決算賞与の決め方とは?「単なる臨時収入」ではいけない!
組織・給与制度
こんにちは、石崎です。
決算期、目標以上の利益を上げた時に、経営者としては部下をねぎらうお小遣いのような意味合いでボーナスを支給する時もあるでしょう。
社員たちはラッキーな臨時収入に喜んでくれることと思います。
でも、それだけで終わるのは実にもったいない!
決算賞与は事前にしっかりとした意味付けを行うことで、会社を成長させるための仕組みの一つとして活用することができます。
「今回の利益が多かったから出す」のではなく「次回の利益が多ければ出る」という観念をもって、決算賞与の決め方について考えてみましょう。
目次
1.決算賞与は成果分配の結果!自主評価の基準にも
当社では夏、冬、期末と通常賞与3回に決算賞与1回を加えて、最大で年4回のボーナスを支給することにしています。
決算賞与は、当社では「成果分配」という言葉を使いますが、すなわち成果が上がらなければ得られないものです。
「利益が多かったからボーナスを出そう」というのとどう違うか。
我々の場合はそういった後追いの考え方ではありません。
事前に「利益が多ければその分還元されますよ」ということが社内に周知されているのです。
決算賞与として割り振られるのは、営業利益の目標値を超えた金額から社内留保分と税金を引いた残りの額。
原則として、頑張ったら頑張っただけ決算賞与の額が上がるので、社員からしてみれば「こんなにもらえるほど結果を出せた」「今回はいまひとつだったから次はもっと努力しなければ」などと、自主評価の基準の一つにもなっています。
2.決算賞与の決め方で大切な「意味付け」について
皆さんの会社では、決算賞与を支給する意味をどのように考えていますか?
やはり偶発的な臨時ボーナスと位置付けているか、中には節税目的で「いらない物を買うくらいなら社員に分けよう」というような意図もあるかもしれませんね。
もらった社員の側はどうでしょう。
「なんだかよくわからないけどボーナスが出た」と喜びはするでしょうが、その時限り。
「来年も出るのかな?」と期待して、次の年にそれほど利益が上がらなければ、今度は出ないことに不満を持つ人もいるはずです。
ここに、決算賞与に意味付けすることが大切だという理由があります。
決算賞与の効果はモチベーションアップだけではない
決算賞与は元々モチベーションアップのための方策の一つとして始めました。
営業利益の目標額として一定のバーを設け、それを超えたら規定のルールに従って社員に還元しようという、いわばインセンティブです。
こういう"ご褒美"があると人は力を発揮するもので、普通は諦めてしまうところでも、もうひと頑張りする意欲が湧きます。
この過程で最も大切なのは、社員同士で「今はまだ足りないけれど、何年かかけて業績を伸ばして成果分配をもらおう。ではまずどうしたらいいか」という議論ができるようになること。
決算賞与をもらえない時でも、自分たちの働き方を省みることで納得こそすれば不満は出ません。
こういったサイクルの中で、社員はぐんぐん育ちます。
ひいては会社全体の業績も上がりますし、それに伴って社内留保分の額が増え、財務体質強化にもつながるというわけです。
3.決算賞与の決め方は会社ファースト、経営ファーストの方針から
前項では社員のモチベーションアップについて書きましたが、留意すべきは「会社」と「社員」とで考えると「会社」が優先。
目標額超過分の利益はしっかり会社に残すことをまず考えてください。
会社が倒れては元も子もありません。
当社での配分方法をわかりやすい数字に置き換えてご紹介しましょう。
決算賞与の決め方の具体例
まず、1人当たりの営業利益目標を100万円に設定し、これをバー(基準)と定めます。
「100万円」は全業種での黒字企業の平均額ですが、会社によって異なるでしょう。
社員100人の会社なら、100万円×100人=1億円が全社的な営業利益目標。
ある年の営業利益が1億3000万円あったとしたら、目標超過分の3000万円を社内留保分、税金として支払う分、決算賞与として分配する分に分けます。
当社の場合はそれぞれ約1/3ずつとしているので、3000万円÷3=1000万円を決算賞与の原資とします。
この1000万円は、単純に100人で割って一律10万円の賞与というふうにはなりません。
役職や階級に応じて分配率を変え、経営への貢献度が高い者が多くもらえるよう調整するからです。
自己資本比率を高める必要がある会社は社内留保分の割合をもっと増やさないとならないし、債務超過に近いような状況であれば賞与どころの話ではありません。
ただ、決算賞与がほんの少額だとしても、一定のルールに従ってもらえるのであれば頑張れる、頑張った結果が評価されてうれしいという場合もあると思います。
いずれにしても、会社の経営状況を第一に考え、社内に残す分を確保した上での決算賞与だということを覚えておいてください。
4.効果的な決算賞与の決め方のカギはルール作りと事前開示
当社では、自主計画、自主管理、自主分配という三本柱をベースに、社員それぞれが自主的に経営に参加するシステムを採用しています(このシステムについてはシリーズ「システム経営の3本柱」をご覧ください。)。
予算の計上なども行いますので、経理に関しても数字をオープンにすることが必須。
それがあるから決算賞与が出ない時でも社員に納得してもらえるのであって、全部がクローズのまま、利益がいくら出ているかもわからない状態で、「儲かったから、はいボーナス」と思いつきで与えるのとでは全然意味が違うのです。
当社では業績評価を単年度精算したいという意図があるため、流れとしては、年度内に期末までの営業利益の予測値を出して分配額を確定させ、社員全員に通知したあと1ヶ月以内に期末賞与と決算賞与とを合わせて支給することにしています。
これを逃すと翌期の経費となり、今期分の節税にはならないので注意するポイントでもあります。
バーをいくらにするか、決算賞与の分配率をどのようにするかといったルールは社長の独断ではなく、幹部を交えてお互いに納得するよう話し合うことが大切。
また、バーが高すぎると「ルールだけあって実体がない」ものになってしまうので、頑張ればクリアできそうな数字をうまく設定してください。
もちろんその議論の結果は社員全員に伝わるよう、年度初めに開示します。
こうすることで社員たちはバーを超えられるだけの働きをしようとやる気を出し、より多くの利益を出すために日々工夫するというものです。
5.決算賞与の決め方で会社と社員WinWinの関係を作ろう!
今回は決算賞与の決め方や考え方についてお話しました。
決算賞与の決め方のポイントは次の3つです。
- 決算賞与はただ支給するのではなくしっかりと意味付けする
- 決算賞与は会社に利益を優先する「会社ファースト」「経営ファースト」の考え方で
- 決算賞与の決め方のカギはルール作りと事前開示
決算賞与を単なるボーナスや節税目的と捉えるのは非常にもったいない考え方です。
しっかりと意味付けを行うことで、社員のモチベーションをアップさせ会社の成長のための仕組みとして活用することができます。
是非、決算賞与を会社と社員のWinWinな関係作りに役立ててみてはいかがでしょうか。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。