業績分析は中小企業のリーダー育成に必須!業績把握、分析能力を高める仕組み
業績管理・経営計画
こんにちは、ヤマチユナイテッドの山﨑です。
中小・中堅企業においては、経営者自身が現場で働き、さらに業績管理、業績分析、対策立案、執行と、非常に幅広い範囲の業務を担っているという会社は少なくありません。
しかし、数人程度の組織であればまだしも、会社規模が大きくなってくると経営者にしかできない仕事をするための時間が削られ、経営上の課題に関しても「事が起こってから対応せざるを得ない」というジレンマに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
会社経営を進めるにあたっては、経営者が自分自身の業務に充てられる時間をどれくらい持てるかが大変重要で、当社も長年試行錯誤してきた背景があります。
そのためには、係長クラス、課長クラスの社員がリーダーとしてある程度の業務を担い、課題に対しても早期に手を打ってくれるような仕組みを整えることが、次のステップに進むためには必要不可欠になってきます。
今回のコラムでは、そういったリーダーを育成するための仕組みの一つとして「業務分析」についてお話しします。
目次
業績分析とは?リーダーが身につけるべき理由とメリット
「業績分析」にはいろいろな考え方があると思いますが、ここでは「データに基づいて客観的かつロジカルに業績を判断すること」と定義します。
つまり、直感や経験に頼って「こんな感じだろう」と主観的に断ずるような状況把握でなく、数字や結果、状況をトータルで見た上で、確固たる根拠をもって「このような要因があって、このような現状で、見通しはこうである」と示すことが「業績分析」。
現場の社員においても、ベテランになればなるほど過去の経験から直感的に判断してしまう場面が多いのではないでしょうか。
一方で、経営者はミクロからマクロまでさまざまなデータに基づいて大局的な経営判断を行っているはず。
それと同等にとまではいわなくとも、特に係長、課長クラスの社員には、現場のリーダーとして自分の部署や事業部で起きていることを正確に把握し、自主的に対処していけるようになるために業績分析を身につけてほしいのです。
リーダー層が業績分析を身につけると、次のように大きなメリットが得られます。
メリット①効果的な意思決定が自分たちでできるようになる
直感や経験に頼った状況判断では、「こうである」と言い切ったり、判断に責任を持ったりという点では心許ないところがあります。
きちんとデータに基づいて意思決定を行えばそのデータが根拠となり、迷いが払拭されて自信につながります。
もちろんそれらのデータを見られる、そのデータに基づいて自分たちの部署・事業部を運営するための経営判断ができるという権限移譲が行われているという前提があってのことですが、業績を自分事として捉えられるようになるので「この方法で行うと、このようなリスクが生まれるのでは?」と、リスク管理にも目が向くでしょう。
メリット②生産性や業務効率が上がる
リーダー層が業績分析を行うようになると、「上層部から言われたことをやれば良い」というわけにはいきません。
特に業績が伸びないときは「うちの部署・事業部はなぜうまくいかないのか」を自分事として真剣に考えるようになります。
それも数字だけを見るのではなく、業務プロセスのどこが良くないのか、改善の余地がどれくらいあるか、経費やマンパワーの使い方は適切なのかといったことを検討し、無駄を排除してできる限り生産性を上げるには...と、頭の切り替えが行われるはずです。
メリット③目標達成に向ける社員の意志がそろう
自分の部署・事業部だけではなく、会社あるいはグループ全体での目標達成率を意識する目線が育ちます。
業績分析を通じて、自部署のパフォーマンスが全社にどれくらい貢献しているか、よその部署・事業部はどうかと考えるので、比較することで自部署の生産性や会社への貢献度が低いとわかればそれを放置することができなくなるのです。
これが、目標達成に向ける意志や責任感の醸成につながります。
また、業績分析の過程で数字だけで判断できないことに関しては、上司や関連部門と積極的にコミュニケーションを取って確認するようになるはずですから、組織全体の一体感も生まれてくるでしょう。
それでは、「業績分析をリーダー層の社員に身につけさせるためにはどうしたら良いか」というお悩みについては、次の項目で説明していきます。
業績把握と分析能力を高める方法
リーダー層の社員に業績分析を学ばせる方法の例としては、eラーニングのシステムを使う、外部研修を利用する、分析が得意な社員を講師役として社内勉強会を行うといったことが考えられます。
しかし、ここで注意すべきは、ただ業績分析を学んだだけでは意味がないということ。
せっかく知識を得ても実践する場がなければ能力が定着せず、学ぶ意欲や吸収率も下がります。
「学ぶこと」と「実践すること」は必ずセットで考えていただきたいです。
中小・中堅企業においては、ただでさえシステムやマンパワーを潤沢に使うことができません。
現場で実践的に業績分析をさせながら定着させる方法が最適だと思います。
経営者のみなさんからすれば、データの開示、現場で教える・教わる体制の構築、任せることへの抵抗感など、ハードルが高いと感じられることは多いでしょうし、実際に行うのはなかなか大変です。
とはいえ、やってみないことには変わりません。
ヤマチユナイテッドもある程度時間をかけてこの仕組みを整えてきました。
私自身がリーダー職に就いてみて、上層部が権限委譲してさまざまな業務を任せてくれていることはとてもありがたいと感じています。
そして、上司に教わりながら自分でやってみることを通じて業績分析を身につけるためには、フィードバックの時間をもらえることが非常に大事だと実感しました。
学ばせ、実践させ、フィードバックして鍛錬する。
業務分析の能力を高めるためには、この一連の流れをきちんと仕組みとルーティンにしていくことが重要だと、自分の経験を通じてみなさんに申し上げたいと思います。
「業務分析の能力」とは?分析のスキルが高い人の特徴を確認
では、実践を通じて磨いていくべき「業務分析の能力」とはどのような能力でしょうか。
分析のスキルが高い人の特徴から逆に考えてみると、次のようなことがいえるでしょう。
1.論理的思考力が高い
特徴:データや情報をきちんと収集した上でそれらを体系的に整理し、ロジカルに考えることができる
集めたデータを関連付けることによって原因分析と現状把握を行い、将来予測を立てる際に役立ちます。
2.データリテラシーが高い
特徴:データを正確に読み取り、その信頼性や精度を判断する能力、膨大なデータの中から重要なところを抽出する能力が優れている
いくらデータを集めても、必要なものを吟味して使っていかなければ意味がありません。
3.問題解決能力が高い
特徴:抽出したデータからロジカルに思考を組み立て、具体的な解決策を導き出す力がある
データ分析の結果を基に、業務プロセスの改善や新しい戦略を提言することが求められます。
4.コミュニケーション能力が高い
特徴:データだけでは判断できないことについて客観的な判断材料を他者から集めることができる、分析結果を他者にわかりやすく伝えることができる
業績分析の過程で、時には他部署や他事業部にヒアリングに赴かなくてはならないこともありますし、自部署のメンバーにわかりやすいように分析結果を伝える力も必要です。
5.好奇心と探求心が旺盛である
特徴:情報に対する感度が高く、「なぜ」「どうして」と常に考え続けている。
私はこれが一番大事だと思っています。
経営者のみなさんがいつもアンテナを高く立てているのと同様に、情報をキャッチする力とそれに対する積極的な姿勢を備えていて、つかんだ情報をすぐに実践に役立てることができる人は、課題抽出と対策立案の場面でもその能力を発揮してくれるでしょう。
経営者のみなさんは、これら5つの能力をリーダー層に身につけさせることを念頭に、まずは「任せる」ことを決断していただかねばなりません。
学んだことを実践させ、フィードバックを繰り返す
業績分析の観点や方法を教えた上で、それをすぐ活用する場を与えましょう。
そして、出てきた結果に対して経営者ないし幹部陣など大局を見られる人がフィードバックを与える機会を設けるのです。
これを繰り返すことによって、リーダー層の分析能力が徐々に上がってきます。
私たちが提案する方法は「この講座に受講すれば身につく」「このツールを使えば今日からできる」というものとは異なり、一朝一夕にリーダー育成が実現できるわけではありません。
その代わり、本質的に「業績を自分事として捉える」「責任感を持って学び深めていく」といった経営参加の根源となるスタンスを醸成していくものです。
どんなにすばらしいシステムやツールを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ宝の持ち腐れで、環境が変わってシステムやツールの変更が求められた場合にはその変更に柔軟に対応できる人材が不可欠です。
逆にいえば、業績分析を通じて5つの能力を獲得した人材がそろえば、システムやツールの効力を最大限に活用できると考えています。
リーダー教育と組織の成長との関連性
リーダー教育の一環として業績分析を身につけさせるには、実践的にさせるのが最適であると説明してきました。
そのためには業績分析を定期的な業務として落とし込んでいく仕組みづくりが必須です。
ヤマチユナイテッドの事例とともにご紹介します。
業務分析をリーダー育成に活用するヤマチユナイテッドの事例
ヤマチユナイテッドでは、リーダー層の社員に業績分析を任せる際、初年度は「3年後までの中長期計画」と「単年度の年度計画」を立てさせます。
うちは部門別営業利益管理を行っていますから、各部門の責任者がその任に当たります。
クォーター制なので3カ月ごとにそれらの計画を見直し、修正計画を立てるようにしていますが、ここに業務分析を組み入れています。
業務分析をリーダー育成に活用するためにポイントとなる仕組みが「振り返り会」。
業績分析の結果、対策や戦略を整えたり、場合によっては改めたりといったことが必要になりますので、変更点を盛り込んだ修正計画を、業績統括責任者である常務取締役にプレゼンする機会を設けているのです。
今の私はまさに修正計画をプレゼンする立場にあります。
振り返りの観点としては、部門方針として掲げた大きな方向性(KGI=Key Goal Indicator)を達成するために、部門目標(KPI=Key Perfomance Indicator)をどうしていくかということが一つ。
KGIとは「本年度は事業部の『A』という新しいサービスで〇%の売上を目指す」あるいは「利益率〇%のビジネスモデルから〇%のビジネスモデルへと大きく転換を図る」といったことです。
これを受けて、KPIは最大3つ程度を設定します。
例えば、「新規の法人客を年間で〇社増やす」「新サービスで集客率〇%以上を目指す」といった定量的な目標となるでしょう。
KGIとKPIは、経営計画書に必ず記載するルールになっています。
振り返り会では、経営計画書を基にKGI・KPIを再掲示した上で、目標達成のために実行したことを再確認し、それによってどのような経過をたどり、現状に至ったかということへの説明が求められます。
現状把握においてはシンプルに「目標の数字はこれ、現状の数字はこれ」と示すことによって差異が明確になり、ではその差異がなぜ生まれたのかという原因の追究へとつながっていきます。
原因分析とは、目標達成ができなかったのならなぜできなかったのか、達成はできたがなぜ数字が積み上がらなかったか...と、とにかくロジカルに「なぜ」を繰り返していくことに尽きます。
ポイントは、データに基づいた客観的視点から原因分析ができているかということ。
主観を入れず、データによって根拠づけられたものを分析結果として伝えることです。
ですから前提として、KPIの進捗状況や実行率なども含め、質と量の伴ったデータがそろっていることが重要です。
KGIとKPIについてもっと詳しく知りたい方は、こちらのコラムもあわせてご確認ください。
KPI設計のポイントとは?KGIとの関係性と効果的な活用方法も
PDCAサイクルを効果的に回す、中小企業のためのKPI管理法とは?
それから、次のクォーターに向けた対策も事前に用意していくわけですが、年度の終盤までは年間目標を下げるわけにはいかないので、挽回のために数字を上積みした修正計画を出します。
そこにはやはり部門方針、部門目標、現状把握、原因分析、対策の方向性と具体的な実行方策を記載し、評価メジャーも入れています。
評価メジャーは実行方策について何をもって「できた」「できなかった」を判断するかという基準ですから、数値で表せるものとします。
「この数値をクリアできれば目標も達成できる」というロジックなので、「評価メジャーをクリアしたのに売上が達成しない」という矛盾が生じないように設計する必要があります。
順調に目標を達成していればその後の計画もほぼそのままで良い可能性が高いですが、未達成の場合は修正計画を提出し、自部署の部下にもなぜ修正が必要かということを説明しなければなりません。
単に説明するのではなく、新卒社員や経験の浅い社員にもわかるように話すこと、また、そうすることで「これなら次期は大丈夫そうだ」と思わせるまで考えきることが私たちにとって重要だと思っています。
と、ここまでが私たちリーダー層の側から見た振り返り会の概要ですが、経営者および幹部のみなさんには、フィードバックを返すという重要な役割があります。
フィードバックを返すのが重要な理由も確認
フィードバックで重要なのは「これではダメだ」と一方的に突き返すのでも、「こうしろ」「ああしろ」と指示するのでもなく、社員みずから考えることを促すような対応です。
私が振り返り会の前に添削をお願いする直属の上司やプレゼン相手となる常務取締役は、「こっちのデータから見ると実際はこうなのでは」「ここの分析のポイントとなるデータはこちらかも」などと、時にはヒントを示しながら私に考えさせる余地を与えてくれます。
時間も手間もかかるので経営者はじめ幹部のみなさんには負担をかけますが、ここはぜひ丁寧にやっていただきたいところ。
リーダー層は、社員の中でも幹部の地位により近い人材です。
フィードバックというやり取りを通じて、経営者および幹部陣が備えている経営感覚に触れることができますし、言葉の端々から経営哲学を感じ取ったり、経営理念への共感がより強まったりすることにも期待できると思います。
リーダー層が経営者ないし経営陣から学び取ったことは、部下にも浸透していきます。
このサイクルが定着すると、幹部にふさわしい人材の育成もスピードアップするでしょう。
そうするといちいち経営陣が介入しなくとも自分たちで計画を立て、進捗を管理し、課題を解決する方策を見出して現場は回っていきますし、経営者は自身の仕事に集中できます。
それこそ組織を成長させるために必要な仕組みとして機能していくと思うのですが、いかがでしょうか。
社員が自分たちでつくった計画を自ら管理する「自主管理」をする方法については、こちらのコラムでも解説しております。
業績と売上の違いとは?社員自身が業績管理を行う方法とポイント《システム経営の3本柱》 第2回:自主管理
また、社員に業績に興味関心を持たせるための教育については、「社員が業績に興味がない...業績を意識して仕事に取り組んでもらうには?」をご覧ください。
業務分析をリーダー層に任せるメリットを知り、組織の成長につなげよう
業務分析をリーダー層に任せることで、現場の社員が自分たちで効果的な意思決定を行えるようになり、生産性や業務効率が上がり、目標達成のための意志がより強くなるというメリットがあります。
リーダー教育の一環として業績分析を身につけさせるためには、学ばせ、実践させ、フィードバックして鍛錬することが大切です。
教育と実践を業務として落とし込み、論理的思考力、データリテラシー、問題解決能力、コミュニケーション能力、そして好奇心と探求心を伸ばしていけば、システムやツールを導入した場合にもその効力を最大限に活用することができます。
業務分析をしっかり身につけさせるためには、定期的な振り返りの機会を設けるのが効果的。
経営陣からのフィードバックも重要で、ヒントを与えつつ自分の頭で考えさせることで原因分析と対策立案が習慣化し、こうした姿勢が下層社員にも良い影響を与え、組織としての成長にもつながっていくことでしょう。
今回のコラムを読んでいただいて、多くの方が懸念されるのはやはり「任せる」というところだと推測します。
また、経営者自身が「やってみようか」と思っても幹部が賛成しないというケースも多く見てきました。
実は権限移譲のための意識改革や仕組みづくりも大変重要で、会社によっては理念を整備する、良い社風を作るといったところから着手しないといけない場合もあります。
幹部陣のマインドチェンジを図りたいと考える経営者の方は、ヤマチユナイテッドのノウハウを網羅した「連邦・多角化経営実践塾」へ幹部の方々と一緒に参加されてはいかがでしょうか。
意識改革や仕組みづくりにはそれなりの時間がかかり、結果を急ぎたい気持ちもよくわかりますが、私たちヤマチユナイテッドの経営の仕組みは、経営課題それぞれの解決策を点でつなぎ、体系立てて面で支えていくという構造になっています。
端的にいえば、主体的・自律的な人材を継続的に育成することがうちの仕組みのすべて。
その仕組みにはどのようなものがあるか、どうやって連携をさせているかを知りたい経営者の方々、自社の経営方針を「こんな会社にしたいんだ」としっかり社員に伝えたいとお考えの経営者の方々は、多角化経営研究会「PEAKS(ピークス)」への参加もご検討いただければ幸いです。
こちらは経営者お一人でも参加可能です。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|経営支援事業部 |営業推進チームリーダー・人財開発コンサルタント
山﨑 舞
人材総合サービス会社の営業部勤務を経て2018年(株)ヤマチマネジメントへ入社。前職では採用広告サービスの販売営業部で戦略スタッフとして企画・販促・アシスタント業務を担当。その際、元々取引先だったヤマチユナイテッドの社風やミッションに惚れ込み、転職を決意。現在は経営支援事業部で企画・運営を担当しつつ、営業推進チームリーダー兼人財開発コンサルタントとして活動。企業の新卒採用・育成を支援している。