理想の幹部像とは?経営参加から経営を担う立場になるため幹部に必要な5責任
採用・育成
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
「自社の経営幹部がいるにはいるが、どこか物足りない」と感じておられる経営者の声を聞くことがあります。
自分で考え、自分で決めて、自分で実行し、遂行するという能動的な姿勢があまり見られず、「幹部としてはもうちょっと頑張って欲しいんだけど...」と思うような場面、みなさんの経験の中にもなかったでしょうか?
もし自分が権限委譲するとして、安心して経営を任せられる幹部となってもらうためにはどんな役割や責任を求め、理想の幹部像を掲げたら良いのか。
今回のコラムでは、そんなお悩み解決の参考になる「幹部の5責任」を提案したいと思います。
目次
- 会社依存意識から当事者意識へ変わるために社員に求めること
- 主体的・能動的に会社経営に参加する仕組み「システム経営」とは
- システム経営で求められる「理想の幹部像」とは
- 「経営参加」から「経営を担う」立場である「幹部社員」が遂行すべき5責任とは
- 理想の幹部像とは「5責任を高いレベルで遂行する誠実な人物」
会社依存意識から当事者意識へ変わるために社員に求めること
そもそも、社員が会社依存意識をもって働いているうちは幹部となるべき人材もなかなか育ちません。
会社依存意識とは、いわゆる「他責」の状態です。
会社に所属している以上、使用者と雇用者という関係性ではありますが、雇用者側の意識がそこに終始してしまっていて「言われたことはやるけれどもそれ以上のことはしない」「労働時間を提供して対価をもらうだけ」という考え方、働き方をしているケースですね。
これ自体は悪いことではないかもしれませんが、会社として社員に主体性を持たせたいのであれば見直しが必要です。
社風や風土によるところも大きいですから、「いいからやれ」「何も考えずこれだけやれ」「言い訳も反論もするな」というようなトップダウンの会社なら、これはもうどうしようもない。
そこまででなくとも、会社側が「余計なことはしないでほしい」「この範囲、この役割だけきっちりやってもらえればいい」「それ以上やってもらうと逆に困るし混乱する」という態度であれば、社員は他責になりがちです。
こうして受け身の姿勢になってしまうのは、自分に主体性がなく、言われたことに対応するしかない状態だから。
仮に何かを変えたいと思ったとしても「〇〇して『もらいたい』」という言い方になるんですよね。
「会社が〇〇『してくれない』」と不満が出る場合も、相手が「会社」になってしまっている状態、すなわち「会社依存」です。
「自分は言われたことをきちんとやっているのに、働いている環境が悪いのは会社のせいで自分の責任ではない」と言う。
私から見れば、そういう会社を選んだことも自分の責任の範囲だと思うのですが、会社依存意識を当事者意識に変えるためには、まず「自分が選んだ」「自分が環境を良くする」「『改善してもらう』のではなく自分も何かで関わっていけないだろうか」というように視点を変える必要があります。
自分が選んだ会社で起こることは「自分事」なのです。
だから私は「会社が〇〇してくれない」と言った場合の「会社って誰?」という話をよくするんですよ。
「社長?役員?上司?」と聞いていくと、結局答えは自分に返ってきます。
完全にワンマン経営でトップダウンの会社であれば「社長」なのでしょうけれど、主体性を重んじる環境で働きたいのであれば「自分たち」の会社であるはずです。
だから、環境を変えたければ「自分たち」で変えていく意識を持たなければならない。
こうして「他責」を「自責」に改めることができたなら、次は業務改善策、経営改善策を実行に移せると一番良いのですが、そのためには自社の仕組みや業務についてよく知っていないといけません。
経営に関わる数字も非常に大切ですから、収益構造を理解するための勉強も必要になります。
そうやって自分を成長させて、見える範囲と目線を上げる行動をとる。
「会社を動かすのは自分たちである」という感覚にこういった行動が加わることで、社員たちが会社依存意識から脱し、当事者意識へとチェンジすることが可能だと思うのです。
主体的・能動的に会社経営に参加する仕組み「システム経営」とは
前項では「社員の意識が会社依存意識から当事者意識へとチェンジする心理的プロセス」について説明しましたが、経営層がやるべきことは社員のマインドチェンジを可能とする環境づくりです。
ヤマチユナイテッドで採用している「システム経営」の手法は、その環境づくりの仕組みとして非常にうまく機能しています。
社員みんなに経営に興味を持ってもらう、みんなで会社を良くしようという意識を高めるといったことが能動的・主体的に行われ、社員全員が「経営参加」しているというやり方です。
システム経営を採用するのであれば、みなさんにまずやっていただきたいのが経営情報のオープン化です。
数字の状況、経営計画や経営方針の決定プロセス、他部署の情報、人事などの情報がクローズのまま、何の情報も与えず経営参加してくださいといっても無理な話。
もう一つ、営業利益、経常利益でも良いですが、利益の状況もしっかり公開すること。
次に、こういった数字の見方などを社員たちに学ばせて土台が整ってきたところで、ようやくシステム経営に入っていきます。
システム経営は「自主計画」「自主管理」「自主分配」の三本柱によって構成されています。
具体的にいえば、経営計画策定、業績管理、業績評価、利益の分配といった一連の流れを社長が取り仕切るのではなく、幹部中心に社員参加型で進めていくこと。
自分たちで作った計画に基づいて業績を管理し、その結果が良くても悪くても自分たちで受け止める。
成果が出た場合の分配も一定のルールのもと、自分たちで分配する。
すべて自分たちでやるのですから責任感も生まれますし、計画を達成するための執念も、上から「これをやれ」と言われた場合に比べて深まるはずです。
もちろん、いきなり「自分たちでやるんだよ」と言ったところですぐできるものではないですし、会議の方法や人事制度、報告・情報共有・チェック機能といった仕組みづくりも同時にトータルで整えていく必要もあります。
システム経営についてきちんと紹介するとなるとかなりのボリュームになりますので、ここではごく簡単に説明しました。
ほかのコラムでもう少し詳しくご紹介しています。
本格的にシステム経営を導入したい方には「連邦・多角化経営実践塾」でしっかり学べるようなプログラムを用意しています。あわせてご覧ください。
社員の自主性を育てるためには計画づくりに参加させよう!《システム経営の三本柱 第1回:自主計画》
業績と売上との違いとは?社員自身が業績管理を行うポイント《システム経営の三本柱 第2回:自主管理》
効果的なインセンティブとは?社員をやる気にさせる仕組みづくり《システム経営の三本柱 第3回:自主分配》
このほか、社員に自主的に動いてもらうために「委員会活動」も取り入れています。
人材育成や経費削減といった「重要だけれど急ぎではない」課題に取り組むため、部署をまたいだ横のつながりで構成されたメンバーを中心に活動しています。
若手には自主運営の訓練や教育の機会にもなっていて、活動を通じて会社を改善していけるという実益も兼ねています。
社長が何もかも決めて下ろしてくるのではなく、幹部を中心に社員みんなが参加して会社を良くしていく、こうした仕組みを一つひとつ整備していくこともシステム経営の一環です。
会社における委員会について詳しくご紹介したコラムもありますよ。
会社での委員会の役割。社内で委員会活動を行う3つのメリットとは
システム経営で求められる「理想の幹部像」とは
システム経営において幹部にまず求められるのは、やはり「幹部としての自覚」と「当事者意識」、そして「率先して動くための行動力」「ほかの社員を導くためのリーダーシップ」です。
また、幹部となるとある程度の権限移譲もされていくわけですから、そのための前提条件としては社長の経営哲学を理解していることや、ほかの幹部との価値観を共有することは、トップを補完できるレベルで身につけておくことが必須だと思います。
さらに、自分のことだけでなくほかの社員のことも考えて行動する視野の広さも備えておいてもらいたいですね。
つまり、社員の規範となるべくルールに則って自律的な行動ができているか、自分が所属する部署だけでなく全体最適を図ろうという意識を持っているかがポイント。
いずれにしても、一般社員よりもう一歩二歩踏み込んだ責任感や役割が求められると思うのです。
そういった観点から、次の項目では幹部が遂行すべき「5責任」を紹介します。
「経営参加」から「経営を担う」立場である「幹部社員」が遂行すべき5責任とは
幹部社員が遂行すべき5責任は、以下のとおりです。
- 業務達成責任
- 部下育成責任
- 報告責任
- 業務開発責任
- 構造改革責任
それぞれ解説していきましょう。
①業務達成責任
「業務達成責任」とは文字通り、業績をしっかり上げて、自分たちで立てた経営計画、事業計画を達成すること。
それに対する執念や責任感、達成のための能力...例えばPDCAをしっかり回すための業績管理能力や対策立案能力、チーム運営力なども含まれます。
②部下育成責任
部下の成績をどれだけ上げられるか、言い換えればどれだけ人材を育てられるかも大切なポイント。
幹部ともなれば自分だけが成長すれば良いという次元にとどまってはいられません。
自分に成り代われるような、むしろ自分以上にやってくれるような社員をどれだけ増やせるかは、事業発展のカギともなります。
③報告責任
権限移譲といっても、仕事をやりっぱなしで良いということではありません。
裁量権をもらった分、しっかりその計画を遂行することと報告を行うことは責任であり義務でもあります。
幹部とはいえ、基本的には中間管理職。
上に対してだけでなく、「こういうことがこういうプロセスで決定したよ」ということを下に対しても伝えなければいけません。
また、現場の課題や問題を吸い上げ、必要とあらば上に伝えるのも報告義務の一つです。
幹部社員は上下両方向に対して、上意下達、下意上達の報告責任を負っています。
もっといえば水平方向にも、ですけどね。
④業務開発責任
新しい業務を生み出すことも、幹部社員としての責任です。
日々の業務にちょっとした仕事を付け加えるよりは、新規事業や新サービスを開発するという比較的大がかりな仕掛けでもって、会社を発展させることが目的です。
⑤構造改革責任
「構造改革責任」は「改革」というからには「改善」のレベルを超え、会社の仕組みを大きく変えるくらいの意味合いで捉えていただきたいと思います。
組織構造を変えるのなら、新しく組織設計をする。
収益構造を変えるのなら、事業のリストラクチャリングや原価構造の見直し、売値変更など大きな改革ができるのが幹部のやりがいであり、責任でもあります。
...と、幹部が遂行すべき5責任を紹介しましたが、所属部署などそれぞれの階層でもこの5責任はついて回ります。
幹部社員には、各階層で自分が今いるポジションより1つ上、いえ、2つ上くらいの意識で仕事をすることが求められているように思います。
そういう意識を幹部社員が持ってくれれば、経営参加から「経営を任せることができる」という位置に近付いてくるのではないでしょうか。
「理想の幹部社員」を私なりに言い表すと、「数字に強く」「ビジョンが組めて」「それを実行に移すことができ」「PDCAをしっかり回せて結果を出すことができる」人だといえます。
「5責任を高いレベルで実行できる人」と言い換えても良いでしょう。
そして、これらの理想の幹部像のベースとして絶対に欠落していてはいけないのが「誠実さ」。
いくら仕事ができたとしても、誠実さに欠ける人物は幹部として不適格だと考えます。
会社はみんなで良くしていくもの、自分だけでなく自分たち全体が良くなるようにと誠実に働いてくれる幹部を育てていきましょう。
理想の幹部像とは「5責任を高いレベルで遂行する誠実な人物」
社員の意識が会社依存意識から当事者意識へと変わるためには、社員一人ひとりが「自分の選んだ会社」で起こることを「自分事」として捉える必要があります。
また「会社に〇〇してもらう」のではなく、「〇〇できるよう自分たちで変えていく」と、「他責」にしていたことを「自責」へとマインドチェンジすることも重要です。
「会社を動かすのは自分たちである」という感覚に加え、具体的な行動としては、自社の仕組みや業務への理解、経営に関わる数字の読み方といった勉強もぜひ進めていただきたいと思います。
ヤマチユナイテッドで採用している経営手法「システム経営」は、「自主計画」「自主管理」「自主分配」を三本柱として、社員全員が主体的・能動的に経営に参加する仕組みとして非常に有効です。
「言うとおりにやればよい」と上層部から与えられた計画でなく、自分たちで計画を立て、業績を管理し、結果が良くても悪くても自分たちで受け止めるというやり方なので、責任感や計画達成のための執念もより増して業務に取り組むことができます。
システム経営の導入には自社に関するあらゆる情報のオープン化と営業利益の数字公開が必須。
会議の方法や人事制度、報告・情報共有・チェック機能といった仕組みづくりも同時にトータルで整えていく必要もあり、委員会活動のように社員参加で社内改善にあたる取り組みもとても役に立ちます。
そして、システム経営において、幹部社員には一般社員より一歩二歩踏み込んだ責任感や役割が求められます。
それらを「5責任」として、具体的にまとめてみました。
- 業務達成責任
- 部下育成責任
- 報告責任
- 業務開発責任
- 構造改革責任
以上、コラムでご紹介したことも踏まえつつ「理想の幹部社員」を私なりに言い表すと、「数字に強く」「ビジョンが組めて」「それを実行に移すことができ」「PDCAをしっかり回せして結果を出すことができる」人。
「5責任を高いレベルで実行できる人」と言い換えても良いでしょう。
そして、これらの理想の幹部像のベースとして絶対に欠落していてはいけないのが「誠実さ」です。
会社はみんなで良くしていくもの、自分だけでなく自分たち全体が良くなるようにと誠実に働いてくれる幹部を育てていきたいものですね。
ヤマチユナイテッドでは、社員全体で経営を管理し会社を良くしていく「システム経営」について学べる講座や、経営に役立つセミナーや研究会を随時開催しています。
参加を検討してみたい方は、ホームページでスケジュールをご確認ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。