グループ会社に必要なブランド統一戦略とは?理念と風土で一貫性経営を!
ブランディング
こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
「会社としての一体感が薄い」
「各事業がバラバラに動いている」
複数事業を展開する企業や、グループ会社を経営している方の中には、そんな課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
事業が増えるほど、「グループとしてどうブランドを統一すべきか」は避けて通れない経営課題です。
今回は、グループ会社におけるブランド統一戦略の必要性と、単なるデザインやロゴの統一ではない、「理念と風土」を軸にした実践的なブランド戦略について解説。
ヤマチグループの実例も交えながら、複数事業・グループ経営における「ぶれない一貫性」のつくり方をお伝えします。
目次
- 中小企業でも複数事業・グループ会社が増加!なぜ「ブランド統一戦略」が必要なのか?
- 複数事業企業やグループ会社のブランドがバラバラなことで起きる課題とは?
- グループ会社の理念と風土で統一するブランド戦略の実践法は?ヤマチの実例も紹介
- 「理念と風土の一貫性」するブランド統一戦略が複数事業・グループ会社のブランドを強くする!
中小企業でも複数事業・グループ会社が増加!なぜ「ブランド統一戦略」が必要なのか?
近年、中小企業でも複数事業やグループ経営へとシフトする動きが進んでいます。
特にコロナ禍以降、その動きは加速しました。
飲食業を中心に特定業種が大きなダメージを受けたことで、単一事業の脆弱性が明らかになったからです。
単一事業の脆さを痛感した多くの企業が、「一つの事業に依存するリスク」を回避するために、事業形態の見直しを進めています。
「一つの事業が止まれば、会社全体が傾く可能性がある」
「このまま一事業に依存していては、生き残れない」
そう感じた多くの企業が、生き残りのために「複数の柱を持つ経営」へ舵を切っているのです。
しかし、事業を増やすほど浮上するのが「ブランドが統一されない」という新たな課題です。
新規事業を立ち上げる際、「とりあえずカッコいい名前をつけよう」「ロゴだけ統一しよう」といった表面的な対応で済ませてしまうケースが少なくありません。
それはブランディングのようでいて、実は見た目だけの「なんちゃってブランディング」。
ブランドがバラバラなままだと、せっかくの経営資源が分散し、グループ全体のスケール感や信頼感が伝わりません。
結果として、知らぬ間に大きな機会損失を積み重ねてしまうのです。
グループブランディングが目指す5つの目的
そもそもなぜ、グループのブランド統一が必要なのか。
グループブランディングには、大きく5つの目的があります。
①グループのスケールメリットを生み、相乗効果を高める
各社・各事業がバラバラに動くのではなく、同じ理念のもとで動くことで、シナジー(相乗効果)を最大化できます。
②顧客・取引先・採用市場への信頼を高める
統一されたブランドは「一貫性のある企業」として認知され、印象や信頼度を高めます。
グループとしての存在感を示すことで、ビジネスチャンスが広がります。
③理念を言語化・明文化する
ブランディングを通じて、企業としての存在意義や「ありたい姿」を明確に言葉に落とし込みます。
④社員の共感、価値観、一体感を生む
社員が理念を理解し、同じ方向に向かって動けるようになります。
⑤事業の一貫性、判断軸になる
「どんな事業をやるか・やらないか」を決める際、理念が明確な判断基準になります。
ブランド統一の本質は「見た目」ではなく、内面の一致が重要
ブランド統一というと、ロゴやデザインを揃えることを想像しがちですが、本質はそこではありません。
本当のブランド統一とは、「共通の理念と価値観で動く一枚岩の組織になること」。
見た目ではなく、内面の一致こそが企業の力を最大化させます。
ブランディングの基礎について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください
中小企業こそブランディングに力を入れるべき理由とは?
ブランディングの効果とは?目的や定義、成功させるポイントを解説!
複数事業企業やグループ会社のブランドがバラバラなことで起きる課題とは?
ブランドが統一されていないことで、具体的にどのような課題が生じるのでしょうか。
顧客、採用、社員の3つの視点から見ていきましょう。
顧客に対する課題:「何をしているグループかわからない」
ブランドが統一されていないと、顧客や取引先に対して「何をしている企業グループなのか」が伝わりません。
これは信用や価値の低下以前に、「理解されない」という致命的な状態です。
本来ならグループのスケール感を活用してブランド価値を高められるはずなのに、その機会を逃してしまっています。
競合他社が明確なブランドメッセージで顧客の心をつかんでいる中、「よくわからない会社」として埋もれてしまうリスクがあるのです。
採用に対する課題「どの事業に入るのかわからない」
採用面でも「会社・グループの全体像」が見えないと、求職者に魅力が十分に伝わりません。
グループ全体の可能性を示せず、「事業ごとの点」でしか語れないと、応募動機も弱くなります。
実際には「グループ内で多様なキャリアが築ける」「異業種に挑戦できる」などの強みがあるのに、伝わらず埋もれてしまうのです。
結果として、優秀な人材の獲得機会を逃すことになります。
社員に対する課題:「同じグループの一員だと感じにくい」
社員にとっても、「自社・自分がグループの一員だ」という意識が薄れ、連携や協力体制が生まれにくくなります。
帰属意識や連携不足につながり、全体感・一体感が得られないという課題が生じるのです。
結果として、グループ内での協力体制が弱まり、せっかくの相乗効果を生み出すことが難しくなってしまいます。
ブランドの不統一は、顧客・採用・社員の全てに悪影響を及ぼす「静かな経営リスク」です。
放置すればするほど、グループ全体の成長スピードが鈍化していきます。
グループ会社の理念と風土で統一するブランド戦略の実践法は?ヤマチの実例も紹介
複数事業展開を真の成長につなげるには、「理念と風土の一貫性」が必須です。
具体的な実践法とヤマチユナイテッドグループの実例をご紹介します。
実践法1:グループ理念を基点にする
全ての事業を「理念を体現する手段」として捉えることが出発点です。
そのためには、理念を言語化・明文化し、誰もが理解できる形に落とし込む必要があります
ちなみに、ヤマチユナイテッドのパーパスは「北海道から色んな世界を変えていく」。
この軸をもとに、各社が自らの役割を定義しています。
さらに、100の事業を立ち上げ、100人の事業責任者を創出する「THE 100VISION」のミッションと、価値観を示す14のコアバリューがあり、これらが全ての判断の基準となっています。
トップにグループブランド(ヤマチユナイテッド)があり、パーパス・ミッション・コアバリューに経営方針、経営計画を加えたものが、ヤマチユナイテッドのグループビジョンとなっています。
これが法人ごとにコーポレートブランドとして落とし込まれ、そこからさらに事業ブランド、最終的には商品・サービスのブランドへとつながっていきます。
この一貫性こそが重要なのです。
パーパスやミッションは、時代に合わせて見直されることもあります。
ヤマチユナイテッドの理念や経営の遍歴については、以下のコラムで紹介しています。
理念経営とは?ヤマチの会社経営の歴史をご紹介
ヤマチの連邦多角化経営と自主自律型の経営はいつから始まった?
実践法2:理念に沿った事業しか実施しない
ヤマチグループでは「理念に沿わない事業はやらない」という明確なルールがあります。
新規事業のプレゼンでは「どんな世界を変えるのか」「既存の同じような事業と何がどう違うのか」「うちらしさはどこにあるのか」を徹底的に問います。
こうした基準があることで、事業の判断が理念からぶれず、軸のある経営が可能になります。
事例①:解体業M&A ― 理念を軸に「業界を変える」挑戦へ
例えば、解体業「テラックス」をM&Aした際も、単に利益を求めるのではなく「解体業のイメージを変える」という明確な意義を掲げました。
グレーな印象の強い業界で、見積もりを透明化し、廃棄処理もクリーンに行うなど、理念を体現することで「業界を変える挑戦」になります。
事例②:ジョンソンホームズ ― 理念が事業領域の拡大を導く
理念に基づく判断基準は、新規事業だけでなく既存事業にも影響します。
注文住宅からスタートしたジョンソンホームズは、「住まう人の暮らしを豊かにする」という理念を掲げていますが、これはヤマチユナイテッドのパーパス「北海道から色んな世界を変えていく」の傘の中にしっかりと位置づけられています。
この軸があるからこそ、住宅の箱を提供するだけでなく、インテリア・雑貨ショップ、カルチャー教室、飲食店などの、暮らしの周辺事業にも取り組んでいるのです。
理念があることで、事業領域の広げ方にも一貫性が生まれています。
事例③:アフターサービス強化 ― 運営判断にも理念が生きる
アフターサービス部門に多くの人材を配置しているのも、この理念に基づいた判断です。
家を建てて終わりではなく、「住まう人の暮らしを豊かにする」という理念に沿って長期的な満足を提供するために、アフターサービスを強化するという選択がなされています。
理念は事業展開だけでなく、業務内容やサービスの質まで変えるほどのパワーを持つ。
これが真のブランド戦略です。
理念は、単なるスローガンではなく「事業選定と経営判断の羅針盤」になっています。
実践法3:理念を風土として共有する仕組みを持つ
理念を掲げるだけでは不十分で、風土として共有し浸透させる仕組みが必要です。
グループキックオフ、経営会議、研修、合宿、交流会など、あらゆる機会で理念と価値観を共有しています。
例えば、ヤマチユナイテッドグループでは、以下のような取り組みがあります。
- グループキックオフ:全社員が集まる経営計画発表会の中でビジョンについて触れ、繰り返し意味を説明する
- グループ経営会議:役員幹部陣がコアバリューに照らし合わせて事業を評価する
- グループ経営計画書:パーパス・ミッション・コアバリューを明文化して表現
- 新人研修(フレッシャーズキャンプ):社長自らが新入社員に約10カ月かけてコアバリューを講義
このように、さまざまな場面でパーパス、ミッション、コアバリューの意味合いを解き続け、経営層から新入社員まで、理念と価値観を「共通言語」として浸透させています
実践法4:日々の対話やメッセージで理念を浸透させる
経営層が日々語り続けることで、理念が組織に血肉として根づきます。
ヤマチグループでは先に挙げたさまざな機会を整えるのはもちろん、採用説明会でも必ずパーパス・ミッション・コアバリューを提示し、「共感できる人だけ来てほしい」と明言しています。
理念に共感した人材だけを採用する「価値観採用」を徹底することで、ミスマッチを防ぎ、その後の価値観の共有もスムーズに進むのです。
ロゴは統一しない!インナーの統一こそがヤマチグループのブランド戦略
ちなみにヤマチグループは、ロゴやデザインを統一していません。
各事業ブランドに合わせて、それぞれ独自のロゴマークがあり、その数は30~40にも及びます。
しかし、パーパス、ミッション、コアバリューとの一貫性は徹底しています。
各社各事業にそれぞれのパーパス、ミッション、バリューがありますが、グループ理念から外れたものはつくってはいけないというルールがあります。
この一貫性をチェックした上で、各社のブランドが策定されるプロセスを踏んでいるのです。
つまり、ヤマチグループが重視しているのは外観的な統一よりも「内側(インナー)の統一」。
ブランディングというと、対外的な外見を整えることだと思われがちですが、ブランド戦略を中から見ると、実は「中を整える」という意味の方が強いのです。
理念が浸透すれば、「どうあるべきか」という判断基準が組織の隅々まで行き渡ります。
業種や商品が違っても、理念でつながるからこそ、どの事業も同じ価値観のもとに統一感のあるサービスや価値提案ができる。
こうして個々の事業が強くなり、個々が良くなればグループ全体も良くなるという連動が生まれる。
これこそが本当のブランド力です。
企業ブランディングと多角化経営の関係について、さらに詳しく知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。
企業ブランディングの目的とは?連邦・多角化経営との関係も確認
中小企業はなぜ多角化すべきか?ヤマチの事例に学ぶ成長戦略のヒント
インナーブランディングの進め方を実例で紹介!目的や効果も確認
「理念と風土の一貫性」するブランド統一戦略が複数事業・グループ会社のブランドを強くする!
グループ会社や複数事業を展開する企業にとって、ブランド統一戦略は単なるロゴやデザインの問題ではなく、「経営そのもの」です。
ブランドがバラバラだと、顧客・採用・社員の全てにマイナスが波及し、スケールメリットを生かせず、機会損失につながります。
一方で、共通した理念と風土のもとで一枚岩になれば、どの事業も同じ価値観で動き、グループ全体の成長を加速できます。
ヤマチグループでは、パーパス「北海道からいろんな世界を変えていく」と、ミッション「THE 100 VISION」、そして14のコアバリューを掲げ、常に一貫性を意識したぶれない多角化経営を実践しています。
ブランディングの本質は「内側を整える」ことです。
理念を明文化し、浸透させ、事業・商品・サービスへ活かす。
その循環こそが、組織を強くし、未来を変えていくのです。
ヤマチユナイテッドでは、連邦・多角化経営の実践ノウハウを学べる「連邦・多角化経営実践塾」を開催しています。
グループブランディングや理念経営について、さらに深く学びたい方は、ぜひ詳細をご覧ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。

