中小企業が勝つための経営戦略フレームワークの使い方は?ヤマチの事例も確認
業績管理・経営計画

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
現在の事業に対して「これからも今のやり方で通用するのか?」と不安を抱えていたり、「これ以上伸ばすのは難しいのでは」と限界を感じていたりする場合、次の一手を考えなければなりません。
新規事業によって柱を増やすこと、あるいは既存事業をブラッシュアップしていくことが成長の鍵であるとわかっていても、何を基準に行動したら良いか迷っているという声もよく耳にします。
特に、これまで「成功するかどうか、まずはやってみないとわからない」という姿勢で経営を進めてきた場合、社員を巻き込んで挑戦するには「納得できる根拠がほしい」と感じることもあったのではないでしょうか。
また、ようやく一歩目を踏み出したとしても、すべてが社長の頭の中にだけあり、社員に事業戦略の意図が正しく伝わっていないケースもしばしばあるようです。
経営戦略、事業戦略は、意図が伝わってこそ最大の効果を発揮します。
そのために役立つのが、経営戦略フレームワークの活用です。
今回のコラムでは、経営戦略の重要性から、経営戦略におけるフレームワークの役割についてお話します。
ヤマチユナイテッドが実践している「4つのフレームワーク」についても、ご紹介しますので、ぜひご確認ください。
目次
- 経営戦略の重要性から確認!なぜ「直感だけの経営」は限界を迎えるのか?
- 経営戦略を決めるまでの流れ
- 経営戦略におけるフレームワークの役割
- 【資料プレゼント】経営戦略構築に役立つ!ヤマチユナイテッドが実践している「4つのフレームワーク」
- 4つのフレームワークを活用して、経営戦略の勝率を上げていきましょう!
経営戦略の重要性から確認!なぜ「直感だけの経営」は限界を迎えるのか?
中小・中堅企業の経営者の皆さんにおいては、「なんとなくの感覚で会社を運営している」という意識の方は、今はもうほとんどおられないでしょう。
ただ、「去年こんな感じだったから、今年大きな手を打たなくても、ある程度自然と前年比102%か103%ぐらいはやれるだろう」と、頭の中のそろばんで勘定している方は案外多いような気がします。
「直感だけの経営」とはまさにそういったことで、全く意志がないわけではないとはいえ、その意志が表に出てきていないのです。
もっと言うと、「どこまで先を考えて経営しているのか」が周りには見えづらくなっており、ここに次へのステップがあるように思います。
経営者も社員も、足元には目線を向けているので、今はそれなりにやれている。
しかし数年後、10年後、さらにその先へのビジョンがあるかどうか。
また、ビジョンに基づく経営戦略があるかどうか。
それによって、足元でやることも変わってくるでしょうし、逆に変えなければならなないことに気付けないこともあるかもしれません。
「なんとなくの経営」から「意志ある経営」へ
「なんとなくの経営」や「直感だけの経営」は、とにかく目の前の状況に対応することが主になりがちなので、場当たり的なやり方になってしまいます。
その結果、タイミングを逃したり、対応が遅すぎたりすることにもなりかねません。
それを避けるためには、社長の頭の中にだけある「意志=なりたい姿」を言葉や行動で表現し、幹部や社員と共有することが大変重要です。
この「意志」とはつまり「ビジョン」であり、ビジョンから逆算される「中長期計画」であり、中長期計画から逆算される「単年度の経営計画」であると言えるでしょう。
これらをきちんと紐づけて、社員に明示するのです。
「何に向かって」「何のために」「何をどれだけやるのか」がはっきりしているのが「意志ある経営」だと思います。
経営戦略がある会社と、ない会社の違い
経営戦略がある会社は、明確な目標と計画が先にあるため、それを実行・管理する流れで物事を進めます。
もちろん、目標や計画はあくまで仮説ですから、実際に進めてみると差異が生じることはあります。
しかし、「その目標へ向かって行動する」という指針があるおかげで、ギャップをどう埋めれば良いかがわかりやすい状態です。
一方、経営戦略がない会社は、とりあえずいろいろ試してみるけれども「最終的にこうでした」という結果だけで終わってしまうことが多いでしょう。
結果が良かったならば「結果オーライ」ですが、悪かった場合は「何に対して良くなかったか」が不明瞭なまま、結果を受け入れるしかありません。
このような状態では、企業としての成長が鈍化し、停滞を招く可能性が高まります。
つまり、「直感だけの経営」には、いずれ限界が来るのです。
目先の売上ではなく、将来の方向性を描くために戦略が必要
売上はもちろん大切ですが、会社としての長期的な成長を見据えるのなら戦略は必須。
新規事業であるか、既存事業であるかに関わらず、「事業をどこまで、どのように育てていくのか」という成長戦略があって、初めて「今しなければいけないこと」が見えてきます。
中小・中堅企業でも「戦略的である」ことが成長の鍵
「うちのような中小企業に中長期戦略なんて、本当に必要なんだろうか?」と考える方も一定数いらっしゃるでしょう。
しかし、中小・中堅企業こそ、戦略的であることが今後の大きな成長の鍵となります。
そして、その戦略をしっかり考え抜くことが重要です。
この先の環境の変化もあれば、自社のリソースも限られている中で、どのように戦略を実現していくのか、どのように充実させていくのか、その道筋をきちんと描き、そして社内で共有することが求められます。
ここでいう「社内で共有する」とは、全社員共通の目標として理解し、浸透させるということです。
戦略構築にあたっては、フレームワークを活用することで考え方の道筋や骨子が明確になり、結果として成長の確率や速度をより上げることにつながると、私は考えています。
経営戦略を決めるまでの流れ
具体的なフレームワークをご紹介する前に、経営戦略を決めるまでの流れについて整理しておきましょう。
1.環境分析(内部環境・外部環境)
環境分析は「内部環境」と「外部環境」に分けて考えます。
現状はどうか、この先の見通しはどうなるか、それを踏まえた上でどのような状況に持っていきたいかを決めるのが経営戦略です。
言い換えれば、「現状分析 →現状把握→目標設定」というステップになりますね。
内部環境と外部環境とで、それぞれ分析すべき要素の例は以下の通りです。
<内部環境>
内部環境は自社に関する情報なので、比較的分析しやすいですし、細かい要素も集まるはずです。
「ヒト・モノ・カネ・情報・その他」の観点から、以下のような項目が挙げられます。
- ヒト:社員数/離職率/採用・教育の状況(新卒・中途)/年齢構成・平均年齢/従業員満足度(ES)/賃金水準 など
- モノ:サービス・商品/顧客満足度(CS)/得意先の状況/固定資産/支店・営業所など現有の経営資源/設備(維持管理・投資予定含む)など
- カネ:バランスシート/金融機関との関係性/キャッシュフローの体質/収益性 など
- 情報:ネットワーク/人脈/相談先(顧問契約やコンサルタント活用など)/社内の情報管理/情報共有とツール活用(DX化含む)など
- その他:社風/経営スタイル/組織運営の仕組み/ルール・行動規範 など
<外部環境>
外部環境については、調べられることに限界がありますが、できる限りの要素を集めたいところです。
- 市場性:市場環境/今後の見通し/傾向/規模 など
- 競合:競合他社の強み・弱み/自社との差別化ポイント/今後登場する可能性のある競合相手 など
- 法律・規制:緩和or引き締め など
- 人口動向:地域人口の現状と将来推計/都市開発の可能性 など
- 世界情勢:為替・株価の動き/輸出入/貿易収支/各国との関係性/国際紛争の影響 など
内部環境、外部環境ともに、要素を集めだすとキリがないのですが、自社に関係しそうな情報はしっかりとウォッチしておきましょう。
現状と今後の展開を見据え、環境を分析して、事前に準備できるものはしておかないといけないと考えています。
2.ビジョン・ミッションとの整合性
ビジョン・ミッションは、会社経営の根幹です。
自社で決定される全ての物事は、ビジョン・ミッションをベースに検討されます。
したがって、経営戦略や事業方針をどのような方向性で進めたいのか、今後どのような対策を打つべきかといったことも同様に、ビジョン・ミッションに紐づいていなければなりません。
事業の方向性や戦略が、グループのビジョン・ミッション、もしくはその中にある自社法人のビジョン・ミッションとずれていないかどうかのチェックをしっかりと行いましょう。
3.PDCAと戦略のズレ修正
ビジョン・ミッションとズレのない戦略を実際に動かしていく段階では、PDCA管理が肝です。
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)というサイクル。
このサイクルを定期的に見直しをかけながら、目標とのギャップを確認し、必要に応じて軌道修正を行います。
PDCAサイクルを効果的に回したい方は「PDCAサイクルを効果的に回す、中小企業のためのKPI管理法とは?」をご覧ください。
以上のような流れで、経営戦略、事業戦略を決めていくわけですが、特に環境分析の段階では、各種フレームワークを活用することが非常に役に立つと思います。
次項から、経営戦略におけるフレームワークの役割をご紹介します。
経営戦略におけるフレームワークの役割
経営戦略において、フレームワークが果たす役割は大きく分けて3つあります。
- 思考の整理、見落としの防止
- 社内共有の「共通言語」になる
- 忙しい経営者が正しく考えるためのツール
ここでは、一般的によく使われる経営戦略のフレームワークをご紹介しましょう。
SWOT分析
「SWOT分析」は、現状の強み・弱みを把握するためのフレームワークです。
新規事業案の評価、既存事業の強化ポイントの発見、リスク予測など、幅広い場面で活用できます。
縦軸にプラスの要因・マイナスの要因、横軸に内部環境・外部環境を配置し、以下4つの観点から自社の事業を分析します。
- S=Strength(強み)
- W=Weakness(弱み)
- O=Opportunity(機会)
- T=Threat(脅威)
「強み」は維持・メンテナンスを継続しながらさらに伸ばし、「弱み」は致命傷にならないように補修をして、平均値くらいまで持っていく(引き上げる)と考えるのが基本。
ただし、競合他社も自社以上の強みを打ち出してくる可能性や、環境の変化によっては強みが強みでなくなる場合もあるでしょう。
「機会」はプラス要因となる外部環境ですから、業界内の景気回復や規制緩和、市場拡大など、自社の事業成長に対してポジティブな影響をもたらす要素について検討します。
「脅威」は、業界の傾向や人口問題など見えているものもあれば、異業種参入、急な法改正、自然災害、パンデミックなど、予測可能なものから突発的なリスクまで含まれます。
現時点で見えていないものもありますから、何かが起きた場合に被害を最小限に抑えるための備えについて考えるべきところです。
3C分析
3Cは、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つを指します。
差別化戦略をどう立案するか、競合優位性をどう作るか、その上でターゲットをどこに絞るかと、思考を整理する時に役立つフレームワークです。
業界内での自社の立ち位置を明確にし、競合との差別化を図ることが主な目的です。
バリューチェーン分析
バリューチェーンを日本語で表現すると「価値連鎖」と訳されます。
自社にあるさまざまな職種を通じて、価値(利益)を生み出すまでの工程を明確にし、既存事業のコストの見直しや新規事業のコスト管理など、収益性を改善するための戦略構築に使われるフレームワークです。
例えば、「この工程は外注すべきか、内製のままが良いか、どちらにしたほうがコストが下がるのか」などといった見直しをするときにも役立ちます。
PPM分析
PPMとは、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」の略。
事業の成長度合いを測り、経営資源の投入先や投資配分を検討するために利用するためのフレームワークです。
以下の4つに分類して考えます。
- 花形(スター):市場成長率も市場占有率(シェア)も高く、積極的な投資対象
- 金のなる木(キャッシュカウ):市場成長率は低いが市場占有率が高く、安定した収益源
- 問題児(プロブレム チャイルド):市場成長率は高いが市場占有率が低く、今後の判断が必要
- 負け犬(ドッグ):市場成長率・市場占有率ともに低く、縮小・撤退の検討対象
「花形」に入れば攻めの投資を継続して良いだろう、「問題児」の事業は育成に入るか撤退を検討するか...というように考えられます。
市場成長率は低くてもシェアの高いところに入る事業は「金のなる木」とされますが、ここで生み出した利益を花形事業へ回す、といった他の事業との兼ね合いを考える戦略的な資源配分にも使えます。
市場成長率も市場占有率も低い「負け犬」は、資源配分の優先度が一番低いので、縮小・撤退の対象になるでしょう。
以上のようなフレームワークを活用することにより、効率的かつ有意義に環境分析に取り組めるので、経営戦略を立てる際には取り入れてみることをおすすめします。
【資料プレゼント】経営戦略構築に役立つ!ヤマチユナイテッドが実践している「4つのフレームワーク」
ヤマチユナイテッドでは、独自に「4つのフレームワーク」を構築し、事業戦略構築、ひいては経営戦略の構築に役立てています。
特に新規事業の立ち上げにおいて高い効果が得られるように作られていますので、皆さんにもぜひご紹介したいと思います。
①事業発想のヒントを見つける「SPADE+U(スペードプラスユー)」
新規事業のアイデアを発想する際に、「何ができるか?」をより広い視点から考えられるようにするため、6つの要素を掲げました。それぞれ組み合わせるとより良いでしょう。
S=Shift(転用)
他の業界の成功事例やビジネスモデルを自社の業界に展開できないか?
P=Pain(課題解決)
顧客の不満・不安・不便を解決できないか?
A=Advance(進化)
既存のビジネスを、より便利・安価・高品質・より高単価にできないか?
D=Disrupt(破壊)
業界の常識を覆すようなビジネスモデルを作れないか?
E=Enjoy(ワクワク)
楽しさ・感動・体験価値を提供できないか?
+U=Utilization(資源活用)
使い切れていない経営資源を活かせないか?
新規事業の発想法や発想力について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご確認ください。
新規事業が思いつかない時の発想法。人脈を広げてアイデアに繋げる
ビジネスモデルキャンバスとは?若手社員の発想力を養う事例も紹介
②展開手法を決定する「FORM(フォーム)」
新規事業の立ち上げとスケール方法を決定するための4つの選択肢を示しています。
F=Franchise(フランチャイズ・代理店活用)
他社の成功ノウハウやブランドを使って展開できないか?
O=Original(自社開発)
ゼロから自社独自の商品・ビジネスモデルを作れるか?
R=Resemble(成功事例の応用)
他社や他地域の成功事例を参考にし、少しアレンジできないか?
M=M&A(買収・事業再生)
既存の事業を買収・再生し、成長加速できないか?
③Go/NoGoの判断を助ける「ヤマチ流 成功可能性チェックリスト6(シックス)」
事業の成功可否を事前に判断するための6つの基準を設定しました。
- 顧客ニーズが本当にあるか?
- 競争環境と差別化ができるか?
- 収益性が確保できるか?
- スケールの可能性はあるか?
- グループ戦略と適合するか?
- リスクと撤退戦略は明確か?
④実行計画に具体性をもたせる「ヤマチ流 7W2H」
事業アイデアを具体化し、実行可能な計画に落とし込むために整理すべき9つの要素をまとめました。
Why(なぜやるのか?)
事業の目的や背景、解決したい社会問題や顧客の悩み、課題は何か
What(何をやるのか?)
どのような商品・サービスを提供するか、どのような価値を届けるか
Who(誰がやるのか?)
事業の責任者や推進チームのメンバーは誰にするか、必要なスキルや資格は何か
Whom(誰に提供するのか?)
ターゲット顧客となる人のペルソナ設定をどのようにするか
Where(どこでやるのか?)
地元、県内、国内、海外など、どこの地域、どのチャネル(オンライン/オフライン)で展開するか
When(いつやるのか?)
市場投入のタイミングをいつにするか
Which(どの手法で展開するのか?)
BtoC、BtoB、BtoGなど、どのビジネスモデルで展開するのか
提供形式は、単発型、サブスクリプション型、FC型など、どうするか
How(どうやって実行するのか?)
具体的な事業戦略、マーケティング戦略、販売チャネル、集客方法をどのようにするか
How much(いくらかかるのか?)
初期投資の規模、収益モデル、収益構造の設計はどのようになっているか
投資回収までの期間はどのくらいか
これら「4つのフレームワーク」に関しては、リンク先のコラムで詳しく解説しています。
新規事業の立ち上げを成功に導く4つのフレームワークとは?発想~実行までの型を作る方法
また、皆さんに「新規事業を成功に導く4つのフレームワーク」のフォーマットを差し上げますので、以下のリンク先からダウンロードしてご活用ください。
4つのフレームワークを活用して、経営戦略の勝率を上げていきましょう!
中小・中堅企業においても、いまや「戦略的であること」こそが成長の鍵です。
「直感だけの経営」を脱し、「意志ある経営」へと移行しなければ、いずれ成長は頭打ちになるでしょう。
また、いくら考え抜いた経営戦略でも、その意図が社員に伝わらなければ、十分な効果は発揮されません。
戦略は「社長の頭の中」だけにあるのではなく、社員と情報共有することによって、会社全体、グループ全体で明確な目標に向かって、経営計画・事業計画を進めていけるようになるはずです。
その際、フレームワークを活用することで、効率的かつ勝率の高い戦略を描くことができると思います。
世の中には、さまざまなフレームワークがあふれていますが、特に新規事業開発においては、ヤマチユナイテッドオリジナルの「4つのフレームワーク」が非常に高い効果を得られると思いますので、ぜひ活用してみてください。
当グループでは、フレームワークはもちろんのこと、さまざまなテーマに特化したセミナーや、私たちが実践している「システム経営」の手法を丸ごと学べる「連邦・多角化経営実践塾」を開催しています。
ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひホームページもご覧ください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。