ブランディングの効果は「ブランドを統一すること」で発揮される
ブランディング

こんにちは、山地です。
ブランディングの取り組みを、カッコいいロゴやマーク、おしゃれな商品パッケージをつくることだと勘違いしている方はいないでしょうか。
ブランディングは単なるデザインワークではありません。
確かに、目に見えるのはロゴやマークだけかもしれませんが、目には見えない大きな効果があるのです。
ブランディングの根幹にあるのは、<ミッション>という明文化された企業の社会的使命です。
今回は、このブランディングの可視化されない効果について、ご説明しましょう。
目次
- 「ブランディング」は企業の数だけ考え方がある
ブランディングのカギとなる「ブランド力」の定義
1.求心力が働いていること
2.ポジショニングがとても良いこと
3.価値観やデザイン、事業に「一貫性」があること
4.名前を聞いただけで「安心感」があること
5.他社との「差別化」ができていること - ブランディングの目には見えない3つの効果
ブランディングの効果(1):顧客創造
ブランディングの効果(2):雇用強化
ブランディングの効果(3):組織強化 - ブランディングで重要なのは「ミッションの浸透」
1.「ブランディング」は企業の数だけ考え方がある
一般的に「ブランディング」と言うと、顧客や社員に共通のイメージを持ってもらうための取り組みのことを指しますが、企業によってブランディングの定義や考え方は様々です。
当社では、ブランディング=ブランド力を高めることだと考えています。
では、ブランド力とは一体どのようなものを指すのでしょうか?
ブランディングのカギとなる「ブランド力」の定義
私は「高いから、安いから、古い、新しいから...」などの考え方ではなく、以下の定義で「ブランド力」を考えています。
1.求心力が働いていること
会社や商品にブランド力がついてくると求心力が働きます。
例えば、集客コストが小さく済む、大きな広告戦略を打たなくても人材が集まる、値引き交渉がなく価格が通る(顧客が喜んで購入してくれる)、情報が集まってくるなど、様々なプラスの要素が自然と引き寄せられてくるのです。
2.ポジショニングがとても良いこと
ここでのポジショニングとは会社の位置づけのことを言います。
同業他社と比較することで自社がどの位置にいるのかをより具体的に知ることができます。
自社のポジショニングが明確になると、競合相手がいない、空白ゾーンが存在するなどレッドオーシャンと呼ばれる場所ではないところで戦えるようになる、つまり、トップ、チャレンジャー、フォロアー、ニッチャーなど良いポジショニングを取ることができるようになります。
3.価値観やデザイン、事業に「一貫性」があること
マークやロゴなどのデザインを含め、その裏にある会社の理念(ミッション)や社風などが、商品・サービスなどと一貫性を持ってつながっていることもブランド力のひとつです。
その会社の「らしさ」の統一感があることで、スタッフ、顧客を含めた関係する者が誇りに思う会社イメージを作り上げることが可能になります。
4.名前を聞いただけで「安心感」があること
ブランド力が高い会社は名前を聞いただけで「安心感」があります。
その会社の商品・サービスなら吟味しなくても品質が担保されている、価格で損をしない、信頼感からまずは買ってしまうなどの経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「その会社に任せていれば大丈夫」と思わせるブランド力は大きな強みになります。
5.他社との「差別化」ができていること
当社ではいつも新規事業をやるとき、戦略を練る時に必ず「差別化できているか」というフィルターを掛けるようにしています。
フィルターを掛けることで、商品・サービスにおいて、他社とは違う品質、デザイン、価格、ストーリーを提示できるようになるからです。
ブランド力の5つの定義についてご紹介しましたが、当社ではこれらのブランド力を高める・浸透させる活動こそが「ブランディング」であると考えています。
当社の考えるブランディングについては「中小企業こそブランディングに力を入れよう!」でもお話しているので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。
2.ブランディングの目には見えない3つの効果
私は、多角化の際に大切なのは、グループ全体のブランドの統一だと考えています。
「それぞれの事業がうまくいっているのなら、それで十分ではないか」
「わざわざ費用と時間をかけて、グループのブランドイメージを統一する必要があるのか」
そう考える方もいるかもしれませんが、私はグループ全体のブランドを統一する効果として、大きく分けて次の3つがあると考えています。
(1)顧客創造
(2)雇用強化
(3)組織強化
ブランドの統一を下支えするのが、当社独自の<ミッション>ということになります。ひとつずつ順番に、くわしく説明していきましょう。
ブランディングの効果(1):顧客創造
グループ全体のブランドイメージが一貫していると、お客さまが増えて、売り上げアップが期待できます。
顧客に「このブランドなら安心して購入できる」「お付き合いできる」という印象を与えることができるからです。
当社の場合、各事業がそれぞれミッションを持っています。
たとえば、デイサービス「きたえるーむ」は「すべてのお客さまのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する」というミッションを掲げています。
ほかの事業のミッションにも、「お客さまの豊かな生活(ライフスタイル)を支援する」というコンセプトが通底しています。
その上で、それぞれの事業を束ねるホールディング会社「ヤマチユナイテッド」では「世の中に、幸せをばらまく」をグループ全体のミッションとして掲げ、「THE 100VISION」という全社を統括するビジョンにより達成を目指しています。
「単独1000億円の企業を目指すより、10億円の事業・企業を100個つくる。そして100人の経営者を育てる」と、多角化を志向していることを内外にアピールしているのです。
このようなグループ全体のブランドイメージにこだわっているので、会社間の取り引きにおいても「一貫性があって将来性もある企業グループだ」「数多くの事業を展開しているので経営的に安定しているだろう」という印象につながるようで、安心して新規の取り引きを始めてくれます。
ブランディングの効果(2):雇用強化
ブランディングは雇用の面でも効果があります。
大きくて有名な会社であれば、優秀な人を採用するのは難しくありませんが、私たちのような中堅・中小クラスの企業だと、そうはいきません。
しかし、ブランドがしっかり立っていて「こんな理念のもとで世の中を変えようとしている」ということが伝われば、企業規模の大小や有名無名を問わず、同じような志を持つ人が応募してきてくれます。
当社の場合は「THE 100VISION」を前面に打ち出しているので、「新しいことにチャレンジできる会社だ」「自分も経営者になれるかもしれない」「活躍の場がたくさんありそう」といったイメージに惹かれて入社してくる人がいます。
また、多角化した事業の中に特定の層にアピールできる事業があれば、それをきっかけに採用を有利に進めることもできます。
当社の事業のひとつに、若者を中心に人気を集めるインテリアショップ「インゾーネ・ウィズ・アクタス」があります。
そのため「あのオシャレなインテリアショップを経営している会社なら働いてみたい」と、人材募集に応募してくれる人がたくさんいます。
また、「M+(エムプラス)」というマンションリノベーションの事業に興味を持って、この仕事に就きたいと応募してくる人もいます。
したがって会社説明会では、採用のターゲット層から注目を集めそうな事業の例を中心に、多角化のストーリーを披露するという作戦をとることができます。
ちなみに採用情報サイトは、グループのサイトと一貫性のあるミッションやビジョンを伝えることが大切です。
見た目のデザインをかっこよくしただけでは「上辺だけだな」と見抜かれてしまうので、会社のミッションやビジョンをはじめ、経営者のライフスタイルや価値観をも伝えることが必要でしょう。
社風も企業のブランドイメージに直結するので、採用ページには社員の笑顔やイキイキと働いている写真を使うこともポイントです。
応募者に近い将来の自分をイメージさせることができれば、親近感を抱いてもらえます。
当社が北海道で人気就職先ランキングの上位にランクインできたのは、このようにブランディングを意識しながら多角化を進めた結果だと思います。
ブランディングの効果(3):組織強化
ブランディングは、組織を強くする効果もあります。
ミッションやビジョンがないがしろにされ、ブランドが確立されていない会社だと、社員は些細なことで「うちの会社は何を考えているかわからない!」といった不満を抱き、辞めてしまうでしょう。
しかし、自社のブランドが明確になっていれば、会社で働くことを誇りに思い、ロイヤルティーも高まるので、たとえ少し仕事が大変でも「この目標を達成するために、この会社に入ったんだ」と思い直してくれます。
当社の住宅会社「ジョンソンホームズ」には「いつまでも続く自分らしい幸せな暮らし」という事業ミッションが浸透しています。
家を建てて終わりではなく「住んでからの幸せ」を提供するのが目的なので、社員はブレることがありません。
「お客さまのために尽くす」という思考が、当たり前になっているのです。
同じような価値観や志を持つ仲間が集まって、「お客さまに喜んでもらうにはどうすればいいか」を考えながらチームワークよく行動するので、自然と業績もアップしていきます。これもブランディングの効果といえるでしょう。
また、多角化を進めると、いつのまにか事業部ごとの縦割り組織になってしまいがちです。
大切なのは、それらの縦割り組織に横串を刺すこと。
当社では「経営推進会議」や「委員会」といった横の連携を強化する制度を導入して、グループ全体を大きなひとつの会社のように運営していますが、そのときに肝となるのが、すべての事業をひっくるめたビジョンやミッションです。
チャンクの高い言葉で自分たちの使命をまとめ、一貫性のあるブランディングで一体感を醸成しておかないと、それぞれの事業が資本関係でつながるだけになり、多角化の効果が薄れてしまうでしょう。
3.ブランディングで重要なのは「ミッションの浸透」
以上、長々と説明してきましたが、事業を多角化すればするほど、ミッションに基づくブランディングが重要になることをご理解いただけたでしょうか。
ブランディングの効果とは、決してロゴやマークなど目に見える差別化だけではありません。
大切なのはなによりも「ミッションの浸透」だということをお伝えできたとしたら幸いです。
ブランディングについては他にも様々な視点からコラムを書いております。ぜひこちらも合わせてご覧ください。
また、ヤマチユナイテッドではセミナーやワークショップなど様々なイベントを開催しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
SHARE! この記事を共有する
Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員620名、50事業・年商160億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。