多角化経営のキモ!共通経費の按分方法や配賦基準の考え方・注意点を紹介

業績管理・経営計画

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。


会社経営を進める中で、日々さまざまな経費が発生します。

部署や部門が分かれて複数ある場合、「どの部門の経費として計上すれば良いんだろう?」と迷うケースも少なくありません。

「面倒だから会社全体の経費として扱えば良い」と考える人もいるでしょうが、これが積もり積もれば、各事業の収益性や費用構造が見えづらくなり、結果として経営判断を見誤る要因になり得ます。

そもそも経費には、特定の事業に直接紐づく「直接経費」と、複数部門に関連する「共通経費(間接費・間接経費)」があります。


本コラムでは、「共通経費」とは何なのか、わかりやすくご紹介。

共通経費を按分・配賦することの重要性、注意点についてもあわせてご説明します。

目次

  1. 共通経費(間接費)とは?

  2. 共通経費を部門別に按分・配賦することや配賦基準の重要性

  3. 共通経費の按分方法と配賦基準をご紹介

  4. 共通経費按分・配賦の注意点とヒント

  5. 共通経費を適正に按分・配賦することが正しい経営判断につながる

共通経費(間接費)とは?

そもそも共通経費とは何か、まずはその前提から整理してご紹介します。

企業の会計形式「制度会計」「管理会計」から確認

「共通経費」をどのように扱うべきかを理解するために、まずは企業の会計形式である「制度会計」「管理会計」について最初にお話ししておきたいと思います。

企業の会計形式にはいくつか種類があり、そのうち「制度会計(税務会計、財務会計ともいわれます)」は法律に基づいた形式で作成され、外部への報告といった対外的な目的で使われます。

上場企業であれば株主などに対して損益をオープンにする目的もありますが、我々中小企業においては「税金を納めるため」が最大の目的で、税務申告に必要な資料としての役割が大きいです。

そのため、法律に基づき、決まったルールのもとに会計処理が行われることになっています。


一方で「管理会計」は、企業の内部管理を目的とした会計であり、必ずしも法律で形式が決められているわけではありません。

形式は自由なので、自分たちで独自のルールや基準を定めても良いし、定めなくても良い。


例えば、経営判断、計画策定、業績管理、事業評価といった目的のために活用され、自由な切り口や考え方で会計処理をして良いのです。

これを踏まえて「管理会計」とは、多角化した事業の事業性評価を適正に行い、業績管理や経営計画策定の精度を高めるための仕組みと言えます。

もっと言えば、これをベースに業績を上げる、目標を設定する、進捗確認をするといったことにつなげていきたい。

ヤマチユナイテッドでは「管理会計」イコール「部門別営業利益管理」であると定義付けたいと思います。


管理会計についてより詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご確認ください。

管理会計を導入する目的やメリットは?システム経営の仕組みも確認


ここまでを前提として、共通経費の説明に入っていきましょう。

共通経費(間接費)の定義と種類

「共通経費(間接費)」とは、特定の製品やプロジェクトに直接紐づかず、複数の部門で共通して発生する費用のことです。

管理部門の人件費、光熱費、通信費、減価償却費、地代家賃などが代表的です。

これらは「配賦」という方法で、業務量や使用状況に応じて各部門へ適切に分配されます。

共通経費を正しく管理することで無駄な支出を防ぎ、各部門の実際のコストを把握でき、経営判断の精度向上にもつながるのです。


共通経費は一般的に「共通費」「間接費」と呼ばれるほか、企業によっては「本社費」「総務費」「全社費」などと扱われる場合もあります。

中小企業であれば、そもそも経費についてはまったく部門分けしていないことも多いですね。

「複数の事業をやっていても売上、利益計算は全社で一本化している」というような、いわばどんぶり勘定に近いやり方をしてしまうと、部門ごとの実績はまったくわかりません。

もう少し部門分けが進んでいれば、「部門別の粗利益までは出しているけれど、経費は全社で一本化したまま」の運用も見られます。

わかりやすい経費とわかりにくい経費の違い

次のステップとしては、「わかりやすい経費」を部門ごとに振り分けます。

「わかりやすい経費」とは、例えば、事業部に所属するスタッフの「人件費」、事業部のスタッフが実施する「活動費」「販促費」「広告費」のこと。

このように特定の事業に紐づく直接的な経費(直接経費)については、どの部門(事業部)にいくらかかっているかわかりやすいので、振り分けやすいですよね。


一方で「わかりにくい経費」とは何かというと、複数部署で共同で使っている「広告費」「車両費」「水道光熱費」、事務所の家賃や駐車場利用料といった「地代家賃」など。

どの部門の経費として扱うか判断しにくい経費、もしくは会社全体にかかっている経費のことを「共通経費」といいます。

共通経費に含まれる主な費用例

共通経費に含まれる費用の例として、次のようなものがあります。

  • 役員報酬

  • 本来は営業部に紐づくべき管理部門の人件費

  • 在庫を収める倉庫を借りる費用

  • 研究開発にかかる費用

  • (ハウスメーカーの場合)設計・積算・工事といった仕事をする技術部門にかかる費用

  • 減価償却費

  • 借入金の利息(本社費に含める運用が多い)


このように共通経費は、業種によっても異なります。

また、もともとは営業部門に按分すべき管理部門の人件費であっても、「売り上げを直接生まない間接部門だから」という理由で、「本社費」として共通経費にまとめているケースも見られます。


さらに、「減価償却費」や「事業のために借入したお金(借入金)の利息」を「本社費」として処理している企業も多いでしょう。

共通経費は直ちに経営上の問題になるものではありません。

それでは、なぜ各部門に按分・配賦する必要があるのかを、次の項目でご説明します。

共通経費を部門別に按分・配賦することや配賦基準の重要性

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共通経費を部門別に按分・配賦することは、なぜ必要なのでしょうか。

その重要性や、共通経費を按分・配賦しないことで生じる影響についてもお話しします。

共通経費の按分・配賦が必要な理由は?

共通経費の按分・配賦は、企業活動の実態を正しくつかむために欠かせない仕組みです。

一般的には、次のような理由から共通経費の配賦が必要とされています。

  • 正確な利益計算のため

  • コスト意識の向上

  • 利益管理の精度向上

  • 資源の最適配分

  • 経営判断の質の向上


部門横断で発生するコストを適切に振り分けることで、各部門の収益性を現実に近い形で把握でき、誤った判断を防ぐことができます。

また、共通経費を見える化することで、部門ごとのコスト負担が明確になり、効率化への意識も高まります。


さらに、正確なデータが揃うことで、利益管理や投資判断の精度が向上し、限られた資源の配分もより合理的に行えるようになります。

このように、共通経費の配賦は、企業全体の健全な運営に寄与する重要なプロセスなのです。

共通経費の配賦基準の重要性も確認

一般的には、配賦基準を整えることで経営判断の質や部門間の連携、企業内の透明性が高まるといわれています。

具体的には、次のような効果が期待できます。

  • 正確な原価計算の実現

  • 公平なコスト負担の確保

  • 経営判断の質の向上

  • 部門間の協力促進

  • 透明性の向上


これらの点を踏まえると、共通経費をどの基準で按分するかは、企業運営の精度を左右する重要な仕組みだと考えられます。

妥当な基準があれば、各部門のコスト使用状況が正しく把握でき、経営数字の見え方も大きく改善するでしょう。

また、負担の偏りが生まれにくくなるため、組織全体での納得感も高まります。

共通経費を按分・配賦しないことで生じる影響は?

共通経費を按分・配賦しないことで生じる影響をご紹介します。

①共通経費を負担しないと、事業部門の利益が実態より過大に見える

経営管理上、そもそも共通経費は適切に各部門へ割り振るべきものです。

しかし、割り振られる側としては、独立採算でシビアに取り組んでいる中で「なぜそれをうちの部門で負担しなければならないんだ」「会社としてはみんな一緒なのに」と不満を抱く人もいるでしょう。

事業部門で共通経費を持たない場合、売り上げから直接経費だけを引いて営業利益を計算するので、いわば実態よりも利益が出やすい状態になっています。

仮にこの事業部門で黒字を出していたとしても、本社費を持っている本社部門(総務部門、全社部門でも良いです)の経費を計上してみると、役員報酬をはじめ、間接費や管理費などで大幅な赤字になることも。

会社全体で合算すると利益が少し残るかどうか...といった状態で申告しているケースが多いんですよね。

②共通経費が見えないことで、本社と事業部門に認識のズレが生じる

共通経費を配賦しないと「本社部門が赤字なのに、事業部門ではその状況を知らない」となってしまうので、事業部門では「自分たちは利益を出している」と「勘違い」をしてしまいがちです。

その結果、「もっと処遇が上がって良いはず」「賞与を出してほしい」などと言うかもしれませんが...いやいや、それは違うでしょうと。

実際には「会社ではいろいろな経費がかかっていて、これを足し引きすると会社としては利益が出ていないんだよ」という状況があるため、本社部門と事業部門で認識のズレが生じます。

社長としてはこうした背景を踏まえて判断しているのですが、本社部門の事情が見えていない事業部門では「え、どういうことですか」と納得感が得られないわけです。

③共通経費が事業部門の運営のために必要な経費だと認識されていない

本来、本社部門が持っている経費のほとんどは、各事業部門の運営のために発生しているものなんです。

役員報酬にしても、役員クラスの社員は監督としてさまざまな会議に出席し、各部門への助言やアドバイスをしています。

それによって事業部は直接的なメリットを享受していますから、役員報酬は指導料として事業部門が負担すべき経費と考えて何も無理はありません。


また、管理部門は事業部ができるだけスムーズかつ効率良く営業利益を上げられるよう、経理、総務、採用、広報、労務管理など、営業以外の全ての仕事を受け持つことで支援しています。

管理部門にかかる経費は、各事業部が存続するため、そして会社運営のために必要な経費だと全社員が認識することが重要です。

④事業評価・数値評価の誤りが、経営判断(意思決定)を誤らせる

各事業部では共通経費を適正な形で必要経費として負担した上で、営業利益が出ているか・出ていないかを見るのが正しい事業評価につながります。

むしろ、これをしないで事業性の評価などできないと言えるでしょう。

「自分たちの事業部は黒字で調子が良いね。本社は赤字だけど」なんて言えるのは、負担すべき経費を負担しないで数字を見ているからであり、数値が過大に見えてしまう原因になります。

つまり、データ自体が下駄を履かされているのです。

こういったことに気づいてない人に「コスト管理をしなさい」「原価圧縮して利益率を上げましょう」と言ったって、力の入り方や対策そのものも変わってくる可能性があるので、会社経営においては非常に大きな影響があります。

当然、指標分析もおかしくなりますし、事業部門の評価や会社利益に対する貢献度の捉え方も見誤ってしまいます。

結果的に大きな意思決定を狂わせることにもつながるので、共通経費を各部門へ適切に按分・配賦することはとても重要なのです。

【補足】子会社化しているケースでは「経営指導料」として扱う

ちなみに、事業部門を子会社化している場合、役員報酬の配賦も法人間でのやり取りになります。

子会社に対してのコンサルティングフィー(コンサルティング料)や役務を提供したときの費用負担は、「共通経費の配賦」というより「経営指導料」に置き換わり、きちんと契約を交わした上での取引になるのですが、基本的な考え方は一緒です。

共通経費の按分方法と配賦基準をご紹介

共通経費の配賦は「どの方法で配るか(按分方法)」と「どんな物差しで測るか(配賦基準)」の組み合わせで決まります。

それでは、共通経費をどのように割り振るのかを見ていきましょう。


基本的には、まず部門ごとに割り振れそうな経費を極力「個別配賦」で割り振って、個別配賦が難しいものを「一括配賦」で対応するという流れが一般的です。

この順番に沿うことで、処理がスムーズになり、部門間の納得感も得やすくなります。

個別配賦と一括配賦の考え方

「この経費はこの事業部門のためだけに発生している経費です」というものは個別に割り振ることができます。

これを「個別配賦」といいます。

個別配賦は、部門ごとの実際の使用状況に基づき経費を割り当てる方法です。

公平性や透明性が高く、部門別のコスト管理を細かに行える点が特徴となります。


例えば、賃料を面積や人数に応じて配分する場合がこれに当たります。

一方、「一括配賦」は共通経費を一つの基準でまとめて配分する手法で、計算が簡単で作業負担を減らせることから、小規模組織で有効です。

ただし、実際の使用量を反映しないケースでは不公平感が生じる可能性もあります。

企業は規模や目的に応じて、両者を適切に使い分けることが求められます。

「使用割合」を基準にする方法が理想的なのはなぜ?

個別配賦の按分について、基本的な考え方はいくつかありますが、一番理想的なのは「使用割合」を基準にする方法です。

なぜなら、現場感に沿った負担配分ができるため、最も納得度が高いと思われるからです。

ビルのワンフロアの賃料なら使用面積に応じて、共有車両なら走行距離に応じて配分するなど、多くの人が「だいたいそんなものだろう」と感じる基準になりやすく、納得するはず。

ただし、状況によっては適用が難しいケースもありますから、その場合は「共通経費を一定の基準に基づいて各事業部門に振り分ける」つまり「一括配賦」で対応します。


事業内容にもよりますが、一般的には、下記のいずれかの方法が用いられることが多いです。

  • 個別配賦

  • 一括配賦

  • 個別配賦と一括配賦を組み合わせて配賦する

共通経費の一括配賦に用いる主な配賦基準

共通経費の一括配賦の配賦基準は「売上高基準」「投下資本基準」「人員基準」の3つが代表的です。

それぞれご紹介します。

売上高基準

全社の売上高のうち各事業部の売上高が占める割合に応じて負担率を決めます。

例えば、全社を100%としたうち、部門Aは50%、部門Bは30%、部門Cは20%であるならば、共通経費を5対3対2で配分します。


ただし、この方法は各部門のビジネスモデルがある程度似ていて、取り扱いエリアだけが違うなど画一的である場合に限ります。

ある部門は薄利多売、ある部門は売上はそれほど多くないが高利益で人数もそこそこ抱えているなど、異なるビジネスモデルが混在していると負担感に差が出やすく、非常に不公平な結果を生む可能性があるからです。

売上高基準を採用する場合は、不公平が出ないかどうかよく注意してください。

投下資本基準

投下資本基準とは「その事業にどれだけ投資したか」を基準にする考え方です。

言い換えれば、資産や負債がどれだけあるか、どのくらい借入しているかというところに着目した考え方ですね。

財産基準ともいえますから、例えば在庫をたくさん持っていて、売掛金も大きく、その分運転資金としての借入もある事業部門であれば、会社の資産をかなり使っていると判断して、経費も多めに負担してもらうことになります。


一方で、「装置産業はものすごく投資しないとならないけれど、コンサル業は資産がほとんど必要ない」というように、この基準も事業内容による差がつきやすいです。

不公平を生む可能性があると考えれば、使えるところは限られてくると思います。

人員基準

「人員基準」は比較的使いやすい方法だと思っています。

結論からいうと、ヤマチユナイテッドでも人員基準で配賦しています。

使いやすい代わりにしっかりした組織図が必要で、要はどの人がどの部門に所属しているかということを明確にしておかないといけません。

兼任の場合も、各部門にその人の名前を入れて、場合によっては兼任の割合も考えます。

頭割りなので、例えば、1人が3部門で兼任していたら、各部門均等に0.3人ずつ、あるいは0.5人、0.3人、0.2人というように割り振ることもあります。

そこまで細かくしたくなければ「兼任だけどここの部門に1人分で入れておいて良いよ」というように、話し合いで決めてかまいません。

人員基準が受け入れられやすいのは、共通経費は割と人に関わる仕事に伴って発生するためです。

採用、育成、労働管理、経理会計などの業務量(手間や工数)は社員の数に比例して増えることが多いので、その点では納得が得られやすい考え方だと思っています。


さらに細かい配分を行いたい場合は「人件費基準」=「各部門にかかっている人件費の総額の割合」で按分する方法もありますが、「こっちは人件費が高い人ばかりいる」「あっちは人件費のかからない人の集まりだ」など、人件費構成による差が現れやすい点には注意が必要です。

共通経費の按分・配賦の基本ステップ

共通経費の按分・配賦は、企業の経営管理において重要なプロセスです。

明確な手順に従って実施することで、各部門のコストを公平に分配し、経営判断の質を向上させることが期待できます。

共通経費を按分・配賦する際の基本的な手順は以下の通りです。

  1. 明らかな事業費と管理費の区分

  2. 共通経費の洗い出し

  3. 按分割合の決定

  4. 実際の按分・配賦の実施

  5. 定期的な見直しと調整

  6. 透明性の確保

共通経費按分・配賦の注意点とヒント

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共通経費の按分・配賦については、最初のほうでご説明したように管理会計の考え方に基づくものです。

そのため、社内で運用しやすいルールを決めて問題ありません。

これから共通経費の配賦を進めようと考えている皆さんに、いくつか注意点やヒントをお伝えします。

個別経費の配賦は柔軟に決めて良い

個別配賦においても、使用割合の考え方は自由です。

例えば、ワンフロア60万円の賃料を3部門で分ける場合、基準にするのは使っている面積なのか、人数なのか。

共同で借りている会議室なら、利用頻度なのか、人数なのか。

「いや、面倒だから均等割りで良い」といった考え方も含め、社内での話し合いによって決めれば良いのです。

大切なのは、納得感と運用のしやすさです。

借入利息や減価償却費の扱い方

借入に対する利息も共通経費として配賦すべきものです。

資金を投下した部門に負担を割り当てることを検討して良いと思います。

実は利息は財務会計上では一般管理費に入らず、営業外費用に区分されるため、実務上は本社が支払う共通経費として処理されているケースが多いようです。


しかし、たいていは「在庫を持つために借入した」「新しく建物を建てたので借入した」など、大きな金額が動いたところに紐づいているため、どこの部門に使った費用かは割とわかりやすく、いったん本社で払った利息を部門の経費として付け替える運用も行われます。

減価償却費も同じ考え方で、すでに部門に持っている保有資産を把握し、そこで減価償却費をそれぞれ計算し、部署の経費として計上するのです。

配賦内容を開示する際の注意点

本当はすべての費用オープンにして按分・配賦するのがベストですが、例えば、役員報酬や交際費、社長・役員周りの経費は「ちょっと刺激が強いかな...」と開示が難しい場合もあるかもしれません。

理想としては「社長はそれくらいもらって当然」「むしろもっともらってください」みたいな感じだったら良いのですけどね(笑)。

それでもいきなりオープンにするのに抵抗があることは理解できます。

クローズにしておきたい経費は、管理部門の他の経費などと一緒にまとめて「管理部門全社固定費」として扱い、内訳は開示しない方法もあります。

そうすれば「共通固定費として各部門に割り振っていきますよ」と周知しても問題無いかと思います。

役員報酬も入っているけれどグロス(総額)にすれば金額はわかりません。

役員報酬はどうしても見せたくない、按分もしないという選択もできますが、かかる費用はかかるとして配賦しないと、各部門の利益が実態より高く見える可能性があります。


繰り返しになりますが、やはり一番良いのは全てオープンにすること。

ヤマチユナイテッドの幹部であれば「会社がこの規模なら役員報酬はこれくらいないとおかしい」という感覚が身についています。

配賦の目的を踏まえ、開示と非開示のバランスを検討することが大切です。

全部は見せたくないという経営者の皆さんも、手順を踏んで社員教育をしながら徐々にオープンにしていくのが良いと思います。

社員たちがいずれ事業部門の責任者になると、管理部門は一体何にそんなにお金がかかっているのかというような話にもなります。

役員報酬については言わないでしょうけれど、「それ以外の経費がこんなにかかってこれほどの固定費になっているのはなぜか」などと疑問に思うようになれば、経営感覚が高まっているので良い傾向ですし、逆に間接部門の経費の肥大化の抑制にもなるのです。

仮想経費を活用するためのヒント

役員報酬についていえば、中小企業では会社の利益を優先して社長は報酬を抑えている、あるいは受け取っていないケースも多いですよね。

でも、「本来なら役員報酬はこれくらい取らないといけない」という「あるべき姿」があります。

そこで、実際に社長に出す額は本来の額より少なくても良いのですが、足りない分を「役員報酬不足分」として管理会計上の経費に計上し、配賦することは可能です。

このお金は内部留保的な扱いであり出て行きませんから、バランスシート上では引当金として蓄積・積立しておくと社内の貯金として残るのです。


また、本社が自社ビルで家賃が発生しない部門と、新規事業の部門のために別途事務所を借りて家賃が発生する場合、「本社にいる事業部門に家賃がかからないのは不公平だから、新規事業の賃料分を割り振ろう」と仮想的な家賃を設定して負担を均等化する方法もあります。


このように、仮想経費を計上することであえて事業部門に負荷をかけることも可能です。

引当金にしていたものは、決算時に利益に戻して申告すれば良いだけの話。

適切な部門評価にもつながるので、このやり方も検討してみてください。

共通経費配賦がもたらす社員の意識変化

共通経費の按分・配賦を行うことによって、社員の意識に変化が出てくるはずです。

例えば、金利を負担させることによって資産や在庫に対する意識が高まります。

  • 「借入はなるべくしないほうがいいな」

  • 「在庫を増やさないでおこう」

  • 「売掛金をきちんと回収しなくては」

  • 「固定資産は持てるだけ持てばいいというものでもないな」

といった視点が生まれ、経営感覚が磨かれていきます。


さらに、管理部門の経費にも自然と歯止めがかかり、幹部たちが会社経営を理解しながら進めていけるようにもなります。

会社の規模が拡大するほど、経費管理の重要性は増していきます。

「経費なんか気にするな」「会社のお金だから」といった感覚だけでお金を使っている場面を目にすることもありますし、社長の頭の中だけで運営しているから「決算するまで黒字か赤字かわからない」という中小企業もかなり多いと見ています。


しかし、会社がある程度の規模になってきたら、経費管理もしっかりしないと恐ろしくて舵取りなんかできませんよね。

感覚だけで経営していたら意思決定も間違えてしまうでしょう。

事業が増えたらその瞬間に、しっかりと部門別営業管理に力を入れていきましょう。

これはつまり、共通経費も含めてきちんと按分・配賦し、負担した上で各部門の営業利益を計上し、見ていくということです。

いずれ会社が大きくなって部門ではなく子会社ができても応用は可能です。

その意味でも、多角化経営を目指すのであれば共通経費の按分・配賦はとても重要かつ必要なのです。

共通経費を適正に按分・配賦することが正しい経営判断につながる

共通経費(間接費)とは、特定の製品やプロジェクトに直接結びつかず、複数の部門で共通して発生する費用のこと。

共通経費は、一般的に「共通費」「間接費」「本社費」「総務費」「全社費」など、さまざまな名目で呼ばれます。

どこの部門にかかっているか「わかりやすい経費」に対して、複数部署で共同で使っている「広告費」「車両費」「水道光熱費」「地代家賃」などは「わかりにくい経費」といえます。

この「わかりにくい経費」や全社にかかっている経費が「共通経費」です。

共通経費には「役員報酬」「管理部門の人件費」「減価償却費」「借入金の利息」なども配賦対象として扱うこともできます。

共通経費を按分・配賦しないと、以下のような影響が生じます。

  • 事業部門の利益が実態より過大に見える

  • 本社と事業部門に認識のズレが生じる

  • 共通経費が事業部門の運営のために必要な経費だと認識されていない

  • 事業評価・数値評価の誤りが経営判断を誤らせる

このように指標にもずれが生じ、正当な事業評価が難しくなり、結果として大きな意思決定に影響を及ぼす可能性もあるため、共通経費を適正に按分・配賦することは重要です。

適切な基準を設けることで、原価計算やコスト負担の公平性も向上し、企業運営の透明性と効率が高まります。

共通経費の配賦方法には、「個別配賦」「一括配賦」「個別配賦と一括配賦を組み合わせて配賦」があります。

「個別配賦」は使用割合を基準に按分すると納得度が高いと思いますが、何を基準にするかは社内の話し合いで決めて構いません。

「一括配賦」は、事業内容に応じて売上高基準・投下資本基準・人員基準のいずれかを採用すると良いでしょう。


ヤマチユナイテッドのようにビジネスモデルが異なる事業部門を擁するケースでは「人員基準」が比較的公平になりやすい方法とされています。

共通経費は、基本的には按分・配賦すべきものと思いますが、「管理会計」である以上、自分たちでルールを決められます。

役員報酬など、金額をオープンにするのに抵抗がある経費はクローズにする方法もあります。


また、仮想経費を計上し、その一部を引当金として処理することで、管理会計上の内部留保として蓄積することも可能です。


管理会計については、ヤマチユナイテッドが主催する経営セミナー・イベントでも取り上げています。

よろしければ今後の開催予定を随時ご案内していますので、ホームページでご確認ください。

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