会社と銀行の良い関係とは?上手に付き合うためのポイント
組織・給与制度
こんにちは、石崎です。
企業経営において、銀行との付き合いは切っても切れないものです。
銀行との望ましい関係というと、まず真っ先に思い浮かぶのは「必要な時にスムーズに融資を受けられる間柄」ではないでしょうか。
そういう意味では、銀行に対して苦手意識を持っている人や距離感がつかめないと感じている人もいるかもしれません。
一般的な対処法としては銀行が納得するような経営計画書、事業計画書、返済計画書を作ることが定石となっていて、指南書もたくさん流通していますし、適切なアドバイスをしてくれるコンサルタントもいます。
それも一つの方法ではありますが、当社に関して言えば経営計画、事業計画はあくまで社内向けのもの。
外部向けのものはあえて作りませんし、経営計画発表会に銀行関係者を呼ぶこともありません。
ほかの部分でしっかり良好な関係を維持することができると考えているので、最低年1回、電話をもらって年間決算の報告をするだけです。
ここに至るまでには自社と銀行との信頼関係を構築し、維持してきたという経緯があります。
では、どのような関係性を築き、どのように付き合いを続けていくか。
考え方、心構えといった観点からお話をしていきたいと思います。
目次
1.会社と銀行とは対等な関係であるべき
その時々の会社の状況にもよりますが、融資を念頭に置くならば「借りる方」と「貸す方」という図式から、会社側の人間としては銀行に対して「お願いする」というような意識が先立ち、弱い立場に回りがちです。
しかし私は、あくまで対等なビジネスパートナーであるという認識で銀行と付き合うべきだと考えています。
実は今の時代、銀行も常に貸し先を探している状況です。
「借りたい」「貸したい」という互いのニーズがマッチする以上、立場の上下など本来気にする必要がないのです。
ただ、平成26年に金融庁が「金融モニタリング基本方針」を発表して以来「なるべく無担保無保証で貸しましょう」という流れになっているので、銀行が貸し先の審査に慎重になるのは無理もないこと。
事業の収益性や将来性を量るためいろいろと細かく聞いてきますから、ここで萎縮したり苦手意識を持ってしまったりする人もいるかもしれません。
でも、これは交渉の場。少しでもいい条件を引き出せるよう、対等な立場で話し合いを進めつつ優位に立つことが、むしろ絶対条件です。
では、会社と銀行が対等な関係となるためにどうしたらいいか。
それを以下で解説していきましょう。
2.会社と銀行が対等な信頼関係を築くための第一歩とは
「借りる立場」=「お願いする立場」と捉えてしまうと、それはすでに対等な関係とはいえません。
「銀行さん、そこをなんとかお願いします」と言わずに済むような、つまり銀行が気持ちよく融資してくれるような貸し先の条件とは何だと思いますか?
答えは一つ、信用できる貸し先であることです。
言い換えれば、着実に利益が出ていて財務内容が良好な会社には好意的に貸してくれるのです。
会社を立ち上げた時には経営方針・経営哲学を含めて、まずきちんと自社を銀行に知ってもらうことが第一です。
融資を申し込む際は経営情報を公開開示した上で計画を伝え、その進捗状況や結果報告もまめに行いましょう。
前項で書いたように交渉の場で少しでも優位に立つことは絶対条件ですが、口八丁手八丁で大風呂敷を広げ、表面上だけ「うまくいっています」と言ってもどうしようもありません。
どんなに取り繕っても、それが事実と異なるとわかった時に一気に信用を失うからです。
やはり一つ一つ着実に、目に見える成果を出していくことです。
計画を立てるときには細かくポイントを設定して、そのポイントごとに達成が見込める現実的なラインで考えていくと成果の進捗状況が伝わりやすいと思います。
また、必要なタイミングで迅速な貸し出しを求めるなら、それを引き出すための説明資料や詳細な計画書をきちんと用意しておきましょう。
このようなことが、会社と銀行が信頼関係を築くための第一歩。
先方の担当者や支店長との相性もあるかもしれませんが、基本は「企業対企業」の付き合いとして取引の歴史を一から作っていくことが、会社の未来へとつながるのです。
3.銀行との信頼関係を保つためのポイントと、その関係を活かす方法
銀行と対等な信頼関係ができれば、あとは実績を積み重ねていくだけ...と言うだけなら簡単ですが、会社経営はいつも順風満帆というわけにはいきません。
時には業績が思うように上がらないこともあるし、事故や災害ほか予想外のできごとで急に資金が必要になることもあるでしょう。
銀行が会社に信用を求めるのに対し、会社は銀行に永続的な協調関係を求めます。
長く良い関係を続けていくためには、以下がポイントとなります。
メインバンクには自社の規模に合った金融機関をダブルで設定
金融機関を「メガバンク」「地銀」「信金・信組」の3タイプで考えた時、もちろんそれぞれにメリットはあるのですが、メインバンクは自社の規模に合ったところを選択すべきです。
例えばメガバンクは全国にネットワークがあるため、地理的に広範囲でのビジネス展開を考えている場合は有利ですし、口座を持っていればお客様の手数料を安く抑えることもできます。
一方で、メガバンクが法人顧客とするのは売上1000億単位の大企業が大半で、中小企業にはなかなか目が向きにくく、業績が下がった時の回収のタイミングも早い傾向があります。
対して、地方銀行や信金・信組は地元の情報をよく知っていて、融資を申し込む時も中小企業と同じ目線の高さで話を進めることができそうです。
こういったことから、一般的な中小企業であれば「メガバンクよりは地方銀行か信金・信組が合うのでは」と想像できますよね。
あとは自社の事業内容と金融機関それぞれの特徴を考え合わせて検討しましょう。
また、メインバンクは2つを設定してダブルメインとするのがおすすめです。
信頼関係ができれば融資の際に金利などの交渉をする場面も出てきますが、この時に複数の金融機関で相見積もりを取れば、自社により有利な条件を選択できます。
程よい距離感でスマートな付き合いを
複数で金利交渉をする時は後腐れなしの一発勝負で、すべての金融機関に一斉に数字を提示してもらうのがベスト。
「あっちは下げたよ」などと他行を引き合いに妙な駆け引きをするとのちのち遺恨を残しかねませんし、結果的にそこまで数字も変わらなかったりします。
会社の業績が上がってくると、銀行の方から借り入れや預金を促してくることがあります。
先方にもノルマがあるので「1カ月間だけ」などと言われるのですが、預金はともかく、良い関係を作りたいがために借り入れするかといったら、当社ではしません。
このあたりの節度の保ち方、線引きといったところは心構えとして持っておくといいでしょう。
必要以上にへりくだらず、傲慢にならず、いいバランス感覚を保ってスマートな付き合いを心がけた方が長期にわたる信頼関係を継続していけると思います。
余談ですが、会社の業績が良くなると銀行の対応も良くなり、財務担当が持ち上げられて浮わついてしまうことがありますが、担当者個人の功績ではなく会社の功績です。
この時もぜひスマートな態度で業務に当たってください。
信頼関係の下地ができたら、銀行は「良き相談相手」になってくれます。
経営計画、事業計画を見てもらって客観的なアドバイスを求めるということもあっていいでしょう。
金利交渉の際は「金利はどうしたら下がるか」「財務がどうだったら好条件が出るのか」「バランスシートがどうなったら貸しやすいか」...
こういうことをストレートに聞いてみましょう。
金融機関は決算書に基づいて企業を格付けし、融資の可否や、利率の設定の判断材料としています。
自社がどの位置にあるかが明かされることはないでしょうが、上記のような質問をすることで「この資産が重たくて」「この在庫がちょっと...」とざっくばらんに答えてくれるでしょう。
ここで指摘された点は自社の財務の弱点で、改善できれば好条件を引き出しやすくなりますし、相手からしてみれば行内のルールのもと自動的に格付けが上がって融資を出せることになります。
会社にとっては財務改善自体が利益の増加につながりますから、目標設定にも融資を受けるという目的以上の意味が生まれることでしょう。
このほか、取引の長さ、深さ、情報共有の量によっても付き合いの度合いは違ってきますが、融資以外にもビジネス情報のやり取りがあったり、最近では投資信託や確定拠出年金、各種コンサルティングなどの商品を利用する会社もありますね。
当社の場合はM&Aやビジネスマッチングの分野で、銀行から得られる情報を活用するケースもあります。
4.財務担当者がいれば銀行との関係構築がよりスムーズに
会社にとって、資金繰りは死活問題です。
会社が苦しい状況にある時にいかに銀行に協力してもらえるか、そういう意味でも普段から良い関係を築いておくことが大切なのです。
当社の数十年の歴史の中でも、苦しい時期はありました。
その時に支えてくれた銀行さんはいまだに大事にしていて、借り入れはなくても口座は残してありますし、担当者が年1・2回来訪する際も会ってお話するようにしています。
中小企業の経営者の中には財務を自ら担当している方もいますが、銀行との付き合いには多くのパワーと頭と時間を要するものです。
できれば代わりに銀行の窓口となる財務担当者を置いておき、自分にしかできない仕事に専念する方が効率的です。
財務担当者は銀行に対して変に低姿勢になったり過度な訪問をしたりする必要はありませんが、自分が銀行へ行くのか、先方の担当者に来てもらうのか決めておいて、定期的に自社の状況や計画方針を伝えるようにしましょう。
5.会社と銀行が「対等な信頼関係を築く」ためには「信用」が大事!
銀行とは対等な関係であるべきですが、先方の気持ち次第で「貸す貸さない」を決められる側面もある以上、こちらの態度が悪かったり嘘をついたりしていたら、どんなに良い事業内容だって貸せるものも貸したくなくなるはず。
結局は相手も会社であり、人でもあるということです。
人の信用を得るとはどういうことかと考えると、銀行との付き合い方も見えてくるのではないでしょうか。
ヤマチユナイテッドでは、会社の成長に関するノウハウや効果的な会議の導入方法など、ワークショップやセミナーなどのイベントを随時開催しています。
経営の参考にぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。