事業拡大のメリットとは?拡大方法・リスク・成功事例を知って成功へ

多角化・新規事業

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。

会社経営が一定の規模に達すると、成長の次の段階として更なる多角化による事業拡大が視野に入ってきます。

そうなると「いざ新事業を!」と考える経営者の皆さんも多いはず。

また、事業拡大への熱意はあっても、実際どういった切り口で何から着手したら良いのか、迷ったり不安になったりする場面もあるでしょう。

今回のコラムでは、多角化が成功するポイントとして、多角化による事業拡大の方法やメリットなどを解説します。

ヤマチユナイテッドの多角化の成功事例もご紹介しますので、会社をもう一回り大きくしたい方や、将来「多角化」を考えている方のお役に立てれば幸いです。

目次

  1. 多角化による事業拡大の方法とは?タイミングの見極め方・方向性の考え方を確認
  2. 多角化による事業拡大を行うメリットとは?リスクや対策も確認しよう
  3. ヤマチユナイテッドの多角化による事業拡大の成功事例を紹介
  4. 多角化による事業拡大のメリットを知り、企業の成長とリスクヘッジを両立させよう

多角化による事業拡大の方法とは?タイミングの見極め方・方向性の考え方を確認

会社を立ち上げたからには永続させることを目指すのが前提ですが、現状維持で良いという気持ちのままではよほど世の中が好調でない限り、やがて衰退、ジリ貧、終わりが来てしまいます。

会社の成長・発展においては収益性、生産性といった指標が大事になりますが、企業としての影響力という意味では売り上げもその指標の一つとなり得るでしょう。

どんなに売り上げが上がっても、一つの企業で一つの事業ではやがて成長曲線が頭打ちになる時が来ます。

売り上げの「嵩(かさ)」を増やしていくには、早いうちから中長期的な事業拡大計画にきちんと取り組んでいくことが重要です。

多角化による事業拡大方法として、タイミングの見極め方と方向性の考え方について確認しましょう。

多角化のタイミングの見極め方

事業の多角化は、どのタイミングで動き出すのが最適なのでしょうか。

既存事業の売り上げが前年比150%、200%と伸びているうちはそれを伸ばす時期と考えて、既存事業にどっぷりと本腰を入れて取り組むのが基本でしょう。

しかし、成熟期に入ってくると前年比110%や105%で精一杯という低成長の時期となり、高成長を目指してこれを伸ばし続けるのはなかなかハードルが高くなってきます。

この後、もしも既存事業の状況が悪くなると、既存事業一本でやっている企業では次の手を打つのが難しくなってしまいます。

できれば状況が良いうちに、もしくは成長曲線がなだらかになってきた頃、多少余力があるうちから多角化による事業拡大を検討し、改めて高成長へ目を向けていくのがベストかなと思います。

それこそ、昨今ではコロナ禍や国際情勢の悪化、物価上昇、円安の進行と非常に環境の変化が激しい時代。

この変化に柔軟に対応していくため、リスクヘッジの意味でも事業の柱がいくつかある方が良いのではないでしょうか。

コロナ禍では、既存事業一本でやってこられた方々がここ数年で相当な影響を受けました。

大多数の方は既存事業の立て直しを図り、あるいは「またコロナ禍のようなことがあったら打撃を受けるからこのままじゃだめだ」と、既存事業の形を変えて再出発したりしています。

しかし「既存事業の形を変えるだけでは心配だ」というのであれば、やはり何か新しい軸足を一つ置かないと、ということになると思うんです。

事業拡大の方向性の考え方

事業拡大の方向性としては大きく2つ。

「既存事業を成長させていく」もしくは「新規事業に取り組む」このいずれかです。

既存事業を成長させるのはいわば王道の手段。

「ニーズがなくてやめるしかない」という事業内容でない限り、何かしらのやりようはあるものです。

ただし、時代や環境にあわせて変えるべきところは変えないといけません。

その変化を厭(いと)わずにやっていくことが重要です。

新規事業に着手する場合、よく用いられるのが「アンゾフの成長マトリクス」です。

以下は、そのフレームワークを参考に当社グループで利用している「事業多角化のマトリクス」です。

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引用:山地章夫.『新規事業と多角化経営』.クロスメディア・パブリッシング.2021年6月25日

縦軸に「技術(ノウハウ)」、横軸に「市場(顧客)」を取り、それぞれ「既存」と「新規」に区分したものです。

先ほど「王道」と表現したのは、「既存事業を既存の市場で成長させる」ということで左上にある「市場浸透作戦」の位置づけ。

新規事業へ乗り出すのであれば、「既存のノウハウを新たな市場に合う形に発展させる(市場開拓戦略)」か、「既存の市場へ新しいノウハウを売り出す(商品開発戦略)」といったところが手堅いですね。

右下の「新しいノウハウを新規の市場へ売り出す(異業種進出戦略)」は、会社をしっかり成長させながら発展していくためには、既存事業のみならず、事業の軸を増やす多角化戦略が必要です。

ただ、自社の経営資源を活用するのでもなく、ノウハウもないという状況で挑む場合は、リスクが高くなります。

この方向性で進めたいのなら、FC(フランチャイズ)に加盟する、何かの代理店になる、M&A(合併と買収)で他社のノウハウを取り入れるといったことも検討する必要があるでしょう。

近年、事業承継ニーズが高まり、少額でマッチングが成立する時代になっているので、中小企業でもM&Aを実現しやすくなってきています。これも1つの方法だと思います。

多角化による事業拡大を行うメリットとは?リスクや対策も確認しよう

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多角化による事業拡大を行うことで得られるメリットはさまざま。

特に私たちのような中小企業においては、事業多角化することで成長スピードが加速するというメリットは大きいと考えます。

まず事業を多角化するメリットを確認しましょう。

メリット①利益の増加

そもそも多角化で事業拡大を行う目的の一つとして、企業の成長を支える売上高と利益の増加ということがあります。

利益の増加なくして、事業拡大については語れません。

メリット②知名度の向上

規模感の問題ではありますが、新製品・新サービスであれば話題性が高まります。

新市場であれば顧客の層が広がることにより、知名度が向上する可能性があります。

メリット③リスク分散

前項でも触れましたが、事業の柱を増やすことによってリスクの分散ができ、環境や市場の変化に柔軟な対応ができる組織づくりができます。

メリット④信頼性の向上

売り上げが増え、知名度が上がり、リスクヘッジもできていると、事業拡大によるスケールメリットも。

「仕入れの量を増やせたことによるボリュームディスカウント」「銀行交渉力が上がった」といったことで、信頼性が向上したことを実感できるでしょう。

メリット⑤会社の環境が整っていく

社員数が100名くらいになってくると、どれだけ経営者がトップダウンのワンマン経営をやってきたとしても、会社自体、組織的な経営をせざるを得なくなってきます。

経営者がどんなスーパーマンでも、1人ですべてを背負うには時間にも体力にも限界がありますからね。

経営者本人としては「全部自分でやりたいんだけどなぁ」と思うかもしれませんが、組織的な経営に移行することは、経営者にしかできない業務に専念できる環境が整うということ。

場合によっては、専門部署を置けるようになりますので「社員にとってポストが増えてやりがいにつながる」「採用にしっかり力を入れて良い人材を獲得しやすくなる」などのメリットにもつながります。

一足飛びにはいかないかもしれませんが、業務の高度化・効率化が図れるようになり、会社の環境が整うことで、さらに効率的なグループ経営につなげていくこともできますね。

例えば、当グループで住宅事業を手がける「ジョンソンホームズ」は、新築・リフォーム・不動産...とすべてを一つの事業部で兼任するよりは、それぞれに専門の事業部を立ち上げることで効率も品質も良く、生産性が高まっていくことを体現しています。

では、続いて事業を拡大するリスクも確認してみましょう。

リスク①マネジメントの難しさ

事業が増え、社員が増えるとマネジメントの難易度が上がり、組織が縦割りになりがちです。

これを乗り越えるにはやはり当グループが採用している「システム経営」が最適。

「自主計画」「自主管理」「自主分配」を三本柱とする全社員参加型の経営手法をベースに、各部門の横のつながりを強化する「連邦経営」でグループ全体が同じ目標へ向かって成長していくというように、組織の体制を整えると良いと思います。

システム経営については「社員が経営参画できる「システム経営」とは? 《連邦・多角化経営概論》第2回」もあわせてご覧ください。

メリットで述べたように、経営者が1人で会社のすべてを取り仕切るのには限界があります。

トップダウンがダメなわけではありませんが、部下に任せられる部分は任せていかないと「自分が全部やって会社を大きくしたい」という気持ちが、逆に成長を阻害する要因になってしまうこともあるのです。

会社にとって非常に頼れる存在である「自律型人材」を育成する方法について「自律型人材とは?育成方法やメリットを徹底解説!」でご紹介していますので、ぜひあわせてご確認ください。

リスク②固定費の増大

社員や事業所が増えると、人件費や家賃といった固定費もその分上がります。

売上高が増えても固定費で利益が削られるようでは、事業拡大のメリットが損なわれてしまいますから、事業計画をしっかり立てて生産性をチェックしながら進めましょう。

リスク③資金繰りと投資の見立てに注意が必要

新規事業に投資すると、財務の面で一時的ではありますが、厳しい方向へ行く時もあるので、そういう意味でのリスクもあるかもしれません。

商品在庫を増やす、事業所や工場を建てるといったことで総資産がどんどん増えてしまう。

これはつまり借入した現金を物に変えていくということですから、在庫で仕入れた商品がキャッシュフローで回れば良いけれど、滞留して自社で持つとなるとあまりよろしくないですよね。

また、不動産を所有すると大きな資産になりますから、自己資本比率が伴っていない場合は過剰投資に注意が必要です。

利益が思うように上がらなくても、きちんと返済できるかどうか、ここの見立ては必要ですね。

特に売掛金が発生するような事業を増やしていくと、お金が入ってくるのに先行して支払いが発生し、返済するお金がないという、いわゆる「回収ギャップ」に直面する可能性も。

売り上げが増えれば増えるほど資金繰りが大変になっていくのも、実はよくあるケースです。

その割に粗利益率が変わらないのであれば生産性が落ちていくだけで、これでは事業の「拡大」ではなく「膨張」でしかありません。

ここを取り違えないための計画性は大事です。

当然ですが、投資は身の丈に応じて行うべきで、社運を賭けるようなやり方や過剰投資は要注意。

過剰な借り入れも同様です。

ちゃんとキャッシュフローで返済できるのかというところを検討し、余裕を見て資金調達を行うこと。

一番理想的なのは、自己資金の範囲内で投資していくことです。

さらに、自社なりの投資基準も作っておくと一つの目安になります。

ヤマチユナイテッドの多角化による事業拡大の成功事例を紹介

当グループは、今でこそ多くの事業部を擁(よう)し、多彩な分野の事業を手がけていますが、元々は建材卸の会社として1958年にスタートしました。

そこからずっと1980年代半ばまで建材商社としてやっていったわけですが、建材事業は粗利益率が低い、手形回収が多くて回収サイトが長いといった体質で、不良債権が発生することもしばしば。

売り上げの嵩(かさ)はあっても薄利多売で手元に残る物が少なく、不良債権によるダメージも大きいのが悩みの種でした。

そこで「現金回収が増やせる事業を」と考えて、1982年にレンタル事業を始めました。

これが現在、当社でイベント事業を手がける「アンカー」の原点です。

事業拡大の成功事例①アンカー

アンカー」は大手レンタルサービス会社のFC店という形で参入し、多角化による事業拡大の第一歩となりました。

※事業多角化の方法でご紹介した「事業多角化のマトリクス」でいえば、右下の「新サービスで新市場(異業種進出戦略)」の事例となります。

「アンカー」の事業は、初めはビデオカメラや旅行カバンの貸し出しからスタートしました。

そのうち運動会の用品やイベントで使うポップコーン、綿あめの製造機、テントなど。

ニーズが増えて扱う品物の領域が拡大していきました。

当時のFC本部は家庭用品が中心でしたが、自社で道具を揃え、イベント資機材のレンタルにどんどん強くなりました。

そこで袂(たもと)を分かって、イベント専門のレンタル業という形で自社で運営するようになったのです。

コロナ禍でイベント事業は大きな打撃を受けましたが、「アンカー」の社員たちはリモート会議などのニーズを捉えてウェブスタジオ事業を新たに始め、新規事業でピンチをチャンスに変えた好例となっています。

事業拡大の成功事例②ジョンソンホームズ

当グループには住宅販売事業の「ジョンソンホームズ」。

「建材を建築会社へ売る側」だった当社の立ち位置を「買う側」へと転換、つまりBtoBからBtoCのエンドユーザーに近いところへ進出したという事例です。

建材卸とは粗利益率、収益性がまったく異なり、売上金の回収は現金でほぼ取りそこねることなく入ってきますので、財務的な会社の安定性にも貢献。

住宅関連の裾野は広く、住宅販売のほかにも「リフォーム・建売・不動産・保険・インテリア・飲食と「ジョンソンホームズ」内でも事業の幅を広げていっています。

ほかにも時代のニーズに応える形で、事業拡大のための工夫をしてきました。

事業拡大の成功事例③きたえるーむ

高齢化社会や健康産業を視野に入れて立ち上げた、機能訓練専門デイサービス「きたえるーむ」。

2023年時点での一番新しい事業としては、2023年2月に「きたえるーむ」の新事業として、江別にデイサービス施設に加えてスポーツジムを併設した複合店舗「O-STYLE江別中央」を開業しました。

元々、江別に「きたえるーむ」の出店計画があり、見つけたのが大きな物件で、これなら「きたえるーむ」のほかにジムやマッサージも入るのでは、ということで複合店のビジネスモデルをやってみようかと。

健康産業は今うちが注目している分野の一つでもあり、これがうまくいけば同様の店舗をほかの地域にも展開していきたいと考えています。

「ジョンソンホームズ」や「きたえるーむ」は直営で成功事例を作り、本部を設営してFC展開するという手法を採用しています。

生みの苦しみはありますが、BtoCをBtoBに持っていける可能性もあるので、そうすることでさらに事業展開が進むと考えると、経営がより面白くなるのではないでしょうか。

多角化による事業拡大のメリットを知り、企業の成長とリスクヘッジを両立させよう

会社が成熟期に入り、成長曲線がなだらかになり始めた頃こそ、多角化による事業拡大を検討すべきです。

事業多角化の方向性の考え方は以下の3つ。

  1. 既存の事業で新規の市場へ進出する「市場開拓戦略」

  2. 既存の市場で新規の事業を展開する「商品開発戦略」

  3. 新規の事業で新規の市場へ進出する「異業種進出戦略」

新規事業へ乗り出すのであれば、一般的には自社の経営資源を生かせる「2.新市場開拓戦略」か「3. 新製品開発戦略」が取り組みやすいといわれています。

「4. 多角化戦略」は、自社の経営資源を活用せず、ノウハウがない状況で挑む場合はリスクが高くなる可能性があるため、FCに加盟する、代理店になる、M&Aで他社のノウハウを取り入れるといったことを検討する必要があるでしょう。

多角化による事業拡大に伴うメリットは次のようなものです。

  • 利益の増加
  • 知名度が向上する
  • 事業の柱を増やすことによってリスクの分散ができる
  • 信頼性が向上する
  • 業務の高度化・効率化が図れるようになり、会社の環境が整っていく

一方、リスクとその対策も確認しておきましょう。

  • マネジメントの難易度が上がる → 「システム経営」を採用し、組織の体制を整える
  • 固定費の増大 → 事業計画をしっかり立てて進める
  • 資金繰りと投資の見立てに注意が必要 → 極力自己資金の範囲内で投資する、自社なりの投資基準も作っておく

建材卸としてスタートした当グループですが、現金回収を増やしたいという思いから、大手FCに加盟しレンタル事業を始めたのが多角化の第一歩となりました。

この事業部は現在イベント業を手がける「アンカー」となり、コロナ禍で業界が厳しい状況下でもウェブスタジオ運営という新事業に進出して成功しています。

2023年時点での当グループの一番新しい事業として、介護福祉事業の「きたえるーむ」は2023年2月に新業態として、デイサービス施設に加えてスポーツジムやマッサージ店を併設した複合店舗を開業しました。

現代は、まさに激動といってもいいほど環境の変化が激しく、今後も続いていくと思います。

その中でも会社がしっかり成長しながら発展していくためには、既存事業のみならず、事業の軸を増やしていくというような事業多角化戦略が必要ですし、ぜひおすすめしたいところです。

会社を成長させると同時にリスクヘッジにもなり得る事業拡大についてもっと知りたいという方は、ヤマチユナイテッドの「連邦・多角化経営実践塾」をチェックしてください。

参加はホームページから受付していますので、日程などの詳細をご確認くださいね。

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