多角化が先か、社員を育てるのが先か

多角化するノウハウ

山地 章夫
山地 章夫

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こんにちは、山地です。

「多角化したくても、新規事業を任せられる人材がいない」

ときどき、このように嘆く経営者とお会いします。

「新規事業は簡単に失敗できないから、半人前の従業員には任せられない」

「優秀な人材は、既存事業の主力メンバーなので、新規事業にまわすわけにいかない」というわけです。

このように考えてしまう経営者は、次のように発想の転換をしてみてはいかがでしょうか。

「先に新規事業を立ち上げれば、自然と人が育っていく」と。

今回は当社の人材育成の手法をご説明しましょう。

目次

  1. 新規事業を進めるプロセスの中で人を育てる
  2. 「経営者の我慢」が人を育てる
  3. 部下に任せなければ、大きくなれない
  4. 口出しはせず、自ら考えさせる
  5. 失敗から学ぶ機会を奪ってはならない
  6. 丸投げすれば、社員が育つ
  7. まとめ

1.新規事業を進めるプロセスの中で人を育てる

多角化できないでいる経営者は、新規事業で成功するためには「準備万端でなければならない」と思い込みがちです。

しかし、もともと優秀な人材が限られる中小企業の場合、人が育つのを期待して待っていたら、いつまでたっても新規事業に打って出ることはできません。

多角化を成功させて売り上げを伸ばしていく経営者を見ていると、皆さん、走りながら環境を整備していくスタイルをとっています。

つまり、人を育てる前に、まずは「これはおもしろい事業になりそうだ」というビジネスを立ち上げて、その事業を進めていくプロセスの中で人を育てています。

私の経験から言っても、「これはいい!」とひらめいたものを、あまり後先を考えず、情熱をもってスタートさせた新規事業のほうが、結果的にうまくいき、売上規模も大きくなっています。

「鉄は熱いうちに打て」といいますが、新規事業も情熱が燃え上がっているうちにさっさと始めたほうが軌道に乗りやすいのです。

心配はいりません。

新規事業を担う人材は、新規事業のプロジェクトに巻き込み、仕事を任せていくことで、どんどん成長していきます。

2.「経営者の我慢」が人を育てる

では、人を育てるのに最も重要なことは何でしょうか。

それは「経営者の我慢」につきます。

事業がうまくいっている経営者で、苦労を経験していない人はいません。

私は、多くの優れた経営者と交流してきましたが、失敗や苦労を乗り越えた経験を糧に成功を手に入れた人ばかりです。

人を本気で育てたければ、権限移譲をし、仕事を部下に任せて、どんどん失敗を経験させなければなりません。

新規事業のタネを見つけてきて芽が出るまで育てるのは、経営者の大切な仕事のひとつです。

だから、新規事業を立ち上げる段階では、ある程度、経営者がイニシアチブを握ることは重要です。

ただ、多角化をスムーズに進めるうえでのポイントは、新規事業の企画段階から部下を巻き込んでいくこと。事業責任者を指名し、積極的に仕事を任せていくのです。

3.部下に任せなければ、大きくなれない

事業が立ち上がり軌道に乗りそうな段階で、経営者は「あとは任せた」と新規事業の実務から身を引き、次の新規事業立ち上げに注力する。これが理想です。

ところが、多角化がうまくいかない経営者は、部下に任せることができません。

「あれやれ」「これやれ」と指示を出してしまいがちです。

確かに経験値の高い経営者自らが手取り足取り指示を出したほうが、スピーディーに結果が出て、うまくいく可能性は高くなります。

しかし、このやり方では、部下は経営者の顔色ばかりうかがう「指示待ち人間」になってしまいます。

いつまでたっても自分で考え、判断できるようにはなりません。

新規事業は一時的にうまくいくかもしれませんが、部下がなかなか成長しないので、いつまでも経営者が陣頭指揮をとる羽目になります。

そうすると、本来の経営者の仕事である多角化に費やす時間を確保できません。

4.口出しはせず、自ら考えさせる

私の場合、いったん新規事業を部下に任せたら、余計な口出しはしません。

もちろん、部下が180度違う方向に進もうとしていれば「本当に大丈夫か?」と、軌道修正を促すこともあります。

「自分のやり方のほうが売り上げは増える」と思っていても、口には出さずに部下のやり方に委ねてみます。

そのあと、部下が「思ったより売り上げが伸びませんでした」と報告してきたら、「どうしたらもっと伸びると思う?」と質問し、気づきを促します。

答えは与えずに、部下に考えさせるのです。

部下は悩み、苦しむかもしれませんが、そうした「濃い経験」が部下を成長させるのです。

正直言って、人を育てるには「我慢」が必要です。

部下の仕事ぶりを見ていると、「あれやれ」「これやれ」と言いたくなる気持ちはわかります。

しかし、そこでグッとこらえる。言いたくても我慢することが、経営者の大事な仕事といっても過言ではありません。

5.失敗から学ぶ機会を奪ってはならない

「それはやったらダメだ」と言うのは簡単です。

しかし、人は失敗を通じて成長していきます。身を持って痛い目に遭うから、その経験を糧にすることができます。

たとえば、部下が電話に出るのが遅いからといって「電話は2コール以内で出なさい! 会社の信用が落ちてしまうじゃないか!」と怒鳴るよりも、お客さまから直接「電話に出るのが遅い」と指摘されたほうが、学びは大きくなります。

そもそも、失敗したからといって、会社の信用が失墜するケースはごくまれです。

会社全体としてみれば、小さな損害ですし、本人が少し恥をかく程度でしょう。

それよりも、部下が失敗から学ぶ機会を失い、成長しないことのほうが、会社にとって大きな損害です。

また、「部下のやり方よりも、自分のやり方のほうがうまくいく」と経営者が思っても、実際にやってみたら、部下のやり方のほうが成果は上がるかもしれません。

若い感性や思いきりのよさに任せたほうが、うまくいくケースは案外多いのです。

6.丸投げすれば、社員が育つ

多角化の成功の鍵を握るのは、部下へ「丸投げ」できるかどうかです。

社員に大胆に任せ、経営に巻き込んでいけば、おのずと成長するものです。

そして、気持ちよく「丸投げ」するためにも、多角化を進めることが有効です。

ひとつしか事業がないと、経営者は心配で丸投げできませんが、いくつも事業があり、次々に多角化を進めていると、忙しいので「丸投げ」せざるをえないからです。

多角化経営は、「丸投げ」しやすい環境をつくることにもなるのです。

ただし、気をつけていただきたいのは、「丸投げ」するといっても、部下に責任まで押しつけてはいけません。

失敗したときの責任は、「丸投げ」した経営者にあります。

「責任は俺がとるから思いっきりやれ」と、テレビドラマの俳優のようなセリフは照れくさくて言いづらいかもしれませんが、いずれにしても「責任は経営陣にある」ということを部下に伝えておく必要はあります。

そうしなければ、部下は失敗を恐れて、小さくまとまってしまうでしょう。

7.まとめ

「多角化したくても人材がいない」という経営者には、「多角化のプロセスで人が育つ」とお伝えしています。

中小企業の経営者は、自己主張のできる社員を育てなくてはなりません。

なぜなら、従業員にとって中小企業で働くメリットは、自分が主体性をもって判断し、仕事を進められる点にあるからです。

上司の言うことを言われたとおりにやるだけなら、大企業で働いたほうがいいと考えるでしょう。

多角化と人材育成は車の両輪。自己主張しイキイキと働く従業員を育てるためにも、積極的な多角化がおすすめです。

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