目標利益の設定方法とは?経営計画を共有する重要性や留意点もご紹介
業績管理・経営計画

こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
会社の成長を考えると、利益は年々伸ばしていきたいものです。
しかし、「今期より来期」と目標を据えるにあたり、どの程度の水準で目標利益を設定すべきか悩む経営者の方々も少なくないのではないでしょうか。
そもそも、目標となる数字(目標利益)はどのように算出すれば良いのでしょうか。
「なんとなくこのくらいで」と決めてはいませんか?
適切に目標を設定することは、会社の利益の最大化にもつながります。
そのためには、しっかりした根拠を持って決めていかなければなりません。
今回は、経営計画における目標利益の具体的な設定方法に加えて、経営計画の必要性と共有する重要性についてもご紹介。
目標利益設定の際に予算を算出する方法、よくある失敗事例と留意点などもご紹介します。
経営者の皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
- 経営計画における目標設定とは?経営計画の必要性と共有する重要性も確認
- 目標利益の設定方法とは?ビジョンと必要利益の関係にも着目を
- 目標利益の際に参考にする算出基準とは?予算を算出する方法や事例もご紹介
- 目標利益の設定でよくある失敗事例と留意点
- 目標利益とは企業が達成すべき利益の水準!設定方法も確認を
経営計画における目標設定とは?経営計画の必要性と共有する重要性も確認
「目標利益」とは、企業が経営計画の中で掲げる、将来的に達成すべき利益水準のことです。
あらかじめ利益の水準を定めることで、必要となる売上やコストの見積もりが明確になり、組織全体が同じ方向性で取り組むための指標にもなります。
経営計画がなぜ必要なのか?中小企業の実態から確認
目標設定の方法をご紹介する上での大前提として、「経営計画」は非常に大事です。
しかし、経営計画を作っていない、あるいは活用していない会社は案外多いというデータがあります。
中小企業庁がまとめた「中小企業白書」によれば、経営計画を策定したことがある法人は、全体の約5割にとどまります。
また、中小企業庁は「経営改善計画策定支援事業」を行なっており、中小企業・小規模事業者を対象に、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援しています。
おそらく、このような補助金や助成金の申請のために「とりあえず経営計画を作った」というケースも含まれていると推測されます。
一方で、「業績改善や経営改善、組織マネジメントのために経営計画を作って活用している」という企業はごく一部だと思われます。
これまでヤマチユナイテッドのコラムでもお伝えしてきたように、経営計画は地図、あるいは羅針盤のようなもの。
目標までのルートを示すものであり、必ずしも正解ではないかもしれません。
仮説であり、シミュレーションに過ぎないこともあります。
しかし、経営計画がない場合、目標に到達するための方向性や方針が定まらず、途中で見直しをかけて軌道修正することもできません。
「計画なしでなんとなく1年間やってきて、目標数値は達成した」という実例があったとしても、それは狙った結果ではないと思うのです。
黒字申告割合の実情と目標利益設定の重要性
国税庁が公開している「会社標本調査結果」の「利益計上法人数・欠損法人数の推移」によると、令和5年(2023年)の場合、295万6,717社のうち利益計上法人(黒字法人)は115万3,514社、欠損法人(赤字法人)は180万3,203社。
利益計上法人の割合は39.0%、欠損法人の割合は61.0%となっています。
また、国税庁「令和5年 事務年度法人税等の申告(課税)事績の概要」の「法人税の申告の状況」によると、申告件数317万6,000件のうち、黒字申告件数は114万3,000件、黒字申告割合は36.0%でした。
黒字といっても1円の黒字でも黒字にカウントされるため、まとまった利益を安定的に出せている法人はかなり少ないことがわかります。
会社の資金の流れを安定させるためには、まず目標利益を設定し、それに必要な経費を見積もった上で、売上目標を逆算する方法が有効です。
こちらのコラムもあわせてご確認ください。
経営計画は「全社員で共有」することが重要!
経営計画を全社員に共有することで、目標設定の根拠や意義を明確に示すことができます。
小規模な企業によくあるのが「経営計画は社長の頭の中にある」というケース。
「自分がわかっているから大丈夫」と社長本人はおっしゃいますが、本当にそれで良いのでしょうか。
社長1人で運営している事業であれば問題はありませんが、ほかに社員が1人でもいるのであれば、以下のような社長の考えをきちんと共有することが望ましいです。
- 「なぜそう考えているか」
- 「なぜそうなりたいか」
- 「なぜそれだけの売上や利益が必要なのか」
単に数字を示すだけではなく、こうした理由を明文化して社員と共有し、できれば社員と一緒に経営計画を作り上げていくのが理想です。
ヤマチユナイテッドではこれを「社員参加型のシステム経営」として採用しており、社員の自主性や主体性を引き出すのに効果的な方法だと考えています。
社長の頭の中にだけある計画が見えないまま「とにかくこれだけやってくれ」と指示されて働くのと、社長の計画を社員全員が理解し、自分たちで「どうしたら一番効果的に動けるか」を考えて働くのとでは、業務効率や成果が全く違います。
こうした共有ができていない場合、社長が事細かに指示命令しなければなりません。
社員数が少ないうちは良いですが、規模が大きくなるとどうしても目の届かない部分が必ず出てきます。
一方で、社員が自分たちで進捗を管理できる状態になると、現場レベルで業務改善や対策を取れるので効率が高まり、その結果として業績も跳ね返ってくるはずです。
実は、社長が自分だけで考えて指示を出すほうが本当は楽なんです。
幹部や社員を巻き込みながら計画を作ることは大変なことではあります。
最初は「なぜ経営計画を作成し、実行しなければならないのか」を正しく理解してもらうことから始める必要があり、そのために時間とパワーを割かなければなりません。
経営計画の作成と共有は手間がかかりますが、経営者の重要な仕事の一つであり、労力をかける価値がある取り組みだと私は思っています。
全社員に経営計画を共有することで根拠が明確になり、その先に設定すべき目標が見えてくるはずです。
社員に業績に興味関心を持たせる方法については、以下のコラムをご覧ください。
社員が業績に興味がない...業績を意識して仕事に取り組んでもらうには?
目標利益の設定方法とは?ビジョンと必要利益の関係にも着目を

ビジョンとは「将来こうありたいと思う姿」です。
「自社がどうありたいか」「どうなりたいか」を示すには、さまざまな要素があると思います。
その要素ごとに将来なりたい姿を思い描くことが、中長期的な目標設定につながります。
要素の例を挙げていくと、収益性、生産性、営業力、商品力、サービス力があります。
さらに多角化を見据えた事業展開戦略や、それに伴う開発力も考慮できるでしょう。
これらの要素において「何年後にはこのようになっていたい」という姿を、数字や言葉で表すことが大切です。
また、定性的な面では、社風、組織、働き方、社員満足度、人事制度、採用教育があります。
IT活用やDX化といった業務効率化が入ってきても良いですね。
このあたりは現状とビジョンを比較し、ギャップや不足をどう埋めていくかを検討することがポイントとなります。
それでは、目標利益の設定方法を見ていきましょう。
課題の整理とアクションプラン
課題を見つけ出し、対策を練っていくのですが、「短期的に取り組むもの」と「中長期的に進めるもの」を整理し、アクションプランまで具体的に落とし込むのが一連の流れです。
目標利益の試算
対策の中には原資が必要なものもあるはずですから、お金がかかるとしたらいくらくらい必要なのか試算しておきましょう。
最初の段階ではざっくりでもかまいません。
例えば、「3年で5億円が必要」であれば、5億円を確保するために営業利益をいくら出す必要があるのかという考え方になっていきます。
さらに、社員の処遇改善のためにベースアップを検討する場合、「社員1人あたり月⚪︎万円の給与を上げるには、安定的な利益がいくら必要か」というように、金額に換算して考えるのも一つの方法です。
経営改善ビジョンと財務ビジョン
自社の課題や目指す将来の理想像に合わせて一つひとつ検討していく、いわゆる経営改善ビジョンを考える必要があります。
経営改善ビジョンに沿って会社の中身を良くすることも大事ですが、会社が存続できなければ元も子もありません。
そのため、財務ビジョンもあわせて考えましょう。
財務体質の強化
財務体質を強くしていこうとするならば、自己資本比率や自己資本額に着目しましょう。
- 手元現預金残高はいくらか
- それに相対する長短借入金の残高はどうか
- 現預金を厚くして「実質無借金状態」を目指すには、いくら必要か
- 自然災害や疫病の流行などの影響で売上が数カ月減少しても耐えられるか、社員に給与を支払えるか
少なくとも半年から1年分の運転資金を確保できるよう、利益目標を設定することが望ましいです。
目標利益の設定根拠
地域や会社の規模によっても異なりますが、現在の中小法人の実効税率は、地方法人税や法人事業税などが加算されることを考慮すると、おおむね33~34%程度とされています。
そのため、「1億円を内部留保したい」と考えるなら、税金分を上乗せして目標利益を設定しなければなりません。
このように、課題整理や財務状況を踏まえて具体的に試算することが、目標利益設定の根拠となるのです。
目標利益の際に参考にする算出基準とは?予算を算出する方法や事例もご紹介
目標利益設定の際に参考にする算出基準をご存じでしょうか?
ここでは、具体的に予算を算出する方法や事例をご紹介します。
具体的に予算を算出する方法
具体的に予算を算出する方法は、以下の5つがあります。
- 収支基準方式
- 人員基準方式
- 売上高経常利益率基準方式
- 総資本経常利益率計算方式
- ミックス方式
①収支基準方式:借入返済額、運転資金など、必要資金から逆算する
前項で説明したのが収支基準方式です。
借入返済額、必要運転資金など、必要資金から逆算するので、一番わかりやすい方法だと思います。
②人員基準方式:一人あたりの生産性から計算する
借入がなく、現預金もある程度確保できており、利益も安定している場合は、収支基準方式ではなく人員基準方式が使えます。
一人あたりの生産性をどこに置くかというと、粗利ではなく一人あたりの営業利益(経常利益でも可)で見ましょう。
「現在、うちの会社の一人当たり営業利益は○円だから、次はどのくらいを目標にするか」と、上限なしに設定できます。
目標とするのは他社が公表している数字です。
同業他社、あるいは同業でもう一番なら異業種から自社より良いところを見つけてそちらを目指す。
優良事例をベンチマークすることで、より高い生産性を目指すことが可能です。
一人当たりの生産性を高める工夫については、以下のコラムでご紹介しています。
一人当たりの生産性を上げて利益を向上するには?ポイントやヤマチの事例も
③売上高経常利益率基準方式:業種別売上高経常利益率から計算する
利益額ではなく、利益率で目標を設定する方法が売上高経常利益率基準方式です。
業種別に公表されている経常利益率を参考に、自社の業種に適したパーセンテージを考えていくと良いと思います。
自社より利益率が高くて収益性の高い会社をベンチマークすることで、目標値の妥当性が高まります。
④総資本経常利益率計算方式:投下総資本に対する経常利益率から計算する
総資本経常利益率計算方式は、投下している資本に対して、どれだけの利益を出しているかという見方をします。
小さい資本で大きな利益を出している=効率的な上手な経営をしていると判断できます。
株式投資をする投資家目線で利益率を改善していく考え方です。
⑤ミックス方式:上記数値を参考に、複数の基準を組み合わせて決定する
最低限必要な基準は「収支基準方式」で、その他の方式(人員基準方式、売上高経常利益率基準方式、総資本経常利益率計算方式)を組み合わせて調整します。
ミックス方式では「ここが足りていないから、この方法で補おう」「次はここを目指そう」と具体的に組み合わせることで、「この利益を確保しないと、うちの会社は財務的に安定しない」「生産性がまだまだ改善できる」といった理由がはっきりしてきます。
売上高の設定方法は?必要売上高の計算式もご紹介
これまでご紹介した5つの方法を用いて、目標利益を決めたとしましょう。
しかし、利益だけでなく、出ていくお金も見なければなりません。
目標利益を先に決め、そこから逆算して必要な売上高を導く考え方を「逆算方式」といいます。
投資計画・資金計画の設定
まず、目標利益を設定したら、次に投資計画を立てます。
具体的には、新規事業、設備の購入・メンテナンス、自社ビルの修繕やオフィス改装、商品開発などにいくら使いたいか、何から優先して取り組むかを決めます。
これに伴って、資金計画も必要です。
手元の預金で賄えるのか、借入が必要なのか、借りた場合は利息がどれくらいかかるか試算してみましょう。
大きな投資の場合は、特に注意が必要です。
投資は減価償却費という形に分割されるので、借入した場合は、残りの利益で確実に返済できるかを検討します。
経費予算の見積もり
経費予算の見積もり試算も必要です。
経費の中で一番大きいのは人件費なので、経費の中で最初に組むべき予算は人件費です。
昨年と比べて増員するか減員するか、昇給するかそのままか。
組織図をあらかじめ描いて、増員・減員や昇給の有無を踏まえて予算に組み込んでおかないとなりません。
人件費以外の一般経費としては、販管費(販売費および一般管理費)があります。
その中には、家賃やリース料などの固定費、光熱費・通信費・交通費・広告宣伝費などの変動費、さらに研修費や教育費、研究開発費なども含まれるでしょう。
これらを例年の実績や予算を参考にしながら、次期の販促・広告計画などを織り込んで予算をちゃんと積み上げていくと必要経費が固まります。
粗利益率の設定
次に、事業部門別・商品別・サービス別で予想粗利益率を設定します。
それぞれ粗利益率は違いますから、過去の実績を参考にし、予想粗利益率を算出。
そこに粗利益率を向上させるための対策を加えて設定することが重要です。
例えば、ある事業部では昨年の粗利益率が25%だった場合、今年も同じで良いのか、少し上げるのかを判断します。
粗利益率を上げる場合は、原価コスト削減を頑張ってみるか、あるいは業務改善などで粗利益率を確保するか、意思と対策を加えて設定するのです。
必要売上高の計算式
ここまで整理できたら、必要売上高は以下の計算式から導き出されます。
目標利益 + 費用総額
必要売上高 = ───────────────────
予想粗利益率
もし計算結果が明らかに達成困難な売上高になった場合は、最初に戻って考え直し、実現可能と思われる水準まで同じ作業を繰り返すことです。
目標設定から必要売上高の算出までを経営者と社員が一緒に進めることで、計画の理解度が高まり、実行段階での効果も大きくなります。
損益分岐点売上高の確認
売上高や費用の計画を立てる際には、まず「損益分岐点売上高」を把握しておくことが重要です。
損益分岐点売上高とは、売上高と経費がちょうど釣り合い、利益がゼロになる売上高のこと。
実際の売上高がこの水準を下回ると赤字、上回ると黒字となります。
損益分岐点売上高の求め方
損益分岐点売上高を求めるには、費用を「固定費」と「変動費」に分けて考えます。
- 固定費:売上に関係なく一定の費用(人件費、家賃など)
- 変動費:売上に応じて増減する費用(原材料費、仕入れ費など)
計算式は以下の通りです。
固定費
損益分岐点売上高 = ─────────
限界利益率
※限界利益率=(売上高−変動費)÷売上高
損益分岐点売上高の計算例
例えば、売上高150万円の商品を90万円で仕入れ、店舗賃料が30万円の場合の損益分岐点売上高は以下の通りです。
- 売上高:150万円
- 変動費:90万円
- 固定費:30万円
- 限界利益率:(150−90) ÷ 150 =0.4(40%)
- 損益分岐点売上高=30万円 ÷ 0.4 = 75万円
このように、損益分岐点売上高を把握することで、目標利益を達成するために必要な売上の目安が明確になります。
目標利益の設定でよくある失敗事例と留意点

目標利益を設定する際に陥りがちな失敗があります。
留意点とともに見ていきましょう。
目標利益を設定する際によくある失敗
繰り返しになりますが、目標設定の一番のポイントは経営者と社員との情報共有、これに尽きます。
その手間を惜しんではいけません。
最初はトップダウンでも構いませんが、先述の流れに沿って「なぜこういう目標になったか」を社員に必ず説明してください。
- ビジョンはこうである
- これからこうしたい
- 利益を社員にも還元したい
- 良い職場にしたい
「さまざまな思いを反映した結果として、この数字になった」ということを、算出した根拠も含めて伝えましょう。
もちろん伝えて終わりではなく、理解してもらうことが重要です。
これを怠り、時間と手間をしっかりとかけないと、経営計画が形だけのハリボテになり、「なぜこの数字なのか」が社員に伝わらない目標設定になってしまいます。
それが目標設定における一番の失敗です。
ビジョンの浸透、計画の理解というのは一朝一夕には進みません。
方向性が示されない中でいきなり計画を作らせると、ありがちなのが「安全牌」で小さな目標を設定してしまうケース。
例えば、前年比101%の目標を立て、「お客さんが減っているので昨年のようにはいきません」と自己保身のためにハードルを下げてくるのは、達成しないと怒られると考えているからでしょう。
これは、目標設定する意味を理解していないということなので、失敗だと思います。
改革型と改善型の計画で差が出る
計画作りには、「改革型」と「改善型」の2つのタイプがあります。
- 改革型:ビジョン達成のために大胆なチャレンジや変革を行う
- 改善型:現状の延長で効率や業務改善を積み上げる
改善型だけでは目線が低く、イノベーションは起きにくい傾向があります。
改革型と改善型をバランスよく組み合わせることで、より発展的な経営計画が可能です。
ビジョンを達成するための方法を考えていく「ビジョン逆算型」は改革型に当てはまります。
対して、改善型は積み上げ方式なので、リアリティはあるけれどストレッチしません。
今できることを増やしていくやり方では、こぢんまりして目線が上がらず、大きな改革やチャレンジといったイノベーションが起きにくい側面があります。
そういう考え方を幹部に浸透させることができれば、より発展的な経営計画が作れるのではないでしょうか。
目標利益設定時の留意点
ヤマチユナイテッドでは、部門別の営業利益管理会計と財務を社内に公開する「オープン会計」を取り入れています。
経営の透明性や数字の見える化といった、環境整備が大事です。
最初は、社長や管理部門が計画を作成しても構いません。
次に、経営幹部や事業責任者に考えてもらい、経営者がチェックして、違うなとか甘いなと思うところを指摘、再提出してもらうサイクルを繰り返します。
ヤマチユナイテッドの場合、事業部のメンバーが立てた計画を役員にプレゼンし、役員がチェックして戻して、また事業部で揉んで上げてくるというやり取りを2回も3回も繰り返します。
このプロセスには数カ月かかってしまいますから、事業計画を立てるのに半年くらいかかるんですよね。
「長い」と思う方も多いでしょうが、社員が自主的に計画を作れるようになるまで、これくらい時間をかけて続けることが重要です。
そんなキャッチボールを繰り返し何年かやっていけば、社員が自主的に動いてくれるようになり、計画を作れるようになってきます。
そのためにも、社員にはどこに向かうか、方向性をはっきり示して理解してもらえるよう努めてください。
また、目標利益を設定する際には、財務面での注意が欠かせません。
売上に対して固定費が高くなると赤字に陥るリスクがあります。
特に成長過程の企業では、設備投資や人件費の増加により固定費が膨らみやすいため、過剰な固定費の増加は経営の安定性を損ない、成長の停滞や経営悪化につながる可能性も。
損益分岐点売上高を参考に目標売上を設定する場合は、固定費や限界利益率の変動も考慮し、現実的かつ安全な計画にすることが大切です。
事業計画の立て方や、ビジョンの浸透について詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご確認ください。
事業計画の立て方・作り方を解説!ヤマチの事例と重要なポイントも紹介
なぜビジョンが浸透しない?企業ビジョンの重要性とヤマチの成功事例
目標利益とは企業が達成すべき利益の水準!設定方法も確認を
経営計画における「目標利益」とは、企業が将来的に達成すべき利益水準を示すものです。
売上やコストの見積もりを明確にし、組織全体の方向性を統一する指標となります。
目標設定の一番のポイントは、経営者と社員との情報共有です。
社長単独で進めるのではなく、社員や幹部を巻き込み、計画の背景や理由を理解してもらうことで、目標達成に向けた自主的な行動や業務改善につながります。
また、目標利益設定の際に予算を算出する方法としては、以下の5つがあります。
- 収支基準方式
- 人員基準方式
- 売上高経常利益率基準方式
- 総資本経常利益率計算方式
- ミックス方式
さらに、固定費比率や損益分岐点売上高を考慮し、無理のない現実的な計画を立てることも重要。
固定費比率が高い場合は、売上が伸びないと赤字リスクが高まるため注意が必要です。
計画作りでは、改革型と改善型をバランス良く組み合わせることで、成長とイノベーションを両立した経営が可能になります。
経営者と社員との情報共有に手間を惜しまず、数字を算出した根拠も含めて伝えましょう。
ヤマチユナイテッドでは部門別の管理会計と財務を社内に公開する「オープン会計」を取り入れていますが、こういった環境整備も大事なポイントとなっています。
本コラムで触れた管理会計、オープン経営、システム経営については、当グループ主催の「連邦・多角化経営実践塾」や、会員制多角化経営戦略研究会「PEAKS」で詳しくご紹介しています。
ご興味がありましたらホームページからご確認ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。

