ビジネスモデルキャンバスとは?若手社員の発想力を養う事例も紹介
採用・育成
こんにちは、ヤマチユナイテッドの山崎です。
世界情勢の変化や自然災害、さまざまな分野での技術革新。
私たちは、ここ数年で時代が目まぐるしく変わっていっていることをまさに身をもって実感してきました。
企業として今後の成長を見据える場合はもちろん、時代の変化に柔軟に対応していくためには既存事業に加えて新規事業を検討することがリスクヘッジの意味でも重要です。
社員のみなさん、特に若手には「今」の感覚でどんどん新規事業のアイデアを生み出してほしいもの。
もちろん新規事業ならなんでも良いというわけではありませんから、「自社なら何ができるか」という発想力を養うことが前提となります。
今回は「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークについて。
効果的な活用法を、当社の事例とあわせてご紹介します。
目次
- 若手社員の発想力を上げる「ビジネスモデルキャンバス」の導入
- ビジネスモデルキャンバスのフレームワークと構成要素は?
- ビジネスモデルキャンバスを活用するポイントは?
- ビジネスモデルキャンバスを活用した当グループの研修事例をご紹介
新規事業を立案するために学ぶべきことは?
「ビジネスモデルキャンバス」について説明する前に、新規事業を立案する際に大切な要素を3つ、押さえておいていただきたいと思います。
<新規事業を立案するために大切な要素>
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事業計画を立てるための「数字の読み方と収益構造の理解」
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お客様のニーズを探り、コンセプト設計や商品設計をするための「マーケティング」
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そもそも新規事業のネタを生み出すために必要な「発想力」
一般的に新規事業は、知識も経験も豊かな経営者が立案するというケースが多いですが、この3つがそろえば若手社員でも新規事業立案に臨むことができます。
新規事業の準備について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
新規事業の準備をステップごとに解説!事業多角化の成功条件とは?
若手社員の発想力を上げる「ビジネスモデルキャンバス」の導入
「ビジネスモデルキャンバス」とは、あるビジネスモデルを9つの要素に分解し、1枚の表に整理してその構造を理解するためのフレームワーク。
1990年代にアレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏によって基礎が築かれ、日本では2012年に両氏の共著「ビジネスモデル・ジェネレーション」の翻訳版が刊行されたことにより広まりました。
当グループでは、2021年度から新入社員向け研修のプログラムに「ビジネスモデルキャンバス」を取り入れています。
導入のメリットとしては、新入社員の発想力が高まり、新規事業を自ら考えられる人材が増えるということが一つ。
また、ビジネスモデルキャンバスで自社のコスト構造・収益構造を可視化することにより、既存事業においても見直しやブラッシュアップに活用できるという利点もあります。
当グループのビジョン「THE 100VISION」は、将来的に100の事業を立ち上げること、その事業の一つひとつを牽引できる人材を育てることを目指していますから、新入社員の頃から新規事業の発想力を鍛えていくことを重要視しています。
そこで「ビジネスモデルキャンバス」を利用して、いろいろなビジネスモデル、さまざまな企業を研究することを始めたのです。
これによって新入社員でも、さまざまな企業の収益構造・コスト構造の仕組みが頭に入ります。
日常生活においても「この会社ではこの仕組みが良いから売れているのか」というようなことを意識するようになるので、発想に深みが出てバリエーションも広がってきていることが伺えます。
ビジネスモデルキャンバスのフレームワークと構成要素は?
それでは、ビジネスモデルキャンバスが実際にどういうものか説明していきましょう。
こちらがビジネスモデルキャンバスです。
ビジネスモデルキャンバスの構造は「コスト構造」「収益構造」の2種類に分かれており、それぞれの構成要素は以下のような構造になっています。
収益構造(①~⑤)
収益構造とは、企業が提供する商品やサービスによってどのような価値を顧客に提供し、どのような手段でその価値を提供するか、そしてその過程でどの部分にいくらかの費用がかかるかを示し、最終的に自社はどのような手段で収益を得るかを示す、ビジネスの基本的な枠組みです。
つまり、企業がどのようにビジネスを展開し、利益を上げるかを表すものであるといえます。
コスト構造(⑥~⑨)
コスト構造とは、企業が提供する商品やサービスを生産するために必要な費用の構造を示すものです。
つまり、企業がどのように生産を行い、どのような費用がかかり、どのようにそれを分配しているかを表しています。
試しに、まずは自社の事業について、ビジネスモデルキャンバスの「収益構造」を中心に①~⑤の要素を記入してください。
次に、地に足を着ける意味で「コスト構造」を埋めていき、トータルでバランスが取れたものになっているかどうかを検証するまでが一連の作業となります。
可視化することで「ああ、うちはこういう仕組みで利益を得ているのだな」ということがよりわかりやすくなると思います。
ビジネスモデルキャンバスを活用するポイントは?
「ビジネスモデルキャンバス」を若手社員の発想力を養うために活用する際、ポイントとなるのは次の2点です。
①できるだけパターンの異なるビジネスモデルを研究させる
ビジネスモデルのパターンは以下のようにさまざまです。
当社の研修ではチーム制で課題に取り組むことが多いのですが、「できるだけいろいろなビジネスモデルを学ばせたい」という目的で行っているので、例えば3チームいたらそれぞれ異なるパターンを研究させるようにしています。
②企業の選定は若手になじみのあるものを
20代前半の新入社員とは意外とジェネレーションギャップがあるものです。
私自身、自分がよく知っている企業の名前を挙げた時に新入社員にわかってもらえず悲しい思いをしたこともあります(笑)
あとは、例えば上記でお見せしたビジネスモデルのパターンの中の「消耗品パターン」。
ネットプリントの普及などにより、インクジェットプリンターがない家庭もあり、「プリンター本体の価格を安く設定して初期投資を抑え、交換インクで利益を上げていく」という話がピンとこない場合もあるようです。
年賀状を送る習慣がなかったり、働き方改革や企業でのDX化の推進により、家に仕事を持ち帰って書類をプリントアウトすることもない。
知らないことを調べる作業も良いのですが、ビジネスモデルを学ぶ上ではやっぱり身近にあって理解しやすいものを挙げてあげるほうが取り組みやすいでしょう。
飲食業や物販はビジネスモデルとしては非常にわかりやすい構造をしていますが、若い世代に身近な音楽配信サービス「Spotify」はフリーミアムパターン、マーケットプレイス「メルカリ」はマッチングパターンというような話をするとグッと興味を引くことができますし、興味の領域も視野も広がります。
初めにビジネスモデルパターンを紹介しつつ、彼らにとって親近感がわくような例を挙げてからどの企業を研究するかを決めていくのがおすすめです。
ちょっと変わったビジネスモデルを取り上げると「あぁなるほど!」というひらめきや気付きが得られるので、私たち自身も楽しんでやっています。
ビジネスモデルキャンバスで目線を広げる
今後事業を多角化していきたい、あるいはすでにしている企業の皆さんには、若手・中堅社員に関わらず、社員研修の一つとして「ビジネスモデルキャンバス」を取り入れてみることをおすすめします。
なぜならビジネスモデルキャンバスは先述の通り既存事業の見直しにも使えますし、新規事業を発想するときの基準を明確にするために活用できるフレームワークだからです。
社内の共通言語として「ビジネスモデルキャンバス」を一つ持っておくことはとても重要だといえます。
特に多角化していると、当社の「連邦・多角化経営」のように「多角化したものを有機的に連携させ、グループオールで達成しましょう」という世界観で進めようとしたとき、事業が増えれば増えるほど横の事業部が何をしているかわからなくなるのがネックとなりがち。
そこで、ビジネスモデルキャンバスのフレームワークを共有しておくと、他事業部がどういう仕組みで利益を得ているのかがわかりますから、情報共有や認識の共通化みたいなことにも活用できるものだと思っています。
実はこの2023年度から、私もそうですがマネージャークラスの社員に対しても「ビジネスモデルキャンバス」の記入が必須となりました。
自分でやってみた感想としては、頭の中で何となく思っていることがすごくクリアになったな、と感じます。
いろいろな領域からビジネスモデルを見られる、評価できるところが「ビジネスモデルキャンバス」の良いところです。
そうして形成された「目線」で、これまで以上に広く物事を見られるようにもなります。
このことが今後どのように機能していくか、新入社員とはまた何か違った効果が出てくるかといったところも楽しみですね。
ビジネスモデルキャンバスを活用した当グループの研修事例をご紹介
当グループのビジョン「THE 100VISION」を叶えるためのスタートダッシュとして、新入社員研修「フレッシャーズキャンプ」が行われています。
約1年に及ぶ研修の根幹になってくるのがまさに「新規事業立案」というコンテンツ。
新入社員同士でいくつかチームを作り、新規事業の計画を立てて最終的にプレゼンテーションを行うという内容です。
研修の中ではビジネスモデルキャンバスも活用しており、最初に新規事業を立案する際に大切な3つの要素としてお話しした「数字の読み方と収益構造の理解」「マーケティング」「新規事業立案の発想力」も学びます。
「フレッシャーズキャンプ」自体は始めて10年ほどになりますが、私たちも最近少し欲が出てきて、「せっかくやるのなら架空のプレゼンではなく、新卒が立案した計画が新規事業になったら楽しいよね」ということに。
より実践的な計画を立ててもらうとなると、先ほど挙げた3つの要素のうち若手がもっとも苦労するのは、やっぱり「新規事業立案の発想力」です。
つい最近まで学生だった子たちですから当たり前ですが、経験値も足りないし、いろいろな企業のビジネスモデルも知らない。
経験を積み、研究を重ね、日々情報をインプットして新規事業立案に臨む経営者とピカピカの1年生とでは圧倒的に差があるわけです。
面白いことに「ビジネスモデルキャンバス」を導入する以前、うちの既存事業を生かす形で新規事業の計画を立ててもらっても、だいたいBtoCの発想しか出てこなかったんです。
自分が働く側に立った経験が少ない一方、「C」の顧客側の気持ちはわかるということなのでしょうけれど、カフェ事業みたいなものばかりが上がってきちゃうんですよね。
本来なら当社にあるさまざまな経営資源やシナジーなどに目を向けて計画を立ててほしいのですが、そこがどうも難しい。
新入社員研修とはいえ、当社としては「新規事業開発のレベル感を上げていきたい!」という思いが強く「ビジネスモデルキャンバス」導入に至りました。
新入社員たちも最初は要素を埋めるのに苦労してましたが、何カ月か繰り返すうちに身近なビジネスモデルに対する意識や日頃耳にするニュースの感じ方が変わり、最終段階に近い時期にはスラスラ書けるようになりました。
最後に「このビジネスモデルの肝は何だろう」という問いかけに対して各チームに発表してもらう場で、「フードデリバリーサービスのダイナミックプライシングが面白い」という話になり、目の付け所が変わったなと感じました。
このような考え方、感じ方が身に付いたことで、今後現場で働く中で「ここはこういう風にしたほうが良いのでは」「この商品はこういう提案をしてみたらどうだろう」という発想へつながることにも期待しています。
当グループ代表の山地章夫は「若手でも忌憚(きたん)のない意見を出せるようになってほしい」と以前から社員に伝えており、実際コミュニケーション自体は上下関係なくうまく取れているのですが、会議の場では「若手の自分には十分な知識がないから」と発言しづらいこともあるでしょう。
「ビジネスモデルキャンバス」のようなフレームワークを活用することは知識を付けてあげることでもありますから、新規事業立案や既存事業立て直しの機会にはどんどん発言してほしいと思うのです。
ちなみに、2022年の「フレッシャーズキャンプ」で立案した新規事業の計画は、幹部にも評価されており、事業化の兆しを見せています。
フレッシャーズキャンプの詳細はこちらのコラムでもご紹介しています。
新卒の新入社員を1年で一人前に育てる「フレッシャーズキャンプ」
ビジネスモデルキャンバスのメリットや事例を知り、事業で活用しよう
世界情勢や環境、時代の変化に常に柔軟に対応していくためには、リスクヘッジの意味でも新規事業を検討する必要があります。
新規事業立案の3要素は「収益構造と数字の読み方の理解」「マーケティング」、そして「発想力」。
この「発想力」を養うために有効なのが「ビジネスモデルキャンバス」です。
「ビジネスモデルキャンバス」とは、ビジネスモデルを9つの要素に分解し、関連性を分析しながら構造を理解することができるフレームワーク。
新入社員研修に導入することにより、新規事業を自ら発想できる人材が育ち、既存事業の見直しやブラッシュアップが必要な場面でも自分なりの意見を述べられるようになります。
「ビジネスモデルキャンバス」を新入社員研修に取り入れる際は、多彩なパターンを研究させることと、若手に身近でなじみのある製品・サービスを扱う企業を研究対象として選定してあげることがおすすめです。
当グループでは、約1年にわたって行われる新入社員研修「フレッシャーズキャンプ」に「ビジネスモデルキャンバス」を導入したところ若手の視野が広がり、さまざまなビジネスモデルへの関心の持ち方も変わりました。
実際に2022年の「フレッシャーズキャンプ」で立案した新規事業の計画が幹部にも評価され、事業化の兆しを見せています。
当グループでは、経営にまつわるさまざまなテーマを取り上げて研修やセミナーを行っています。
ホームページで随時ご案内しておりますので、ぜひご覧ください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|経営支援事業部 |営業推進チームリーダー・人財開発コンサルタント
山﨑 舞
人材総合サービス会社の営業部勤務を経て2018年(株)ヤマチマネジメントへ入社。前職では採用広告サービスの販売営業部で戦略スタッフとして企画・販促・アシスタント業務を担当。その際、元々取引先だったヤマチユナイテッドの社風やミッションに惚れ込み、転職を決意。現在は経営支援事業部で企画・運営を担当しつつ、営業推進チームリーダー兼人財開発コンサルタントとして活動。企業の新卒採用・育成を支援している。