中堅社員を幹部へと育成する方法とは?中小企業においての重要性も確認
採用・育成
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
中小企業の経営者として「将来的に会社を大きくしていきたい」と考えるのは、どなたにも共通する思いではないでしょうか。
しかし経営者がどれだけスーパーマンであっても、組織が大きくなればなるほど自分一人ですべてを背負うことには必ず限界が訪れます。
だからこそ、思いを等しくして頑張ってくれる幹部は非常に頼れる存在。
どの企業も新入社員の教育に注力していると思いますが、中堅社員を幹部へと育てていく具体的なメソッドをお持ちの中小企業はそう多くないと感じます。
限界が見えてきてからではもう遅い。
今から、中堅社員を成長させ、頼れる幹部になってもらうための育成方法を知りましょう。
目次
- 中小企業で中堅社員を幹部へと育成することの重要性
- 中堅社員を幹部へと育成する方法は?経営感覚を身に付けさせるためのポイント
- 中堅社員を幹部に育てる!ヤマチユナイテッドの環境づくり
- 中堅社員を幹部に育てるためには経営陣の意識チェンジと環境づくりがポイント
中小企業で中堅社員を幹部へと育成することの重要性
まず、中堅社員とはどういう人を指しているのか。
会社によって中堅社員の定義はさまざまで、解釈の幅が広い場合もありますが、うちでいえば「業務を一通り任せることができて一人前である人」「独り立ちできている人」と定義しています。
中堅社員に関しては「こういう人材を求める」「この層を増やしたい」というより「早くここまで来てね」という段階。
中小企業で増やすべきは、幹部社員だと思います。
「幹部」を定義づけるとすれば「事業経営を担える人」「ゼネラリスト的な人材」ということになるでしょう。
中小企業において、既存事業だけやっているうちは幹部育成の意義をそれほど感じないかもしれません。
でもそのままにしておくと、いざ「会社を拡大しよう」「新規事業を始めよう」「多角化していこう」と考えた時に人材不足を痛感するはずです。
人材不足を感じる前に、その人材を外部から新たに採用するか、社内で育成するかを考えておく必要があります。
私の実体験からいえば、外部から採用する方法はあまり成功率が高くないように思います。
例えば、ものすごく有能なハイパフォーマーな人を採用しても、「マネジメントができない」「前に勤めていた会社では数字や経営に触れさせてもらえなかった」「自社の経営システムに合わない」「社風に合わない」などの理由でうまくいかないケースがよくあります。
だったら時間をかけてでも、社内で中堅社員を幹部へと育成する方が良い結果が出る可能性が高いです。
将来的に会社の発展を考えるなら、中堅の段階にある社員たちを、しっかりと事業経営を担ってくれるだけの幹部へと育成することが大変重要なのです。
中堅社員を幹部へと育成する方法は?経営感覚を身に付けさせるためのポイント
中堅社員を幹部へと育てるといっても、これはなかなか難しい仕事です。
育成する方法はいろいろあるでしょうが、一番大事で一番難しいのが「任せること」。
特にトップダウンでやってきた会社においては、「任せること」ができないために幹部が育たないといっても過言ではありません。
中堅社員といわれるようになっても何でも上に相談して判断してもらい、自分で考えて行動すれば逆に「余計なことをするな」と叱られる...そんな職場環境ではありませんか?
トップを務める社長はバイタリティがあり、能力も高いスーパーマンですから、「言う通りにやってくれ」と命じて社員を動かせば実績も出せるし、自分の判断に間違いはないという自信も持っているでしょう。
だけどそうしているうちに、部下は物事を考えず、言われたことしかやらない人ばかりになってしまうのです。
冒頭で書いたように、一人で全部やろうとすると必ず限界が訪れます。
ですから「任せる」ための環境づくりに今から取り組みましょう。
中堅社員を幹部へと育成する方法や、経営感覚を身に付けさせるためのポイントをご紹介します。
経営陣の意識チェンジ
まず初めにやるべきことが、経営者および幹部の意識チェンジです。
「部下に判断させるのは不安」「好き勝手にやられては困る」と考える人は少なくないですが、この意識を変えないと何も変わりません。
経営陣の各メンバーが「これからは社員に任せてみよう」と意識チェンジすることこそ、次世代の幹部育成の第一歩として必須のプロセスです。
社員全員参加型の経営方式の採用
当グループで採用している「システム経営」は、「自主計画」「自主管理」「自主分配」という三本柱から成り立つ経営手法です。
社員一人ひとりが経営計画の立案に携わり、自分たちで計画の進行と進捗管理を行い、最終的にその成果をおのおのが受け止める。
場合によっては経費のことまで考えさせるわけですから、営業利益における利益責任を負わせるということでもあります。
経営者としては、会社の経済状況を全社員に公開することに抵抗があるかもしれません。
でも「なぜ利益を上げなければいけないのか」というところを考えさせるためには数字をオープンにすることも必要なのです。
権限移譲(けんげんいじょう)を図る
社員にできる限りの裁量権を与えることで、権限移譲を図りましょう。
経営計画の範囲内で「自分たちで考えて好きなようにやって良いよ」といってあげることで自主性が養われます。
裁量権をどこまで広くできるかが、幹部育成に適した環境づくりの肝となります。
中堅社員が育つよう、例えば責任あるポストをできるだけ用意する、全員参加・全員発言ができるような会議を設定するといった土台も準備しましょう。
裁量権の行使には責任も伴いますから、日々の業務を実践することで自主性と共に経営感覚、損益感覚が身についていきます。
情報共有
社内ポータルサイトや社内SNSのようなツールを導入すると、会社の状況や数字の共有はもちろん、他部署との情報交換がしやすいという点でも有益です。
例えば、経営計画の進捗状況を週報や月報で発信することで振り返りの機会が得られたり、他部署の戦略を見て参考にしたりと、さまざまなメリットが期待できます。
研修への参加
幹部育成を目的としたリーダー研修などについては、意味がないとは言いませんが、会社が用意して行かせたようなものは、これまであまり効果が上がらなかったように思います。
それよりも、社員が自主的に「この研修に参加したい」と言った時にスムーズに行かせてやれる体制を作っておく方が良いですね。
あえて実行すべき研修をあげるなら、新入社員研修です。
これは中堅社員の底上げにもつながります。
新入社員にとっては経営方針を理解し、自主性の基礎を身に付ける機会。
彼らが現場に配属されると、「しっかりした新人が入ってきたな」と先輩社員が気を引き締めるきっかけにもなるからです。
上からは裁量権と責任を与えられ、下からは良い意味で突き上げられることによって中間層が育たざるを得ない、という見方もあるかもしれません(笑)。
面談制度
人間誰しも褒められると嬉しいものです。
面談は業務上の相談やメンタルケアなどいろいろな目的のもとに行われますが、幹部育成のためには成果を振り返り、認める、褒めるといった承認の機会があっても良いのではないでしょうか。キャリアプランについて相談に乗るということも必要だと思います。
中堅社員は上下に挟まれてプレッシャーのかかる層でもありますから、「日々の頑張りを見ているよ」と示してあげるだけでもモチベーションを上げる、もしくは維持するのに役立つと思うのです。
そもそも経営者と幹部との間ですら、それぞれの持つ経営感覚に絶望的といえるほどの差があるもの。
「経営者と同じ目線で考えよう」といっても、土台が無理なところからスタートしているかもしれません。
経営者は自分の権限も裁量もあるため、お金も時間も調整して異業種交流会や勉強会でもどこへでも行けるし、本だってたくさん買えます。
その点、社員にそういったことができる機会は本当に少なく、経営者目線の差はどんどん開くばかり。
経営者が「システム経営というやり方があるから、これを採用して社員に任せてみよう」と言ったところで「うちでは無理だ」と反対する幹部もいるでしょう。
それでも双方の意識をいかに近づけるかといったら、経営者が下に降りるのではなく社員の意識を引き上げていく方が正しいと思います。
だから、せっかく新しい方法を学ぶのであれば幹部も一緒に学んだ方が良いですよね。
もしシステム経営に興味があれば、当グループが主催する「多角化・連邦経営実践塾」の情報もチェックしてみてください。
多角化・連邦経営実践塾では、「経営幹部の意識統一」という最初の関門がクリアできるよう、経営者のほか最低2名以上の幹部社員が一緒に参加いただく決まりとなっています。
社員が育つ環境づくりのポイントについては「社員教育の4つの方法。社員が育つ環境づくりのポイントは?」でもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
中堅社員を幹部に育てる!ヤマチユナイテッドの環境づくり
当グループでは新入社員教育に始まり、人材育成にはかなり力を入れています。
採用にあたって「幹部候補」という言葉を使う企業もありますが、うちでは基本的に社員全員が幹部候補として期待をかけています。
幹部候補について詳しくは「幹部候補とは?「自ら育つ環境」を整えて社員全員を幹部候補に!」でも説明しています。
みんなが育って、みんながそれぞれ事業を任されるような社員になってほしいと考え、今でもさまざまな育成方法を模索しています。
ここでは、これまでに実施してきたことを大まかにご紹介します。
フレッシャーズキャンプ
新入社員が入社してすぐに受ける研修です。
企業理念や経営方針を理解するところから新規事業の企画立案、プレゼンテーションまで自分たちでできるよう、月1回、1年かけてさまざまなプログラムに参加してもらいます。
自主的に動く、一人前の中堅社員へとスピーディに育てる仕組みとして、非常に有効だと自負しています。
システム経営
実は当グループも、かつてはトップダウン寄りの会社でした。
代表の山地 章夫は、我々社員から見てもものすごくパワフルな人物ですが、やはり一人ですべてをこなすのに限界を感じた時期があったといいます。
その山地が、ある日参加したセミナーをきっかけに経営方針を見直し、新たに取り入れたのがシステム経営です。
システム経営とは、先述のように「自主計画」「自主管理」「自主分配」という三本柱から成り立つ経営手法。
システム経営を取り入れると、幹部と社員の自主性を養える、実践を通じて裁量権と責任の両方を持つことで経営感覚が身につくといったメリットがあります。
管理会計、オープン経営とセットで運用するのがポイントです。
うちではこのシステム経営をベースに、社員を育成するためのさまざまな取り組みを模索してきましたが、いずれも一貫して「社員に任せる」という姿勢のもと自主的な成長をうながすようにやってきたつもりです。
管理会計、オープン経営についてはこちらのコラムもあわせてご覧ください。
「管理会計」を導入するメリット 〜全員参加型経営の基礎:前編〜
全員参加型経営に必須の「オープン経営」のメリットと導入のコツ 〜全員参加型経営の基礎:後編〜
会議
社長の独壇場、あるいは業績の結果発表と型にはまった質疑応答に終始し、会議がマンネリ化しているという話はよく聞きますが、実は会議は大事な成長の場です。
幹部育成につなげるためには、まずアジェンダ設定が重要。
理念やビジョンを再確認できるようなトピックを織り込めば定期的に意識統一を図れますし、システム経営によって社員全員が経営に参画している前提なら、成功事例、失敗事例をもとに提案や改善策をより活発に論じることができます。
また、「全員発言」のようにルールを定めておくと「何かよくわからないうちに会議が終わった」ということもなく、集中して臨めるでしょう。
中堅社員と幹部が顔を合わせる会議では、上層部を納得させられるような対策の事前準備と報告が求められるため、中堅社員がぐんぐん成長しているなと感じる場面が多々あります。
もちろん、その前の自部門の会議やもっと現場に近いところの会議から、課題や問題を発見して対策を打つという基本サイクルの中で、事業の経営感覚がより磨かれていくのです。
面談制度
面談制度は、先ほど書いたように、中堅社員のモチベーションアップあるいはモチベーション維持につながるよう、承認の機会として取り入れています。
プロジェクトや委員会
経営課題の解決の一部分を担うために設けられた仕組みの一つ。
当グループには、このような委員会があります。(一例として)
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内定者や新卒者向けの社内研修などを運営する「人材育成委員会」
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光熱費や消耗品などにかかる費用を節約する「経費削減委員会」
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社内美化を社員みずから率先して行う「クリーン委員会」
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住宅を購入したオーナー様向けイベントを企画・実施する「顧客満足委員会」
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お客様が新しい家に住んだ後の暮らしの楽しみを提案するため、コーヒーの淹れ方や作物の育て方を研究する「ライフスタイル委員会」
通常業務と委員会を兼任しつつ、「ちょっと別な視点から経営課題や、運営上、重要なテーマに取り組む=経営に参画する」ことで成長しますし、チーム運営も学べます。
部署がたくさんある会社は縦割りになりがちですが、委員会活動を通じて横の連携ができ、社内の人脈形成にも一役買っています。
外部研修
現在は、定番でかつ全社共通で実施するような外部研修の機会はあまり多くありませんが、新人向けに採用している「エニアグラム」は、当初外部研修として取り入れました。
また、単発ではドラッカーのマネジメント論に基づいたリーダー研修とか、マーケティング系、コーチング系の研修を時々活用しています。
このほかに社員自身が「行きたい」と思うものには、どんどん行ってもらって構わないというスタンスです。
当グループでは、一般社団法人日本ほめる達人協会による「ほめ達!」検定の取得も推奨しています。
ですが、検定合格そのものよりも、目の前の人や商品、サービスに自分なりの価値を認めて褒めるという活動によって見る目を養うこと、視点を変えて物を見ることの大切さに気付けることが大きなメリットとなっています。
あとは、近年実現していませんが海外研修。
語学や技術の習得を目的に行う会社もあると思いますが、うちでは「視野を広げることが将来の役に立てば」という目的で実施してきました。
アメリカの取引先である建材メーカーなどを見学しつつ、日本で体験できない感覚を味わってきてほしいというのが一番の狙いです。
企業視察
当グループにはいろいろな業種の事業部がありますが、コロナ禍前にはそれぞれ業界団体や同業他社への視察の機会がありました。
特に住宅事業を手がけるジョンソンホームズの社員は、他のハウスメーカーさんへ視察に伺うことで自社との違いをまざまざと見せつけられ、参考になる部分を生かしたいと刺激を受けて帰ってくることが多かったようです。これは非常に有効でした。
コロナ禍が落ち着けば視察を再開したり、業種別の研究会などもまた開かれるようになるでしょうから、他社の社員さんと情報共有する機会が増え、知識の幅が広がることに期待しています。
テクニカル研修
OJTやロールプレイング研修については多くの企業と同じようにやってきていると思います。
ただ「開催する」ことが目的とならないよう、必要に応じて採用するようにしています。
中堅社員を幹部に育てるためには経営陣の意識チェンジと環境づくりがポイント
「業務を一通り任せることができる一人前」の中堅社員から「事業経営を担える」幹部へ。
中小企業が会社を拡大したり、新規事業の立ち上げや多角化経営を目指したりするのであれば、中堅社員を幹部へと育成することが大変重要になってきます。
中堅社員を幹部へと育成する方法や、経営感覚を身に付けさせるためのポイントには以下のようなものがあります。
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経営陣の意識チェンジ
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社員全員参加型の経営方式の採用
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権限移譲を図る
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情報共有
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研修への参加
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面談制度
社員全員参加型の経営方式として「システム経営」があります。
システム経営をベースに、社員一人ひとりによる自主的な経営参画がカギとなりますが、まず第一に「社員に任せよう」と、社長、経営者および幹部が権限移譲を決断できるよう意識チェンジすることが最優先。
その上で、社内ツールで、情報共有をしたり、面談を通じ成果を振り返り承認の機会を取り入れ、中堅社員のモチベーションアップやモチベーション維持につなげていきましょう。
また、社員が自主的に研修に参加できるように体制を作ることも大切ですが、新入社員研修をきちんとやっていくことが中堅社員の底上げにもつながります。
このようなことを組み合わせながら、中堅社員を幹部へと育成するための環境づくりを進めていくと良いでしょう。
次世代の幹部を育成するためには、外部からの幹部採用に頼るより、今いるスタッフの意識や知識をブラッシュアップすること、現在の経営資源を最大限に活用することが、遠回りなようで実は早道かもしれません。
「うちの社員はダメだ。意識も低いし、成長意欲も成長もしない」という経営者の言葉を聞いたことがあります。しかし、ちょっと待ってください。
「今いる社員は皆優秀です」
本来は力を持っているはずなのに、期待していない、引き出せていないだけ。活躍させてあげられていないだけ、成長の機会を用意していないだけかもしれません。
社長が成長していないというのは、自分のせいかもしれないですよ。
ヤマチユナイテッドが主催する「連邦・多角化経営実践塾」は、経営者のほか最低2名の幹部社員が一緒に参加いただく決まりとなっています。
「経営幹部の意識統一」という最初の関門がクリアできるように、充実したプログラムを用意していますので、ご興味があればホームページをチェックし、参加をご検討ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。