PDCAサイクルを効果的に回す、中小企業のためのKPI管理法とは?

業績管理・経営計画

山﨑 舞
山﨑 舞

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの山﨑です。

ここ数年、コロナ禍や国際情勢の悪化などで企業を取り巻く環境の変化が激しくなっています。

経営幹部なら誰もが、こういった著しい変化の時代にも柔軟に対応しながら会社を維持し、さらに成長・発展へ持っていきたいと考えているに違いありません。

しかし、中小企業では会社を維持しながら成長・発展するための仕組みがなかったり、大手企業に比べるとそもそも人員が潤沢でないという背景があり、なかなか容易ではないですよね。

その点、PDCAサイクルは中小企業でも仕組みづくりの基本として取り入れやすい手法です。

今回のコラムでは、KPI管理を実施することでPDCAサイクルをより効果的に回す方法をご紹介します。

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目次

  1. PDCAサイクルとは?メリットもご紹介
  2. PDCAサイクルをうまく回せない原因は?KPIを活用する方法も確認
  3. KPI管理によってPDCAサイクルを回すためのポイントは?
  4. KPI管理とPDCAサイクルを組み合わせた工夫と成功事例
  5. KPI管理を現場に任せ、振り返りの場を設けるとPDCAサイクルが機能する

PDCAサイクルとは?メリットもご紹介

PDCAサイクルの「PDCA」とは、それぞれ以下を示しています。

  • P = Plan(計画)
  • D = Do(実行)
  • C = Check(評価)
  • A = Action(改善)

一つの目標を実現するにあたって、この4つの段階を循環させることによってマネジメントの品質を高めていこうとする概念が「PDCAサイクル」。

1950年代に、アメリカの統計学者で「品質管理の父」といわれるウィリアム・エドワーズ・デミングが提唱しました。

元々は製造業の業務プロセスの中で改良や改善が必要な部分を特定したり、変更したりできるようにするために考案されたフレームワークです。

ビジネス用語としては、各プロセスを測定・分析しながら行動に落とし込み「A(改善)まで進んだらまたP(計画)に戻って...」と、ループしながら業務改善を行っていく手法として知られています。

PDCAサイクルの最大のメリットとは、いつでも環境にフィットした最新の状態でいられるようになること。

特に私たちのような中小企業においては、大手企業と違って業務改善の仕組みづくりに手間ひま、人員、お金を潤沢に使えるわけではありません。

ですが、PDCAサイクルを浸透させることで環境変化にスピーディに対応し、いつでも最新の勝ち筋を得やすい状態に保っておけるのです。

また、PDCAサイクルが社内に定着することで、マネジメント領域において常に現場で起きていることを掴みやすくなり、マネジメント力を磨きやすい環境下にすることも可能です。

立てた計画に対して振り返りを行う中で失敗した戦術は失敗事例として蓄積できるし、「もっとこうしたら良いのでは?」という対策を施して成功事例ができれば、それはまた鉄板の手法として蓄積されます。

こういった仕組み、勝ち筋を持たない中小企業にとっては、PDCAサイクルが回るだけでマネジメントも勝手に回るし知識も増えていく。

この両輪で進めていけるのがとても良いところだと私たちは考えています。

PDCAサイクルをうまく回せない原因は?KPIを活用する方法も確認

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「PDCAサイクルを活用していきたいけれど、どうもうまくいかない」

そんなお悩みを、当グループ主催の「連邦・多角化経営実践塾」を受講するお客様からお聞きすることがあります。

中小企業で多いのは、P(計画)とD(実行)まではできるけれど、C(評価)とA(改善)ができないというパターン。

C(評価)は具体的には「振り返りや情報蓄積」を行うこと。

これができない主な原因は「時間の創出」ができないことに尽きます。

既存の業務が忙しすぎて、情報分析や蓄積までなかなか手が回らないのです。

そうなってくると結果的に、A(改善)までたどり着かなくなってしまいます。

今回は、PDCAサイクルと「KPI(Key Performance Indicator=重要目標達成指標)」を結びつけて活用する方法をご紹介します。

KPIとは「年間目標を達成するために中間目標として設定された具体的な数字」のこと。

仮に飲食業で年間の営業利益目標を立てたら、それを達成するためのKPIは、例えば「客単価〇〇円」「予約件数〇/月」「FL比率(売り上げに対する食材費と人件費の割合)〇%」というように、具体的な数字を設定することになります。

さらに、これらのKPIを達成するため、業務内でなすべき行動も具体的に挙げていきます。

中間目標ですから、一定期間ごとに達成度を確認した上で数字を再設定しながら目標達成に近づけていく仕組みです。

ちなみに、当グループでは「KPIは多くても3つまで」としていますが、管理するものが多すぎると手に余るというのがその理由。

KPIが多すぎるといつの間にか「管理すること」が目的にすり替わってしまい、振り返りができないまま管理すべきものが肥大化していって担当者は疲弊するばかり...というのもありがちなパターンです。

KPIについては「KPI設計のポイントとは?KGIとの関係性と効果的な活用法も」でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

結局、なぜPDCAサイクルがうまく回せないのかというと、「やり切ろう」という執着がないことが原因と考えられます。

さらになぜ執着がないかというと、現場のスタッフ自身が立てたプランではなく上から下ろされたものであるから。

それゆえに納得感が薄かったり、「こんなことで結果が出るのか」と懸念や疑念があったりするので、管理や分析をするための時間を作ることに対する執着も持てないし、最後までやりきれないという背景が見えてきます。

よく聞く事例としては、取締役や常務といった役付きの人が業績管理を兼任しているケースが多く、役職としての業務もあるのに現場まで下りていって進捗管理するのが物理的に難しいと...それはそうですよね。

「誰かこの進捗管理とかデータ収集とかやってくれないかなぁ」といつも思っている、というお悩みをお客様からよくお聞きします。

大手企業であれば管理・分析を引き受けてくれるハイパフォーマーをヘッドハンティングしたり、システムツールを導入したりしてPDCAを回すということもできるでしょう。

しかし、中小企業では間接部門の増員や、DX化への投資もすぐにはできない。

そんな背景がある中でPDCAサイクルがうまく回らないのは、やはり上に挙げた2つのパターンがネックになっていると思うのです。

KPI管理によってPDCAサイクルを回すためのポイントは?

多忙な役職者があれこれお膳立てして苦労する割には、PDCAサイクルのP(計画)D(実行)までは進んでも、C(評価)とA(改善)まで行きつかない。

そんなパターンを打破するには「KPI設定を現場のスタッフに任せる」そして「振り返りの場を設計する」という2つのポイントを押さえてください。

現場のことは現場の人間が一番よくわかっているはず。

KPIを設定するにも実情を踏まえて決めることができ、上から下りてきた目標ではなく、自分たちで考えて決めた目標であれば「頑張って達成しよう」という執着も生まれます。

「振り返りの場」については、定期的な会議のアジェンダの中にKPI達成度の進捗を発表する場をセットしてしまうと良いでしょう。

すると会議までに発表する内容をまとめなければならないので、必然的に振り返りと分析を行わざるを得なくなります。

会議での発表は、できれば部署内の会議だけではなく上席や他部署の人向けにアウトプットする機会もあると良いですね。

当グループだと意思決定系と業績管理系の会議があります。

業績系の会議はまず現場のスタッフで話し合う「業績検討会議」。

次に各事業部で上の役職の人が出てくる「経営会議」。

さらに各法人と事業部のトップが集まる「HQ(ヘッドクオーター)会議」と、大きく3層になっています。

それぞれに会議で業績の進捗を伝える場があり、その粒度は上に行くごとにダイジェスト的に集約されていくのですが、すべての役職者がちゃんと我が事として語れるように情報連携しています。

そうでないと上の会議で報告できないので、発表の「場」があることが、ある意味強制力にもなるんです。

また、役職者が出る会議で発表することにより、改善策について役職者なりの広い視野をもってのアドバイスや「それ、隣の部署でやってたよ」というアイディアをいただけるメリットもあります。

対策立案のセンスは素質よりも経験値によるところが大きいと思うので、上の人たちと連携することによって役職者のアドバイスやアイディアが自分の知見として蓄積されます。

私たち自身、これを繰り返すことによって下の会議から上がってくる対策立案もかなり精度の高いものになっていくことを実感しています。

ここまでくれば、上の人間が「やれ」と言わなくても進捗管理から改善案まで、現場のスタッフが自分たちでPDCAサイクルを回せるようになってきます。

特に中堅社員はこれらの会議の中でどんどん成長していきますから、こうした「場」の設計は、人材育成にも非常に役立ちます。

KPI管理とPDCAサイクルを組み合わせた工夫と成功事例

それでは、当グループではどのようにKPI管理をPDCAサイクルに取り入れているか、いくつかの工夫とともにご紹介しましょう。

下の図は当グループのフォーマットを利用した飲食事業部の「KPIツリー」のサンプルです。

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KPIと共に「KGI(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)」「KSF(Key Success Factor=重要成功要因)」「KDI(Key Do Indicator=重要行動指標)」も視覚化すると、それぞれの関係性が理解しやすくなります。

KPI管理は振り返りが大事ですから、当グループではKDI・KPIの達成度を週次で確認し、業績を含めた総括振り返りを、先述の通り月一回の会議で発表しています。

この流れが業務として自然に行われるようになっているので、PDCAサイクルが「勝手に回る」という好循環に入るのです。

以下からは当社が試行錯誤してきた中で、成功した事例についてお話していきます。

成功事例①オンライン朝会(あさかい)

当グループでは週1回の発表の場として「オンライン朝会(あさかい)」があります。

基本的には司会者を立て、KPIの進捗情報を発表する場として役立てているのですが、社内向けに良い事例の紹介や部署を越えて共有したい情報を発信する場にもなっています。

オンライン朝会は、他の部署や事業部がどのようなKPIを設定しているか、進捗状況の良し悪しがどういう理由でそうなるのかといったことがわかり、非常に参考になりますよ。

また、社員の成績に基づいてMVPを表彰するコーナーも設けており、「この人の成績がいいのはこういうことをしているからか」とPDCAの「P(計画)」のアイディアを得られたりすることも。

経営者の皆さんに「オンライン朝会」をおすすめしたい理由としては、グループオールの業績を一覧できることが挙げられます。

同時に、グループシナジーを意識していきたいという時に全体で進捗を共有することによって部署間連携が進み、P(計画)やA(改善)の精度が上がるところも見逃せません。

成功事例②業績検討会議

事業部ごとに行う会議としては「業績検討会議」があります。

役職者だけでなく一般社員も全員参加し、現状分析から方針チェック・対策・実行管理といったところをじっくり話し合って進めていくような内容になっています。

この会議では、顧客と日々対峙している営業から現場で起きていることをいち早く集約し、顧客ニーズや市場トレンドから後れを取らないようにするだけでなく、個人で工夫している点や営業ノウハウを惜しみなく共有することで、業務の属人化を防ぎつつ、スキルの平準化を目指します。

そのため、C(評価)とA(改善)をしっかり管理できるようになっているのです。

成功事例③社内SNS

「社内SNS」を活用しているところもポイントです。

各事業部のマネージャークラス(課長クラス)の人たちが毎週必ずやることになっているのが、KPIの結果・要因・対策を箇条書きにまとめて速報的に発信するということ。

会議で話したことも他部署の人にも伝わるように箇条書きでまとめ、部署間の情報共有に役立てています。

このほかの投稿内容としては「なんでも共有」。

基本的には全社員がライトに自分から発信できるようになっているので、「もしお役に立てば」といった感覚で「こういう取り組みをしたらうまく行きました」「こういう資料を作ってみました」「こんな広告を出したらよかったです」というようにナレッジ共有の場にもなっています。

「これうちの部署でもやってみよう」とP(計画)やA(改善)の立案の参考になります。

例えば、SEO対策で「こうしたらPVが改善しました」と書いてあるのを見て「この人詳しいんだな」と、他部署であっても社内SNSを通じて教えを請うたりすることもあるようですね。

大手であればSEO対策の専門部署があるかもしれませんが、中小企業が間接部署を設置するのはなかなか難しいので、社内SNSで詳しい人を見つけて聞くことができればコストとマンパワーの削減につながります。

そういう意味ではシステムを導入するときや資料のひな形を作るとき、社内SNSで問い合わせると他部署から「うちもそのシステムを入れたいからランニングコストを折半しよう」とか「そのひな形うちにあるからあげる」と声が上がることも。

こうしてコストやマンパワーを削減すると業務効率化はもちろん、ゆとりが生まれるのでC(評価)やA(改善)に割く時間ができてくるはずです。

社内SNSはさまざまなサービスがありますが、単にチャットだけで進行する形式よりも、項目を作ってテーマ別に集約していける形式のほうが後から情報を探すのに便利だと思います。

そして、社内SNSを使い始める前には全社員への周知もお忘れなく。

導入の目的や項目別の投稿ルールやどのように活用してほしいか...など、最初に説明しておくと有効に使ってもらえると思います。

社内の情報共有については「社内の情報共有は何からやるべき?会社全体に効果をもたらす情報BEST3」でもご説明しています。

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KPI管理を現場に任せ、振り返りの場を設けるとPDCAサイクルが機能する

PDCAサイクルの「PDCA」とは、P=Plan(計画)/D=Do(実行)/C=Check(評価)

/A=Action(改善)を指します。

ビジネス用語としては、各プロセスを測定・分析しながら行動に落とし込み、A(改善)まで進んだらまたP(計画)に戻って...と、ループしながら業務改善を行っていく手法として知られています。

PDCAサイクルのメリットとは、うまく回せば環境変化にスピーディに対応し、いつでも勝ち筋を得られる良い状態に会社を保っておくことができるところ。

そして、マネジメント領域の情報や知見の蓄積ができていくということです。

中小企業では役職者がKPIなどの業績管理を兼任するケースが多いですが、それだとPDCAのC(評価)とA(改善)に割く余裕がなく、P(計画)とD(実行)までしか進まないというのがよくあるパターン。

さらに「上から下ろされた」KPIであるため、現場のスタッフに今一つKPI達成のための執着心が生まれないというパターンもよく耳にします。

それらを解消するためのポイントは、「KPI設定を現場のスタッフに任せる」「振り返りの場を設計する」の2つです。

自分たちが設定したKPIであれば「達成しよう」という執着心が生まれますし、定期的な会議のアジェンダにKPI発表の機会を取り入れることで、C(評価)とA(改善)に着手せざるを得なくなり、自動的に振り返りができる体制になっていきます。

会議での発表は、できれば部署内だけではなく上席や他部署の人向けにアウトプットする機会もあると、役職者目線の大きな対策が打てたり、経験豊富な立場からならではのアドバイスやアイディアを授かるチャンスとなり、中堅社員が育っていくことに繋がるでしょう。

当グループでは、KPIツリーでKGI達成を目指す行動指針を視覚化しているほか、オンライン朝会・業績検討会議・社内SNSといった工夫を盛り込んで、KPI管理をPDCAサイクルの原動力として活用していますので、ぜひ参考にしてみてください。

PDCAサイクルがうまく回らないという企業様においては「現場のスタッフにKPI管理を任せる」というところに不安を覚えるケースもあるのではないでしょうか。

ヤマチユナイテッドが主催する「連邦・多角化経営実践塾」ではそういった不安を解消するコンテンツも用意しています。

ご興味があればホームページをチェックして、参加をご検討ください。

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