新卒の新入社員を1年で一人前に育てる「フレッシャーズキャンプ」
採用・育成

こんにちは、山地です。
あなたは「新卒の新入社員は即戦力にならない」と思い込んでいませんか。
「じっくり時間をかけて育てる余裕はないから」と、ノウハウや実績のある中途採用に絞っている会社もあるでしょう。
しかし、私たちの会社では、実務経験のない新卒の社員が短期間で力を身に付け、重要なポジションを担うことも少なくありません。
「新卒の新人を1年以内で一人前に育てる」ための当社独自の教育プログラム「フレッシャーズキャンプ」をご紹介しましょう。
※フレッシャーズキャンプの最近のプログラムについては、こちらの記事をぜひご覧ください。
目次
新卒の新入社員を育てるコツは「お客さま扱い」しないこと
新卒の新人は即戦力にならない。
成果が出るようになるまでじっくり育てる。
多くの会社は、このようなスタンスで新人採用をしているかもしれません。
確かに、新卒社員は会社にフレッシュな風を吹き込んでくれますが、残念ながらすぐに成果を求めるのは酷。ノウハウも経験もないのですから当然です。
かつては私たちの会社でも、新卒で入社した新人のほとんどは1~3年の間は「お客さま扱い」というのが現実でした。
しかし、仮に「新人が2年間、成果を出せない」という場合、大きな問題があります。
なぜなら、入社2年目の社員が一人前になれず成果を出せないと、翌年の新卒の社員が入ってきた段階で、成果の出ない社員が2倍に増えてしまうからです。
私の会社では毎年約20人前後の新卒を採用していますから、常時40人の成果が出ない社員を抱えることになります。
3年間お客さま扱いにしていれば、成果が出ない社員が60人も生まれることに・・・。
こうした状況は、多角化経営を掲げ、常に変化している私たちの会社にとっては、大きなハンディキャップといえます。
新入社員を育てることは多角化経営の最重要課題
多角化のために積極的に新規事業を立ち上げていれば、必然的に人材が不足します。
しかも、新しい事業を軌道に乗せるには、やる気だけではなく、それをやりきれるだけのビジネス知識やノウハウも必要です。
新規事業の多くは、少数精鋭のチーム編成にならざるをえませんから、責任と覚悟を持ち、先頭に立って事業を引っ張っていくリーダーシップを求められます。
さすがに、お客さま扱いの新人には荷が重すぎるでしょう。
多角化経営を実践する会社にとっては、一人前の人材をスピーディーに育てることは避けて通れない道なのです。
そこで思い立ったのが、「新卒の新人を1年以内で一人前に育てる」ための教育プログラム「フレッシャーズキャンプ」。
新卒の新人をビジネスのプロに鍛え、即戦力として働いてもらうために、独自の新人研修プログラムを6年前から始めました。
社内研修はそれまでも実施していましたが、新卒の教育の大部分は外部の研修会社に任せていました。
基本的なビジネスマナーや知識を学ぶにはある程度有効でしたが、即戦力の人材を短期間で育てるには限界がある。これがフレッシャーズキャンプを立ち上げたきっかけです。
新入社員を1年で即戦力にする「フレッシャーズキャンプ」
私たちの会社に新卒で入社してくる20人ほどの新人は、各部署に配属されてOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)で仕事を覚えていくと同時に、全員が毎月1回のペースで開催されるフレッシャーズキャンプに1年間参加します。
プログラムは、私の基調スピーチから、ビジネス書や新聞の読み解き、先輩社員へのインタビュー、グループ討議や模擬プレゼンテーション、社外からゲスト講師を招いての講演会まで、多彩な内容です。
キャンプ中はいくつもの宿題が出されるので、新入社員は通常の業務と並行しながら忙しい日々を過ごすことになります。
こうした一連のフレッシャーズキャンプの特徴は、人前で発表やスピーチをする機会が多いことです。
たとえば、先輩が課題図書に選んだビジネス書を読んでまとめたレポート、日本経済新聞の中で気になった記事を選び、自分なりの考察を加えたレポートなどを、毎月キャンプの参加者の前で発表してもらいます。
「読む、書く、話す」という基本的な能力が、ビジネスで成功するために必要なことだと考えているからです。
なかでも、人前で話す能力は大きな武器となります。
新入社員育成「フレッシャーズキャンプ」の5つの効果
当社が新卒の新人社員の育成に「フレッシャーズキャンプ」を取り入れるのは、次のような効果が期待できるからです。
フレッシャーズキャンプの最近のプログラムについては、「新入社員が驚異的なスピードで成長する育成プログラムのつくり方」で詳しく説明していますので、こちらもぜひご覧ください。
1・大勢の人の前で話す機会が、新人社員を育てる
今の若者は、面接などの少人数の場ではあがらずに話ができても、大勢の人の前だと緊張して、うまく自分の考えや意見を伝えられない人が多いように思います。
しかし、フレッシャーズキャンプを通じて、毎回、人前での発表をこなしていると、だんだんと慣れて度胸がついてきます。
多くの新卒社員がキャンプの後半では伝え方も上手になり、みんなの前でイキイキと自分を表現できるようになります。
たとえば、ある理系出身の新卒社員は、当初、人前に立っただけで、手足がガクガクと震えて、まともに話ができませんでした。
ところが、入社から半年が過ぎた頃には、見違えるほどに発表やスピーチが上手になり、最終的には、キャンプで一番輝いていた人を相互投票で選出する「MVF(Most Valuable Fresher)」を受賞するほどに変身を遂げました。
キャンプで発表やスピーチを繰り返した新人の中には、「人前で話すことが楽しくて仕方がない」という社員がたくさんいます。
多くの人の前で自分を表現し伝える力は、場数を踏むことによって磨かれ、自信になっていきます。
新人のうちから人前で発表する機会を与えることは、成長を早めるうえでも効果的な方法ではないでしょうか。
2・新人のうちから「経営感覚」を磨くために
フレッシャーズキャンプでは、会社の収益構造を学ぶプログラムがあります。
たとえ新人であっても、基本的な会計の知識をもち、計算力を身につけることが大切だと考えているからです。
全社員が経営感覚を持っていることほど、強いことはありません。
そのために私たちの会社では、新人や若手にも経営のルールをはじめ、会社の収益構造や売り上げ、粗利益、営業利益、経費の内訳といった会社の数字も積極的に教えています。
すると、どうすれば会社の業績がよくなり利益を生み出せるのか、自分たちの待遇をよくするにはどうすればいいかといったことを自主的に考え、行動してくれるようになります。
私は「100事業100人の社長をつくろう」という当社の「100Vision経営」について、採用やキャンプの段階からしつこいほどに伝えています。
将来、事業を立ち上げて経営幹部として活躍するには、早くから会社の数字をはじめ経営感覚を養っておくことが、新人にとって必ず役立つと信じているのです。
3・新卒社員に新規事業案の計画を策定させる
また、フレッシャーズキャンプのプログラムには「新規事業案の計画策定」も組み込まれています。
3人1組でイチから新規事業計画をつくり、経営幹部や上司の前で発表してもらうのです。
ビジネスの経験がほとんどない若者なので、さすがに即採用できるような新規事業を仕上げることはできませんが、テーマは自由なので発想力に富んだユニークな事業案が出てきます。
ここで大事なのは、事業計画を策定していくプロセスです。
中間発表で先輩たちから「本当に利益は出るのか?」「組織編成についてはきちんと考えているのか?」など、厳しい指摘を受けながら、自分たちの頭で考えて新規事業計画書を仕上げていく。このプロセスを経て、事業をつくることの楽しさや大変さといった感覚を体験すると同時に、ビジネスの視点や自信を深めていくのです。
こうしたフレッシャーズキャンプでの経験は、新人の成長スピードを向上させていると実感しています。
新人の直属の上司たちも「入社当時とは見違えるように変わった」「自信がついてしっかりしてきた」といった感想を漏らしています。
フレッシャーズキャンプを始めてからは、新人の定着率もあきらかにアップしました。
毎月、同期で集まって一緒にワークを進める過程で、絆のようなものが生まれるのでしょう。
配属の部署は違っても、LINEや飲み会などを通じて、仕事の悩みを相談したり、励ましあったりしているようです。
4・新人社員に教えることで先輩社員も成長していく
フレッシャーズキャンプのプログラムは、社長の私が中心になって開発しましたが、2年目以降は、事務局の社員たちに運営を任せています。
事務局のメンバーは、フレッシャーズキャンプの卒業生が中心。したがって、入社2~3年の若手社員が、新卒の新人にさまざまなことを教えることになります。
新人たちの発表やスピーチに対して「よくできているね」と評価したり、「この点が足りない」と指導したりと、まさに「先生」の役割を果たしているのです。
こうして若手社員に新人教育をある意味「丸投げ」することは、教える側の社員の成長スピードを加速することにもつながります。
人に何かを教えようと思えば、自分も勉強しなければいけませんし、「○○しなさい」と指導したことは自分も実践しなければ示しがつきません。
そういう意味では、フレッシャーズキャンプ5は、2~3年目の社員を育てる場でもあるのです。
5・社長と若手社員の距離が近くなる効果も
運営は社員に任せているとはいえ、私もキャンプには必ず参加しています。
基調スピーチを行うほかは、隅でキャンプの様子を見ているだけですが、月に一度とはいえ、新人社員と一緒の時間を過ごすことで目に見える効果がありました。
キャンプを始める前は、新卒の社員とのコミュニケーションをとるのは、採用の最終面接のときくらい。正直に言うと、社員の顔と名前が一致しないこともありました。
社員にとっても、めったに顔を合わせることのない社長ですから、コミュニケーションの取り方もよくわからなかったでしょう。
要は、社長と若手社員の間に大きな距離があったのです。
しかし、キャンプを開催するようになってからは、新人の顔と名前が一致するようになり、「Aさんは、こんなキャラクターだ」「Bさんは、こんな能力を持っている」ということもわかるように。
また、社員の方も、社内で積極的に私に話しかけてくるようになりました。
新人との間でコミュニケーションが活性化したのも、キャンプの大きな成果だと実感しています。
新卒採用・新入社員の育成は積極的に行うのがベスト
ノウハウや経験のある中途入社社員は重要な戦力です。
私たちの会社でも新規事業の内容や業種に合わせて、経験者を採用しています。
しかし、私の経験から言うと、力のない新卒でも環境次第で中途入社社員より大きく育ちます。
会社が一定の規模になったら新卒採用を積極的に行って、自分たちの手で育てていくことを検討してはいかがでしょうか。
教育のやり方次第で、いずれ強力な経営幹部が育つはずです。
当社では、若手社員を育てるノウハウや多角化事業に関するセミナーやワークショップを実施しています。
興味がある方はぜひご参加ください。
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Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員620名、50事業・年商160億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。