事業計画の立て方。業績アップにつながる考え方について
業績管理・経営計画
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
経営方針に沿って社員一人ひとりに行動してもらうため、必要になってくるのが事業計画。
当社ではこれをかなり重要視していますが、そもそも事業計画を作っていない、あるいは数字だけの計画に終始してしまう会社は意外に多くみられます。
しかし、事業計画は業績アップにつながる大切な計画です。
業績の伸び悩みでお困りの、特に中小企業の経営者の方はぜひ事業計画を作ってみることをおすすめします。
今回は事業計画の作り方についてのお話です。
WEB上ではさまざまなサイトで事業計画の「作り方」が紹介されていますが、私からは「考え方」にもスポットを当てて、業績アップにつながる仕組みを提示したいと思います。
目次
事業計画とは?
「事業計画」とは、名前のとおり事業を運用していくために必要なプランを分析し、計画していくものです。
自社の既存事業のサービスや事業内容についてはもちろん、新しいビジネスのコンセプトや市場調査、売上や経費などの事業収益の提示、マーケティング方法などを記載し、どのように実行していくべきかを計画していきます。
要は、計画した事業内容を実現するための具体的なフローを作成するのが、事業計画というわけですね。
このフローを社員全員にわかりやすく簡潔に文書化したものを「事業計画書」といいます。
一般的には経営者や事業責任者が事業計画を作ることが多いですが、ヤマチユナイテッドでは幹部や社員を巻き込み、みんなで考えてもらったものを形にしていきます。
事業計画そのものももちろん重要ですが、作り上げるまでのプロセスを非常に重要視しています。
自分たちで意見を出し合って作った事業計画には納得感があり、その後の業務にも自主的に取り組みやすくなると考えています。
事業計画と経営計画の違いは?
現状から目標へと至るまでの筋道として存在するのが「経営計画」で、経営計画の目標を達成するために一つ一つの手順をどう実現させていくかを具体的に示すのが「事業計画」です。
経営計画という地図と、事業計画というルートの2つがあって、はじめて事業を前に進めることができます。
目標を達成したなら次はさらに上を目指すために。
未達成ならやり方を見直して、課題をクリアするためにも必要なのです。
また、新規事業を立ち上げる際に重要になる「投資回収計画」というものもあります。
こちらについては「投資回収計画と収支計画は違う?事業を成功に導くポイントとは」で詳しくご紹介しています。
さらに、事業部内に複数存在する部門それぞれが効果的かつ有機的に機能するように、当社では「部門方針書」も導入しています。
「部門方針書とは、会社の中の事業部ごとに作る、目標達成のための具体的な道筋プランのこと。」
興味のある方はぜひあわせてご覧ください。
事業計画を作るメリット
事業計画を作るメリットについても、詳しく見ていきましょう。
方向性を共有して業績アップ
事業計画を作ることにより、仕事の目的、方向性を明確にし、共通のものとすることで社員のモチベーションが上がれば、業績アップにもつながると思いませんか?
業績アップだけでなく、主体的に働く社員がより増えてリーダーシップをとれる人材が育つなど、会社に大きなメリットをもたらすでしょう。
「昨年これだけの利益があったから、来期はこのぐらいを目標に」とは、どの企業でも考えること。
会社としてどんな方向へ向かうのか、社員は普段何を目指して仕事をするのか、という目的がない状態でただ利益を追求しても、達成か未達成かという結果が残るだけ。
これでは手応えもやりがいもないものになってしまうため、明確な事業計画書を示すことは大変有効です。
客観的に自社の強みや弱みを把握
事業計画を作っていく中で、目標をどう達成するかを考えることで、客観的な自社の強みや弱みなどが明確になるというメリットもあります。
自社や自分の事業、競合他社などの状況を客観視すると、新しい事業につながるアイデアが生まれる可能性もあります。
現在の事業についても、新しい切り口から顧客を開拓できるようになるなど、業績アップにつながっていくでしょう。
資金調達時の提案として有効
今回ご紹介するのは、社内の生産性や業績を上げるための事業計画ですが、一般には融資や出資の申請時に事業について伝えるために、対外的に事業計画書を作成することもあります。
銀行やベンチャーキャピタルなどに融資や投資を求める際には、事業の概要や魅力を伝えるために事業計画書を提出します。
この場合、資金調達ができるかどうかは事業計画書の良し悪しにかかっています。
想定顧客、ビジョン、ビジネスモデル、提供価値、市場規模、ニーズ検証の結果、競争優位性、マーケティング戦略などの項目を盛り込み、しっかり魅力を伝えることが大切です。
事業計画の作り方 -ヤマチユナイテッドの場合-
一般の企業でとても多いのは、事業計画の中身も根拠も理由も全部社長の頭の中にしかないというケース。
決算期末か期初の1〜2週間で書類を作って「こうやってくれ」と指示が出されます。
この方法だと、部下からしてみると上から降ってくる計画なので身が入らなかったり、意図が十分に伝わってこなかったりということもあるでしょう。
そのままでは非常にもったいないです。
ここでは当社ヤマチユナイテッドを例に、事業計画を作る際の流れと共に実際の作り方をご紹介していきます。
事業計画の作り方①会社のビジョンを明確にする
まず、事業計画を作ろうという時に明確にすべきは「ビジョン」です。
事業計画を作るにあたって、お互いの価値観を共通のものとした上で方針をすり合わせていく必要があります。
企業としては、まず経営者を含めた幹部が同じ志をもって事に当たることで社員の見本となります。
将来的にこうなりたいという会社の理想像を具体的に思い描いてください。
どのくらい先かというと、3年、5年、7年、10年のいずれかで区切るのが一般的ですが、3年後、5年後あたりがリアルにイメージしやすいと思います。
当社では、最初に今後3年間の中長期ビジョンを設定しています。
事業計画の作り方②中長期的な経営計画を決める
次にビジョンに応じた中長期的な経営方針を決定し、それに合わせて経営計画を作成します。
経営計画から逆算して作る単年度の計画が、事業計画というわけです。
経営計画の作り方のポイントや経営計画発表会の重要性などについては「経営計画発表会の目的とは?成功ポイントや見逃せないメリットも」も、あわせてご覧ください。
事業計画の作り方③事業計画の案を何度も議論する
ここからは社員も巻き込んで決めていくため、計画の完成までには約半年と長い時間がかかります。
当社では、当初立てた事業計画に対し現状把握・要因分析・重点課題を振り返ります。
そして振り返りを元に、次年度のテーマ・方向性や、方策(対策や測定可能な指標)を考えています。
3月のスタートに向けて9月あたりから決算予測に着手し、同時に「次はどうやっていこうか」という議論も始まります。
こういった会議は1回だけでなく、何度も場を設けて煮詰めていきます。
なぜかというと、幹部から各事業部の責任者、マネージャー、リーダー...というように末端の社員まで下ろしていくことで、全員にとことん考えてもらいたいからです。
各事業部、各部門でどうすれば営業利益や生産性を上げられるかという、事業計画の案をみんなで考えるプロセスが大切なのです。
事業計画の作り方④案を持ち寄って修正する
事業計画を社員に考えさせるとはいっても、何でもはじめから自由に考えさせて、そのままOKを出して、その通りにさせるということではありません。
取りまとめた案を持ち寄って議論を重ね、見直すべきところや足りないところがあれば「またみんなで考えよう」と下へ戻します。
すると修正案が上がってくるので、何かあればフィードバックしてまた戻す、というように繰り返すことで改善していきます。
社員とこのようなやりとりをするには、日頃から教育的指導をしたり、時には厳しくフィードバックをしたりしながら、時間をかけてコミュニケーションを取る必要があります。
意見のキャッチボールができるようになれば下地はOKです。
時間はかかりますが、現場の一人ひとりに考えさせることが社員の育成につながります。
事業計画を作る時の考え方で重要な4つのポイント
業績アップにつながる事業計画を作るためには、経営者は4つのポイントを押さえておく必要があります。
事業計画を作る上で大切にしたい考え方についてご紹介しましょう。
1. 事業計画は「自分たちのため」のもの
銀行から融資を受ける時など、対外的な目的で計画書を作成することもありますが、みなさんが作るべきは会社のため、自分たちのための事業計画。
社内文書なので、会社や事業内容によって盛り込まれる項目は異なっていて当然です。
ちなみに当社の場合は、売上、粗利、粗利率、人件費、他経費、経費計、営業利益、生産性人数、組織人数、生産性などの項目で数値目標を立てます。
他にも、組織のあり方、商品・サービスの販売手法、労務環境など、数字以外の項目も入った計画書になっています。
2. 社員全員でビジョンを共有することが大切
業績が上がる事業計画を作るには、社長以下の社員全員が価値観を共有していることがポイントです。
「3年後にはこんな会社にしたい。そのためにできることをみんなも考えてほしい」というように、思い描いたビジョンをどんどん幹部以下へ、上から順番にすり合わせながら下ろしていってください。
ただ、そうはいってみても現場から率直な声が上がってくるまでには時間がかかるかもしれません。
普段から社員同士のコミュニケーションを密にして、発言しやすい雰囲気を作っておくことも大切です。
3. トップダウンを捨てられるかがカギ
現状、トップダウンで経営を進めている方は「社員を巻き込む」という経営方針に転向できるかどうかが、分かれ目だと思います。
トップダウンがダメだというわけではありませんが、ボトムアップやミドルマネジメントを重視する経営方式をとる決断をしないと、当社のような事業計画の作り方はできません。
トップダウンかボトムアップかで悩んでいる方は、「会社の意思決定。人や組織が動くのはトップダウンよりボトムアップ?」も、ご参考ください。
経営者の意思を伝えつつ、社員が主体的に働ける会社にするために必要な仕組みについて紹介しています。
4. 経営数字をオープンに
経営者の方にとって高いハードルと思われるのが、社内で経理上の数字をオープンにできるかどうかということ。
社員に事業計画を考えさせるにあたっては予算の計上にも関わりますから、会社の経済状況の情報は不可欠です。
経営者の中には、利益が出ていても出ていなくても、数字を社員にオープンにする勇気が出ないという方も多いように思います。
理由は「あまり儲かっていないから」「部門間で収益の差がありすぎてそれぞれに気を遣って出しづらい」「安心してぬるま湯に浸かるんじゃないか」など、さまざまです。
しかし、経営数字を隠したままだと先述したような方法は一切機能しないままです。
勇気をもって経営数字をオープンにしてこそ、業績アップにつながる事業計画を作ることができるのです。
事業計画の作り方や考え方のポイントを押さえて実践しよう
事業計画とは、事業を運用するために必要なプランを分析し、計画するものです。
事業計画を作ることで会社の方向性が共有でき、自分の事業を客観的に見ることができるようになるため、業績アップにつながります。
また、資金調達の際には対外的に作成した事業計画書が必要です。
事業計画を作る際には、まずは会社のビジョンを明確にします。
次に中長期的な経営計画を作成し、そこから逆算して単年度の事業計画を作っていきます。
社員みんなを巻き込みながら事業計画を立てるために、何度も会議の場で議論して事業計画案を考えてもらいましょう。
案を持ち寄って、必要であればフィードバックして戻し、何度も修正して最終的な事業計画を作っていきます。
この時、経営者に大切なのは「事業計画は自分たちのために作っている」という意識を持つこと、ビジョンを共有する重要性を認識しておくことです。
また、トップダウンの経営手法や経営数字のクローズ化など、今までの経営スタイルを捨てることができるかも鍵となってきます。
事業計画を作っていないという経営者の方はぜひこれから作ってみてはいかがでしょうか。事業計画の立て方がわからないという方は、ぜひこのコラムを参考に作ってみてください。
すでにやっている方も、計画を作る意味を再考する必要があるかもしれませんよ。
ヤマチユナイテッドでは会社経営のノウハウやミッションの導入方法などワークショップやセミナーなどのイベントを随時開催しています。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。