中小企業と銀行の付き合いを強化するには?良い信頼関係構築のコツ
組織・給与制度

こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
企業経営において、銀行との付き合いは切っても切れないものです。
「中小企業と銀行の付き合い」や「会社と銀行の望ましい関係」と聞いて、まず思い浮かぶのは「必要なときにスムーズに融資を受けられる間柄」ではないでしょうか。
そのため、銀行に対して苦手意識を持っている中小企業の担当者や、距離感がつかめないと感じている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
では、中小企業は銀行とどのような関係性を築き、どのように付き合いを続けていくべきでしょうか。
今回は、中小企業が銀行と上手に付き合い、長期的な信頼関係を保つための考え方、心構えについてお話をしたいと思います。
目次
- 中小企業(会社)と銀行の付き合いは対等な関係であるべき
- 中小企業が銀行と対等で良好な関係を築くための第一歩
- 中小企業が銀行と上手に付き合い、長期的な信頼関係を保つためのポイント
- 中小企業が銀行との付き合いを強化するためのポイント
- 中小企業が銀行との付き合いで良好な関係を築くには、信頼構築が鍵
中小企業(会社)と銀行の付き合いは対等な関係であるべき
中小企業(会社)が銀行とどのように付き合えば良いのか、一般的な対処法として、銀行が納得するような経営計画書、事業計画書、返済計画書を作成することが定石とされています。
そのため、指南書もたくさん流通していますし、適切なアドバイスを提供してくれるコンサルタントも存在しています。
それも一つの方法ではありますが、ヤマチユナイテッドに関して言えば、経営計画や事業計画はあくまで社内向けのもの。
外部向けの計画書はあえて作りませんし、経営計画発表会に銀行関係者を呼ぶこともありません。
「ほかの部分で銀行としっかり良好な関係を維持することができる」と考えているので、最低年1回、電話をもらって年間決算の報告をするだけです。
ここに至るまでには、自社と銀行との信頼関係を構築し、維持してきたという経緯があります。
事業計画の立て方については下記コラムでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
中小企業(会社)が銀行と上手に付き合いたい理由
中小企業(会社)が銀行と上手に付き合い、良好な関係を築く理由について考えてみましょう。
資金調達と信頼関係の構築
中小企業(会社)は、事業の立ち上げや拡大、あるいは事業承継など、さまざまなタイミングで資金を必要とします。
融資はその最も一般的な資金調達方法の一つであり、金融機関との信頼関係を築いておくことで、急な資金調達が必要になった際にも、スムーズに融資を受けやすくなります。
さらに、銀行との関係を深めることで、融資条件の改善や、銀行が保有する市場や地域に関する情報を活用し、事業の成長を促進することも可能になるのです。
銀行とは「対等なビジネスパートナー」という認識で付き合うべき
その時々の会社の状況にもよりますが、融資を念頭に置くならば、「借りる側」と「貸す側」という関係が成り立ちます。
そのため、会社側の人間としては、銀行に対して「お願いする」という意識が先立ち、弱い立場に回りがちです。
しかし、私はあくまで銀行とは「対等なビジネスパートナー」であるという認識で付き合うべきだと考えています。
実は今の時代、銀行も常に貸し先を探している状況です。
「借りたい」と「貸したい」という互いのニーズがマッチする以上、立場の上下を気にする必要は本来ないのです。
銀行が中小企業(会社)を慎重に審査する背景も確認
2014年(平成26年)に金融庁が「金融モニタリング基本方針」を発表して以来、金融機関は財務データや担保・保証に過度に依存せず、借り手企業の事業内容や成長可能性などを重視し、適切に評価する「事業性評価」を行うことが求められるようになりました。
その結果、担保・保証に頼らない融資姿勢が強まっており、銀行が貸し先の審査に慎重になるのは、企業の事業性をしっかりと評価するための合理的な対応といえます。
銀行(金融機関)は企業や産業の成長を支援したり、事業の収益性や将来性を量るため、企業に対してきめ細かく聞いてきます。
そのため、ここで萎縮したり、苦手意識を持ったりする経営者もいるかもしれません。
しかし、これはあくまで交渉の場です。
少しでも良い条件を引き出せるよう、対等な立場で話し合いを進めつつ優位に立つことが、むしろ絶対条件です。
中小企業が銀行と対等で良好な関係を築くための第一歩
中小企業が銀行と対等な関係を築くための心構えについて、ご紹介します。
「お願いする立場」からの脱却
「借りる立場」=「お願いする立場」と捉えてしまうと、それはすでに対等な関係とは言えません。
「銀行さん、そこをなんとかお願いします」と言わずに済むような、つまり銀行が気持ち良く融資してくれるような貸し先の条件とは何だと思いますか?
答えは一つ、信用できる貸し先であることです。
言い換えれば、着実に利益が出ていて財務内容が良好な会社には、好意的に貸してくれるのです。
銀行との信頼関係を築くための基本:情報開示と誠実な対応
会社が銀行との良好な関係を築くためには、情報の積極的な開示と誠実な対応が求められます。
①定期的な情報開示と更新
会計帳簿や決算書を定期的に提供し、月次や四半期ごとに更新することが重要です。
情報を提供することで、銀行からの信頼と評価が向上します。
②正確な会計処理と信頼性の確保
また、会計処理は正確かつ適切に行うことが不可欠です。
誤った処理や粉飾決算を避け、信頼できる決算書を作成することで、銀行からの信用を獲得できます。
③自社の認知度を高めるための第一歩
会社を立ち上げたときには、経営方針・経営哲学を含めて、まずは銀行に自社をしっかりと知ってもらうことが第一です。
信頼関係の構築は、ここから始まるといえます。
④融資の申し込み時には計画の公開と進捗報告
銀行に融資を申し込む際は、経営情報を公開開示した上で計画を伝え、その後の進捗状況や結果報告もまめに行いましょう。
これにより、銀行に対して透明性が高まり、信頼が深まります。
⑤計画的な目標設定と詳細な資料の準備
事業の計画を立てる際には、細かくポイントを設定して、そのポイントごとに達成が見込める現実的なラインで考えていくと、成果の進捗状況が伝わりやすいと思います。
また、必要なタイミングで迅速な貸し出しを求めるなら、それを引き出すための説明資料や詳細な計画書をきちんと用意しておきましょう。
このような基本的な対応が、会社と銀行が信頼関係を築くための第一歩。
銀行の担当者や支店長との相性もあるかもしれませんが、基本的には「企業対企業」の付き合いとして取引の歴史を一から作っていくことが、会社の未来へとつながるのです。
銀行から嫌われる行動とは?
前項で述べたように、交渉の場で少しでも優位に立つことは絶対条件ですが、口八丁手八丁で大風呂敷を広げ、表面上だけ「うまくいっています」と言っても、実情と乖離していればどうしようもありません。
どんなに取り繕っても、それが事実と異なるとわかったときに一気に信用を失うからです。
そのため、銀行に対してはポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も率直に伝えることが重要です。
もし問題が生じた場合は、その詳細と解決策を明示することで、信頼感を高められます。
一つひとつ着実に、目に見える成果を出していくことが大切なのです。
ほかにも、銀行から嫌われる行動があります。
例えば、頻繁に取引先の銀行を変更することや、困ったときだけ融資を頼むような態度は好ましくありません。
銀行と長期的に安定した関係を築くためには、問題が発生する前に早めに相談し、融資の必要性を早期に伝えましょう。
さらに、提出する書類が不十分だと、「計画性がない」「信頼できない企業」と見なされる恐れがあります。
計画的に整った資料を準備することが信頼を得るための鍵です。
そして、経営者自身の信頼性が社内外で評価されることが、銀行との強固な関係構築につながります。
中小企業が銀行と上手に付き合い、長期的な信頼関係を保つためのポイント
銀行と対等に付き合い、信頼関係が構築できれば、あとは実績を積み重ねていくだけ...と、言うだけなら簡単ですが、会社経営はいつも順風満帆というわけにはいきません。
時には業績が思うように上がらないこともあるし、事故や災害など、予想外の出来事で急に資金が必要になることもあるでしょう。
そのため、銀行が会社に信用を求めるのに対し、会社は銀行に対して永続的な協調関係を求めます。
中小企業(会社)が銀行と長く良い関係を続けていくためには、以下がポイントとなります。
メインバンクには自社の規模に合った金融機関をダブルで設定する
金融機関にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
自社に適した金融機関を選ぶためには、各金融機関の特徴を把握することが重要です。
代表的な銀行の種類とその特徴は次のとおりです。
メガバンク
全国にネットワークがあり、広域でのビジネス展開に有利。
主に大規模な企業向けの対応となり、中小企業に対しては柔軟な対応が難しい場合があります。
地方銀行
地域密着型で、個別の融資を積極的に行い、地域の中小企業との関係構築を大切にしているのが特徴。
金利はメガバンクより高い場合があるものの、地域でのネットワークを活かしたサポートが期待できます。
信用金庫・信用組合
地域に密着した金融機関で、特に小規模企業に向けたきめ細かいサポートを提供しています。
ただし、大口融資には向かないため、事業規模に合った利用を検討することが重要です。
ネット銀行
オンラインで手軽に融資を受けられるものの、個別の関係を築くことが難しいため、対面でのコミュニケーションが重要な企業には向いていません。
自社の規模に合ったメインバンクを選択する方法
会社が取引を行う金融機関を「メガバンク」「地方銀行(地銀)」「信用金庫・信用組合」のに分類すると、もちろんそれぞれにメリットがありますが、メインバンクは自社の規模に合った金融機関を選択すべきです。
【メガバンク】
メガバンクは、全国にネットワークがあるため、地理的に広範囲でのビジネス展開を考えている場合は有利です。
また、メガバンクで口座を持っていれば、取引先のお客様の手数料を安く抑えることもできます。
ただし、メガバンクは主に売上規模が大きい企業を対象にしており、法人顧客として取引している企業は、売上1,000億規模の大企業が中心です。
【地方銀行・信用金庫・信用組合】
地銀・信金・信組は、地域密着型で中小企業のニーズをよく理解しています。
融資を申し込む際にも、地元の情報をよく知っていて、中小企業と同じ目線の高さで話を進めることができそうです。
こういったことから、一般的な中小企業であれば「メガバンクよりも地方銀行や信金・信組が合うのでは?」と想像できますよね。
最終的には、自社の事業内容と金融機関それぞれの特徴を踏まえて、どの金融機関が最も合っているかを慎重に検討しましょう。
ダブルメインの設定
また、メインバンクは2つ(2行)を設定して「ダブルメイン」とするのがおすすめです。
資金調達は中小企業にとって非常に重要な要素ですが、ダブルメインにすることで、資金調達のリスクを分散できます。
借入れがなくても、取引実績を積んでおくことで、将来的にスムーズな資金調達につながる可能性が高まります。
また、複数の金融機関と取引することで競争原理が働き、有利な融資条件を引き出しやすくなるというメリットもあります。
金融機関との信頼関係が築ければ、融資の際に金利や融資条件の交渉を行うことも可能になります。
そのためにも、複数の金融機関から相見積もりを取り、自社にとって有利な条件を選択することが大切です。
銀行とほど良い距離感でスマートな付き合いをする
金利交渉は一発勝負で後腐れなく
複数の銀行と金利交渉を行う場合は、後腐れなしの一発勝負が理想的です。
すべての金融機関に一斉に数字を提示してもらい、公正に比較するのがベスト。
「あっちは下げたよ」などと他行を引き合いに妙な駆け引きをすると、のちのち遺恨を残しかねませんし、結果的にそこまで数字も変わらなかったりします。
銀行との距離感を保つ
会社の業績が上がってくると、銀行のほうから借り入れや預金を促してくることがあります。
銀行にもノルマがあるので「1カ月間だけ」などの短期借り入れを提案されることがありますが、ヤマチユナイテッドでは、預金はともかく、良い関係を作りたいがために借り入れすることは行いません。
このあたりの節度の保ち方、線引きといったところは心構えとして持っておくと良いでしょう。
必要以上にへりくだらず、傲慢にならず、良いバランス感覚を保ってスマートな付き合いを心がけたほうが長期にわたる信頼関係を継続していけると思います。
財務担当者の心得
余談ですが、会社の業績が良くなると銀行の対応も良くなり、財務担当が持ち上げられて浮わついてしまうことがありますが、担当者個人の功績ではなく会社の功績です。
こうした状況でも、ぜひ冷静かつスマートな態度で業務に当たってください。
銀行を良き相談相手にする
信頼関係の下地ができたら、銀行は「良き相談相手」になってくれます。
経営計画、事業計画を見てもらって、客観的なアドバイスを求めるということもあって良いでしょう。
また、金利交渉の際は「金利はどうしたら下がるか」「財務がどうだったら好条件が出るのか」「バランスシートをどう改善すれば融資を受けやすいか」など、ストレートに聞いてみましょう。
金融機関は決算書に基づいて企業を格付けし、融資の可否や、利率の設定の判断材料としています。
自社がどのランクに位置にあるかが明かされることはないでしょうが、上記のような質問をすることで「この資産が重たくて」「この在庫がちょっと...」とざっくばらんに答えてくれる可能性もあるでしょう。
指摘された点は自社の財務の弱点で、改善できれば好条件を引き出しやすくなりますし、相手からしてみれば行内のルールのもと自動的に格付けが上がって融資を出せることになります。
会社にとっては財務改善自体が利益の増加につながりますから、目標設定にも融資を受けるという目的以上の意味が生まれることでしょう。
銀行との付き合いの深さが信頼関係をつくる
銀行との関係は、単なる融資の有無だけでなく、取引の長さ、深さ、情報共有の量によっても付き合いの度合いは違ってきます。
融資以外にもビジネス情報のやり取りがあったり、最近では、投資信託や確定拠出年金、各種コンサルティングサービスなどを利用したりする会社も増えていますね。
ヤマチユナイテッドの場合、M&Aやビジネスマッチングの分野で、銀行から得られる情報を活用するケースもあります。
中小企業が銀行との付き合いを強化するためのポイント
会社にとって、資金繰りは死活問題です。
会社が苦しい状況にあるときに、いかに銀行に協力してもらえるか、そのためにも普段から良い関係を築いておくことが大切なのです。
当社の数十年の歴史の中でも、苦しい時期はありました。
そのときに支えてくれた銀行さんはいまだに大事にしていて、借り入れはなくても口座は残してありますし、担当者が年1〜2回来訪する際も、直接会ってお話するようにしています。
中小企業が銀行との付き合いを強化するポイントは、以下のとおりです。
窓口となる財務担当者を置く
中小企業の経営者の中には財務を自ら担当している方もいますが、銀行との付き合いには多くのパワーと頭と時間を要するものです。
できれば代わりに銀行の窓口となる財務担当者を置いておき、自分にしかできない仕事に専念するほうが効率的です。
定期的に自社の状況や計画方針を伝える
中小企業が銀行との関係を強化するためには、定期的なコミュニケーションが欠かせません。
財務担当者は銀行に対して、変に低姿勢になったり過度な訪問をしたりする必要はありません。
銀行の担当者が会社に訪問してくれることもありますが、経営者自身が定期的に銀行を訪問し、会社の現状について積極的に報告することも効果的です。
自分が銀行へ行くのか、銀行の担当者に来てもらうのか決めておいて、定期的に自社の状況や計画方針を伝えるようにしましょう。
また、月次試算表や資金繰り表を持参し、経営状況を具体的に伝えることで、銀行に良い印象を与え、信頼関係の構築につながります。
担当者変更時には情報提供する
銀行の担当者や支店長は定期的に異動があるため、担当者が変わると融資の計画がスムーズに進まないこともあります。
その際には、新しい担当者に自社を理解してもらうために、経営者や財務担当者が自ら積極的に情報共有することが重要です。
会社のビジョンや現状を改めて説明し、新たな関係を築くチャンスと捉えましょう。
継続的な関係を構築する
融資を一度受けた後も、銀行との関係を維持することが大切です。
借入れを依頼したときだけでなく、その後も定期的にコミュニケーションをとり、銀行側と信頼関係を深めていきましょう。
これにより、将来的な資金調達が円滑に進みやすく、経営が困難になった場合でも柔軟に相談できる関係を築くことができます。
中小企業が銀行との付き合いで良好な関係を築くには、信頼構築が鍵
中小企業と銀行の付き合いで良好な関係を築くためには、会社側が銀行を「対等なビジネスパートナー」として捉えることが重要です。
中小企業は資金調達が必要な場面で銀行と関わりますが、銀行との信頼関係を強化することで、融資がスムーズに進み、条件も有利になります。
信頼を得るためには、会計帳簿や決算書を正確に作成・提供し、誠実に情報を開示することが不可欠です。
銀行との付き合い方としては、必要以上にへりくだらず、適切な距離感を保ちながら信頼を築くことが重要です。
例えば、メインバンクを2つ(2行)設定することで、資金調達の選択肢を広げ、融資条件の交渉がしやすくなります。
また、定期的に自社の状況を報告し、担当者との関係を継続的に築くことで、長期的な信頼関係が形成されるでしょう。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。