経営計画発表会の目的とは?成功ポイントや見逃せないメリットも
業績管理・経営計画
こんにちは、石崎です。
みなさんの会社では、毎年どのような経営計画を立てていますか?
また、経営計画を立てた方は、経営計画発表会を実施していますか?
実践塾を受講する経営者の方々も、目標達成のために筋道立てた計画書を用意している人、とりあえず数字の目標を掲げている人、イメージはあれど明文化していない人などさまざまです。
今回はそもそも経営計画がなぜ重要かというところを起点に、それを全社員に周知するための経営計画発表会を行う目的について、当社のやり方を含めてお伝えしたいと思います。
目次
1.経営計画発表会を行う前に、経営計画の立て方も重要
会社として目指すところへどのように到達するかを示したものが経営計画です。
数字の目標だけ、あるいは社長の頭の中にしかないイメージだけの経営計画では、今回お話しするような経営計画発表会を行う意味がありません。
また、内容もさることながら、大切なのは計画を立てるまでのプロセスです。
当社が経営計画を立てる際のプロセスと重要視しているポイントをご紹介しましょう。
経営計画は時間をかけて、数字を明確に
私たちは新年度が始まる半年ほど前から計画立案に着手します。
各事業部の責任者が持ち寄った素案を幹部会議で検討し、その結果を下へ下へと下ろして現場の声を吸い上げたら、また幹部会議で煮詰めるといったことを繰り返すので、それくらいの時間が必要なのです。
当社では末端の社員に至るまで経営に参加してもらう「システム経営」という手法をとっており、経理上の数字をすべてオープンにしているからこそできることです(システム経営については「システム経営の3本柱」をご覧ください。)。
数字を明確にすることによって経営計画発表会の場においても、各部署の業績がどうであるか、どういう計画を組むのかといったところが、幹部以外の社員にもより深く理解できるようになります。
そうでないとせっかく発表会を行っても、方針を伝えて「今年度もがんばります」というような、ふわっとした内容で終わってしまいがち。
特に多角経営を手がけている企業では、各事業部の事業モデルや収益構造が他の事業部の社員にも伝わりやすい経営計画を作成することが重要です。
当社では完成した経営計画を冊子にまとめて、発表会の時に全社員に配布しています。
2.経営計画発表会の主な目的は「社員が得られる3つの機会」
一般的な経営計画発表会の目的と言えば「企業の方向性を明確にし、社員の士気を高める」、「外部関係者に向けての理解と協力の要請」などがパッと浮かぶと思い浮かぶのではないでしょうか。
当社の経営計画発表会は「社員のための経営計画発表会」という特色が強いものになっています。
当社の経営計画発表会は社内イベントとして「キックオフ」という名称で、ここ数年は期末に当たる2月末に行っています。
期末でも、期初でもどちらでも良いのですが、いずれにしても、もっとも多くの社員が参加できる時期を見計らって開催するのがベストです。
一人でも多くの社員に参加してほしい、そう思う理由は「共感」「成長」「感謝」という3つの機会を得られる場を設けたいから。
これらが当社の経営計画発表会の主な目的となっています。
①共感
グループが大きくなると、トップである社長が全社員に向けて直接話すことがなかなかできなくなります。
そこでこの場を利用して、グループ全体でどこを目指すのか、全体観も含めた方針を理解して共有しようということです。
社員一人一人がグループの方針を改めて確認しつつすり合わせをし、自分の立ち位置を踏まえた上でどう行動するかを考える機会としてほしいのです。
②成長
グループのほぼ全員が集まるのはこれが唯一に等しいですから「うちの会社って大きいんだな」「あの部署ではあんなことをやっているのか」「いろいろな人がいるな」といった気付きも多いことでしょう。
部署同士で協調できることがあれば一緒にやってみたらいいのですが、相手が何をしているのかわからないと発想すら生まれません。
他部署の発表を見て、あるいは他部署の社員との交流を通じて互いに刺激を受けた時こそチャンスです。
また、成功事例を聞いて「いいな」「すごいな」と感じたことを取り入れて、立場の上下は関係なく、自身の成長につなげていく場でもあると思います。
③感謝
現場で働いている若手社員にぜひ実感してほしいのが感謝の気持ち。
経営計画発表会では利益的なこともつまびらかになるので、部署ごとの貢献度の高低もわかります。
その中で自分の守備範囲や役割を自覚すると同時に、この大きいグループのみんなが仲間なんだという感覚を共有してもらいたいのです。
会社や事業が違っても利益は合算して発表するので、持ちつ持たれつといったところでお互いに感謝しながら働いてもらうことも狙いの一つです。
このほか、経営計画発表会の目的として、取引先や銀行の担当者、税理士などを招いて対外的に自社の取り組みや業績を知らせたいという企業もあるでしょう。
先述のように当社の場合は「社員によい影響を与える」ことを目的としたキックオフであるため、社外向けのプログラムもないため来賓はありませんし、外部の人に講演を依頼することもしていませんが、そこは経営者の考え方次第だと思います。
3.経営計画発表会の目的を達成・成功させる5つのポイント
今まで経営計画発表会を行ったことがないと、事前準備やプログラムの構成に迷うかもしれません。
社員に「参加してよかった」と思ってもらえるよう、成功のためのポイントをいくつかご紹介しましょう。
社外に会場を設ける
経営計画発表会の会場はいつもの会議室でもいいのですが、時には場所を変えることも大事だと思います。
多少コストはかかりますが、特別なイベントであることを意識させるためには必要な装置。
当社でもかつて「温泉キックオフ」を泊まりがけで開催したことがありました。
会館やホテルの一間でもいいですから「いつもと違う場所」で行うことで、記憶に残りやすいイベントとなるはずです。
当日の講演・発表内容をすり合わせておく
社長や幹部の講演や各部署の責任者が発表する内容は、その年の経営計画のテーマに言及し、ブレないものにする必要があります。
聞き手に違和感を抱かせないためであることはもちろん、繰り返しテーマに触れることによって「今年度はこういう方針なのだ」という意識を浸透させる効果もあります。
社内講師を選出する
これは当社で非常に好評を博しているプログラムの一つです。
社内講師といっても専門的な知識は必要ありません。
一般社員の中から面白い話をしてくれそうな人、いい成功事例を挙げてくれそうな人を幹部が選出し、発表会で登壇してもらうのです。
例えば「チーム運営がうまくいき、業績が上がって目標達成が続いている」という30代のマネージャーの話で発奮する人がいたり。
20代半ばでリーダー職に就くことが決まった若手が抱負を語れば、同期が「俺たちはまだなのに」と、してやられた感を隠しきれなかったり。
ほかに失敗談からの打開策とか場数を踏んだ後の成長体験とか、現場の人間が興味を持って耳を傾けるようなリアルな話が出てくるので、事業部長の話よりウケがよかったり。
もちろんこれもどのような内容の話になるか、事前に打ち合わせをしておく必要があります。
発表の持ち時間は1人あたり10分〜15分が適切。5分では慌ただしく、15分を超えると聞き飽きてしまいます。
アンケート用紙を配布する
感想を提出するようにしておくと、きちんと聞いてくれるだろうという思惑もあります(笑)
内容に対して幹部が一喜一憂することはありませんが、すべて目を通して、業務改善に関する意見などは各部署へ回して検討してもらっています。
経営計画発表会と懇親会をセットに
せっかく経営計画発表会という共有の場があったのだから、その後は懇親会で交流の場を設けてあげるとよいでしょう。
ちなみに、当社ではグループ全体の経営計画発表会のほか、会社単位、事業部単位のキックオフを春、夏、秋の3クール制で4ヶ月ごとに行っています。
計画の進捗状況を振り返り、必要があれば対策を講じる目的の会合ですが、そのあとはそれぞれに懇親会という流れ。
ここで盛り上がるのが表彰のイベントです。
営業職なら達成賞やインセンティブで日頃の働きが報われますが、縁の下の力持ちとして働いてくれているサポート部門の社員にはなかなか日が当たりません。
そこで幹部推薦により、年1回程度「がんばったで賞」「○○してくれてありがとうで賞」といった賞を10人20人と多くの社員に贈っています。
社内講師もそうですが、経営計画発表会をきっかけに、普段ステージに上がらない人を上がらせること、極力多くの社員を当事者として参加させることは大変重要だと考えています。
4.経営計画発表会は目的・課題に合わせたプログラムを
参考まで、2019年度の当社の経営計画発表会のプログラムを掲載します。
言うまでもなくこれは一例で、一部定番はあっても過去20年ほどの中で相当内容は変わってきました。
以前は計画内容を一つ一つ説くような時期もありましたし、「営業利益とは」というように経営の基礎を学ぶようなことをやっていた時期もありました。
ここ最近は連邦経営の強みを最大限に生かせるよう、各事業部間の相互理解を深めるための経営計画の勉強会といった意味合いが強くなってきています。
同じ内容を踏襲するばかりではマンネリになりますから、経営計画発表会のプログラムは毎年の経営上のテーマや目的、重要課題に合わせて、むしろ進化させていくべきものであると思います。
5.目的が明確な経営計画発表会は多大なメリットにつながる!
経営計画発表会を行う際、当グループの場合はほとんどの社員を1日休ませることになるのでコスト的には大変です。
ですが目的を明確にした経営計画発表会は、縦割りになりがちな多角経営においては横の連携ができる、他の事業部や部署と互いの理解が深まる、仲間意識が生まれるといったメリットも多大です。
人数が多ければ多いほど、事業が多岐に渡れば渡るほど、発表会という場を設けた方がいいのです。
社内のイベントですから、多少失敗したり段取りが悪かったりしてもあまり気を遣いすぎる必要はありません。
会社や事業の大小にかかわらず、まずは形通りでもいいですから、やってみることが大事ですよ。
ヤマチユナイテッドでは、このような会社経営に役立つノウハウなどワークショップやセミナーなどのイベントも随時開催していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。