決算賞与は利益の何パーセントにすれば良い?決算賞与の決め方の基準も
組織・給与制度

こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
決算賞与は事前にしっかりとした意味付けを行うことで、会社を成長させるための仕組みの一つとして活用することができます。
しかし、決算賞与の導入を考えている企業にとって「決算賞与は利益の何パーセントにすべきか」という点は悩みどころではないでしょうか。
今回は、決算賞与の決め方について考えていきたいと思います。
決算賞与を決める基準やヤマチユナイテッドの例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 決算賞与は成果分配の結果!自主評価の基準にも
- 決算賞与は利益の何パーセント?決算賞与の決め方の基準を確認
- 企業が決算賞与を支給するメリット・デメリット
- 効果的な決算賞与の決め方のカギはルール作りと事前開示
- 決算賞与を利益の何パーセントにするか、最適な決め方や配分のポイントを確認し、社員に還元しよう
決算賞与は成果分配の結果!自主評価の基準にも
決算賞与とは、企業の決算に基づいて支給される特別な賞与です。
支給の有無や金額は決算時の企業の財務状況や経営判断によって決まり、あらかじめ定められた支給金額や支給時期が決まっているわけではないため、毎年必ず支給されるとは限りません。
一方、通常の賞与は、夏季や冬季など定められた時期に支給され、支給金額もある程度予測可能です。
ヤマチユナイテッドでは、基本的に夏・冬の年2回、通常賞与(いわゆるボーナス)が支給されるのが原則。
通常の賞与とは別に、決算期末に業績に応じて、決算賞与が支給されます。
決算賞与は、当社では「成果分配」という言葉を使いますが、業績の一部から成果分配として支出される賞与となるため、成果が上がらなければ得られない賞与です。
では、「利益が多かったからボーナスを出そう」という考え方と何が違うのか。
我々の場合はそういった後追いの考え方ではありません。
事前に「利益が多ければその分還元されますよ」というルールが社内に周知されているのです。
決算賞与として割り振られるのは、営業利益の目標値を超えた金額から社内留保分と税金を差し引いた残りの額。
原則として、社員が頑張ったら頑張っただけ決算賞与の額が上がります。
そのため、社員からしてみれば努力が結果に直結するため、「こんなにもらえるほど結果を出せた」「今回はいまひとつだったから次はもっと努力しなければ」などといった、自主評価の基準の一つにもなっています。
給与制度やインセンティブの仕組みについては、下記コラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
給与制度の設計ポイントを解説!肝となる「成果分配」の仕組みも確認
効果的なインセンティブの決め方とは?自主分配を導入するメリットも解説
決算賞与の決め方で大切な「意味付け」について
皆さんの会社では、決算賞与を支給する意味をどのように考えていますか?
やはり「偶発的な臨時ボーナス」と位置付けているか、中には節税目的で「不要な物を買うくらいなら社員に分配しよう」という意図もあるかもしれませんね。
しかし、決算賞与をもらった社員の側はどうでしょうか。
「なんだかよくわからないけどボーナスが出た」と喜びはするでしょうが、そのとき限りの一時的なものになっていませんか?
「来年も出るのかな?」と期待して、次の年にそれほど業績が伸びず利益が上がらなければ、今度は出ないことに不満を持つ社員もいるはずです。
ここに、決算賞与に意味付けすることが大切だという理由があります。
決算賞与の効果はモチベーションアップだけではない
決算賞与は元々、社員のモチベーションアップのための方策の一つとして始めました。
営業利益の目標額として一定のバーを設け、それを超えたら規定のルールに従って社員に還元しようという、いわばインセンティブです。
このような「ご褒美」があると、人は力を発揮するもので、普通は諦めてしまうところでも、もうひと頑張りする意欲が湧きます。
そして、この過程で最も大切なのは、社員同士で「今はまだ目標に足りないけれど、数年かけて業績を伸ばして成果分配をもらおう」「決算賞与をもらうには、どうしたら良いか?」という主体的な議論ができる環境になること。
たとえ決算賞与をもらえないときでも、社員が自分たちの働き方を省みることで、納得こそすれば不満は出ません。
こういったサイクルの中で、社員はぐんぐん育ちます。
ひいては会社全体の業績も上がりますし、それに伴って社内留保分の額が増え、財務体質強化にもつながるというわけです。
なお、社員のモチベーションを高める方法として、昇進や昇給も有効です。
詳しくはこちらのコラムでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
中小企業における昇進・昇給(賃上げ)のタイミングは?人材定着に結びつける方法も確認
決算賞与は利益の何パーセント?決算賞与の決め方の基準を確認
決算賞与の支給額は、企業の業種や規模によって異なり、一般的に数万円から数十万円程度が相場です。
支給方法としては、企業の利益を従業員への賞与、税金、内部留保に分配するアプローチが一般的といわれています。
例えば、「利益の33%を賞与、33%を内部留保、残りの34%を税金に充てる」といった分配方法が考えられます。
営業利益を賞与の原資とする場合も、企業ごとの利益構造に応じて最適な割合を設定することが重要です。
前項では社員のモチベーションアップについて触れましたが、決算賞与を考える際に留意すべきは「会社」と「社員」のバランスで考えると「会社」が優先。
特に、 会社の健全な経営のためにも、目標額超過分の利益はしっかり会社に残すことをまず考えてください。
会社が倒れては元も子もありません。
ヤマチユナイテッドの決算賞与の決め方をわかりやすい数字に置き換えてご紹介しましょう。
ヤマチユナイテッドの決算賞与の決め方の具体例
決算賞与は、決算期末に企業の利益の一部を「成果分配」として支給するものです。
成果分配は、給与や通常賞与とは異なり、計画利益を超過した部分(超過利益)という成果に対する報酬です。
ここで重要なのは、超過利益の基準となる予定利益(目標利益)の設定で、社員が少し頑張れば達成できるような、ほど良い基準を設定できるかどうかがキモになります。
ヤマチユナイテッドでは、まず1人当たりの営業利益目標を100万円に設定し、これをバー(基準)と定めます。
「100万円」は全業種での黒字企業の平均額ですが、企業ごとに適切な水準は異なるでしょう。
例えば、社員100人の会社なら、100万円×100人=1億円が全社的な営業利益目標となります。
ある年の営業利益が1億3,000万円だった場合
目標超過分の3,000万円を社内留保分、税金として支払う分、決算賞与として分配する分の3つに分けます。
当社の場合、それぞれ約1/3ずつの配分を基本としています。
そのため、3,000万円÷3=1,000万円を決算賞与の原資とします。
ただし、この1,000万円は、単純に100人で割って一律10万円の賞与として支給するわけではありません。
役職や階級に応じて分配率を変え、経営への貢献度が高い者が多くもらえるよう調整するからです。
また、企業の財務状況によっては、社内留保の割合を増やす必要があります。
例えば、自己資本比率を高める必要がある会社は、社内留保分の割合をもっと増やさないとならないし、債務超過に近いような状況であれば決算賞与の支給自体が難しくなるでしょう。
ただ、決算賞与がほんの少額だとしても、一定のルールに基づいて支給されるのであれば、社員のモチベーション向上につながり、頑張った結果が評価されてうれしいという場合もあると思います。
いずれにしても重要なのは、会社の経営状況を第一に考え、社内に残す分を確保した上での決算賞与だということを覚えておいてください。
企業が決算賞与を支給するメリット・デメリット
企業が決算賞与を支給することには、多くのメリットがあります。
一方で、導入に際して注意すべきデメリットもあります。
それぞれ見ていきましょう。
メリット①税負担の軽減・節税効果
決算賞与を支給することで、企業の税負担を抑えることが可能です。
例えば、企業が1,000万円の利益を上げた場合、法人税、住民税、事業税を含めた実効税率(約30%〜35%)に応じて、約300万円〜350万円の税額が発生します。
しかし、賞与を支給することで課税対象となる利益が減少し、結果として税額を抑えることができます。
このように、決算賞与は税金対策として有効に活用されることが多く、適切な計画のもとで支給することで企業の財務管理にも寄与します。
メリット②従業員のモチベーション向上
決算賞与は、企業の業績向上に貢献した社員に対する報酬としての意味を持ちます。
特に、経営者が利益の一部を社員へ還元する方針を明確にすることで、「成果が正当に評価される」という実感につながり、働く意欲やモチベーションを高めることができます。
メリット③成果への意識向上
決算賞与を人事評価に基づいて支給する場合、従業員がより高い成果を目指す動きが強まります。
特に、個人やチームの努力が賞与額に反映される成果主義を導入している企業では、成長意欲の向上や業績アップにつながることが期待されます。
メリット④人件費の柔軟な調整
決算賞与は毎月の給与とは異なり、企業の業績に応じて支給額を調整できるため、人件費を柔軟に管理することが可能です。
業績が好調な年度は賞与を手厚くし、経営が厳しいときは支給を抑えることで、人件費のバランスをとることができます。
この柔軟性により、経営状況に応じた適切な資金配分が可能になります。
デメリット①資金計画の必要性
決算賞与を支給することで、その分企業の手元資金が減少するため、適切な資金計画が求められます。
特に予算を超える額を支給する場合、企業のキャッシュフローに影響を与える可能性があるため、事前の財務管理が重要になります。
デメリット②賞与後の退職リスク
賞与支給後に、従業員が退職するケースが見受けられることがあります。
このため、決算賞与を導入する際は、日頃から従業員との良好なコミュニケーションを保ち、長期的な成長を促す仕組みづくりを意識することが大切です。
効果的な決算賞与の決め方のカギはルール作りと事前開示
決算賞与を決める際は、経営状況や財務情報を社員と共有し、透明性を保つことが重要です。
特に、賞与を労働分配率に基づいて支給する場合は、事前に経営計画を共有しておくと、突然支給額の変動があっても社員の理解を得やすくなります。
また、賞与に関するルールは就業規則に明記し、支給条件や支給額の計算方法、支給対象者を明確にしておくことが大切。
業績が悪化した場合には、規則に基づき支給を見送ることもありますが、その際は社員に理由を説明し納得を得ることが不可欠です。
ルールを明確にし、透明性を確保することで、社員の信頼を築き、モチベーション維持につなげることができるでしょう。
ヤマチユナイテッドでは、自主計画、自主管理、自主分配という三本柱をベースに、社員それぞれが自主的に経営に参加するシステムを採用しています。
このシステムについては、「社員の自主性を育てるには?システム経営・自主計画の導入方法とポイント」をご覧ください。
予算の計上なども行いますので、経理に関しても数字をオープンにすることが必須。
それがあるから、決算賞与が出ないときでも社員の納得を得られます。
反対に、経営数値全部がクローズで不透明なまま、利益がいくら出ているかもわからない状態で、「儲かったから、はいボーナス」と思いつきで与えるのとでは全然意味が違うのです。
当社では業績評価を単年度精算したいという意図があるため、流れとしては、年度内に期末までの営業利益の予測値を出して分配額を確定させ、社員全員に通知したあと1カ月以内に期末賞与と決算賞与とを合わせて支給することにしています。
これを逃すと翌期の経費となり、今期分の節税にはならないので注意するポイントでもあります。
バーをいくらにするか、決算賞与の分配率をどのようにするかといったルールは社長の独断ではなく、幹部を交えてお互いに納得するよう話し合うことが大切。
また、バーが高すぎると「ルールだけあって実体がない」ものになってしまうので、頑張ればクリアできそうな数字をうまく設定してください。
もちろんその議論の結果は社員全員に伝わるよう、年度初めに開示します。
こうすることで社員たちはバーを超えられるだけの働きをしようとやる気を出し、より多くの利益を出すために日々工夫するというものです。
決算賞与を利益の何パーセントにするか、最適な決め方や配分のポイントを確認し、社員に還元しよう
決算賞与は企業の業績に基づいて支給される特別な賞与で、支給額や有無は経営判断や財務状況によって決まります。
ヤマチユナイテッドでは、通常の賞与に加え、決算賞与を成果に応じて分配を行なっています。
決算賞与は、社員が目標達成に向けて努力する意欲を高め、業績向上を促進するために重要な役割を果たします。
決算賞与の配分は、営業利益の超過分から税金や内部留保を引いた残りを社員に還元します。
これにより社員の自主性やモチベーションが向上し、企業全体の業績改善にもつながります。
ただし、賞与支給額の決定には経営状況への配慮が必要です。
社員との良好なコミュニケーションを保つことが重要となる点も覚えておきましょう。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。