⼈が辞めない職場を作るには?離職を防ぐ職場作りのポイントや事例も紹介
採用・育成

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
「せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう」
「研修や教育に時間とコストをかけているのに人が定着しない」
こうした悩みを抱える経営者の方は、多いのではないでしょうか。
人材獲得競争は年々激しくなっており、特に地方の中小企業にとって人材確保と定着は、経営の重要課題となっています。
しかし、人材の定着は決して解決不可能な問題ではありません。
賃金や福利厚生だけでなく、働く環境や仕組みを整えることで「長く働きたくなる職場」「人が辞めない職場」を作ることは可能です。
今回のコラムでは、人が辞めない職場作りの具体的なポイントや取り組み方法について、ヤマチユナイテッドの実践事例も交えながら詳しく解説します。
人材定着にお悩みの経営者の方にとって、実践的なヒントとなれば幸いです。
目次
- 人が辞めない職場を作るためには?
- 離職を防ぐ!人が辞めない職場作りのポイント
- 人が辞めない職場の特徴とは?ヤマチの事例もご紹介
- 仕組みと環境の整備で「人が辞めない職場」に!人材の定着と持続的な成長を実現
人が辞めない職場を作るためには?
人材不足や賃金上昇といった社会情勢から、優秀な人材の取り合いは激しくなっています。
以前に比べて転職もしやすくなっており、中途キャリア市場の流動性も高まっているため、優秀な人材は引く手あまたの状況です。
このような環境下では、企業側の姿勢や仕組みによって、社員が定着するかどうかが大きく左右されます。
もし人が辞めてしまうと、新しい人材を採用するために求人広告費、人件費、研修費用など、多くのコストが発生します。
さらに、新入社員が一人前になるまでには時間がかかり、その間の生産性低下も避けられません。
一方で、人が辞めにくい職場を作って定着率を上げることができれば、これらのコスト削減とともに、経験豊富な社員が増えて組織全体の生産性や組織力も向上させることができます。
そのため、「人が辞めない職場作り」「定着率の向上」は、今や企業経営における最優先課題の一つといえるでしょう。
離職の根本原因を見つめ直す
離職率が多い・定着率が上がらないという問題について、「時代のせい」「大手との待遇差のせい」など、その理由を外的要因に求めがちですが、実際のところ根本的な原因は自社にあることが多いものです。
大手企業との待遇の差は確かに要素の一つですが、賃金が高ければ絶対に辞めないというものでもありません。
もちろん、賃金が安すぎるとそもそも選ばれないため、一定の賃金水準は必要ですが、社員の満足度と定着率を高めるには、賃金や福利厚生だけでは不十分なのです。
離職を防ぐには、社員を引き留めるための対症療法ではなく、「この会社で働き続けたい」と社員自らが思えるような仕組みと環境作りが重要です。
例えば、心理的安全性、やりがい、評価の納得感など、目に見えにくい本質的な要素が離職の防止に大きく影響します。
離職を防ぐ!人が辞めない職場作りのポイント
人が辞めない職場を作るためには、社員の離職理由や満足度を構成する要素を正しく理解し、それに対応した環境作りを行う必要があります。
ここでは、定着に向けて特に重要とされる6つのポイントをご紹介します。
【ポイント①】価値観とビジョンの共有
企業の価値観やビジョンを社員と共有することは、長期的な定着を促進する重要な要素です。
社員が会社の方向性や存在意義を理解し、それに共感できる環境を作ることで、組織への帰属意識と共感が生まれ、エンゲージメント向上にもつながります。
価値観とビジョンを共有するためには、まずそれらを明確に定義し、かつ社員にわかりやすく伝えることが必要です。
明文化した上で、キャッチーなコピーやロゴに落とし込むなど、表現の工夫も有効です。
また、経営者自身がビジョンに沿った行動を実践し、言行一致の姿勢を示すことで、信頼感の醸成につながります。
【ポイント②】経営情報の共有
経営情報を社員と共有することは、組織の透明性を高め、社員の不安を軽減する重要な施策です。
会社の現状や将来性について情報が不足していると、「うちの会社はこの先どうなるのか」という漠然とした不安が募り、離職のきっかけとなる場合もあります。
経営情報を共有する際は、どの事業が利益を上げていて、どの事業が苦戦しているかを明確に示すことが重要です。
これにより、社員は「ここが改善すれば収益が改善する」「このプロジェクトが成功すれば会社の将来は明るい」といったように、改善点や成長の可能性を具体的に理解できるようになります。
もちろん、経営情報の開示にはリスクもありますが、透明性を保つことで社員との信頼関係を構築し、将来への期待感を共有することができるでしょう。
困難な状況にあったとしても、「将来に向けて今この取り組みを行っている」という明確な目的意識を全社で共有することが、人材定着の基盤となるのです。
【ポイント③】上司との関係性構築
職場での人間関係、特に直属の上司との関係は社員の定着に大きな影響を与えます。
上司との関係性は離職理由の上位に挙がることも少なくありません。
信頼関係が築けていれば、社員は悩みや不安を抱え込まず相談しやすくなり、離職を考える前に問題を解決できる可能性が高まります。
良好な関係を築くためには、定期的なコミュニケーションの機会を設け、部下の成長や悩みについて話し合える関係性を構築することが重要です。
【ポイント④】仕事のやりがいと自己成長機会の提供
社員が長く働き続けるためには、日々の業務にやりがいを感じ、自分自身の成長を実感できることが重要です。
適度な裁量権を与え、主体的に業務に取り組める環境を整備し、スキルアップの機会を用意し、キャリアパスを明確にすることで将来への展望を描きやすくなります。
【ポイント⑤】組織内コミュニケーションの質向上
職場内のコミュニケーションの質は、社員の満足度や働きやすさに直結します。
適切な頻度で質の高いコミュニケーションが取れる職場では、誤解や不満が蓄積しにくく、問題も早期に発見・解決しやすくなります。
会議や報告制度などの情報共有の仕組みを効果的に活用し、経営層と現場の距離を縮めることが大切です。
【ポイント⑥】社員の声が反映される仕組み作り
社員が「自分の意見や要望が会社に届いている」と実感できることは、エンゲージメントの向上につながります。
社内アンケート(モラールサーベイ)や提案制度などを通じて、社員の声を積極的に収集し、具体的な改善策を講じることが重要です。
社員からの意見や提案を積極的に聞き、可能な限り業務改善に反映させることで、社員の参加意識を高めることができます。
ヤマチユナイテッドでは、社員満足度調査を効果的に実施するための「記名式」の調査表フォーマットを提供しています。
社員の声をより具体的かつ建設的に収集し、実効性ある改善策につなげたい経営者の方にはぜひこちらの「社員満足度(ES)調査表」をご活用ください。
"記名式"で実施する「社員満足度(ES)調査表」フォーマット
社員満足度調査は、見えない不満や不安を可視化し、改善の糸口を与える重要なツールとなります。
「社員が辞めてしまう前に気付けるかどうか」が、上司・そして経営者の力量の見せ所といえるでしょう。
社員満足度調査やモラールサーベイについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
社員満足度(ES)向上のための取り組み事例やメリットを紹介!
人が辞めない職場の特徴とは?ヤマチの事例もご紹介
人が辞めない職場には、コミュニケーションが活発で社員の声が反映されやすい、仕事に対する裁量権があり、成長を実感できる環境があるなどの、共通した特徴があります。
これらを踏まえ、ヤマチユナイテッドが実際に取り組んでいる「人が辞めない職場作り」の具体的な取り組み事例をご紹介します。
コミュニケーション体制の構築
ヤマチユナイテッドでは、上司との信頼関係構築とコミュニケーション強化のため、以下の3つの仕組みを組み合わせています。
①面談制度の充実
月1回、1対1の個別面談を実施し、業務の進捗確認をはじめ、悩みや要望について話し合う機会として活用しています。
このほかにも、評価面談や目標設定面談など、節目ごとの対話機会も重視し、コミュニケーションの機会を確保しています。
面談制度は、社員の本音や不安を早期にキャッチするための大切な仕組みです。
新入社員に対しては、特に手厚いサポートが必要となります。
ヤマチユナイテッドでも新入社員向けに、1年間を通じて定期面談を行う「フレッシャーズサポート制度」を導入し、早期離職の防止につなげています。
新入社員向けの面談制度については「新入社員の早期離職対策とは?面談制度「フレッシャーズサポート制度」を紹介」で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
②日報・週報制度
日々の業務状況を把握し、適切なフィードバックができるよう、日報・週報制度を導入しています。
単なる報告書ではなく、上司とのコミュニケーションツールとして活用し、問題の早期発見と対処につなげています。
③定期的な会議・チームミーティング
部署やチーム単位での定期的な会議を通じて、情報共有と意見交換を行なっています。
業務上の課題について全員で議論し、解決策を検討することで、現場の声を迅速に経営に反映し、かつチーム全体の一体感と信頼感を高めています。
これら3つの取り組みにより、上司への信頼感やコミュニケーションを醸成しています。
「仕事を任せる」環境作り
ヤマチユナイテッドでは、「システム経営」などの考え方で権限移譲を進め、ルールや枠組みを決めた中で、できるだけ裁量権を社員に渡していくことを心がけています。
「言われたことだけやっておいて」という仕事の振られ方では、やりがいはなかなか見出せないものです。
できるだけ自分の意見を提案できたり、物事を決定するプロセスに参加できたりすることは、やりがいや達成感につながります。
また、成長という観点でいうと、やらされ感で仕事をするのではなく、自主性や主体性を発揮する場があり、かつ仕事ができるようになれば、さらにレベルの高い仕事を任せてもらえるということが自己成長につながります。
「仕事の報酬は次の仕事だ」とはよく言うもので、事業運営を通じて自己成長をする環境を整えています。
「自主計画」「自主管理」「自主分配」を三本柱とする全社員参加型の経営手法により、社員が単に指示を受けるだけでなく、自ら考えて行動できる環境を作っているのです。
情報共有の徹底
ヤマチユナイテッドにおける情報共有の王道は会議と報告制度であり、頻度と内容を意識して実施しています。
毎月1回は、必ず経営会議や業績検討会議を行い、現場の状況を収集。
現状の経営情報について、統括責任者が危機感、対策、今後への期待などのコメントを加えて発信する場を持っています。
さらにそれを、月1回、オンラインのグループ朝会「オンライン朝会」で全社員対象へ発信しています。
このように、最低でも月1回は情報発信と共有の機会を設け、社員が会社の状況を正しく理解し、自分の役割を認識できるようにしています。
ES調査(社員満足度調査)と自己申告書の活用
ヤマチユナイテッドでは、社員の声を効果的に収集するため、ES調査と自己申告書をセットで実施しています。
ES調査の実施
ES調査は、見えない不安や不満を可視化し、改善の糸口とするための社員アンケートです。
ヤマチユナイテッドの「社員満足度(ES)調査表」の特徴的な部分は、あえて記名式で実施していることです。
「記名式だと辛辣なことを書きにくい」という人もいるかもしれませんが、これは経営参加の形の一つと考えており、責任を持って会社を評価・回答してほしいという思いがあります。
会社も社員の声に真摯に向き合い、そしてスピーディに対応する責任があると考えています。
自己申告書の活用
自己申告書は、現状の自分の振り返りと、今後のキャリアの希望・展望などを記入するものです。
具体的には、今後どんな業務に関わっていきたいか、異動希望を含め、会社への自由な意見を書いてもらいます。
社員の声を生かす経営姿勢が「人が辞めない職場」につながる
ES調査・自己申告書を実施するタイミングは、どちらも年に1回、事業計画を立てる前に実施しています。
これらの取り組みを組み合わせることで、社員が積極的に事業経営や職場改善に参画し、会社と一体となって成長していける環境を構築しています。
特に重要なのは、「話を聞いて終わり」「調査をして終わり」にしないこと。
経営陣が社員の声をしっかりと受け止めて、会社として取り組むことです。
例えば、現場ごと、部署ごと、会社全体など、テーマや内容に応じて柔軟に対応し、必要があれば経営計画にも落とし込んで実行しています。
このように社員の声に耳を傾け、真摯に対応する姿勢を見せ、「上司や社長が本気で受け止めて、実際に動いているのがわかる」と社員が実感できることが、社員満足度の向上につながっています。
社員が会社の一員として認められ、自分の声が会社の運営に反映されることで、長期的な定着につながる好循環が生まれているのです。
これこそが、「人が辞めない職場」の土台となっています。
今回ご紹介した「従業員満足度(ES)調査票」と「自己申告書」のフォーマットを無料配布中です。
以下のリンク先からダウンロードしてご活用ください。
仕組みと環境の整備で「人が辞めない職場」に!人材の定着と持続的な成長を実現
人が辞めない職場を作ることは、単に離職率を下げてコスト削減を図るだけでなく、企業の持続的な成長を支える重要な取り組みです。
もちろん、賃金や福利厚生の改善も必要ですが、それ以上にやりがいを感じられる仕事、成長実感のある挑戦の機会、コミュニケーションの質といった、社員が「長く働き続けたい」と心から思える環境作りが求められます。
また、経営情報をオープンにし、社員と将来への展望を共有することで、一体感のある組織作りが可能になります。
価値観とビジョンの共有、上司との信頼関係の構築、適切な権限移譲など、ヤマチユナイテッドの事例でご紹介した具体的な施策を参考に、自社に適した人が辞めない職場作りに取り組んでみてください。
社員が自分の成長を実感でき、会社の将来に希望を持てる職場環境を整備することで、人材の定着だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上と持続的な成長を実現できるでしょう。
経営者の皆様には、ぜひ自社の状況を振り返り、社員が本当に望む職場環境の構築に取り組んでいただければと思います。
ヤマチユナイテッド事例大公開!
2007年~2021年までの実際の従業員満足度(ES)調査の結果推移をまとめた【年度別推移表】を公開中です。
リアルな変化と成果をぜひご覧ください!
ヤマチユナイテッド事例大公開!【年度別推移表】従業員満足度(ES)調査結果
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Authorこの記事の著者

株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。