部門方針書とは?例文とともに作り方や効果的な活用方法を解説!

業績管理・経営計画

山﨑 舞
山﨑 舞

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの山﨑です。

コロナ禍に見舞われたこの3年間、業種によっては大きな打撃を受けた企業も少なくありません。

今まで好調だったことがうまくいかなくなり、何とか乗り切った今も試行錯誤を重ねているところもあることでしょう。

当グループは多角的に事業を展開していますから、業績の良い会社が苦しい会社を支えるというやり方でグループ全体の目標を達成できるよう努力してきました。

その過程で生まれたのが「部門方針書」です。

部門方針書は、部門ごとの業務の見直し・立て直しに非常に有効に働くだけでなく、業績改善した後に、社員の人数が増えた時にも非常に役に立つツールとなります。

当グループで作成した書式のサンプルも公開しますので、ぜひご活用ください!

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目次

  1. 部門方針書とは?A4サイズ1枚で事業戦略を簡潔に伝えよう
  2. 部門方針書作成のポイントは?自分たちで作るからこそのメリットも
  3. 部門方針書の作成は事前の準備がカギ!具体的な事例や例文も確認
  4. 部門方針書の効果を発揮するには作成後の活用が重要
  5. 例文を参考に目標達成のための道筋=部門方針書を作ろう

部門方針書とは?A4サイズ1枚で事業戦略を簡潔に伝えよう

部門方針書とは、会社の中の事業部ごとに作る、目標達成のための具体的な道筋プランのこと。

A4サイズの紙1枚に「目標」「現状」「課題」「対策」を記載し、目指すべき方向性と、そこへ向かうための具体的な行動が一目でわかるようにしました。

コロナ禍以前、当グループでは年に1回、事業部ごとに経営計画書を作成していました。

具体的には、単年度および中長期の数値目標を達成するための計画を立てるにあたり「事業部の現状」と「今後目指すべき方向性」といった内容を、人的資源やビジネスモデルなどさまざまな切り口で分析し、経営計画書に盛り込んでいくことを何年もやってきたんです。

それがコロナ禍に入ると、苦しくなった事業を好調な事業でフォローするなどして支え合いながら「みんなでグループ全体の目標を達成するためにはどうしたら良いか」と考えるようになりました。

同時に、業績達成のための進捗管理をもう少し細分化したいという思いもあってスタートしたのが、3ヶ月に1回、計画を振り返りながら「部門方針書」を作成し見直しするという取り組みです。

今までは決算時期を4カ月ごとの3期制としていましたが、3ヶ月ごとのクォーター制に変更しました。

事業部のメンバーの目線あわせを行うため、特に人数が増えてきた際には、事業戦略が簡潔にまとまっている部門方針書は絶対に必要だと、今では考えています。

部門方針書作成のポイントは?自分たちで作るからこそのメリットも

当グループの部門方針書作成のポイントは、事業部のメンバーの話し合いによって作られていくというところ。

計画達成の根拠を自分たちで積み上げることで、得られるメリットがたくさんあります。

<メリット>

  • 上から降りてきた指示ではなく自分たちが組み立てた戦略であるため、責任を持って自主的に実行に移せる

  • 作成の過程で目指すべき方向とやるべきことが明確になっているので、事業部全員が同じ目的意識を持って具体的な行動をとることができる

  • 部門方針書を基に、自分たちの行動を定期的に振り返ることで知識と経験が蓄積される

部門方針書の作成は事前の準備がカギ!具体的な事例や例文も確認

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部門方針書を作成するには、事前の準備が大切です。

具体的な事例や例文を紹介しながらそれぞれ解説します。

部門方針書を作成するまでの流れ

部門方針書自体はとてもシンプルなつくりになっていますが、これを効果的なものとするためには事前の準備が必要となります。

部門方針書を作成する前の事前準備として「組織の見直し」「売上要素分析」「KPIツリー作成」があります。

それから、部門方針書の作成に入ります。

事前準備①組織の見直し

まずは、売り上げに関して「どの部署がどのような責任を負っているか」を、改めて見直してみましょう。

例えば、うちのグループには住宅事業を手がける「ジョンソンホームズ」という会社がありますが、ここはたくさんの部署を持っています。

住宅部門一つにしても、売り上げに関わる部署は営業部のほかに集客を担うマーケティング室があり、設計部があり、施工管理部があり...といろいろ。

「間接部門だから目標がなくても良いよね」ではなく、これらすべてが売り上げに紐づいた行動ができないと意味がないので、細かく計画を立てるべき部署はどこだろうと、責任分化のようなことを初めにすべきだと思うのです。

今回、ジョンソンホームズが部門方針書を取り入れることになって、マーケティング室はしっかりと目標を設置して、非常に熱心に集客に励んだと聞いています。

普段は広告やフライヤーなど販促物の作成に追われるようなことが多い部署ですが、本来の第一目標は「お客様を集める」というところ。

「マーケティング室にも部門方針書を書いてもらった方が良い」と判断し、実行した結果が集客アップにつながったのです。

仕事の優先順位をつけるためにも、組織について見直してみましょう。

事前準備②売上要素分析

自社の売り上げがどのような要素から成り立っているか、部署ごとに分析することも重要です。

当グループでは、売り上げにつながっていく数値をこのような図でチャート化しました。

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売上要素分析をすることは、売り上げの構成要素を整理し、もっとも重要な行動は何であるかを抽出するのが目的です。

事前準備③KPIツリー作成

次に、売上要素分析で整理した情報から重要指標を設定し、KPIツリー化することで関係性をチェックします。

ちなみに、売上要素分析からKPIツリー作成、部門方針書作成に関して、建付けとしては下の図のようになっています。

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具体的な数字は伏せますが、例えば、飲食部門で作成する場合について考えてみましょう。

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「KGI(ゴール目標)」を達成するために、考えられる対策「KSF(達成のため必要な要素)」を精査して、「KPI(中間の目標)」を設定します。

これを間違うと達成できるものもできなくなりますから、事前の分析をしっかり行ってKPIを決めましょう。

当グループでは多くても3つまでのKPIを設定することにしています。

3つ以上になると追うものが多すぎて、目的意識が分散してしまうからです。

また、KPIには「コミュニケーションの質を上げる」「会話量を増やす」というように数値で表現できないものを設定することはできません。

この飲食部門の例では「客単価向上」「予約数増加」「FL比率(売り上げに対しての食材費と人件費の割合)低下」の目標数値をKPIに設定しました。

そして、それぞれを叶えるための具体的な行動目標を「KDI(数値化された測定可能な行動目標)」として記載しています。

KPIをツリー形式で書き込むことにより、最終目標であるKGIを達成するための思考やアクションが明確になり、KGIとの関係性もわかりやすくなっています。

部門方針書の作成

事前準備ができたら、ようやく部門方針書の作成です。

部門方針書の作成は、KPIツリーの内容を文章として落とし込んでいくだけ。

先程ご紹介した飲食部門の部門方針書を、例としてご紹介します。

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部門方針書の「KGI」には「最終目標数値」を記載。

「KPI」として、「KGI達成のための先行指標」を示します。

「今どうなっているか」を現状把握し「達成できない要因が何であるか」を課題として、抽出することが大切です。

そして、3つの「KPI」を達成するのに必要な行動対策を「KDI」として明記しましょう。

サンプルの事例や例文も参考に、ご自分の事業にあわせた部門方針書を作成してくださいね。

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部門方針書の効果を発揮するには作成後の活用が重要

当然、部門方針書は「作って終わり」ではありません。

部門方針書の効果を発揮するには、作成後の活用が重要となります。

部門方針書は、ツールとしてうまく使うことでその真価を発揮するものです。

さまざまな機会を作って活用しましょう。

当グループの部門方針書の活用例をご紹介します。

【活用例】振り返りの場を設計し、頻繁に進捗を管理する

当グループではコロナ禍を受けて、週1回30分のオンライン朝会(あさかい)を始めました。

その中でKPIを中心とした振り返りの場を設け、売り上げと粗利を確認し、KPIの達成度を発表します。

また、事業部ごとに毎週行われる業績検討会議では、3ヶ月先の目標として設定したKPIを月単位、週単位に割って見ていき、達成率を社内SNSで発信する決まりになっています。

さらに、マネージャー以上の役職者が出る月1回の経営会議、事業部長を集めて行われる3ヶ月に1回の振り返り発表会と、嫌でも振り返らざるを得ない機会が満載です(笑)。

ですが逆に、これだけやっておけば未来まで確実に前進できるんです。

定期的な振り返りは必ず行うべきで、KPIの達成率については、決算時期だけでなく月ごと、週ごとという短いスパンでもチェックしましょう。

達成に向かうための道筋を確認し合うことがもっとも大切だと思っています。

KPIについては「KPI設計のポイントとは?KGIとの関係性と効果的な活用方法も」もあわせてご覧ください!

【活用例】部門方針書を公開し、部署同士の切磋琢磨を促す

当グループでは部門方針書を全部署で共有しており、他の事業部の部門方針書も見ることができるようにしています。

各部署のマネージャー以上の人間がよく見ていると思いますが、他部署の良いところを参考にしたり「こういう考え方もあるのか」と視野を広げたりするきっかけになっているようです。

ある事業部の部長は非常にロジカルな人物で、この人が作る部門方針書は誰が見ても筋が通っていて論理的。

指示が明確なので、部下にとっても何をやれば良いか、頑張りどころはどこかといったことがわかりやすいだろうなと容易に想像がつきます。

今回のコロナ禍のような予測し得ない状況になった時、わかりやすい方針を出して目指すべき方向性を打ち出していくことはとても大事。

その点でもこの事業部長はとても優れており、実際にこの事業部は業績を上げています。

こういう実績に他部署が刺激されると、切磋琢磨のきっかけにもなったりしますね。

また、多角経営をしている企業なら、業種がまったく違ってもビジネスモデルが似ているとKPIが似てくるという面白い発見もあるかもしれません。

当グループでも、介護事業と飲食事業、一見異なる事業分野ですが、どちらも店舗展開をしているという点で一部KPIや戦略が似ているということが見えて新鮮でした。

「部下に自主的に行動させたい」「各メンバーに戦略を徹底させたい」と考えるなら、まずは部門方針書から手を付けてみてはいかがでしょうか。

システム経営の第一歩になるはずです。

【活用例】実践を通じて、中堅社員にPDCAサイクルを学ばせる

自分たちで情報を分析して計画を立て、行動に反映させ、結果を評価・反省して修正を施す。

当グループでは、部門方針書を採用したことをきっかけに、こうしたPDCAサイクルが自然に実践される機会が増えました。

中小企業では中堅社員教育に外部研修を取り入れるほどの体力がないところも多いと思いますが、うちではまさに中堅クラスの社員たちの成長に大きな手ごたえを感じています。

部門方針書が中堅クラスの社員の成長を促す実践的な教材になることで、会社全体にとっても有益な結果が生まれるでしょう。

例文を参考に目標達成のための道筋=部門方針書を作ろう

A4サイズの紙1枚で「目標」「現状」「課題」「対策」が一覧でき、目指すべき方向性と、そこへ向かうための具体的な行動を記した「部門方針書」。

部門方針書は、事業部のメンバーが自分たちで作成するようにしているため、同じ目的に向かって各々の自主的な行動を促し、振り返りを行うことで知識と経験を蓄積できます。

部門方針書を作成するまでの流れとして、まずは売り上げに関して、どの部署がどのような責任を負っているかを改めて見直します。

次に、売り上げがどのような要素から成り立っているか、部署ごとに分析。

その分析に基づき、最大3つの数値目標を設定し、達成のための具体的な行動目標を設定し、導き出されたものをアウトプット化したものが部門方針書となります。

部門方針書を最大限に活用するためには、作成後の扱い方が重要です。

中でも定期的な振り返りは必ず行うべきで、達成に向かうための道筋を確認し合うことがもっとも大切だと思っています。

他にも、社内で部門方針書を公開することにより部署同士の切磋琢磨を図ったり、中堅社員がPDCAサイクルを身につけるための実践的な教材になったりと、会社全体にとっても有益な結果が生まれるでしょう。

当グループでは、事業部のメンバーの目線あわせを行うために、今や必須のツールとなっています。

部門方針書の例もぜひご参考ください。

ヤマチユナイテッドでは、社員教育に関してさまざまな角度から取り組んでおり、ワークショップやセミナーなどでもご紹介しています。

スケジュールはホームページでチェックしてみてくださいね。

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