておくことも大切です。

後出しジャンケンをしたら、社員からの信用を失います。

会社の内部留保と成果分配の割合をあらかじめ明確にしておけば、たとえ基準の利益率に達しなかったとしても社員は納得するはずです。

分配原資のシミュレーションの実例

当社を例に、分配原資を具体的にシミュレーションしてみましょう。

①基準バーの設定

一人当たりの営業利益を100万円に設定しているので、それを超えた部分が成果分配の対象になります。

例えば、社員が100人いたら「社員数100人×一人当たりの営業利益(100万円)=1億円」なので、1億円が基準バーとして設定されます。

②超過分の計算方法

決算の利益が基準バーを超えた場合、その超過分が成果分配の対象です。

例として、決算の利益が1億5,000万円だった場合は「1億5,000万円−1億円=5,000万円」が超過分となります。

③成果分配の原資

決算の利益が基準バー(1億円)を超えたときは、超過分の約3割が成果分配の原資になります。

成果分配の原資=(決算の利益−基準バー)× 0.3

例として、超過分が5,000万円だったら、3割となる1,500万円が成果分配の原資です。

「自主分配」は、この1,500万円を決算賞与として100人で分配するルールとなっています。

④超過分の残り7割・基準バーの1億円の内訳

ちなみに、超過分が5,000万円だった場合、成果分配の原資の3割を引いた、残りの7割は3,500万円となります。

3,500万円の40%(1,400万円)が税金で、60%(2,100万円)が会社の内部留保です。

基準バーとして設定していた1億円の利益も40%(4,000万円)が税金で、60%(6,000万円)が会社の内部留保として残ります。

⑤内部留保の合計

  • 基準バー分の内部留保:6,000万円
  • 超過分7割からの内部留保:2,100万円

最終的な内部留保の合計として、8,100万円の内部留保ができる計算です。

利益目標の設定方法については、「社員の自主性を育てるには?システム経営・自主計画の導入方法とポイント」のコラムで説明しましたので、ぜひご覧ください。

社内配分もシステム化してオープンに

分配原資の各社員への配分方法には、会社ごとの考え方を反映させて良いと思います。

例えば、業績の良い事業や部門には分配原資を大きく割り当て、どかんと支給することもできます。

また、部門内では貢献度を加味して、支給額を増減させる調整も必要になります(目安として)。

ヤマチの場合:立場(職階級)による還元率の違い

当社の場合、立場(職階級)によって還元率が違います。

上位階級を100%としたら、その下位階級は50%、さらに次の下位職はその50%と、職階級ごとに配分しているため、責任の度合いの高い社員が多く受け取れる設計になっています。

トップのさじ加減はNG

いずれにしても社内配分をトップのさじ加減で決めてしまうのは絶対NG。

頑張って成果を出しても報われないという不信感につながってしまいます。

そのため、成果分配の基準づくりや支給割合は、グループ各社・各部門の部門長や役員が協議し、役員会で審議した後、トップが承認する流れにすると良いでしょう。

もちろん、この基準をきちんと社員に公表することが前提なのは、上述しました。

そもそも「人事考課に伴う個人評価は気が重い」と感じている経営者は少なくありません。

公平に評価したつもりでも、部下の不満が募り、やる気を大きく削いでしまう危険性もあります。

その点、賞与の支給額決定もシステムに任せてしまえば、経営者の心理的負担は大幅に軽減できます。

また、社員のやる気や自主性もアップし、生産性や業績の向上につながる、優れた仕組みだといえるでしょう。

社員に成功体験を積んでもらう仕組み

導入時は、基準バーの設定がポイントだとお伝えしましたが、会社の財務状況にもよりますし、業種や業態によっても異なるでしょう。

ただ、社員の立場からすると、成果分配の仕組みだけが存在していて、一度も支給がない状態が続くのは萎える原因になります。

新規事業などの場合、最初は基準を低く設定するのがおすすめです。

業種や形態(業態)によっては、赤字がスタートラインということもありえますよね。

分配原資の割合を少なくしてスタートし、徐々に基準を上げていく方法も良いかもしれません。

自分たちで計画をつくって、自分たちで進捗を管理し、目標を達成して成果分配をもらえた、という成功体験を積ませることが、次の年度の努力につながります。

 

経営者の観点から見ると、成果分配は単年度精算で年収を上げることができる制度です。

固定の基本給をどんどん上げると、経営的にきつくなりますが、賞与で出す分には単年度経費。

変動費をうまく利用して処遇をアップできるのは、経営的にも良い対策だと思います。



インセンティブの決め方で注意するポイント

インセンティブ制度を導入する際は、全社員に対して公平な業績評価基準を設け、職種を問わず支給の機会を提供することが重要です。

成果だけでなく、業務プロセスや組織への貢献度も評価に含めることで、個人主義を避け、組織全体の成長を促進します。

運用時には、過度な競争が社内の雰囲気を悪化させる恐れがあるため、個人の成果だけでなくチームワークも重視することが必要です。

短期的な成果ばかりに固執せず、長期的な視点で評価することも大切。

また、インセンティブが過度なプレッシャーを生まないよう、個々のニーズに合った制度設計を行い、金銭的なものだけでなく、心理的や理念的なインセンティブも取り入れましょう。

インセンティブで社員のモチベーションアップを狙おう

これまでは計画づくりから進捗管理、成果分配まで社長ひとりで行なっていた会社もあるでしょう。

経営情報がクローズな環境のうえで、「利益が出たから少し賞与を増やしてやるか」と、社長の一存で支給していた会社なら、社員は「よく分からないけどボーナスが出た」という印象にしかなりません。

反対に、結果が出ないときは「社長のせいでボーナスが出ない」という感覚に陥りがちです。

 

その点、自主分配の仕組みは、社員の関与度が違います。

中間決算で「このままだと成果分配がない」「賞与カットの危機」となれば、一人ひとりが真剣に売上アップを考えるようになります。

所属部門が基準バーを達成していなければ、現場で「もう少し増やさないとヤバイ」「じゃあどこで増やす?」という話し合いも始まります。

 

ただし、絶対に忘れてはいけないのは、権限は委譲しても最終責任は社長が負うということです。

業績が上がらないのは部下のせいではなく、社長をはじめ経営幹部が判断を誤ったからです。

部下は権限を委譲され、計画遂行と報告の義務を負います。

そして報告を受ける上司は、その責任を持つ。

責任の対価こそ成果分配の割合の大きさだと自覚することが大切なのです。



インセンティブの決め方・仕組みづくりが重要!効果的なインセンティブ制度「自主分配」がおすすめ

インセンティブとは、会社が設定した目標やノルマを達成した際に、給与とは別に支給される報酬です。

インセンティブには、さまざまな種類があります。

代表的なインセンティブには、金銭や物品物品を支給するインセンティブや、評価的インセンティブ、人的インセンティブなどがあります。

ボーナスや歩合制とは異なり、インセンティブは個人やチームの成果に応じて支給されるものです。

効果的なインセンティブ制度を導入するには、インセンティブの決め方と仕組みづくりが重要なポイント。

ヤマチユナイテッドでは「自主分配」というインセンティブ制度を導入し、社員が自ら目標を設定し、進捗を管理します。

業績が良ければ、その成果を社員に還元する仕組みです。

この制度のメリットは、社員のモチベーションを高め、チームワークを強化することにあります。

適切に運用すれば、企業と社員の双方にとって良い結果を生み出します。

インセンティブ制度の成功には、明確な評価基準と公平な運用が重要であり、過度な競争を避け、社員一人ひとりのニーズに合わせた制度設計が求められます。


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第1回:社員の自主性を育てるには?システム経営・自主計画の導入方法とポイント

第2回:業績と売上の違いとは?社員自身が業績管理を行う方法とポイント

第3回:効果的なインセンティブの決め方とは?自主分配を導入するメリットも解説(このコラム)

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