中小企業における昇進・昇給(賃上げ)のタイミングは?人材定着に結びつける方法も確認
組織・給与制度
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
世界情勢の変化や円安に伴って国内の物価がどんどん上がっていくなか、賃上げの必要性が議論されています。
大手企業では実際にベースアップを図っていることが報道されていますが、中小・中堅企業においては容易に実行に移せないところが大半ですし、ただでさえ昇給のタイミングは難しいもの。
今回は、昇進・昇給(賃上げ)のタイミングについて、ヤマチユナイテッドの事例とともにご紹介します。
また、昇進・昇給(賃上げ)を戦略的に行うことによって、人材定着の仕組みづくりを進める方法についても解説しますので、ぜひご確認ください。
目次
- 中小企業における昇進・昇給(賃上げ)の動向は?最適化することの重要性も確認
- 昇進の適切なタイミングは?ヤマチの成長期におけるリーダーシップ開発の事例
- 効果的な昇給(賃上げ)のタイミングは?給与体系の競争力保持も確認
- 業績連動型報酬・決算賞与のメリットと効率的な配分方法
- 昇給(賃上げ)のタイミングが難しい場合は、成果分配制度の導入がおすすめ
中小企業における昇進・昇給(賃上げ)の動向は?最適化することの重要性も確認
2020年以降からここ数年で、日本の経済状況はかなりの変化を遂げました。
新型コロナウイルス感染症の流行やロシアのウクライナ侵攻によって物価が高騰した影響は非常に大きく、今後世界情勢が落ち着いたところでいったん上がった物価はなかなか下がるものではありません。
そこで「労働者の賃金を上げていこう」という方向に世論が動くのは至極当然のことです。
大手上場企業中心に国策的にもプレッシャーがかけられているため、実際に賃上げを実施する企業も出てきています。
株式会社 帝国データバンク(TDB)が2024年4月18日に発表した「<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」の調査によると、2024年度の賃上げ実施割合は77.0%という結果でした。
参照:株式会社 帝国データバンク/<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート
賃上げ(正社員一人あたりのベースアップと定期昇給)の内訳では「3%増加」とした企業が最多の22.0%、次いで「5%増加」した企業が15.0%となっています。
一方で、「据え置き(賃上げはない)」は16.6%、「賃下げ」は0.6%でした。
企業規模別では、大企業・中小企業は77.0%とほぼ同水準でしたが、小規模企業は65.2%と下回っています。
特に大手企業の賃上げに関しては、これがプライスリーダーのようになって人の動きが非常に激しくなり、採用難や離職問題につながっているというのが最近の傾向です。
とはいえ、「よし、じゃあ賃上げしましょう!」と即断できないのもまた中小・中堅企業の実情ですよね。
お金がすべてではないとはいえ、現状維持では社員の生活費が削られていくばかりになるのが現実。
たとえ会社が好きで仕事が好きでも、生活が苦しくなれば辞めざるを得ないという社員が出てきてもおかしくありません。
人材がいないと業務が回らなくなり、ビジネスの持続性すら危ぶまれるとなれば会社にとっては致命的な打撃となります。
時代を鑑みて、また、人材確保や事業の持続性保持のためにも、賃上げを本格的に検討しなくてはならなくなったのが今の状況です。
どうせ賃上げを実施するなら、これを機に社内の昇進・昇給の制度を見直してみてはいかがでしょうか。
ヤマチユナイテッドグループ代表の山地 章夫は、よくこのように言っています。
「賃金を上げながら、採用しながら、初任給を上げながらその原資の利益を出し、財務も改善する。それ以上の利益を出せた時にはしっかりと賞与を上乗せし、還元する。これらを両立させるのは相反する行為に見えるけども、それをやるのが経営である」
結局、会社を存続させるためにはそこから逃げるわけにはいかないということなのだと思います。
昇進・昇給の制度を最適化することによって社員の士気を高め、いっそうのやりがいを持たせることで人材定着に結びつく方法があると私は考えています。
それがみなさんの会社の成長のためにも役立つはずです。
昇進の適切なタイミングは?ヤマチの成長期におけるリーダーシップ開発の事例
みなさんの会社では、社員の昇進のタイミングをどのように判断していますか?
基準はそれぞれ異なるとしても、企業が成長・発展していくためには人事も戦略の一つとして考えていく必要がありますし、ビジョンに基づいた昇進制度を整備することは経営上の大きなテーマになると思います。
賃金体系、採用手法、初任給、評価制度、そしてそれに連動した研修制度と、全部が大切でビジョンと一貫性を持ったものになっているべき。
特に、現在のように目まぐるしく環境が変化する時代になってくると、生き残りをかけて取り組むべき命題だといっても過言ではありません。
そのような中で昇進制度に関していえば、「人材をどう成長させ、どう登用していくか」ということに加え、「社員が昇進を目指したくなるような仕組みづくり、制度づくり」が肝となります。
ヤマチの成長期におけるリーダーシップ開発の事例
ヤマチユナイテッドは、2030年までに100の事業を創出し、それを担う100人の事業責任者を育て、100億の利益を上げ、100年続く会社になるという「THE 100VISION」というミッションを掲げています。
仮に50人の事業責任者がいれば、もう50人の事業責任者を生み出す必要があります。
「その50人の事業責任者はどんな素養、能力、スキルを持っていないといけないか」と考えると、「事業を立ち上げ、それを育てることができて、部下の育成を含めたマネジメントができて、業績管理ができて、さらに次の事業責任者を育てることができる」ことが事業責任者であると自動的に定義づけられます。
こうした定義が評価軸になり、「ここを目指してください」と評価制度や賃金制度を社員に示すことができます。
社員側から見れば「これができれば賃金が上がる」と理解できるので、業務に取り組む姿勢が変わります。
ヤマチユナイテッドの「多角化により成長・発展する」という方針に沿ったやり方でグループとしても強くなれるという設計です。
「THE 100VISION」達成は2030年を見据えていますから、まさに現在進行形でこれをやっているわけですが、実際に「事業責任者を目指そう」と積極的に学んだり、経営に参加したりする若手が増えてきていると感じます。
事業責任者をより多く、よりスピーディに育てるため、当グループでは昨年から新たにカンパニー制を取り入れました。
わかりやすいように新旧の組織図を見ていただきましょう。
カンパニー制導入により、事業本部長は事業本部の営業利益を、カンパニー長はカンパニーの営業利益を達成するという目標がより明確になり、おのおのが事業本部、あるいはカンパニーの成長・発展を担うという役割が強調された形となりました。
事業本部長にはさらに「新規事業を立ち上げること」「事業責任者を育成していくこと」も課されています。
そして、これらが評価軸となり、昇進の意思決定プロセスに大きく影響してくるようになっています。
結局のところ、「賃上げ」という目先の課題があるにしろ、「会社の目標、目的に沿った人材登用ができる、育成も含めて会社の方針を明確に示せるような環境、仕組み、制度を整える」ということが、現在のように変化し続ける情勢の中で生き残っていくためには必要な戦略なのではないでしょうか。
まずはベースを整えることが、賃上げ以前に必要なことだと思います。
効果的な昇給(賃上げ)のタイミングは?給与体系の競争力保持も確認
会社ごとに定期的な昇給の機会を定めていることと思いますが、今すぐ行わなければならないことは、初任給の改定、ベースアップ、歩合やインセンティブ制度の見直しというところでしょう。
昇給(賃上げ)のタイミングとして挙げられるケースは、以下のケースが考えられます。
- 社員の離職が増えて目立つ場合
- 新卒も中途も採用がうまくいかない場合
- 人材が定着しない、集まらない時期
- 初任給の改定時
- 人事制度の見直し時
社員の離職や採用については賃金が要因となっている可能性もあるので、実際に上げることができるかできないかは別として、そこに目を向けてみる頃合いかもしれません。
例えば、明らかに同業他社に人が流れているような場合は、求人情報を見て調べてみるといった地味な作戦を実行しながら対抗していかなければなりません。
ただ、無い袖は振れないですし、ベースアップし続けることにも限界はあります。
赤字の状態が続いているのに賃金を上げ続けるというのはおかしな話。
一方で、賃上げできないことで事業を継続できないなら、その赤字も含めて何かが間違っていて、そこに課題があるはずです。
だから「問題があるからできない」のであって、できるようにするには何をしたら良いかと考えるべき。
社員のために賃上げしてあげたいと思うのであれば、まとまった利益を毎月・毎年出すということに尽きますし、利益をしっかり残すことで会社の財務内容も良くなっていくのです。
要は企業体力を強化していけば、賃上げだろうとなんだろうと対応できるはずで、できる範囲を増やしていくということも一緒にやらなければいけません。
ここ数年は特に賃上げを求める声が社会的にも大きくなっていますが、以前は大手が少しずつ給料を上げているのを横目に見つつ、中小・中堅企業は何とか現状維持しながら採用もできたし、事業も継続できていたという状況でした。
それがここ2年ほどで難しくなってきたことを、みなさん身をもって感じているでしょう。
物価高で生活コストは上がっているし、大手の上げ幅も大きいので明確に賃金格差が生じているのです。
そのために離脱が増えたり採用に難が生じていたりするのでは賃金を上げざるを得ないのですが、その分業績も上げて利益を残すということを一緒にやっていかないとどんどん出血していくだけ。
以前に比べると、ごまかしが効かない時代になってきたという感があります。
ヤマチの昇給(賃上げ)のタイミング①新卒採用の初任給を提示する時
ヤマチユナイテッドの場合、ここ20年くらいの間で数回、定期昇給以外の賃上げや昇給幅を見直す機会がありました。
その理由として一番大きかったのは、初任給を改定する必要性を感じたということでした。
新卒採用の市場を見て、競合他社の初任給をチェックすると「うちも少し上げないと採れないかもしれない」といった年があるんですよね。
当グループでは毎年3%前後の昇給を継続してやってきているのでそんなに見劣りしない状況ではあったのですが、ここ最近の大手の上がり幅は5%くらい。
つい数年前まで、うちと競合するような企業は大手でもそこまで差がついていなかったのに、今では5万6万と初任給も上げてきています。
気づけばずいぶん安い側になってしまって、「いや、うちは賃金でアピールする会社じゃない」と強気でいられるうちは良いですが、現在のような売り手市場になれば賃金も見直さなければなりません。
では「初任給を1万~2万円上げましょう」とすると、すぐ上の先輩の給料を上回ってしまうので、この逆転現象を防ぐためには若手社員の給料も上方修正をかけざるを得ません。
本当は全社員の給料を上げたいところですが、大手でなければやはり難しいですよね。
それなりのコストアップにはなりますが、人を採るためにはやらざるを得ない。
ですから新卒採用にあたって初任給を提示する時も昇給を見直すタイミングになると思います。
ヤマチユナイテッドでも歩合やインセンティブの制度を作ったり、それらの制度を増やしたり減らしたりしてきましたが、いずれも社員の採用と離職のバランスを見ながら対応してきたというのが実際のところです。
ヤマチの昇給(賃上げ)のタイミング②人事制度の見直し時
昇給のタイミングとして、人事制度の見直しをした時のヤマチユナイテッドの事例も挙げておきましょう。
うちでは先ほどご紹介したカンパニー制の導入と並行して、「THE 100VISION」達成のために人事制度を刷新しました。
評価制度に加えて賃金制度、退職金制度、これに連動する研修制度を見直したのです。
そのなかで、事業本部長とカンパニー長の給与手当額は手厚く改訂し、上位職ですがベースアップで対応しました。
やはり責任の重い役職ですから、その責任に見合う給与を得られるべきと考えたことが一つ。
そして、その下で働く社員にもカンパニー長や事業本部長を目指してほしいという思惑もあります。
この層が厚くなれば「THE 100VISION」達成が近づくからです。
昇進・昇給が、グループとしての目標を実現することに一貫して紐づいているというところは、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
業績連動型報酬・決算賞与のメリットと効率的な配分方法
「賃上げ=生活給の引き上げ」と捉えると社員にとっては切実な要望で、月給を上げたいけれどなかなか上げられない状況にある中小・中堅企業にとっては非常に重くのしかかる課題です。
月給はいったん上げると固定化してそう簡単には下げられないことは明白ですから、なおさら悩みは深くなりますよね。
では仮に「今はまったくもって賃上げなんか無理だ」という状況であっても、業績連動型の報酬を用意しておくことはできるのではないでしょうか。
これを効果的に活用しましょう。
社員にとって給料が上がるのはうれしいことですが、青天井のように上げ続けるわけにはいきませんし、企業の収益性と財務、つまり稼ぐ力が乏しいのに社員満足や離職防止のためだけに賃上げしていくことなどできません。
会社がつぶれてしまっては元も子もありませんから、財務改善と社員の処遇改善を両方同時に進めていくのだということを基本的な考えとして持っておくべきです。
それを実現できるのが「成果分配」の仕組みです。
成果分配ですから、利益が出ないことには還元することもできません。
つまり売上ではなく、営業利益に連動した報酬であるということです。
会社として残すべき営業利益、会社がやりたいことを実現するための営業利益を追及するのです。
会社経営において、実現したいことはいろいろあるでしょう。
「給料を上げてあげたい」「ボーナスをたくさん出してあげたい」というところから始まって、「新規事業を立ち上げたい」「広告・販促にも力を入れたい」「商品や技術開発を進めたい」「工場を建て替えて機械も入れ替えたい」「社員を増やしたい」「積極的に採用活動に取り組みたい」...など、きりがありません。
これらの「やりたいこと」を実現するのに何が必要かといったら、元手になるのはすべて利益です。
具体的に何にどれだけ必要か、利益額も計算しておかなくてはなりません。
その上で、会社に残す分、やりたいことを実現する分を差し引いてなお余裕があれば、初めて報酬として社員に還元できるのです。
一方で、営業利益がどうなったら報酬を獲得できるのか、配分の仕方はどうあるべきかといった基準やルールの設定も公平性を担保する上で重要です。
要は営業利益をたくさん出すことができた部署やチームに還元する際に、どんな計算基準で配分されるのか、また、根拠は公平であるかということを示しておかなければならないということ。
ですから管理会計をしっかり活用し、部門別の営業利益管理をすることが求められます。
ヤマチの成果分配制度の場合、賞与も「自分事」として捉える
当グループでは「成果分配制度」を整備していますが、これがまさしく業績連動型の報酬還元制度に当たります。
当然、決算が赤字でないことが前提になりますが、法人ごと、事業部門ごとに営業利益管理をしているので、事業ごとに成果分配の支給率、支給原資が変わってきます。
この制度では生産性、つまり1人当たりの営業利益を基準に成果分配のルールを構築、設計しています。
公平、適正に各部門の営業利益が計算されていて、その部門に所属する人員数が明確で、それで割り返せば1人当たりの営業利益が出ます。
生産性が高い部門ほど成果分配の割合も高く、報酬として還元される仕組みです。
報酬獲得を目指すのであれば、各事業部の社員は幹部も含めて、まずは自分自身の業績、チームの業績、そして事業部の業績を向上させる必要があります。
その上に法人ごとの営業利益という括りもありますから、自分の事業部だけ好調であれば良いというわけにはいきません。
ほかが赤字で会社全体が赤字であれば、支給原資はどこからもでてこないというわけで、他事業部もしっかり良くなってもらわないといけないんですよね。
このような設計になっているので、1人当たりの営業利益を上げれば上げるほど還元率が大きくなるのだからみんなで生産性を上げていこう!という方向に社員一人ひとりの意識が向きます。
営業利益を上げるということは、売上はもちろん、粗利益を見れば原価率も関わってきますし、経費もろもろにも気を回さなくてはいけません。
こうして経営に必要な損益の要素すべてを管理し、コントロールして、生産性を最大限に上げるということに意識が集中するのがこの制度のとても良いところです。
世間には「今年はボーナスが少ない」と不平を口にする人がいますが、ヤマチユナイテッドにおいては「賞与は自分たちで獲得するもの」という意識でみんなが動いてくれています。
利益を残せば処遇に還元されるとわかっていて、成果分配のルールも明確になっているので、昇進・昇給で給料が上がることと同じように、賞与に関しても「自分事」として捉えられるのです。
賞与のもらえた理由を把握していない場合
一般的には「何だかわからないけれど結果が良かったみたいだから決算賞与が急に出た」といって喜ぶ人も多いと思いますが、逆に翌年出なければどうでしょう。
賞与をもらえた理由も、どうやったらもらえるかもわからないから頑張りようがなく、「昨年と同じようにやったのに今年はもらえない...」となってしまうと、不満が出るでしょうね。
それだともったいないと思うのです。
どうせ利益を還元して決算賞与を出すのであれば、その仕組みやルールがわかるようにしておくと、出た時には「自分たちで獲得したのだ」という達成感を得られますし、業績が上がらず賞与が少なかったとしても受け入れられるはずです。
賞与を獲得した時の達成感は、本当の意味でのモチベーションを生み出します。
しっかりとした成果分配制度を作って正しく運用すれば、業績や生産性に社員みんなが敏感になりますし、そうして関心を持つことによって個々の能力発揮にもつながるでしょう。
会社の文化としても正しい方向へ導かれていくはずで、業績が良ければ「自分たちで勝ち取った」という成功体験になりますし、仮に結果が悪くても「来年はもらえるように次はこのようにしていこう」という向上心が芽生えます。
社長の気持ちで「今年頑張ってくれたから多めに出そうか」としてくれるのはありがたいことに違いありませんが、その思いがきちんと伝わっているかといったらそうでもないような気がします。
「次も頑張ってね」という気持ちもこもっているのでしょうから、得たいと思う効果をより確実に得るためには成果分配制度を取り入れるべきです。
成果分配制度を整備したことで、社員のモチベーションが変わった
過去を振り返ると、当グループも社員全員参加型のシステム経営を導入し、成果分配制度を整備したことで社員の心に火が付いたのだと思います。
成果分配の基準を高く設定したので、制度はあれど支給できない時期が数年間続きましたが、そこを狙おうとみんなで粘り続け、一度獲得出来たら「やった!」と大喜び。
幹部層としても来年も出してあげたいと思いますから、「この制度を継続していこう、少額でも良いから利益が出たら還元しよう」ということでこれまで続け、成功体験を積み重ねてきました。
逆に失敗した時の悔しさも、次により良いところを目指すための原動力になっています。
ヤマチユナイテッドが年々業績を上げ、企業として成長してこられたのは、やはり社員みんなが「生産性を上げるのだ」と取り組んできたおかげだと幹部一同考えています。
昇給(賃上げ)のタイミングが難しい場合は、成果分配制度の導入がおすすめ
昨今の物価高騰を受け、大手企業を中心に賃上げを実施する会社が増えてきていますが、中小・中堅企業にとっては大きな悩みどころ。
賃上げできるかできないかという課題に加え、賃金の高いほうへと人材が流れていくことによって人手不足や採用難にも苦しめられているというのが最近の傾向です。
思うように人が集まらなければ事業の存続性も危ぶまれます。
そうなると、昇進・昇給制度を含めて人事制度を戦略的に考えていくことがカギとなります。
昇進に関しては「そのポストを目指したくなる」ような制度づくりが大事。
役職として担うべき責任の重さを加味した賃金を設定することもそうですし、どのような条件を満たせばそのポストに就くことができるのか、きちんと示しておくことで社員も奮起するでしょう。
そしてその条件は、会社としての大きな目標、ビジョンと紐づいているべきです。
昇給は、初任給の改定に伴って逆転現象が起こらないよう、若手社員の給料のベースアップを図る時、そして人事制度を見直した時などがタイミングとしては適切でしょう。
現時点で賃上げするのはどうしても難しいという場合は、業績連動型の報酬を用意しておくと良いと思います。
ヤマチユナイテッドで運用している成果分配制度は、管理会計のもと個人、チーム、事業部、法人の営業利益を算出し、多く得られた利益を、生産性の高さに応じて決算賞与として還元するという仕組み。
社員はみんな、決算賞与は「自分たちで獲得するもの」という意識で業績アップに努めてくれるので、業績改善と処遇改善を同時に実行することができます。
成果分配制度をうまく回せると会社の財務も良くなっていくはずですから、増えた利益の一部を賃上げやベースアップ、初任給改定に回していくという使い方をしても良いのではないでしょうか。
成果分配制度は、業績に関わる数字がオープンになっていて、社員全員が損益計算書を読めるという前提があって成り立ちます。
経営者および幹部のみなさんにおいては、数字をオープンにすることをすんなり受け入れられない方もいらっしゃるでしょう。
事実、当グループの研修にお越しいただく企業様の多くは「そこが難しい」とおっしゃいます。
経営者自身がやる気になっても、幹部がなかなか納得しないというパターンも多いですね。
ヤマチユナイテッドは自主計画、自主管理、自主分配を3つの柱とする社員全員参加型の「システム経営」を導入しており、この3つが連動してこそ成果分配制度の効果が発揮されます。
このシステム経営のノウハウを丸ごとお伝えする「連邦・多角化経営実践塾」は、経営者と一緒に幹部の方々も参加いただくことになっています。
幹部にも自分と同じ目線で経営に取り組んでほしい、生産性や収益の感覚、制度設計をもっと学ばせたいという経営者のみなさんは、ぜひ実践塾へお越しください。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。