ぎくしゃくしている組織が自発的に動き出す組織になるまで
組織・給与制度

こんにちは、川田です。
経営者は孤独である----よく耳にします。
会社において孤立無援で孤軍奮闘しているという意味であれば、私にも経験があります。
理想と情熱をもって組織を運営しているのに、社員が一向についてこない、思ったとおりに動いてくれない、会社としてのまとまりがない......苛立つ日々がありました。
いま、当時と同じような苛立ちや悩みはありません。社員数がはるかに増えたにもかかわらず、です。
しかも、ぎくしゃくとしていた組織が、生まれ変わったようにいきいきしてきました。わずか10年たらず、会社は劇的に進化したのです。
それはなぜか。いろいろな要因があるけれど、ミッションの力が大きいと、私は確信しています。
実は、もともとはミッションに懐疑的でした。しかし、つくってみると期待以上の効果が得られたのです。
ミッションとはいったい何なのか。なぜ、経営者の悩みを解決するツールとなりうるのか。私の体験をもとにミッションについてお話します。
目次
1.ミッションをつくってみたら、会社が大化けした
ミッションをつくったら、会社が大化けしました----
いまから10年ほど前、ジョンソンホームズの受注棟数は年間100棟を超え、さらにはインテリアショップをオープンさせて、事業は好調でした。
しかし、急成長による弊害もありました。人材の育成や部下への権限委譲が追いつかず、組織は混乱していたのです。
さらに追い打ちをかけたのが、リーマンショック。そのあおりと吸収合併した会社の負債を抱えて、はじめて赤字を出してしまいます。
その体験は、私を大きく変えました。
それまでの価値観や考え方を完全に捨てきって、セミナーや講演、書籍を通して、さまざまな人の話に耳を傾けたのです。
次に、ジョンソンホームズはどんな会社でありたいのか、社員とお客さまにとって何ができるのか......、心の奥から湧き出る想いを言葉にしていきました。
また、それとは別に社員の想いを聞くようにしました。その過程で生まれたのが、ジョンソンホームズのミッションです。
----いつまでも続く、自分らしい幸せな暮らしを提供します
難しい言葉もカッコイイ言葉もありません。でも、私にとっても社員にとってもしっくりくる言葉です。
それぞれの心の中にあったけれど、共有できていなかった想いが明文化されたことによって、バラバラだった会社がまとまりました。
そのとき、何が起こったのか。
まず、驚くほど業績が上がりました。そうなると、離職率は下がり、逆に求人への応募者数がどんどん増えたのです。
2.ミッションがあると、人々は自発的に動きだした
昨年9月、北海道胆振東部地震が発生しました。
社員の安全を確認し、次は顧客の確認を...と思っていた私への第一報は、
「ジョンソンホームズで建てた家とお客さまの安全確認はすべて済ませた」というもの。
私からの指示は一切ありません。これは、ミッションにしたがって社員たちが自主的に動いた結果です。
ミッションが社員を動かした----現場での活用事例
ミッションは掲げるものではなく、使うもの。日々の業務に活用してこそ、効果を発揮します。
インテリア事業部のゼネラルマネージャーは、原点に立ち返るとき、ミッションを使っています。
売上目標が達成できない、客足が遠のいた......など、目の前に困難や不安が立ちはだかると心に余裕がなくなり、仕事の意味を見失いがち。
それでは、幸せな暮らしは提供できません。必要を感じたとき、スタッフを集めて、ミッションを腹に落としなおすというのです。
住宅事業部のあるマネージャーは、組織を再編成するためにミッションを使いました。
それまでの体制では自分たちの能力を生かしきれない、それはミッションに背くことになると、体制のほうを変える決断をしたのです。
いずれも、自発的な行動です。ジョンソンホームズのミッションが、社員たちの判断と行動の指針になった証だと考えています。
ミッションが人材を連れてきた----採用の変化
会社の立てなおしのためにつくったミッションでしたが、ホームページで発信してみました。
すると、新卒・中途ともに求人への応募が増えたのです。
ミッションに共感して応募する人ばかりだから、方向性の違いで決裂ということはまずないですね。
社員が定着して、離職率は驚くほど減りました。
新卒の場合、ミッションを理解しきれていないのだろうなあと感じることもあります。
それは人生経験がまだ浅いからしかたない。「自分らしいってどういう状態だろう?」「幸せって具体的には?」と質問を投げかけて、
その答えに対して「それはほんと?」とさらに深く考えさせるようにしています。
そんなふうに、自分の頭で考えて、行動してみて、実感するしかないと思うのです。
中途の場合だと、ほかの会社や業種を経験して、「こうしたいけれど、いまの会社ではできない」というなにかしらの苦い思いを抱えて、
「こんな会社があったらいいな」と期待して、転職活動をします。
そこで、自分の想いと合致する会社にめぐりあったら、ものすごくドライブがかかるわけです。情熱をもって仕事に打ち込んでいますよ。
ミッションに惹かれて、優秀な人材が向こうからやってくることになろうとは、ミッションをつくったときには想像していませんでした。これはうれしい効果ですね。
ミッションは正しく社員に浸透すれば、会社にも大きな効果をもたらすもの。
ミッションの大切さや浸透のさせ方については「インナーブランディングとは?ミッション浸透の効果や進め方を解説!」も参考にしてくださいね。
3.なぜミッションは経営者の悩みに効くのか
売上や利益が伸びない、社員が定着しない、人材育成ができない......経営者の悩みはつきません。
全てではないですが、その多くはミッションで解決すると、私は確信しています。
実は、ジョンソンホームズにミッションができて、最も変わったのは私です。
まず、説明することをやめました。自分は説明した、相手は頷いた、よって相手は理解した----以前はそう考えていました。
でも、人は相手が伝えたいことを理解するのではなく、自分が理解したいように理解するのだと、認識を改めたのです。
そこで、説明の代わりに質問をするようにしました。理解したいように理解していいから、どんなふうに理解したのかを教えてほしいと。
ミッションについても業務についてもなんでも、自分の頭で考えさせるようにしたのです。そのとき、軸に据えたのはミッションでした。
人は移ろいやすいものです。確固たる意志をもっているつもりでも、状況に流されてしまいがち。
普段は「お客さまのために」と言っていても、決算になると収益が気になって、お客さまの幸せが後回しになる......心あたりがあるのではないでしょうか。
つきつめて考えると、お客さまの幸せと収益は対立するものではありません。
お客さまの幸せがあるから収益が出る、収益が社員に還元されるから社員は幸せになる、
社員が幸せになるからお客さまの幸せを考えられる----相反するものではなく、相互に作用しています。
その意味では、「お客さまのために」と「収益は大事である」は同義語といえるでしょう。
もし、同義語とは思えないのであれば、それは同義語だと定義していないからです。
ジョンソンホームズでは、「お客さまのために」「自分たちのために」「収益は大事である」はすべて同じ意味であり、同等の価値があると、誰もが理解しています。
それを可能にしたのがミッションです。
ミッションがないと、上司の指示がぶれているように聞こえる、部下の行動がぶれているように見えることでしょう。
ほんとうは、同じ想いで同じゴールを目指しているのにもかかわらず。ここに経営者の悩みの原因があると、私は睨んでいます
お互いに理解しあえれば、好循環が生まれて、組織はうまく回りはじめます。
そうなるころには、経営者を悩ませていた問題はことごとく解消されているはずです。
4.ミッションの真実----言語化した熱い想いは強い
ミッションとは、会社の存在意義を表すものです。
いろいろな考えがあり、いろいろなやり方があっていい。
その軸にミッションがあれば、経営者も社員もぶれません。日々の業務のなかで迷うことがあっても、判断を誤ることはないはずです。
ミッションの正体は、経営者の想いと社員の想いの集合体です。
会社に関わる者の総意といってもいい。もとをたどれば、個々人のなかにある「仕事で大事にしていること」であり、それに基づいた「行動」です。
それは言葉にしましょう。共通する要素を抽出して言葉にしたとき、それはミッションとなります。
すでにお気づきでしょう。
ミッションは、成り立ちからして掲げるものではなかったのです。
ミッションは、はじめから現場にある想いと行動を言語化したもの。
もともとみんなの熱い想いでできているから、誰もが共感できて、すんなりと判断基準や行動原理となりえます。
同じ想いで団結した組織は強い。ジョンソンホームズがミッションで大化けした真相です。
当社では、よい社風づくりのノウハウや企業経営に役立つ企業視察やワークショップなどのイベントを随時開催していますので、
気になる方はぜひチェックしてみてください。
【川田が講師を務めるセミナー】
【東京開催】ミッションで顧客や社員から支持される会社をつくる「ミッション作成ワークショップ」
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Authorこの記事の著者

株式会社ジョンソンホームズ|常務取締役|グループ常務
川田 新平
ジョンソンホームズを陣頭指揮。企業ミッションの明文化、共有・浸透を図るとともに社員が輝き主体的に経営参加する組織づくりを通して、新たな成長軌道に導く。現在はグループで展開する多様な事業にコミット。社員皆をよくするために、毎月500名の社員の話を聴くことを自ら実行している。