従業員満足度(ES)調査の目的とは?質問項目や分析方法を解説
理念・社風
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
皆さんの会社で、「何だか社内に活気がない」「社員があまり楽しく働いていないのではないか」といった雰囲気を感じ取ることはありませんか?
会社経営上の課題は大なり小なり尽きないものですが、組織が大きくなって社員数が増えていくと、経営陣が隅々まで目配りするのはなかなか難しくなってきます。
小さな不平不満が社員エンゲージメントを低下させ、やがて大きな問題へと発展してしまい、業績に影響を与えるケースも少なくありません。
そういったことを防ぐために、「従業員満足度(ES)調査」を取り入れている、あるいは取り入れたいと考えている経営者の皆さんもいらっしゃると思います。
今回は、従業員満足度(ES)調査をより効果的に活用するための方法をお伝えしていきます。
目次
- 従業員満足度(ES)調査の目的とは?
- 従業員満足度(ES)調査の目的に合わせた質問項目とは?
- 従業員満足度(ES)調査導入の流れを解説
- 従業員満足度(ES)調査の結果をどう見る?分析方法を解説
- 抽出した経営課題をどう社内に落とし込むか?優先順位付けの考え方
- 従業員満足度(ES)調査から見えてくる課題が業績アップのヒントに
従業員満足度(ES)調査の目的とは?
従業員満足度(ES)調査は、社員が会社や自身が属する職場、日々の業務に対してどう感じているかを数値化するやり方が一般的です。
その目的はいくつかありますが、ヤマチユナイテッドは特に社員全員参加型のシステム経営に取り組んでいるため、経営参加の機会の一つとして実施しています。
それを前提として、うちの場合の目的は以下の5つであると考えています。
目的①会社・組織の現状把握
当グループではパート・アルバイトスタッフも含めた約700人の従業員全員に対して、年に1回従業員満足度(ES)調査を行なっています。
従業員満足度(ES)調査は「会社の通信簿」といわれることもありますから、その結果から会社の定性面の現状がどのようであるかを測ることができるのです。
目的②全社・部門・チーム・個人それぞれにおける課題抽出
従業員全員に対して従業員満足度(ES)調査を行うことにより、その結果が経営課題の発見につながることも多々あります。
分析の過程で「これは全社的な問題だろう」「部門やチームに問題があるのでは」「個人的な問題を抱えているかも」と段階的な切り口で細分化していくので、そこから着手すべき課題が見えてきます。
目的③提案制度の一つ
うちでは従業員満足度(ES)調査を社員アンケートの一環とも位置付けており、自由意見欄を設けることで、何かしら業務上の提案などを聞き取れるようにしています。
目的④意見・提案を通じた経営参加の機会
システム経営に取り組む企業として、従業員一人ひとりが会社の現状をどう捉えているか、アンケート回答や意見・提案を通じて表してもらうことも経営参加の仕組みの一つです。
目的⑤経営参加風土の醸成
従業員満足度(ES)調査だけでどうにかなるものではないのですが、これを通じて社員一人ひとりが意見・提案を行うことによって「社員が経営に参加する」という風土を社内に醸成していくことも当グループが重視しているところです。
ES調査実施するポイント
従業員満足度(ES)調査の目的は会社によって異なる場合もあるでしょう。
「ES調査をこれから導入したい」と考えている経営者の方々はもちろん、「すでに導入しているけれど活用しきれていない、形骸化している」といった場合でも、まずはES調査の目的を整理して考えてみてはいかがでしょうか。
ES調査の目的を整理する
いずれにしても社員の声を聞くことは大切ですから、もっと簡単に「社長から社員に向けたアンケート」みたいなことから初めても良いと思います。
特に「形骸化している」という状態であれば、調査をして満足していませんか?
結果を見ても行動に起こさないのでは調査の意味がありません。
記名式で行う
ES調査の結果から「問題があるのはわかるけれど、どこに問題があるかがわからないので行動しようがない」という状態に陥ることを防ぐために、うちではあえて記名式で実施しています。
「記名式だと率直な意見が出にくいのでは?」と懸念する方もいらっしゃるかもしれません。
うちの場合はES調査に回答することも経営参加の取り組みの一つですので、「自分の発言や意思表示に対して責任を持つのが当たり前である」という考え方です。
従業員にもそれを説明した上なので調査を行うため嘘を書くことはまずないでしょうし、所属と氏名を書いてもらうことで、問題がどこにあるのかを確認できます。
全社か、部門か、チームか、個人か...とさかのぼって確認できるので課題がより鮮明に、より具体的になり、どこに着手すべきかがわかるので行動にも移しやすいのです。
記入者の不利益を防ぐことが大切
もちろん、回答内容によって記入者が不利益を被るようなことは絶対に防がないといけません。
そのためには、経営トップが「こういう目的でこういう調査をやるけれども、何を書いたとしても不利益が生じることはないので率直に書いてほしい」と事前に保証することが大切です。
また、上司について聞く項目もありますから、「回答は社長直行で、目を通すのは社長と一部の幹部のみ」というように、回収ルートや閲覧権限を持つ人の範囲を明らかにしておくと良いですね。
これらを担保した上で記名式で実施すれば、生きたアンケートになると考えています。
当グループでは十数年前からES調査を行なってきましたが、長年の推移を見てみると面白いことに会社の業績にも調査結果が影響し、時には連動していることがわかっています。
すべてがES調査でクリアできるわけではありませんし、経営課題というものは尽きないものではありますけれども、一つの要素として活用し、小さなことでも手を打てることは打っていくという姿勢が大事だと思います。
ES調査の取り組みについては「従業員満足度(ES)向上のための取り組み事例やメリットを紹介!」も、あわせてご確認ください。
従業員満足度(ES)調査の目的に合わせた質問項目とは?
ES調査の質問項目は、自社の目的に合わせて精査して設定しましょう。
当グループのES調査は先述のような5つの目的のもとに実施していますが、実際のシートをご紹介します。
- A:所属部署の雰囲気について
- B:現在担当している仕事の満足度及び適性
- C:処遇
- D:会社全体の評価
- E:上司との関係性
ヤマチユナイテッド従業員満足度(ES)調査
当グループの従業員満足度(ES)調査シートの冒頭では、調査の目的と個人への不利益が発生しないことを約束する文言を記載し、所属部署と氏名欄を設けています。
質問項目は以下の5つの分類の中でさらに細分化して尋ねる内容となっており、質問に対して5段階評価で数字を記入して回答する形式です。
※一部公開
ヤマチユナイテッド従業員満足度(ES)調査表は、こちらからダウンロードしてご覧ください。
A:所属部署の雰囲気について
部署内の協力体制や働きやすさなどについて質問しています。
構成メンバーの平均点を出すことで部署内に隠れている問題の所在を明らかにします。
B:現在担当している仕事の満足度及び適性
仕事の量や質、自身の適性などについてどう感じているか聞きますが、個人的に負担を抱えている場合はここに如実に表れてきます。
離職防止のヒントが隠れている場合も多々あります。
C:処遇
給与、昇進については個人的な差が出やすいところ。
他社の友人などと比べてもらっては困るので、現在の自分の能力・貢献度を踏まえた上で、処遇に対する納得度を問うようにしていますが、なかなか高得点は付きにくい傾向にあります。
残業体質であるなどチームのカラーが出やすいところでもあります。
D:会社全体の評価
自社の将来性、評判についてどう思っているかという質問です。
自由回答欄も活用すると、従業員個人が会社にどう貢献するかという考え方が見えてくる場合もあります。
E:上司との関係性
直属の上司の氏名も書いてもらい、自分に対する理解度や指導監督力、コミュニケーションなどについて聞いています。
内容によっては面談が必要になったり、異動が絡んできたりするケースもあるので、取り扱いには細心の注意が必要です。
質問項目を設定する際のポイント
ES調査のそれぞれの質問内容については各社で調整していただけると思いますが、次のポイントを押さえておくとより活用しやすい内容になるでしょう。
数字に加えて判断基準を短い文章で示す
例えば、所属部署の雰囲気について、協力度について以下のように5段階から選んでもらうようにしています。
- 全員協力的でない
- 大部分の人が協力的でない
- 普通
- 大部分の人が協力的である
- 全員協力的である
必要に応じてチェック欄を設ける
例えば、仕事量については、同じ「不満」であっても仕事が多くて不満なのか、少ないと感じて不満なのかで対処の方法も変わってきます。
そのため、仕事量に対して「不満」「やや不満」とするならば「多い」または「少ない」のいずれかにチェックを付けてもらっています。
自由記入欄を設ける
数字解答欄の右側に「左記回答のコメント」という欄を設け、回答の理由等を書けるようにしてあります。
自由記入欄の回答は任意ですが、前述のチェック欄に加えて回答理由を補足したい人や、会社への意見・提案がある人は積極的に記入してくれています。
課題抽出の際にはこのコメントから具体的な問題が見えてくることも多いので、ここを糸口にして聞き取りを行うケースもあります。
従業員満足度(ES)調査導入の流れを解説
これからES調査を行う方に向けて、導入の流れを説明しましょう。
1. 経営トップから全社へ目的を説明し、宣誓を行う
急に「従業員満足度(ES)調査を実施するよ」とシートを配っても目的が正確に伝わっていなければ調査のメリットが最大限に生かされない可能性があります。
従業員から「ただでさえ忙しいのに手間が増える...」「一体何に使うのか?」と思われたまま実施しては率直な意見は望めません。
「会社をみんなで良くしていくため率直な意見がほしい」
「回答内容をしっかり真摯に受け止めて、できることから改善していきたい」ということがきちんと伝わるよう、経営トップ自ら協力を呼びかけてください。
すでに調査を行なっているもののマンネリ化しているという会社であっても、改めて目的を表明することは必要だと思います。
また、記名式で行う場合は回収ルートを明らかにし、「回答することによって不利益を被ることはない」とはっきり宣誓することも大事です。
2. 質問項目を作成する
自社の目的に応じて質問項目を作成しましょう。
前項で紹介した当グループのES調査シートや質問項目設定のポイントも参考にしながら、自社に合った内容のシートを用意してください。
3. 調査シートを配布する
ES調査シートは、紙で配布・メール添付・サーバにアクセスするなどの方法がありますので、自社に合った形式で良いと思います。
4. 集計・コメントピックアップ
社員数が多いと大変ですが、各項目の点数について全社・部門・チーム・個人といった切り口で合計し、平均値を出すことによって課題を探ります。
コメントについても注意深く見て、問題のありそうなところをピックアップしていきましょう。
5. 課題抽出
集計結果とコメントから課題を見つけ出し、似通ったものはまとめるなどして分類します。
6. 対策とフィードバック
ES調査をやるだけやってそのままでは片手落ち。
出てきた課題の中ですぐに対策を立てて着手できるものにはなるべく早く行動に移し、時間やお金を要するものには「なぜすぐにできないか」を必要に応じて全社・部門・チーム・個人に説明します。
こうすることで、回答してくれた従業員たちは「回答した甲斐があった」と思って次回も協力してくれますし、徐々に社員全員が経営に参加するのだという風土が醸成されていきます。
ヤマチユナイテッドのES調査導入当初は?
ちなみに、ヤマチユナイテッドでES調査を始めたころは「社長アンケート」として社長だけが回答を確認していました。
しかし、ある程度の人数分になると集計まで社長がやるのはさすがに大変なので、管理部のスタッフ1人(私)が集計し、結果を社長に持っていくというような流れでしたが、その後のフィードバックの部分も社長だけで行うことにしてしまうと、それもちょっと難しいんです。
うちでは数年間、社長がフィードバックする形を取っていましたが、「君の部署はちょっとここを改善したほうがいいね」
「雰囲気があまりよくないみたいだから気を付けて」と個々にやっていくのはやっぱり大変なんですね。
集計結果を幹部と共有
最終的には「集計結果を役員、経営幹部と共有し、具体的な行動や改善策に落とし込んでいく」というやり方に落ち着きました。
実際にそうしたほうが対策の効果も出やすいと感じています。
この場合も、急に幹部たちへ「君らも一緒にやってくれ」というのではなく、徐々に共有していくこと。
そして「会社経営、部門経営により深く関わってもらいたい」「回答をしっかり受け止めて大事に扱ってほしい」ということを伝えた上でステップを踏んでいくことが大事です。
さらに、現状としてはもう少し下の階層まで共有範囲を広げており、各事業部のトップまで集計結果を共有し、見られるようにしています。
事業部以下の課題については、事業本部長を中心に事業部の幹部で対策・フィードバックを行う流れになっています。
共有範囲の規模
共有範囲は会社の規模によって考えるべきところですが、うちではこの形式で数年続けているうちに当たり前になって、書きたいことがある人は率直に書いてくれるというところは変わりません。
上司との関係性について問う項目は非常にセンシティブな部分ですが、別途「社長直通」シートを作って併用するという手もあります。
いずれにしてもES調査がすべてではありません。
回答を得にくいと思われる項目に関しては、通常の面談から吸い上げるなど別な仕組みで対応することも可能です。
ES調査のスケジュール
うちだとおよそ700人ほどの回答を一つひとつ見ますから、個人別に見るだけでも数日かかります。
実際のスケジュール感としてはおよそ1カ月。
皆さんの会社でこれから始めるとしても、2カ月程度あればできると思います。
ヤマチユナイテッドでは次年度の経営計画策定に着手するのと並行してES調査を実施します。
こうすることで、抽出した課題に対する具体的な解決策を経営計画、事業計画に落とし込んでいくことができるので、ベストなタイミングだと考えています。
従業員満足度(ES)調査の結果をどう見る?分析方法を解説
それでは、引き続きヤマチユナイテッドの従業員満足度(ES)調査のシートを使って、分析方法について説明します。
5段階評価の数字
ES調査の集計は、5段階評価の数字をそのまま各項目の点数として使用し、全社・部門・チーム・個人といった切り口で合計点や平均点を割り出します。
5段階ですから平均は「3」としたいところ。
良くも悪くもなく「普通」である「3」は付けやすい点数なんですよね。
「4」はよほど良いと思っていないと付きません。
ですから、うちでは平均「3.8」以上が合格点。
それ未満は赤点のように高めの設定にしています。
各質問項目で平均3.8点を大きく下回っているところは何か問題があるとして、悪いところを注意して見ていくことになります。
そうしてその中で点数を下げている要因は何か、全社的に同じ傾向なのか、それとも部門やチームで局地的に出ているのか、何について特に低く出ているのかといったことを切り口を変えながらチェックします。
個人別で調査結果をみる場合
個人別で調査結果を見るなら、「1」や「2」の赤点を多数付けている人は諦め半分モードかもしれません。
もしくは怒りに満ちているといった「不満」なのか、逆にものすごく意識が高く「現状では不十分」と考えているのかでは全く意味合いが異なります。
調査結果によっては注意深く見て、場合によっては面談で個別フォローするという対応になるかと思います。
評価の理由をフリーコメントに書いてくれていればきちんと読みますし、それでも真意がわからなければ聞き取りをすることも。
直接話して「その通りだね」と納得することもあれば「それはあなたの勘違いかも」ということも。
すぐに取り組めない問題であれば理由を説明します。
100の要望に対して100で返すことなどなかなかできません。
お金や時間をかけないとできないこともありますから、問題の大きさを考えながら、それをちゃんと答えとして返してあげることが大切です。
質問項目の分類別に確認すること
ヤマチのES調査の質問項目の分類別では次のようなところに注目しましょう。
- A:所属部署の雰囲気について
- B:現在担当している仕事の満足度及び適性
- C:処遇
- D:会社全体の評価
- E:上司との関係性
A:部署内の協力体制や働きやすいか
【A:所属部署の雰囲気について】では、日々の業務を進めるにあたってチームワークが取れているかを見るところです。
各項目の点数が人によって違う場合は何かしら問題がある可能性もありますが、個々で感じ方が違うことも考えられますのでフリーコメントも活用しましょう。
B:仕事の量や質、自身の適性か
【B:現在担当している仕事の満足度及び適性】では、仕事の量や質、自分の力が活かせるかどうかを見るところです。
個人で非常に苦しんでいるケースもありますから、特に注意して見ています。
この質問項目の中でも「g)自己能力開発の余地について」の点数が低いと心配ですね。
若くてこれからまだまだ成長の余地があるのに「もう無理」みたいに思っている人がいると、個別フォローが必要になることがあります。
C:給与、昇進、残業などに不満はないか
【C:処遇】では、先述のようになかなか高い点数が出にくいところ。
職種によっては対応してあげないといけないところもあります。
例えば、業務上よく車に乗るような職種だと、ガソリン代が上がり燃料基準が合わなくなって負担が増えていると訴えてくるケース。
実態調査を行いつつ改善を図るといった対応が必要です。
D:自社の将来性を共有できているか
【D:会社全体の評価】の点数が低いのは経営側の責任でもあるのですが、しっかり将来ビジョンが共有できているかどうかということも表れてきます。
順調に業績を揚げている部門は良い感じに出ていても、苦しんでいる部門は「これからどうなるんだろう」という不安が蔓延していることが見えてきたりするので、経営側としてはじっくりでも良いから相対的に上げていきたいと考えているところです。
管理職にある社員が将来性に低い点数を付けている場合は要注意ですね。
将来の展望を描くのがこの階層にある人間の仕事でもありますし、明るい将来を見ていない管理職のもとで働く人たちは不幸だと思うからです。
そういう意味で管理職の評価は特にチェックしていて、低い場合は事情を聞きに行くのですが、理想が高くて「まだまだ」と考えているならまあ安心。
「自分は足りていないから」と自責の観点から評価しているなら良いのですが、「もうこの会社ダメでしょう」と他責にしているのなら問題です。
E:自分に対する理解度や指導監督力に不満はないか
【E:上司との関係性】繰り返しになりますが、この項目はとりわけ取り扱いに注意しましょう。
上司の名前を書いてもらうのでその人のパーソナリティが垣間見えることもありますが、一つ低い点数が付いているからといって上司が悪いとは限りません。
部下の1人か2人が上司に対して苦手意識を持っているのか、多くの部下から受け入れられていないのか、メンバーそれぞれの評価を総合して判断する必要があります。
一概にどちらが悪いといえないケースもありますし、かたや人事異動を検討するケースもありますが、聞き取りをする場合は上司と部下双方の意見をしっかり聞いて判断することが大切です。
ヤマチの従業員満足度(ES)調査表の結果の年度別推移表
毎年繰り返しES調査を行うにつれ、年々の推移表も作ってみると面白いですよ。
こちらは当グループ内のある事業部の推移表です。
2007年から2021年までの推移となり、項目も多岐にわたりますので、こちらもダウンロードしてご覧ください。
当グループの推移表では、合格点に青。
赤点(不合格)に赤で色を付けてあります。
赤が多めだったのが少し良くなってきて、途中で質問項目を変えてやり直すとまたちょっと赤が多くなってきて...ということが見てとれます。
コロナ禍ではコミュニケーションの点数が低く付いたりといったことも如実に出ています。
会社経営において課題は常に何かしら出てきますからなかなか全体的に合格点を取ることは難しいのですが、「合格点を取れないならやる意味がない」ということではありません。
部門別、チーム別、個人別に全部見ていくことで、「自分の特性が活かせていない」「上司と反りが合わない」「能力に限界を感じる」といったことで1人で苦しんでいる社員を救うことができるかもしれないのです。
ヤマチの自己申告書
うちではES調査とあわせて「自己申告書」も配布しています。
「自己申告書」については、こちらからダウンロードできます。
自己申告書とは?
本来、前向きな意味での異動希望を問うものですが、ヤマチでは自己申告書で希望する職種を申告できます。
人員ギリギリでやっている会社にとっては、希望を出されても応えられないという意味で、聞いてしまうと「諸刃の剣」となるかもしれません。
そのような場合は「担当職種について」の部分を外して使ってもらってかまいません。
離職の危険性を防ぐために
うちの場合は個人別に見た時にES調査の点数が軒並み低く、かつ自己申請書で異動希望が出ている人がいると離職の危険性が大きいと判断します。
さらに、健康状態を問う項目で「やや耐え難い」「耐え難い」であれば対策は急を要します。
ここまでくると会社側が何かしらの対応をしないと辞めてしまうだろうと想像がつきますし、うちでも厳しいですが社内の状況が許せば異動も考えてあげたいところ。
それで離職を防げるかどうかはわかりませんが、何もわからないうちに辞められるよりはこういったES調査を行うことでフォローに入ることはできると思うのです。
もちろん前向きな意味で「次にこの仕事をやってみたい」という人にはなるべく叶えてあげたいし、現状を説明して「すぐには難しくても考えますよ」ということは伝えます。
抽出した経営課題をどう社内に落とし込むか?優先順位付けの考え方
ES調査を通じていくつかの課題を抽出できたら、次は解決に取り組んでいくことになります。
課題の内容にもよりますが、優先順位の付け方は一概に「こうだ」といえるものではなく、自社にとっての重要性と緊急性に応じて進めていくしかありません。
強いていえば、前項で例に挙げたガソリンの燃料基準のようにすぐに改善できることもありますし、仕事や人間関係に悩んで離職の危険性が高い人へのフォローなどは早急に行う必要があります。
まずは、課題を分類し、自社の状況と考え合わせながら計画的に課題解決を図る、対策を経営計画、事業計画に落とし込んでいくということになるでしょう。
うちでは人材育成の面が弱いところだったので、「中堅社員に管理職を任せられるような教育を強化したい」と考えて、今まさに研修制度などを見直しているところです。
課題解決の優先順位は場面場面であるとか、会社が現在置かれている状況によっても変わります。
従業員満足度(ES)調査は定性的な項目が多いため課題解決も後回しになりがちですが、軽く見てはいけないということ。
業績アップは企業経営の至上命題ですが、数字ばかり追いかけているとどこかで限界が訪れます。
一方で、内部の組織や運営方法、各種制度はどんどん古くなっていくのに教育の仕組みをおざなりにしていれば人は育たないし、育つスピードも遅い。
今後AI(人工知能)のような最新技術が普及していっても情報収集に目が向かず、システム導入への投資が後手に回っていつまでも業務効率の悪い状態でやり続けることになるでしょう。
これはいけないと気づいたときには、「仕組みがついていっていないのに業績が上がるわけがない」と、順序が逆になってしまっていることが起こり得えます。
もちろん業績は大事ですし良いに越したことはないのですが、業績の伸びに限界を感じている、停滞感があるといった状況なら、あえて定性面の課題に目を向けてみてください。
案外それが根本的な原因になっていたり、業績を上げるための重要な要素であったりするかもしれません。
組織というものは結局「人」で構成されていますから、いくら戦略や作戦がすばらしくても人が育っていないとできないのです。
業績も人もどちらも大事、だから定性面の課題も見落とさずに抽出するためのツールの一つとして、従業員満足度(ES)調査をご活用ください。
従業員満足度(ES)調査から見えてくる課題が業績アップのヒントに
ES調査の目的は会社によって異なると思います。
社員全員参加型のシステム経営に取り組んでいるヤマチユナイテッドでは、経営参加の機会の一つとしてES調査を実施しています。
ES調査だけで会社の業績がどうにかなるものではありません。
ですが、調査結果を通じて社員一人ひとりが意見・提案を行うことで「社員が経営に参加する」という風土を社内に醸成していくことも当グループが重視しているところです。
また、ES調査の質問項目は、自社の目的に合わせて精査して設定しましょう。
ヤマチユナイテッドのES調査は、5つの分類の中でさらに細分化して尋ねる内容となっており、質問に対して5段階評価で数字を記入して回答する形式です。
ES調査導入するには、次年度の経営計画策定に着手するのと並行して調査を実施すると、抽出した課題に対する具体的な解決策を経営計画、事業計画に落とし込んでいくことができるので、ベストなタイミングだと考えています。
ES調査結果の集計は、5段階評価で各項目の点数として使用し、全社・部門・チーム・個人といった切り口で合計点や平均点を割り出します。
繰り返し調査を行なっていくにつれ、年々推移表を作って見比べたり、自己申告書もあわせて配布・回収すると、課題がより明確になります。
ES調査を通じていくつかの課題を抽出できたら、次は課題解決に取り組みましょう。
一ついえるのは、ES調査は定性的な項目が多く課題解決も後回しになりがちですが、軽く見てはいけないということ。
業績アップのために数字ばかり追いかけていると、限界を感じたときに仕組み作りの弱点が露呈することがあります。
組織というものは結局「人」で構成されていますから、いくら戦略や作戦がすばらしくても人が育っていないとできないのです。
業績も人もどちらも大事、だから定性面の課題も見落とさずに抽出するためのツールの一つとして、ES調査をぜひ活用していただければ幸いです。
従業員満足度(ES)調査は、ヤマチユナイテッドが推し進めているシステム経営において社員全員が経営に参加するための仕組みの一つとしても重視しています。
当グループが主催する「連邦・多角化経営実践塾」でも「社内でES調査を実施してみてください」というところからスタートします。
興味のある経営者の皆さんは、自社の幹部の方々と一緒に参加を検討されてみてはいかがでしょうか。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。