新規事業のリスクを減らす方法は?リスク一覧・分析手法・事例をご紹介
多角化・新規事業
こんにちは、ヤマチユナイテッド代表の山地です。
経営多角化を目指す経営者にとって、最大の悩みどころは「新規事業をどうやって始めるか」かもしれません。
しかし、新規事業の始め方については、実はそんなに難しく考えることはないと思っています。
今回は、新規事業におけるリスクを7つの分類で整理し、その全体像を一覧で確認した上で、リスクを分析する重要性や分析方法をご紹介します。
さらに、私がこれまでに取り組んできた事例も交えながら、リスクを極力減らしつつ新規事業を始める方法をお伝えします。
目次
新規事業におけるリスクとは?7つの分類で整理する主なリスク一覧
新規事業を始めるにあたって、主に下記の7つのリスクがあることを把握しておくことが大切です。
①経営リスク
事業の方向性や撤退判断を誤ることで、損失が長期化する可能性があるリスク。
新規事業ほど「いつ続け、いつやめるか」という経営判断の質が結果を左右します。
②市場リスク
想定したニーズが存在しない、または競合の動きによって市場環境が急変するリスク。
市場検証が不十分なまま投資を拡大すると、回収が困難になります。
③人材リスク
事業を推進できる人材が確保・定着しないリスク。
特定の個人に依存しすぎる体制も、事業継続性の観点では大きな不安要素となります。
④財務リスク
初期投資や運転資金が想定以上にかかり、資金繰りを圧迫するリスク。
黒字化までの期間が延びた場合、既存事業への影響も考慮が必要です。
⑤技術リスク
中核となる技術や仕組みが期待通りに機能しない、または陳腐化するリスク。
また、技術ありきで進め、事業価値が市場に十分伝わらないケースもあります。
⑥法務・制度リスク
法改正や規制強化により、事業モデルの見直しを迫られるリスク。
特に新領域では、事前の法的確認と継続的な情報収集が欠かせません。
⑦社会・外部環境リスク
景気動向、社会情勢、災害や事故、価値観の変化など、企業努力ではコントロールできない外部要因によるリスク。
想定外の事態に備えた柔軟性が求められます。
これらのリスクを把握した上で、あらかじめ対応策を検討しておくことが、新規事業を前進させるための重要なポイントになります。
事前にリスクを整理・分析しておくことで、想定外の損失を抑えつつ、事業の成長機会を捉えやすくなります。
新規事業におけるリスク分析の重要性と分析を怠った失敗例は?分析の手法も確認
新規事業は成功すれば会社・組織の発展や利益アップにつながる重要な施策ですが、うまく軌道に乗らず失敗するリスクもあります。
新規事業を始める際にはどんなリスクが起こり得るのかを分析し、あらかじめ対策を講じておくことが、リスクを回避して失敗を防ぐことにつながります。
新規事業で最も問題になりやすいのは「人材リスク」
冒頭で「新規事業を始めるのは難しくない」と書きましたが、多くの場合で問題となるのは「新規事業を始めた後に進められる人材がいるかどうか」です。
ヤマチユナイテッドでは、熱意のある社員に新規事業を「丸投げ」することで、人材の早期育成につなげています。
詳しくは「新規事業を立ち上げて人材を育てる!人材育成のポイントとは?」をご参照ください。
また、新規事業を始める際には、経営やマーケティングなどの「経営リスク(戦略リスク)」、資金調達や価格変動などの「財務リスク」、政治・経済などの「社会・外部環境によるリスク」など、さまざまなリスクがつきもの。
これらの問題に対応するために、事前に新規事業のリスクを洗い出して、発生確率や事業に与える影響度などを分析します。
リスク分析を行わずに新規事業を始めた場合に起こりがちな失敗例
リスク分析を十分に行わずに新規事業をスタートすると、次のような失敗が起こりやすくなります。
市場ニーズの誤認
顧客の課題や需要を十分に検証しないまま商品・サービスを開発すると、想定したほど利用されず、早期に行き詰まる可能性があります。
人材不足・属人化
事業を推進できる人材の確保や育成を想定していないと、特定の担当者に負荷が集中し、継続的な運営が難しくなる場合があります。
想定外コストの発生
初期費用だけでなく、運営フェーズで発生する追加コストを見落とすと、資金繰りが悪化し、事業継続が困難になることがあります。
参入タイミングの誤り
市場環境や技術動向を十分に分析しないまま参入すると、需要が成熟していない、あるいは競争が激化した後だったという事態に陥ることがあります。
ノウハウ・経験不足
新分野への挑戦で必要な知識や経験を想定していないと、実行段階で壁にぶつかり、計画通りに進まなくなる可能性があります。
顧客視点の欠如
顧客の声を拾う仕組みを設けないまま進めると、提供価値と市場の期待にズレが生じ、改善の糸口をつかめなくなることがあります。
過度な楽観視・成功体験への依存
過去の成功モデルをそのまま当てはめると、新規事業特有のリスクを見落とし、判断を誤る原因になる可能性があります。
これらは、事前にリスクを洗い出し、発生確率や影響度を検討しておくことで回避・軽減できる可能性が高い失敗例です。
新規事業のリスクを減らす分析手法「リスクマップ」と活用のポイント
リスク分析の手法としては、リスクマップを作成する方法などが挙げられます。
ただし、リスクマップを作成することで満足していては意味がないため、リスクへの対応策が検討・実装されているかを確認しながら進めるようにしましょう。
私個人としては、リスクを恐れて進まないよりも、「小さく始めて大きく育てる(時には小さいうちに撤退する)ことを目指す」のをおすすめします。
新規事業の立ち上げにはお金も人も動きますから簡単とは言いませんが、経験を重ねるうちに成功の勘所がつかめてくるものです。
ヤマチユナイテッドが考える新規事業のリスクや対策については、こちらのコラムで詳しくご紹介していますので、あわせてご確認ください。
事業拡大のメリットとは?拡大方法・リスク・成功事例を知って成功へ
ヤマチの事例から学ぶ!新規事業のリスクを減らす方法
新規事業で異業種に進出する際、最もシンプルかつ、手っ取り早い方法が2つあります。
①フランチャイズ・総代理店からはじめる
一つはフランチャイズ加盟です。
メリットとデメリットを天秤にかけてよく考える必要はありますが、完成されたビジネスモデルを活用できるため、まったくの異業種であっても成功する確率は高くなるでしょう。
もう一つは、他社の代理店になることです。
例えば、日本で売れそうな海外製品を見つけた場合、その製品を製造している海外メーカーにアプローチして、日本の総代理店になって販売する方法が考えられます。
総代理店になれば、最低限の設備投資で始めることができるなど、リスクを抑えやすくなります。
その分、利益は小さくなる傾向がありますが、仮に売れなかったとしても在庫を処分すれば、比較的スムーズに撤退できる可能性があります。
もし日本市場で製品が売れて「これならいける!」と確信が持てるなら、海外企業にライセンス料を支払って、自社製造を検討するという段階的な展開も考えられるでしょう。
まずは小さく始めて、失敗のリスクを回避する。
これも多角化で成功するための考え方の一つです。
ヤマチユナイテッドの具体的な事例をご紹介
ヤマチユナイテッドでも、海外の見本市や展示会で見つけた商品を日本で売るために、総代理店の契約を結んだ経験が何度かあります。
例えば、「グラベル・フィックス・プロ(GRAVEL FIX pro)」というオランダの会社の商品。
砂利を安定させるための砂利地盤安定材(砂利舗装材)で、歩行が楽になるほか、砂利の沈下や飛散防止にも効果的です。
当時、日本ではまだ珍しい製品でしたが、販売を始めると、砂利敷きのアプローチや庭、屋上庭園、駐車場などに用いられるようになり、現在も順調に売り上げを伸ばしています。
日本で売れそうな海外製品を見つけたからといって「真似して日本で作って売ろう」という安易な考え方は、リスクコントロールの観点からみるとかなり危険だと言えます。
設備投資を行なった上で失敗した場合、ダメージが大きくなる可能性があるためです。
それよりは、その製品を作る海外メーカーにアプローチして、日本の総代理店になることを提案したほうが良い場合もあります。
海外の中小企業であれば、欧米の市場のほうに目が向いていて、日本市場まで十分に手がまわっていないことも多いでしょう。
日本企業が「総代理店になりたい」と希望すれば、だいたいは「渡りに船」とばかりに歓迎してくれるはずです。
このように、最初から大きな投資を行わず、段階的に市場を検証することで、新規事業における失敗リスクを大きく下げることができます。
②他社の事業を参考にし、自己流にアレンジする
ヤマチユナイテッドには「事業の参考にしたい」という経営者が全国から大勢見学に訪れ、非常に熱心に視察し、たくさん質問をして帰っていきます。
そのなかで、半年後くらいには私の会社のビジネスモデル、サービス、社員教育などを参考にして、自社流にアレンジして成功しているケースがよくありました。
なかには「山地社長、私の会社のビジネスモデルを教えましょうか」とおっしゃる経営者もいるほどです。
私からすれば「うちのやり方を参考にされたのに...」と感じることもありますが、多角化に成功させるためには、それくらいのフットワークの良さが必要なのも事実かもしれません。
ヤマチユナイテッドの新規事業事例:デイサービス施設「きたえるーむ」
私自身、他社の取り組みをヒントにしながら、自己流にアレンジして新規事業の参考にすることも少なくありません。
例えば、ヤマチユナイテッドが手がけた機能訓練専門のデイサービス施設「きたえるーむ」という介護分野のデイサービス事業も、そうしたアレンジのたまものです。
デイサービス施設「きたえるーむ」では、自立した生活を送りたいと願う高齢者に向けて、身体機能の維持・回復を目的とした機能訓練プログラムを短時間制で提供しています。
マシントレーニングや歩行訓練、マンツーマンのストレッチなども提供していますが、特にお客さまに好評なのが、国家資格を持つ「柔道整復師」によるマッサージです。
マッサージによって痛みやしびれをコントロールしながら、機能訓練に取り組めるため、「訓練するだけではつらい」というお客さまにも高く支持されています。
この「短時間制のデイサービス」というアイデア自体は、以前から私が構想していたのですが、そこに「マッサージ」を取り入れるという発想は、ある整骨院の経営を参考にしたものでした。
現在はライバル企業も増えているのですが、「マッサージ」という要素で差別化できていることもあって、売り上げは右肩上がり。
今では直営店とFC(フランチャイズ)の施設も含めて、全国に140店舗以上を展開するほどに成長しています。
きたえるーむの新規事業立ち上げに関しては「デイサービス経営を成功させるコツは?「きたえるーむ」の成功事例」でも詳しくお話していますので、あわせてご覧ください。
自己流にアレンジするためのアイデアは身近なところに転がっている
上記のようにプラスアルファのアイデアを取り入れるきっかけとなったのは、私が経営者仲間とゴルフをしていたときのことです。
一緒にコースをまわっていた経営者に「短時間制のデイサービスを始めようと思っている」と話したところ、「知り合いの整骨院は、マッサージを組み込んだ機能訓練で人気を集めている」と教えてくれました。
直感的に「面白そうだ!」と興味を持った私は、整骨院を経営する整体師の先生を早速紹介してもらい、お会いすることに。
直接お話を聞いて「私の考えていたアイデアよりも、マッサージ付きのほうが断然良い!」という思いを強くしました。
整体師の先生は自分の整骨院を広く展開するという考えを持っていませんでしたが、「一緒にやりませんか」とコラボレーションによる全国展開を提案し、現在に至っています。
もしも「マッサージ」という差別化要素を取り入れていなかったら、参入企業の勢いに押され、今ほど事業は伸びていなかったかもしれません。
「あのとき整体師の先生に会いに行っていなかったら...」と考えると、ゾッとするほどです。
新規事業立ち上げのリスクを減らすアイデアは、意外と身近に転がっているもの。
「これは!」と思ったアイデアがあれば積極的に活用して、ぜひ自己流にアレンジしてみてください。
新規事業を成功させるためのステップについてはこちらもご覧ください。
新規事業立ち上げのプロセスとは?多角化を成功へ導くステップを解説
新規事業のリスクを減らすための分析手順とフレームワーク
新規事業では、「やってみないとわからない」要素が多い一方で、事前の分析によって減らせるリスクも確実に存在します。
ここでは、新規事業の立ち上げ時に押さえておきたい基本的なリスク分析手順と、実務で使いやすいフレームワークをご紹介します。
新規事業リスク分析の基本ステップ
新規事業のリスク分析は、以下の4ステップで考えると整理しやすくなります。
① リスクの洗い出し
市場性、競合、人材、資金、技術、法規制など、新規事業に関わるリスクを幅広く列挙します。
「思いつく限り出す」ことが重要で、完璧さを最初から求める必要はありません。
② 影響度・発生確率の評価
洗い出したリスクについて、「事業への影響がどれくらい大きいか」「どの程度の確率で起こりそうか」を整理します。
定量・定性の両面から検討するのがポイントです。
③ 優先順位付け
全てのリスクに同じ対応をすることはできません。
影響度と発生確率を掛け合わせ、今すぐ向き合うべきリスクを明確にします。
④ 対応策の検討
優先度の高いリスクについて、「事前に回避できるのか」「発生した場合の影響を小さくできるのか」といった観点で対応策を検討します。
新規事業の立ち上げ・リスク分析に役立つフレームワーク
新規事業では、複数のフレームワークを目的に応じて使い分けることが重要です。
以下は、リスク分析と相性の良い代表的なフレームワークです。
3C分析(顧客・競合・自社):市場リスクの把握
PEST分析:外部環境による中長期リスクの把握
SWOT分析:自社の強み・弱みとリスクの整理
ビジネスモデルキャンバス:事業構造全体の可視化
ファイブフォース分析:業界構造・競争リスクの把握
バリューチェーン分析:コスト・差別化リスクの発見
リスクマップ:影響度×発生確率による優先順位付け
STP分析/ポジショニング分析:市場選定ミスの防止
VRIO分析:競争優位が持続するかの検証
フレームワークの使い方や組み合わせ方については、以下のコラムもぜひ参考にしてください。
中小企業が勝つための経営戦略フレームワークの使い方は?ヤマチの事例も確認
企業ブランディングの目的とは?連邦・多角化経営との関係も確認
新規事業の立ち上げを成功に導く4つのフレームワークとは?発想~実行までの型を作る方法
新規事業における「撤退基準」の考え方
新規事業のリスクを減らす上で欠かせないのが、撤退基準を事前に決めておくことです。
いつ、どのタイミングで判断するのか
何を数値・条件として見るのか
感情ではなく、事実ベースで判断できるか など
などを、あらかじめ整理しておくことが重要です。
「小さく始めて、早く判断する」ためには、続ける・やめるの判断軸を先に言語化しておくことが、新規事業のリスクを減らすポイントになります。
撤退基準の考え方については、以下のコラムで詳しく解説しています。
企業の成長を促進させるための新規事業、うまくいかなかった時の撤退基準、判断軸とは?
新規事業はリスクを減らすポイントを押さえ、フットワーク良く行動することが大切
新規事業は、成功すれば大きな成長につながる一方で、さまざまなリスクを伴います。
経営判断、市場、人材、資金、技術、法制度、外部環境など、複数のリスクが同時に存在することを前提に考えることが重要です。
一方で、事前にリスクを洗い出し、発生確率や影響度を整理しておくことで、失敗の可能性を抑え、適切な判断につなげることができます。
どんな新規事業にも失敗のリスクはつきものですが、新規事業の進め方によっては小さく始めることで、失敗のリスクを回避することも可能です。
まったく異業種の新規事業を立ち上げる際には、総代理店やフランチャイズから始めることで、リスクを減らし、成功の可能性を高めることができるでしょう。
また、フットワークを軽く行動することで情報や人脈を広く集め、「これは良い!」と直感したものを取り入れながら、自己流にアレンジすることもポイントです。
ヤマチユナイテッドが優れた海外製品を紹介する総代理店になれたのも、他社とのコラボレーションで新規事業が生まれたのも、積極的にアイデアを求めてきたからこそ実現できたこと。
もちろん、他社の商品やビジネスモデルをそのまま真似するのは問題がありますし、芸がないですが、自社にない発想を取り入れ、自己流にアレンジする力は新規事業のリスクを減らす上で欠かせないものだと考えています。
私から言えば、多角化に成功している経営者はいわば「マネの達人」。
純粋にオリジナルな事業は少なく、実際には他社の事業を自分流にアレンジすることに長けているだけのような気もしています。
自社の強みを生かしたアレンジを考えることが、新規事業立ち上げのリスクを減らすための手札となります。
良いと思ったアイデアがあれば、どんどん取り入れてみましょう!
ヤマチユナイテッドが主催する経営セミナー・イベントでも、新規事業を成功させるたくさんのヒントが見つかると思います。
興味のある方はぜひ参加してみてください。
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Authorこの記事の著者
ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員820名、50事業・年商258億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。


