「本音を言わない部下」の本当の理由は?会社が強くなるには聞く器が重要
採用・育成

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
経営者の皆さんは、自社の社員に対して、不安や不満を感じていることはないでしょうか。
例えば、「言いたいことがあっても言ってこない」ため、本当はどう思っているのか分からず、不安になる。
「言われたことはやるけれど、意見や改善提案が出てこない」ため、主体性が感じられず、成長意欲も見えないことに不満を抱く。
こういった声を経営者の方々からよく耳にしますが、そもそも社員の「本音」を探ってみたことはありますか?
そう尋ねてみると「いざ面談をしても雑談で終わってしまう」「何を聞いたら良いかわからない」と、コミュニケーションの限界を感じていたり、「部下の本音を聞いたことで問題が可視化され、対応せざるを得なくなる」といった恐れを抱いていたりするケースもあります。
しかし、会社を良くし、組織を強くするためには、「社員が本音を言える環境」であらねばなりません。
今回は、部下が本音を言わない理由や、本音を言える環境がもたらすメリットについて解説。
さらに、部下の本音を引き出すためにヤマチユナイテッドで実際に高い効果を上げている2つのツールをご紹介します。
社員の本音を「活かす」組織になるためのポイントについてもお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 本音を言わない部下の現状は?その原因から解説
- 部下が本音を言える環境のメリットは?本音を言える組織の文化も確認
- 部下から本音を引き出すコツは?コミュニケーション手法をご紹介
- 社員の本音を「活かす」組織になるには?
- 【資料プレゼント】「本音を言わない部下」の本音を引き出すためのツールとして、今回ご紹介したフォーマットをぜひご活用ください!
本音を言わない部下の現状は?その原因から解説
部下がなぜ本音を言わないのか、その理由から考えてみましょう。
もしかすると、それは会社に対する「諦めのサイン」かもしれません。
「言っても無駄だし、どうせ何も変わらない」と思ってしまっているのかも。
このコラムを読んでくださっている経営者の皆さんの中には、すでにそのことに気が付いている方は多いのではないでしょうか。
それなら私からは「まずは気が付いているだけでも非常に素晴らしいことです」と申し上げたいと思います。
というのも、そもそもそうしたサインに気が付かない経営者の方もたくさんいるのです。
黙る部下は「静かなSOS」を出しているかもしれない
では、部下のサインに気が付いていたとして、実際に部下の意見を聞こうとしていますか?
意見でなくとも、経営者あるいは幹部陣からの指示命令はもとより、会社の方針について部下がどう考えているか、どう感じているか、どう受け止めているかということに興味関心をお持ちですか?
もし「そんなの考えたこともなかった」と思ったのなら、部下だって「本音を言っても無駄」と感じるのも無理はありません。
社員が本音を言わない現状に対して、納得して黙っているのならまだ良いですが、諦めた結果、黙っているのであれば、それは「静かなSOS」かもしれません。
もし、皆さんの中に少しでも思い当たることがあるのなら、胸に手を当てて考えてみてください。
社風は「経営者が感じる空気」ではなく「社員が感じる空気」
ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、経営者である皆さん自身が無意識のうちに、社員の間に無関心や諦めの空気感が漂う社風を作っている可能性があるのかもしれませんよ。
社風は、自然発生的に作られるものではなく、経営者が感じる雰囲気でも、空気のことでもありません。
社風とは「社員が感じる雰囲気・空気感」のことであり、社風を作るのは経営者、もしくは経営幹部陣なのです。
部下の本音を潰していないか? 過去を振り返ることが大切
したがって、「部下が本音を言わない」と感じるのであれば、そうした社風を経営者の皆さん自身が知らずに作っている可能性があります。
振り返ってみてください。
例えば、会議やミーティングなどの社員が多く集まる場で、部下の意見や提案を頭ごなしに否定したことはないでしょうか?
「うるさい」「余計なことを言うな」「良いから言われたことをやれ」
そのように反対意見や出る杭を打ってしまった経験はありませんか?
部下は、もしかしたらかなりの勇気を振り絞って意見、提案、具申をしてくれたのかもしれません。
にもかかわらず、それを経営陣が聞けていない、受け止められていない、そんなことが繰り返されていたとしたら?
「うちの会社は元気がない」「自己主張が少ない」「主体性のない社員ばかりだ」と嘆く前に、まずは原因が自分自身にあると考えるのが、経営者としての正しい姿勢ではないでしょうか。
そこに気が付くことができれば、あとはそれほど難しいことではありませんよ。
部下が本音を言える環境のメリットは?本音を言える組織の文化も確認
それでは、「部下が本音を言える環境」とは、どのような環境でしょうか。
私は、たとえ耳の痛い言葉であっても、部下の本音を経営者や幹部陣が歓迎できる環境だと思っています。
言い換えれば、「部下が日頃思っていることを素直に口にできる」「気兼ねなく自分をさらけ出せる」「発言しやすい」「上司に話しかけやすい」「人格否定されない」という要素が揃っている職場環境ですね。
ただし、近年よく耳にする「心理的安全性」という言葉の解釈には注意が必要です。
これを「本当に何でもかんでも言って良い」「わがままが通る環境」と捉えてしまってはいけません。
「何でも言える雰囲気を作る」というふわっとした話ではなく、「本質的な議論を、建設的な方向性を持って進めることができ、その上で互いを認め合いながらコミュニケーションを重ねていける環境を整えること」が、「心理的安全性」の本来の意味だと思うのです。
「本音」を言える組織に共通する3つの文化
本音を言える組織には、共通して以下のような文化があります。
①部下が意見・提案するに至る前に、思考を巡らせるための情報が与えられている
部下が意見や提案をするにあたって、その前提として「考えるための材料=情報」が必要です。
ここで言う「情報」とは、経営数字のこと。
売上、利益、経費、KPIといった数字が社内で共有されており、かつ、達成のための目標が設定されていて、PDCA管理が行われている環境であることが重要です。
加えて、会社の方針や社内の取り組みの状況も共有すべき情報でしょう。
社員がこれらの情報を踏まえた上で考え、意見・提案をすることに意義があります。
そのためにも、まずは情報を共有する環境整備が必要です。
②意見を出した人を否定しない
社員が自社の情報を分析した上で発言する意見や提案というのは、非常にありがたいものになるはず。
「余計なことを言うな」と真っ向から否定しては、せっかくの改善のチャンスを逃すことにもなりかねません。
③出てきた声を、経営者もしくは経営幹部陣が真正面から受け止める
部下の本音を引き出すことができたら、経営者・経営幹部陣は真摯に耳を傾けましょう。
出てきた声を大切にしているかどうか、社員はしっかり見ています。
ここで適当に扱ってしまえば、「やっぱり言っても無駄だった」と思われ、元の木阿弥になってしまいます。
主体性と行動につながる「発言の文化」
こうした文化が社内に定着すると、社員の主体的な行動や、課題の改善にまでつながるというのが、本音を言える組織のメリット。
人はただ「やれ」と言われてもやる気になりませんが、自ら発言することによって主体性が引き出されるケースは多々あります。
自分から「ああしたい」「こうしたい」と意思表示をすると、たとえその要望が通らないとしても、社内の物事を決定するプロセスに参加している感覚が生まれます。
この「参加する」という事実こそが、主体性を引き上げることにもなるのです。
ですから、発言を歓迎する文化、もっと言えば、強制的にでも「考えて発言をしてもらう環境づくりをする」というプロセスを踏んでいただきたいです。
部下から本音を引き出すコツは?コミュニケーション手法をご紹介
「本音を歓迎する文化」とは、経営者が「耳の痛い言葉」に耐えられる器を持っていることであり、この器があるからこそ、社員は安心して本音を出すことができます。
時には、経営者・経営幹部陣が聞きたくないことや、想像と反対の意見を言われることも多々あるでしょう。
また、うまくいってほしいことが、実際はそうでないと気が付いてしまうこともあるかもしれません。
いざ部下の本音を聞いてしまうと、「じゃあこれをどう解決したら良いんだろう」と新たな悩みが生まれるのが怖いと感じるかもしれませんが、答えは結局、現場にあるのです。
社内の数字や状況に関する情報が共有されているという前提のもと、現場から出てきた意見や提案は、往々にして正しいものだと私は考えています。
ただし、それを鵜呑みにするのではなく、自社のビジョンやミッションとの整合性を鑑み、皆さん自身の経営哲学というフィルターを通した上で、さらに現場の状況を見聞きし、総合的に判断するという手順を踏むことが重要です。
先にも述べたように「心理的安全性」を担保するということは、「何でも言って良い」「何でも許可する」「思い通りにやって良い」という意味ではありません。
本音を言ってもらって、そこから課題を見出し、さまざまな意見を聞き取った上で方向性をどうするか決めるのが、経営者もしくは経営幹部陣の役目です。
とはいえ、社員も発言することによって意思決定のプロセスに参加することになります。
その結果、指示待ち・受け身の姿勢から、自発的・主体的に会社のことを考える姿勢へと変わっていくことが期待できます。
【ヤマチ流】部下の本音を引き出すためのコミュニケーション手法
部下の本音を引き出すためのコミュニケーション手法としてはさまざまなものがありますが、ここではヤマチユナイテッドで高い効果を上げているツールを2つご紹介しましょう。
①従業員満足度(ES)調査票 ※ES=Employee Satisfaction
社員一人ひとりに、自社に対する総合的な満足度をいくつかの項目にわたって点数で評価してもらうツールです。
当グループでは、大きく分けて5つの項目について尋ねています。
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自分が所属する組織、チームについて
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自分自身の業務について
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会社全体について
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処遇・待遇について
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上司との関係性について
各項目には、さらに細分化された質問事項がありますが、満足度を5段階表記で評価してもらいます。
満足度の点数を付けた上で、自由記入欄にその理由や意見・提案などを書いてもらう形式です。
これは、単なるアンケートではありません。
「経営者が社員の声を聞く覚悟がある」、つまり「本音を明かすことにより、社員の皆さんに経営参加してほしい」「ここから得た意見・提案を今後の会社運営に活かしていくための調査である」という趣旨・目的を、事前にきちんと伝えた上で実施してください。
あわせて「忌憚のない率直な声を聞かせてください」「素直な採点をしてください」「会社を良くするために参加してください」というお願いもしておくと良いですね。
また、「調査結果をどのように扱うか」についても事前に知らせておきましょう。
書いてもらってそれで終わりではなく、意見・提案に対して今できることはできるだけ早く対処し、すぐにできないのであればその理由をきちんと説明する必要があります。
「あなたの声はちゃんと届いている」と態度で示すことが重要です。
だからこそ、この調査は記名式で行います。
課題がある場合、「どの法人・事業部・チームの誰に話を聞けば良いのか」を把握し、活用することもあります。
また、社員にしてみれば名前を記入することで、責任を持って自分の会社を良くするために意見・提案を述べるのだという意識にもつながるでしょう。
さらに、より率直に書いてもらうためにも「直属の上司などではなく、経営幹部が見る」ことも付記します。
正直に書くことによって個人が不利益を被らないことを担保し、意見を会社全体、グループ全体、事業の運営改善に活かす目的であることをより強く伝えるためです。
こちらのコラムもあわせてご確認ください。
従業員満足度(ES)向上のための取り組み事例やメリットを紹介!
「従業員満足度(ES)調査表」のフォーマットは、こちらからダウンロードしていただけます。
②自己申告書
社員の今の気持ちや目標、悩み、改善提案を言葉にできるフォーマットです。
以下のような内容について記入してもらいます。
- 自己反省
- 今後の展望・目標
- 改善提案
「もっとこんな仕事もしてみたい」といった前向きな異動希望を書いてもらうこともできますし、従業員満足度(ES)調査と並行して実施することで、離職防止にも効果があります。
ヤマチユナイテッドでは、「従業員満足度(ES)調査票」と「自己申告書」の提出を年1回、全社員にお願いしています。
タイミングとしては、毎年の経営計画を策定する直前です。
なぜなら、調査結果から見えてきた課題について対応を検討し、必要があれば経営計画の中に落とし込むため。
そうして初めて「社員が見せてくれた本音を経営に活用する」ということになると思います。
「自己申告書」のフォーマットは、こちらからダウンロードしていただけます。
社員の本音を「活かす」組織になるには?
繰り返しになりますが、従業員満足度(ES)調査票や自己申告書は、書いてもらって終わりではなく、回収してからが本番です。
本当の意味で「社員の本音を『活かす』組織」となるためには、結果を分析し、必要があれば出てきた意見・提案を課題として設定することが一つ。
そしてもう一つは、その課題の改善に取り組むという流れをしっかり構築して、毎年定期的に調査を行うことも重要です。
このサイクルによって、社員も「自分たちの声がちゃんと活かされるんだ」という実感を持ち、日々の業務を通じて考えたことを率直に伝えてくれるようになるでしょう。
もちろん、こうした調査だけに頼るのではなく、面談や会議といったほかの仕組み・制度と組み合わせて、経営改善計画に反映させる流れを作ることが大事です。
【資料プレゼント】「本音を言わない部下」の本音を引き出すためのツールとして、今回ご紹介したフォーマットをぜひご活用ください!
部下が本音を言わないのは、「どうせ言っても聞いてくれない」と諦めているからかもしれません。
その原因は、経営者もしくは経営幹部が「余計なことを言うな」「言われることだけやれば良い」といった姿勢や態度でいるからではないでしょうか。
本音を聞きたいと思うのであれば、たとえ耳の痛い言葉であっても、受け止められるだけの器がなくてはなりません。
社員が自分の意見を述べることは、経営に参加するということ。
部下から有益な本音を引き出すためには、会社について自分なりに考えを巡らせるに足る情報を与えることも大切です。
ヤマチユナイテッドでは、社員全員参加型の「システム経営」を推進しています。
事業計画を立てる、その計画の進捗管理をする、結果を受け止め、成果が出れば自分たちで分配するといったことを、幹部主導のもとで、すべて現場の社員が行なっています。
この経営手法において、経営数字の公開と管理会計の仕組みは欠かせません。
経営者の皆さんの中にはこうした情報開示に躊躇する方もおられると思いますが、会社を大きくしていきたいと考えるのなら、自分だけですべてを背負うのには限界が訪れます。
あなた自身の思いが全社員に共有された上で、自分で考えて行動してくれる「自律的人材」が社内に増えると、経営者は社長業に専念できるでしょう。
会社の成長スピードが加速することで、会社の規模をいくらでも拡大していくことが可能になり、今より明るい未来が見えてくると思いますよ。
システム経営に興味のある方は、私たちが主催する「連邦・多角化経営実践塾」へのご参加も、ぜひご検討ください。
最後までコラムを読んでくださった皆さんに、今回ご紹介した「従業員満足度(ES)調査票」と「自己申告書」のフォーマットをプレゼントします。
こちらからダウンロードしていただき、ご活用ください。
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。