社員向け研修内製化のポイントは?研修終了後の振り返り方法を解説

採用・育成

山﨑 舞
山﨑 舞

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの山﨑です。

「新入社員の基礎教育や既存社員のスキルアップ」を目的に社員向け研修を実施する際、専門機関やコンサルタントなどといった外部に研修を依頼するケースが多いと思います。

外部のサービスを利用する場合は時間や手間を省くことができる一方で、毎年それなりのコストがかかり続けているでしょう。

また、これから社員向け研修を導入しようとしている段階なら、それが自社に合った内容なのか、本当に高い効果が上がるのかと選定にも悩んでしまいますよね。

こうした悩みを抱えたとき「研修を内製化できないかな」と思ったことはありませんか?

人材育成は将来のための投資ですからコストを惜しむべきではありませんが、研修を内製化することで、金銭的な負担を節約できるばかりでなく、自社の風土にマッチした研修内容を作り上げることができます。

さらに、研修の効果を上手に振り返りを行うことでブラッシュアップし、後進に引き継いでいくことも可能です。

「社員向け研修の内製化はハードルが高い」と感じている方も、ヤマチユナイテッドの新入社員研修制度「フレッシャーズキャンプ」の事例を知っていただくと、「うちでもやってみようかな?」と思えるかもしれません。

目次

  1. 社員向け研修を内製化するのが難しい背景から確認
  2. ヤマチの新入社員向け研修「フレッシャーズキャンプ」をご紹介
  3. 【ヤマチの事例】社員向け研修の振り返り方法やポイントを解説
  4. 研修専門部署がない企業様必見!社内向け研修を内製化し現場に運営を任せていくコツは?
  5. 社員向け研修を内製化し、社員に運営を任せるメリットは若手社員と受講生が一緒に育つこと

社員向け研修を内製化するのが難しい背景から確認

「社員向け研修を内製化できるに越したことはない」と考える中小・中堅企業は多いと思います。

しかし、多くの中小・中堅企業では「ハードルが高い」と感じてしまう。

その背景には大きく3つの要因が影響していると思います。

①研修を内製化するためのノウハウがない

社員向け研修の内容を構築していくにあたって、やはりベースがないと内製化は難しいだろうと思います。

内製化したいと思っていても、ノウハウ、リソース、プログラムといったものを一から作り上げていくのはなかなかのマンパワーはコストを伴います。

また、プログラムを作るところまではできたとしても、専門知識を持っている人がいないと体系化に時間がかかる場合があります。

体系化するにしても、現場の人間が業務の合間を縫ってやる、あるいは幹部層がどうにかこうにか試行錯誤するというように、さらに時間も手間も取られてしまうでしょう。

結局、時間やスキルが不足しているために、場当たり的な研修内容になってしまう傾向もあるように思います。

②講師役になる人の育成や時間の確保が難しい

内製化するなら、研修の講師役を社内の誰にやってもらうか、皆さん悩みますよね。

人材育成や時間の確保も含め、どうやったら良いか見当もつかないですし、適任と思われる人がいても本来の業務も持っているため、業務に支障が出ると困るのが実情ではないでしょうか。

③効果の可視化が難しく、継続しない

私は社員向け研修の内製化において、「効果の可視化」がハードルの高さの根幹になっていると考えています。

すでに自社で研修プログラムを作って実施している企業でも引き継ぎが甘かったり、当初の目的や研修制度を立ち上げた背景が継承されていなかったりすると、研修の中身が形骸化してしまうのです。

「なぜこの研修をやっているのかわからなくなってしまっている」という声は、私たちがコンサルティングしているお客様からもよく聞かれます。

ヤマチの新入社員向け研修「フレッシャーズキャンプ」をご紹介

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ここで、ヤマチユナイテッドの新入社員向け研修「フレッシャーズキャンプ」の概要をご紹介します。

ヤマチの新入社員向け研修制度「フレッシャーズキャンプ」とは?

私たちヤマチユナイテッドは、現在「100の事業を立ち上げ、それを担う100人の人材を育て、100年続く会社にする」=「THE 100VISION」という大きな目標を2030年までに達成するべく、グループを挙げて取り組んでいます。

「THE 100VISION」は元々達成期限を定めずに構想されたものでしたが、いずれにしてもヤマチユナイテッドは多角化によって規模を拡大することを目指すなら、「各事業を担えるだけの力を備えた経営者人材を育成することが非常に重要である」と考えてきました。

そこで、入社1年目のうちから社員に幹部教育を施すことを決め、そのための研修制度として2012年にスタートした新入社員向け研修制度が「フレッシャーズキャンプ」です。

フレッシャーズキャンプの目的

新入社員向けにOJTをはじめとしたテクニカルな研修を用意している会社は多いと思いますが、「フレッシャーズキャンプ」の性質はそれとはまったく異なります。

当社は多角化していることもあって、新入社員の業種や職種はバラバラですから、テクニカルな部分はそれぞれ現場で行うことになっています。

ヤマチユナイテッドの「フレッシャーズキャンプ」の目的は、グループの価値観や理念の理解と醸成を深めつつ、5年後、10年後を見据えて幹部社員を育成すること。

受講生は入社1年目の新入社員ですが、4月から12月までの研修期間内に、ビジネスモデル分析や財務諸表の読み方といった経営の基礎を学び、最終的には新規事業計画立案まで行なってもらいます。

フレッシャーズキャンプの主宰・運営事務局もご紹介

人材育成は当グループで非常に重要視しているテーマです。

そのため、「フレッシャーズキャンプ」はグループ代表の山地 章夫が主宰し、価値観や理念を新入社員に直接注入します。

また、「新卒採用・育成に全社で注力していく」ことがグループ全体に周知されているので、現場に協力を依頼する際にもたいてい快く受け入れてもらえます。

運営を担う事務局は毎年メンバーを入れ替えて行なっていますが、2〜3年目の若手社員が中心です。

「受講生が翌年、翌々年の事務局メンバーになる」という構造ですから、研修の一連の流れや内容を実体験として理解している人たちが、次は運営側へ回る仕組みになっています。

フレッシャーズキャンプの研修内容

ヤマチユナイテッドの「フレッシャーズキャンプ」は2012年に開始しましたが、2012年と今では時代背景も違えば、新入社員の人数も違い、受講生の育ち方も違う。

もっと言えば、経営課題、組織課題といった会社の課題感も変わっています。

そう考えると開始当初から現在まで同じ研修内容で良いわけがなく、年々見直しをかけていかないと、形骸化したり、目的を見失ったりするのも当然と思えます。

「フレッシャーズキャンプ」の研修内容にはさまざまな工夫を施していますが、漫然と続けていくだけでは効果的な研修にはなりません。

内製化が難しい要因の一つとして社内講師の育成が困難であることを挙げましたが、グループ代表の山地 章夫がよく言うのが「講義やワークの内容に多少の不足があっても問題ない」ということ。

あくまでも自社の中での研修ですから、トライアンドエラーを重ねて良いのです。

もっと言うと、少々拙い研修内容であっても、自分たちで主宰し、受講生と一緒に創り上げていく研修に意義があるということです。



「フレッシャーズキャンプ」の詳細や具体的な内容について気になる方は、こちらのコラムで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

新入社員が成長する研修プログラムとは?成功ポイントや事例を紹介

新入社員研修では何をする?フレッシャーズキャンプ運営事務局の仕事を大公開!

【ヤマチの事例】社員向け研修の振り返り方法やポイントを解説

社員向け研修を内製化するために大切なのは、研修内容を時代背景や課題と照らし合わせ、継続的な振り返りと見直しができる体制を作ることが成功のポイントです。

ヤマチユナイテッドの「フレッシャーズキャンプ」を例にご説明していきます。

フレッシャーズキャンプの振り返りのタイミング

「フレッシャーズキャンプ」は4月から12月までの9カ月間にわたって実施され、研修日は月1回という設定です。

研修は9時から18時までとしているので、18時に終了したあと20~30分程度を振り返りのための時間に充てています。

この時間では、事務局メンバーが当日のプログラム内容がどうであったか振り返ります。

例えば、「プログラムの意図がしっかり受講生に伝わり、理解されているか」「新しいプログラムの難易度が適切だったか」といったことを話し合います。

振り返りの時間は堅苦しいものではなく、皆さんが実行する場合にも雑談ベースで構いません。

事務局だけの主観的な振り返りの場ですから、ああだったね、こうだったねとワイワイやりながら、気になったことを箇条書きでメモに書き留めておくだけで良いのです。

これをやるとやらないとでは、次年度の研修内容を検討するときの苦労が全然違います。

研修がすべて終わったあとで1年分さかのぼって思い出すのはしんどいですし、研修修了直後の温度感も失っているからです。

研修を適切に振り返るための「事務局ミーティング」

社員向け研修を適切に振り返るためにもう一つ設定していただきたいのが、毎月の研修日前の事務局ミーティングです。

研修タスクの割り振りをするとともに、その月のゴールと受講生の成長度合いに対する目標設定を事務局メンバー間で確認・共有する場となっています。

例えば、このような内容を確認・共有しています。

  • 今月の研修内容にどのような意図があるのか
  • なぜそのプログラムを入れているのか
  • 受講生をどのような状態へもっていきたいのか

この確認・共有を行なったうえで振り返りをすることが重要なのです。

ちなみに、「フレッシャーズキャンプ」は受講生をいくつかのチームに分けてワーク形式で行いますが、事務局ミーティングにはチームリーダーも招集します。

チームリーダーには、チームメンバーのコンディションやプログラムに対しての意欲、モチベーションといったことを受講生の視点から感じたことを率直に話してもらいます。

研修日に実施する振り返りと後日行う事務局ミーティングの場は毎月必ず実施しています。

研修終了後の振り返りの場

すべての研修が12月に終了したあと、翌年1月中旬から下旬の間に「年間の振り返りの場」が1回あります。

この場には主宰者である代表の山地と事務局メンバー、次年度の事務局長が参加。

数時間かけて今年度の研修内容の振り返りと見直し、次年度の内容の検討を行います。

フレッシャーズキャンプを振り返る際の資料

「フレッシャーズキャンプ」を振り返る際の資料としては、これまで研修終了後に振り返りをした内容に関する毎月のメモをまとめたものと、受講生のアンケートがあります。

毎月のメモをまとめる際は、Excelで一つシートを作って、気になったことをどんどん記入します。

受講生のアンケートについてご説明すると、当社では「Microsoft 365」を全社的に導入しており、その中の「Microsoft Forms」という機能を使ってアンケートを作成し、研修に関して受講生から所感を得ています。

具体的な質問内容をご紹介します。

  • それぞれのプログラムに対して5段階で評価し、その理由を回答してください。
  • フレッシャーズキャンプを通じて自分自身がどのように成長したと思いますか。どんなに些細なことでも構いませんので教えてください。
  • 事務局のサポート体制についてどう感じましたか。点数を付けてその理由を回答してください。
  • フレッシャーズキャンプを受講してみての感想や意見を自由に書いてください。

例えば、「決算書分析」プログラムに4点を付けた受講生からは「社会人、組織人として必要な知識だと思うので学びがありました。ただ、自分は数字に苦手意識があり、難しいと感じたところもあったので4点としました」との回答がありました。

このように、毎年受講生が結構率直な感想や意見を寄せてくれている印象があります。

受講生アンケートのポイント

受講生アンケートでは、定量と定性の情報をそれぞれ取得しておくというところがポイントです。

先ほどご紹介した質問内容は非常にシンプルに思えるかもしれませんが、これで十分なのです。

会議資料としてまとめる際は、各プログラムの平均点を算出しておき、肯定的な意見は赤、否定的な意見は青のように色分けしておくと見やすくなるでしょう。

そして、これらの資料を見ながら次年度に引き継ぐプログラム、不採用とするプログラムを天秤にかけていく流れです。

社員向け研修を設計するための注意点やポイント

社員向け研修を設計する際に注意していただきたいのは、次年度の研修内容を設計するために一番大切なのはゴール設定であるということ。

「受講生に好評だったからこのプログラムを残そう」ということではなく、ゴール設定にマッチするかが最終的な判断基準になります。

組織の状態や会社の状態、現状の課題などをかけ合わせて、目指したい方向性や受講生に身につけさせたい知識・能力を高めるためのプログラムを用意するということです。

振り返りもそのような観点から行うべきで、受講生アンケートに「もうちょっとこんなことを学びたかった」という意見があれば、「じゃあこの力を伸ばすプログラムを入れた方が良いのではないか」という話になります。

フレッシャーズキャンプの場合、1月の「年間の振り返りの場」までに今年度の研修に対する課題感が抽出され、次年度の方向性が見えてきます。

2月には新しく選抜された事務局メンバーと代表の山地が、1月に年間の振り返りをした内容を踏まえて、次年度の研修内容を決めるべくブレストを行います。

その後、研修の内容が固まったら、参考書籍など研修にかかる費用も含めて算出して稟議を通します。

以上がフレッシャーズキャンプの流れですが、「そんなに難しいことはない」と思っていただけたでしょうか。

幹部層との接続がうまくいかない場合は?

社員向け研修の内容を決める際、よく聞く悩みとして「幹部層との接続がうまくいかない」ということがあります。

「フレッシャーズキャンプ」を導入してくださっている企業様からお話を伺った際、「新人の営業トークがまだまだだから、テクニカルな研修も入れてほしい」と、本来の目的である「幹部育成」とはちょっと違う要望が、幹部社員から出てくることがしばしばあるようです。

会社によっては社員が新人研修にあまり協力的でない場合もありますから、この企業様は幹部の方が研修や育成に関心を持ち、かつ効果を期待しているという点で良い会社だと思うのですが...。

あれもこれも「フレッシャーズキャンプ」に全部詰め込もうとすることは、おすすめできません。

研修の目的がブレてしまいますし、事務局も困ってしまいます。

「フレッシャーズキャンプ」は幹部育成のための研修ですから、現場ですぐに活用できる知識や能力が身につくものというよりは、役職が付いたときに役立つ知識や能力を先取りするもの。

この点をしっかり事務局から幹部層に伝えておきつつ、「経営会議で定期的に課題感を聞き取って、事務局に下ろす」ことを実施するほうが良いと思います。

こういった上意下達の仕組みが整っておらず、かつ会話の機会もなかなか持てないのであれば、2月のブレストの場に幹部社員にも参加してもらい、一緒に社員向け研修の話し合いを進めていくのがおすすめです。

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研修専門部署がない企業様必見!社内向け研修を内製化し現場に運営を任せていくコツは?

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社内向け研修を内製化し、現場に運営を任せていくコツをご紹介します。

研修を内製化するための初手として、おすすめの方法は?

研修を内製化するための初手として、まずはパッケージの購入を検討してみても良いかもしれません。

新人教育、スキルアップなどの研修テーマに応じて、ノウハウ付きの書籍といった専門家があらかじめ用意したものを一式購入するのです。

内製化するうえで大事なのは、「購入したパッケージを自社流にアレンジすること」「研修内容を時代背景や組織課題・経営課題に接続して、継続的に振り返りと見直しができる体制を作ること」。

この「継続的な振り返りと見直し」こそ、社員研修を内製化するためのポイントです。

ヤマチの新入社員向け研修「フレッシャーズキャンプ」の引き継ぎ資料は?

ヤマチユナイテッドの新入社員向け研修「フレッシャーズキャンプ」の事務局は2~3年目の若手社員を中心に構成されており、メンバーは毎年代替わりして引き継いでいきます。

「フレッシャーズキャンプ」を導入してくださっている企業様からよく質問をいただくのが「引き継ぎの資料はどうしていますか」ということ。

そもそも事務局メンバーは前年・前々年の受講生が中心ですから、一から丁寧に説明するような細かい引き継ぎ資料が不要なのがこの研修制度の良いところで、当社では簡単にExcelで作成しています。

研修直後に振り返りを行い、それをしっかりと書き留めておけば、あとは一つひとつ潰していくだけ。

加えて受講生のアンケートと、前年度に使ったスライドなどワーク用の資料を月別にフォルダにまとめたものが次の運営担当者への引き継ぎ資料となります。

「フレッシャーズキャンプ」の引き継ぎ資料の項目をご紹介します。

事務局メンバー向けの資料


概要

「フレッシャーズキャンプ」とはどのような研修であるか、研修を実施する目的、会社としてこの研修をどのように位置付けているかという前段を提示しています。


プログラム内容

現在採用しているワーク形式のプログラムの内容が一覧できるようになっています。

例えば、2023年に開催した当時のプログラム内容や1日のスケジュールはこのようにまとめています。

<年間プログラム(2023年度版)概要>

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<1日のスケジュール>

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事務局の体制

「フレッシャーズキャンプ」に対する理解や指導方針の統一を図るべく、事務局の役割について説明しています。

また、受講生に対するサポート体制と人員配置、当社でいえば受講生2人に対して事務局メンバーを1人配置するといったことも記載してあります。

幹部層向けの資料

ヤマチユナイテッドでは、3月に行われるグループ全体の経営会議で使う資料として、幹部陣と共用する資料もあります。

「フレッシャーズキャンプ」の開催目的や実施内容がまとめてあり、日程、メンバー、研修の位置付け、その年度における研修のテーマといったことが記載されています。

「フレッシャーズキャンプ」は元々、代表の山地がアメリカの経営学者、ロバート・リー・カッツ考案の人材育成理論「カッツモデル」を参考に設計しました。

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コンセプチュアル、ヒューマン、テクニカルという3つのスキルがありますが、幹部育成、つまりトップマネジメント層の人材育成を目的とする「フレッシャーズキャンプ」では、コンセプチュアル・スキルとヒューマン・スキルを磨いていくことになっています。

例えば「今年コンセプチュアル・スキルの中でも、ロジカル中心に伸ばしていこう」と、注力するところを示し、それを中心に据えた育成テーマを設定します。


協力の呼びかけ

幹部層向けの資料に記載する内容として、「課題日」の時間確保に対して協力の呼びかけも必要です。

受講生にはレポートなどの課題を与えるのですが、通常業務に圧迫されると残業が増えてしまうため、課題日をあらかじめ決めておいて、この日に集中して取り組んでもらえるようにしています。


研修の目的

プログラムについても、それぞれ目的(ゴール)とワーク内容をまとめてあります。

当社でコンサルティングを行なっているお客様のお話でよくあるのが、スライドなどワークに使う資料は引き継いでいるけれど、目的は案外伝えられていないというケース。

「どんな力を付けるために」「どんな目的で採用しているプログラムであるか」、ここをしっかり引き継いでいかないと、振り返りのときに次年度にも入れるべきプログラムであるかどうかの判断がつきません。

こうなると「わからないからとりあえず入れておこう」としてしまいがち。

その結果、年々時代や組織が変化しているにも関わらず、研修内容が古臭くなっていくことに気が付かないまま形骸化してしまうのです。

事務局長向けの資料

事務局長は、事務局を経験した入社3~4年目の社員から選出されます。

事務局長向けの資料には、研修がない1月から3月まで、次年度の計画を立てる3カ月間にやることがまとめてあります。


メンバーの選定

12月後半から1月にかけてすべての事務局メンバーを決定します。

事務局のメンバーは任命制なので、受講生として「フレッシャーズキャンプ」に参加している間に、実はその時の事務局によって「次年度はこの子に事務局の運営を任せられそうだ」と、ある程度目星が付けられています。

事務局のメンバーに選ばれると通常業務を調整して事務局の運営を進めていかなくてはいけないので、まずは配属先の上長に相談し、OKが出たら正式に根回しをして本人に依頼するという流れ。

当社の若手は、その際にメールやSNSで各所へ送信する依頼文なども取っておき、引き継いでいるのでマメだと思います。

「BtoBの事業部の人にはメールで、BtoCの事業部の人にはSNSで」というように、確実に見てもらえるよう、普段メインで使っている通信手段にも気を配って次のメンバーへ伝えているのにも感心しました。


前年度の研修内容の振り返りミーティング

1月中旬から下旬の間に、前年度の研修内容の振り返りの場を設けます。

参加者は前年度の事務局メンバーが中心になりますが、次の事務局長候補者には事前に声をかけて意思を確認したうえでここに出席してもらい、会議の内容を共有します。


次年度の方針のすり合わせ

2月中に1時間ほどミーティングの場を設定し、代表の山地と事務局とでブレストを行います。

会社によっては幹部陣も参加してもらって良いでしょう。

当社では毎回、「そのアイデア良いじゃん」と雑談混じりに笑いながら社長室で話が盛り上がるので、実際は2時間くらいかかっています(笑)。


スケジュール作成

年間の開催日程を作成し、同時に各回で使用する会場の手配を行います。

代表の山地も毎回出席しますから、社長秘書を通じて予定を確認する作業も発生します。

研修の最終回は受講生のスピーチで締めくくりますが、グループ内のイベント会社「アンカー」に発注して派手な舞台演出を入れるので、そちらの予定も押さえておかなければなりません。


社内周知

課題日確保の協力依頼も含めた社内周知も大切です。

誰に何をお願いするか、確認するかといったことをまとめてあります。

当社では既存社員に講師役を依頼してスピーチをしてもらうプログラムもあるので、2月から3月にかけて根回ししておきます。


稟議・承認の手続き

研修内容が固まったら、指定図書の購入費用や発注物などの予算も含めて2月の経営会議に提出して共有し、幹部層から最終的な承認をもらいます。


キックオフ

4月に入ったら目線合わせの意味も込めて、事務局のミーティングを行います。

スケジュールに沿って役割を分担し、年間のリーダー会議や事務局ミーティングの設置もここで話し合われます。

引き継ぎ資料の中には前年のタイムスケジュールも入っています。

月ごとのワーク内容と時間配分、担当者、レポートなどの課題内容といった細かい部分も書き込まれているので、この資料を参考に踏襲できるところは活かしていく流れです。

以上が引き継ぎ資料の概要ですが、当社ではあまり紙は使わず、パソコンを持ち込んでデータ共有しています。

毎月やることのほかにイレギュラーなものについては、箇条書きで毎月の予定に書き添えておけば良いと思います。

例えば、初月に受講生のニックネームを書き込む名札を準備する、1回か2回しかやらない決算書分析などがあります。

社員向け研修を内製化し、社員に運営を任せるメリットは若手社員と受講生が一緒に育つこと

社員向け研修を内製化する際、一から作っていくのは非常に苦労するでしょう。

まずは、パッケージを買ってしまい、それを自社流にアレンジするのがおすすめです。

また、社員向け研修を通じて受講生(新入社員)にどうなってほしいか、どのような力を身につけてほしいかというゴールを最初に設定することも大切です。

そして、研修直後に定期的に振り返り、内容に見直しをかけましょう。

この2つを実行すれば、自社に適した研修制度を構築し、時代背景やその時々の会社の状況にマッチした内容へとブラッシュアップし、後進に引き継いでいくことが可能となります。

研修内容の振り返り・見直しを行う際のポイントは、「なぜ社員向け研修を行うのか」という目的を確実に引き継いでいくことが一つ。

そしてもう一つは、毎回の研修直後、本当にメモ程度で良いので、その日の気づきや確認事項をしっかり残しておくことです。

また、社員向け研修の事務局について、運営を担うメンバーに前年の受講生(若手社員)に運営や講師役を任せることで、彼ら彼女らは成長するでしょう。

多少の不具合も想定したうえで構築した研修制度が、ヤマチユナイテッドの「フレッシャーズキャンプ」です。

先輩社員から見たらまだまだでも、事務局を若手社員に担ってもらうことで「受講生と一緒に育っていく」と考えています。

そのため、社員向けの研修制度を内製化し導入するのなら、ハードルを上げすぎず、トライアンドエラーを重ねて良いと思っています。

皆さんも、今回ご紹介したような方法で社員研修の内製化を検討してみてはいかがでしょうか。



「ヤマチユナイテッドの『フレッシャーズキャンプ』を導入したい」「どんな研修なのか、もっとよく知りたい」と思われた企業様は、実際の研修の現場をお見せしている視察会への参加をぜひご検討ください。

スケジュールは、視察ツアーのページで随時ご案内しています。

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