数字をオープンにしないと、全員参加の経営は実現しない【社員参加型経営の基礎:後編】

業績アップのノウハウ

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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ヤマチマネジメントの石崎です。

前回は管理会計の必要性とその手法についてお話しました。

引き続き今回は、管理会計とセットの「オープン経営」を解説します。

管理会計とオープン経営の2つは、社員参加型のシステム経営をうまく機能させるための前提条件です。

あなたがもしトップダウンの経営に限界を感じているのなら、まずは管理会計とオープン経営の導入から着手してみてください。

満を持してシステム経営に取り組むころには、主体性を持って自分で判断できる、頼もしい社員が続々と育っていくはずです。

目次

  1. オープン経営とは?
  2. 開示の前には社員教育が必要
  3. 社員が納得できる説明を
  4. モチベーションアップにつなげるために
  5. オープン経営のメリット
  6. まとめ

1.オープン経営とは?

オープン経営に明確な定義はありません。

管理会計を導入した上で、経営数値を社員に開示し、共有することだと理解してください。

ただし、なんでもかんでもいきなりオープンにするのではなく、ちゃんと順を追って段階的に開示していく必要があります。

ポイントは、社員教育です。

まずは幹部の集まる経営会議で勉強会をやりながら理解を深め、部下に説明できるレベルになったら部門ごとの営業会議で開示する、というように慎重に進めないと、余計な誤解を生じる可能性もあります。

なにをどこまでオープンにするかというのは、会社によってまちまちで構いません。

基本的には上の役職から順番に下ろしていくのがいいでしょう。

2.開示の前には社員教育が必要

ちなみに当社では、新人研修の段階で損益計算書の簡単な見方や収益構造を教えます。

売り上げから仕入れ原価や工事原価を引いて粗利益が出て、さらに人件費などいろんな経費を引いた数字が「営業利益」だと習うわけです。

そのうえで一人当たりの営業利益を100万円として設定しています。

ですから200人の社員がいたら最低でも2億円の利益は出しましょう、と。

そこから超えた超過利益は、会社に残すもの、税金として払うもの、社員に還元するものに分け、その割合をあらかじめ決めています。

社員に還元する率も、役職ごとに決まっています。

全社の業績は、社員が誰でも見られるよう、社内ネットワーク上に業績速報として公開しています。

事業責任者クラスには損益の状況、経費の内訳など詳細まで配信されます。

社員は所属する部門の営業利益が大きければ大きいほど賞与が増えるので、おのずとモチベーションがアップするというわけです。

3.社員が納得できる説明を

とはいえ、経営数値を社員にオープンにするのは抵抗がある、という経営者も少なくありません。

社長の報酬や交際費を知られたくない、とか、内部留保の額まで開示する必要があるのか、という声もよく聞きます。

でも、そこを社員にしっかりと説明し、納得させなければ、いつまでも旧態依然の主従関係から抜け出せません。

たとえば、うちのような住宅会社は、いい商品、いいサービスを提供するだけでは不十分で、アクターケアに責任を持つためには、多少不景気になっても経営を続けるだけの体力が重要だと。そのためには会社にある程度の内部留保が欠かせないと、社員に説明するのです。

それに、新規事業に投資するためにも自己資金は欠かせません。

当社では100の事業を立ち上げ、100人の事業責任者を創出する「100VISION経営」をミッションに掲げ、それに共鳴した社員が入社していますから、利益を新規事業への投資に充てることに不満の声はあがりません。

社長の給与や交際費にしても、社長は融資を受ける際に個人保証もしているわけですから、リスクに備える必要があると説明すれば、理解してくれるはずです。

4.モチベーションアップにつなげるために

オープン経営は社内やグループ全体の戦略を練るのにも有効です。

好調な部門があれば、苦戦している部門から人員を移して、経営資源を集中させることもできます。

気をつけなければならないのは、赤字部門の社員のメンタル面です。

たとえば、一生懸命やってるけどトントンの部門がある一方で、始めたばかりなのにめちゃめちゃ利益を出している部門があるとします。

これをオープンにしたら、儲けのない部門の社員は一気にやる気をなくしてしまうかもしれません。

そのときは経費の分配を調整してから開示する方法もあれば、反対にそのまま公表して利益率の差を経営課題として捉えて正面から取り組む方法もとれます。

新規事業もちょっとした工夫が必要です。

先行投資であれば利益が出ないのは当たり前ですから、1〜2年は赤字計画にしてゲタをはかしてあげるといいでしょう。

また、単体では利益が出ないけれど相乗効果が期待できる部署も配慮が必要です。当社の場合、インテリアショップ単体での利益はたがか知れていますが、ショップを通じて住宅の契約に結びつくケースが少なくありません。そういうときは利益が出ている部門から負担金をもらい、経費のマイナスを埋めるようにしています。

5.オープン経営のメリット

経営数値をオープンにすれば、社員に自主性が芽生えます。

1997年に拓銀が倒産したときもそうでした。

部門別に開示される業績が、赤字、赤字、赤字...と出てる。当時は私も若手でしたけど「これはやべえんじゃないか」「給料カットか」と、ハラハラしました。

こういう経験をすると、自分なりにこの状況をどうしたら打開できるのかを真剣に考えるようになります。つまり、社員に危機感が共有される。俗にいう経営者感覚が身に付くのです(強制的に)。

反対に、儲かってるときには、もう少し利益を出せば決算ボーナスが増えると分かっているので、もうひと踏ん張りできるようになります。

当社では、リーダーになると経営計画をつくるようになります。

自分のチームの人件費、原価率、粗利益率などを把握した上で、チーム全体でいくらの利益を出したいかを話し合い、そこから逆算して目標を決めます。

トップから「これだけ売れ」と割り当てられる数字と、チームでちゃんとすりあわせして、納得の上で決めた数字では、まったく意味合いが違います。

どうやって利益を確保するか真剣に考えるから、主体性が高まる。結果、業績もアップするという好循環が生まれるのです。

6.まとめ

これまで経営数値を開示してなかった会社が、オープン経営に踏み切るには相当な覚悟が必要でしょう。

ですが、経営判断に必要な情報を隠しておいて、社員に経営者感覚を持てと言っても、それは無理な話。共通言語があって初めて、経営陣も社員も同じ土俵で話ができるようになるのです。

社員を信じて、まずは経営幹部から情報開示を始めてみませんか。近い将来、きっとあなたの予想を上回る大きな成果が現れると思います。


前編の「管理会計」についてはこちらの記事をご覧ください。

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