経営理念の変更が必要な理由は?時代と組織に合わせて進化させる方法
理念・社風
こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
「創業時に掲げた経営理念が、今の事業領域や組織規模に合わなくなってきた」
「経営理念が社員に浸透せず形骸化している」
このような悩みを抱える経営者の方は少なくありません。
経営理念を変える必要性を感じながらも、どのように進めれば良いのか迷っている方もいるでしょう。
今回は、経営理念を時代や組織に合わせて「進化」させる必要性と、その具体的な取り組み方について解説します。
経営理念の変更は過去を否定するものではなく、未来へ向けたアップデートです。
経営理念を変更する際のよくある誤解、理念を変更・再設計する実践的なステップ、そして経営理念を進化させることで得られる効果までわかりやすくお伝えします。
目次
なぜ今、経営理念を時代と組織に合わせて進化させる必要があるのか
経営理念とは、経営者の思いや哲学を「社員・顧客・社会に伝える言葉」に翻訳したものです。
創業者や経営者の志をわかりやすく表現し、組織全体で共有するための指針として機能します。
しかし、時代や会社が変化すれば、その「翻訳」もアップデートが必要になります。
創業時には適切だった表現や言葉も、10年、20年と経つうちに、社会や現実とのズレが生まれるのは自然なことでしょう。
近年、多くの中堅企業が経営理念の見直しに取り組んでいます。
その背景には、以下のような状況の変化があります。
事業領域の拡大・多角化
創業時は単一事業だった企業が事業を増やすことで、当初の経営理念と事業内容が一致しなくなるケースが増えています。
例えば、BtoB中心に「企業の成功に貢献する」と掲げていた企業が、飲食など一般消費者向け事業を始めれば、経営理念と方向性にズレが生じます。
組織規模の拡大
少人数のうちは暗黙の了解で共有できていた価値観も、組織が大きくなるにつれ伝わりづらくなります。
雰囲気に頼るだけでは行動基準が共有されず、価値観の一体感が弱まってしまいます。
価値観の多様化と社会的責任の重視
働き方改革、ワークライフバランス、環境配慮、地域貢献など、企業に求められる責任や役割は大きく変化しています。
「とにかく働け」という時代ではなく、生産性と社会的責任の両立を意識した経営が求められる中で、理念もそれに応じた表現が必要になっています。
世代交代
創業者や先代から次世代へバトンが渡る際、「新しい視点や時代感を理念に反映させたい」というニーズが生まれます。
しかし、先代への敬意から、「理念を変えて良いのか」と迷うケースも多く見られます。
経営理念は会社とともに進化する
経営理念を変更することは、創業者や先代の想いを捨てることではありません。
核心部分の想いや哲学は引き継ぎつつ、表現を時代に合わせて「再翻訳」することで、より伝わりやすく、使いやすい理念へと進化させるのです。
会社が成長すれば、理念も成長する。
これは自然な進化であり、経営者として次のステージに進むための通過点です。
実際、事業拡大や多角化を進めた中堅企業の多くが、グループ理念や新たな指針の再構築を行なっています。
これは過去を否定するのではなく、これまで築いてきた企業文化や歴史を継承しながら次の時代へ進むための取り組みです。
グループ経営における理念体系については、こちらのコラムでも詳しく解説しています。
グループ全体に統一感を持たせるグループ理念とは?構築事例を紹介!
経営理念を進化させることで得られる5つのメリット
経営理念の見直しは単なる「言葉の刷新」ではありません。
組織全体に以下のような大きなメリットや効果をもたらします。
①意思決定のスピードが上がり、現場での迷いが減る
判断軸が明確になり共有されることで、「これはどうしたら良いですか?」という確認が減ります。
例えば、クレーム対応一つでも「お客様の満足を最優先する」という価値観が浸透していれば、逃げずに真摯に対応する。
初期対応での適切な応対や場合によっては多少のコストをかけてでも徹底的に対応するという判断を、現場や事業部が自律的に行えるようになります。
②採用基準が明確になり、自社に合う人材を採用できる
価値観を採用段階で共有できるため、共感してくれる人材を採用しやすくなります。
その積み重ねが、組織全体の価値観共有レベルを高めます。
③社員の自主性・自立性が高まり、管理コストが下がる
「あれをしなさい」「これはダメ」といった細かい指示や管理が不要になります。
社員が経営理念を軸に自ら判断し行動できるようになれば、結果として管理にかかるコストが下がります。
④ブランドの一貫性が生まれ、対外的なPRのコアになる
会社の価値観が明確になることで、採用広報や営業活動など外部発信力が強化されます。
「この会社はこんな考え方で経営している」という一貫したメッセージを届けられます。
⑤戦略と事業に一貫性が生まれ、先を見据えた事業展開ができる
10年先、20年先を見据えた事業展開や組織づくりが可能になります。
経営理念は、戦略と事業との一貫性のある経営を実現するための指針となるのです。
経営理念の変更時に起きる「危険な誤解」とは?
経営理念を変えようとする際、多くの企業が陥りやすい失敗や誤解があります。
代表的な5つの誤解と、そのような失敗に陥らないために押さえるべきポイントを解説します。
誤解①思いが定まっていないままつくろうとする
方向性が曖昧なまま「形だけ整えよう」としてしまうケースが最も多い失敗例です。
広告代理店やコンサルに丸投げして言葉だけ整えても、本質的な経営理念にはなりません。
経営理念は、どのような会社にしたいのか、将来どのように在り続けたいのか、という経営者の思いを表すもの。
その根底が明確でなければ、適切に機能しない違和感のある理念になってしまいます。
誤解②経営者だけが考えれば良い
一方で、経営者が一人で考えて決めた経営理念をトップダウンで下ろすというのも問題です。
理念を浸透・定着させるためには、経営層や幹部の共感が不可欠です。
経営者が方向性やたたき台を示した上で、特に幹部を巻き込みながら、意見を聞き、肉付けをしていく。
そのプロセスを踏むことで「自分たちもつくった理念だ」という当事者意識が生まれ、浸透が進みます。
最終的に決めるのは経営者ですが、策定のプロセスに幹部を巻き込むことで、より共感が得られます。
誤解③古い理念は完全に捨てるべき
経営理念を見直す際、過去を否定する必要はありません。
企業がこれまで築いてきた文化や歴史を壊してしまうことは、既存社員の混乱を招きます。
特に長く在籍している社員にとっては、自分達も携わった会社の歩みを否定されたように感じてしまうでしょう。
理念の変更は、「過去の哲学を引き継ぎながら、時代に合う形へアップデートする」という考え方で行うことが大切です。
誤解④運用の設計をせずに言葉だけを変える
「社是をミッションに言い換えよう」「もっとかっこいい横文字にしよう」など、言葉の見栄えだけにこだわり、抽象的で伝わらない経営理念をつくってしまうケースも多々あります。
響きは良いけれど使えない、きれいだけれど伝わらない理念は、結局お飾りになってしまいます。
つくったあとにどう使うか、どう浸透させるかという運用設計まで考えなければ、スローガンを掲げただけで終わってしまいます。
誤解⑤経営理念を変えれば会社がすぐに良くなる
「経営理念を変えればすぐに社内の雰囲気が変わるだろう」「業績アップにつながるだろう」という短期的な期待も厳禁です。
経営理念の浸透には時間がかかります。
文化の形成や組織の体質を変えていくものなので、長期的視点で取り組む必要があります。
経営理念を変更する前に押さえておくべきポイント
経営理念変更の目的は、会社の方向性を再定義することであり、単なる言葉の刷新ではありません。
根底にある思いが変わらなくても、時代と状況に合わせてより使いやすく、伝わりやすく、覚えやすくする。
それが経営理念を見直す本当の目的であり、本質です。
経営理念を変える具体的な理由は、企業によって異なります。
「経営理念が形骸化しているから変えたい」
「普段の経営と理念が合っていない」
「中長期ビジョンとの方向性がずれている」
経営理念を変える前に、まず「なぜ経営理念が形骸化したのか」「どこが現状とずれているのか」を分析することが大切です。
その目的をしっかりと踏まえて分析した上で、理念体系を作成・見直しに入らなければ、必要な形には仕上がらない可能性が高いでしょう。
ヤマチユナイテッドの経営理念の遍歴や実践について知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。
事例を交えて紹介しています。
理念経営とは?「楽しく儲かる社風」をつくるヤマチユナイテッドの事例
中小企業が経営理念を進化させるには?理念を変更・再設計する4ステップ
経営理念を見直す際、何から始めれば良いのか迷う方は多いでしょう。
ここでは、経営理念を進化させる具体的なステップを紹介します。
ステップ1:現状の理念と組織のギャップを見える化する
まずは、社員が経営理念をどの程度理解・共感しているのか、どのように捉えられているのかを確認します。
社員から経営理念に対する不満や違和感が表に出ることはほとんどありません。
経営者が気づかなければ、問題が顕在化しにくい、誰も指摘しないテーマだからです。
経営陣や幹部にヒアリングし、「経営理念に違和感があるか?」「事業領域と経営理念の方向性は合っているか?」など意見を集めましょう。
場合によっては、社員アンケートやサーベイを実施し、「経営理念を知っているか」「共感しているか」を確認する方法も有効です。
また、経営理念が日々の判断軸として機能しているか、事業やサービスとの一貫性があるかもチェックをしましょう。
例えば、「企業の成功に貢献する」という経営理念を掲げるBtoB企業が飲食店を始める場合、一般消費者に喜ばれる価値を理念の範囲に含めなければ、一貫性が保てません。
このようなギャップを具体的に洗い出していきます。
さらに、創業時からの出来事、苦労したこと、良かったこと、悪かったことなど、会社の歴史や物語を振り返り、どのような文化が形成されてきたのか整理していきましょう。
これも現状把握の重要なプロセスです。
ステップ2:経営層・幹部・社員を巻き込みながら新理念を策定する
現状把握ができたら、新しい経営理念の策定に入ります。
まずは経営者が、こうありたいという姿や組織像を示します。(たたき台)
その上で、経営陣や幹部、マネージャー、リーダーなどを巻き込みながら、10年後、20年後にどんな価値を生み出していきたいのか、会社の文化・社風としてどうありたいのかを議論します。
トップダウンではなく対話とキャッチボールができるよう、会議やワークショップ形式で時間を確保し、プロジェクト的に進めることが効果的です。
例えば、ヤマチユナイテッドが経営理念を変更する際は、このような流れでした。
代表の山地 章夫がたたき台を提示・説明し、幹部陣に意見を求める(意見や追加、修正案を募集する)
↓
翌月の会議で再度議論
↓
微修正を重ねながら2〜3回のキャッチボールを経て、新しい経営理念を整える
このプロセスが、幹部陣の共感と当事者意識を生み出すのです。
理念策定において最も大切なのは、美しい言葉をつくることではなく、経営者と幹部陣が理念について語り合い、共有するプロセスです。
この対話の中で、組織としての価値観が明確になっていきます。
ステップ3:理念体系として明文化する
議論を重ねた内容を、理念体系として整備します。
表現はシンプルに、難しい言葉や抽象的な言葉をできるだけ排除し、使える言葉、伝わる言葉にすることが重要です。
わかりやすさ、覚えやすさ、伝わりやすさを意識して整理しましょう。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)、あるいはパーパス、コアバリューなど、理念の整理の仕方はさまざまです。
どれが正解ということはなく、自社に合わせて考えれば良いでしょう。
明文化した経営理念は、現場の責任者やメンバーに共有し、「これ本当に使える?」「違和感ないか?」「腹落ちするか?」と確認します。
この擦り合わせを経て、再度微修正を行い、完成度を高めていきます。
ステップ4:経営理念を「生きた言葉」として浸透させる仕組みを整える
経営理念は、つくって終わりではありません。
どう使うか、どう浸透させるかという運用設計こそが、経営理念を生きた言葉にするための鍵。
会議、教育、採用、評価、表彰など、あらゆる仕組みに経営理念を織り込んでいきます。
経営理念を変えたあとは、「どう使うか」を明確に設計することで、初めて組織に浸透するでしょう。
その結果、指示待ち組織から自主的に動ける組織へと変わっていきます。
経営理念を浸透させる具体的な取り組み
ヤマチユナイテッドでも行なっている、具体的な取り組みをご紹介します。
会議での活用
幹部会議で毎回1つずつコアバリューの意味を経営者が解説し、幹部陣の理解を深める
教育での活用
新人研修や入社時研修で、経営者自らが経営理念について語る時間を設ける
※ヤマチユナイテッドでは、代表の山地 章夫が新人研修に毎回参加し、コアバリューの意味を毎回一つずつレクチャーしています。
採用での活用
会社説明会で理念体系やビジョンを必ず伝え、共感してくれる人に入社してもらう「価値観採用」を実践する
評価・表彰での活用
業績だけでなく、価値観を体現した行動を評価・表彰する
※特に間接部門やスタッフ部門では、コアバリューを軸にした評価が有効です。
日常業務での活用
朝礼でコアバリューに絡めた小話をする、経営理念を判断軸にした意思決定を習慣化する
経営理念を変更することは、企業の未来を描き直すこと
経営理念は、経営者の思いを社員・顧客・社会に伝わりやすく翻訳する言葉です。
時代が変わり、事業領域が広がり、組織が成長すれば、現状に合う形へと進化させる必要があります。
経営理念の変更は過去の否定ではなく、未来への進化であり、会社が成長すれば経営理念も成長していく、自然なプロセスです。
経営理念を時代と組織に合わせて再設計することは、経営者が次のステージに進むための通過点でもあります。
現状を正しく把握し、幹部を巻き込みながら再策定し、浸透の仕組みまで設計する。
この一連のプロセスを丁寧に進めることで、経営理念は組織を動かす新しい力となるでしょう。
ヤマチユナイテッドでは、実践的な組織づくりや多角化経営について学べる場として「連邦・多角化経営実践塾」を開催しています。
経営理念の再構築を含め、次のステージへの成長を目指す経営者の方はぜひご参加ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。

