次世代経営者育成の第一歩とは?「制度構築」よりも「人」を育てよう
採用・育成

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
会社の規模が大きくなってくると、多くの経営者が「そろそろ任せる経営にシフトしなければ」と感じ始めます。
しかし、いざ人事制度や評価制度を整えても、なかなか思うように機能しない。
幹部候補はいるのに、本当の意味で「任せられる」人材がいない。
こうした悩みを抱える経営者の方は少なくありません。
今回は、なぜ制度だけでは次世代経営者が育たないのか、そして真に頼れる幹部を育成するために何が必要なのかを解説します。
「制度構築」よりも「人を育てる」という視点に立ち返ることで、組織の成長が加速することを再確認していただければと思います。
目次
- 制度を整えても、任せられる組織にはならない理由
- 次世代経営者育成の第⼀歩は「価値観の共有」から!
- 「⼀枚岩」の経営チームをつくる実践型のアプローチとは?「連邦・多⾓化経営実践塾」をご紹介
- 次世代経営者育成は「制度構築」よりも「人」を育てよう
制度を整えても、任せられる組織にはならない理由
社員数が増え、会社が成長してくると、経営者は「そろそろ任せる経営にシフトしていきたい」と考え始めます。
そして多くの場合、任せられる組織を作るために、まず制度や仕組みの構築に目を向けます。
世の中には、組織を整えるための制度が数多く存在しますが、どれだけ立派な制度を導入しても、「任せられる組織」にならないケースが後を絶ちません。
それはなぜでしょうか。
一般的な「制度アプローチ」の落とし穴
任せられる組織として会社を整えるために、多くのコンサルティング会社や研修サービスが提案する内容には、以下のようなものがあります。
- 理念体系を構築しましょう
- 経営計画書を作成しましょう
- 人事制度・評価制度を導入しましょう
- 会議・報告制度を整えましょう
これらは確かに、組織を運営していく上で必要な要素で、全く無いよりはあったほうが良いでしょう。
しかし、こうした制度を「外側から持ち込んで設置する」だけでは、うまく機能しないケースが非常に多いのです。
制度を整えるだけでは機能しない理由
制度が機能しない理由は、経営者と幹部候補の間で価値観が共有されていないことにあります。
経営者の頭の中にしかない制度の意味や目的を幹部が理解していなければ、どんなに優れた制度や仕組みも形骸化してしまいます。
その結果、現場からは「また新しい取り組みですか?」「今度は何をやるのですか」という疲弊感だけが残り、「やらされ感」が強まる結果になってしまうのです。
制度を生かすためには「人」を育てるのが先
どんなに優れた制度や仕組みがあっても、それを使い、運用するのは「人」です。
ビジネスモデルも事業計画も、実際に動かすのは社員であり、幹部です。
制度は「誰が使うか」「誰が運用するか」によって、その意味と効果が大きく変わります。
経営者が「任せられる」ようにするには、まず「任せられる人材」を育てなければなりません。
そして、任せられる人材とは、制度の目的を理解し、経営者の意図を共有し、自ら考えて動ける人のこと。
だからこそ、「制度の前に人」という考え方が必要なのです。
本物の経営幹部を育てること。
それが、次世代経営者育成の第一歩となります。
次世代経営者育成の第⼀歩は「価値観の共有」から!

次世代経営者を育てる上で最も大切なのは、経営者と候補者との間で価値観と判断基準が揃っているかどうかです。
コミュニケーションの取り方、数字の見方、チームマネジメントの手法などは、確かに次世代経営者や幹部に必要な知識やスキルです。
しかし、制度や仕組みと同様、いきなりスキル研修や評価面談を行なっても、土台が整っていなければ意味がありません。
価値観の共有、考え方の共有という土台が整っていないと、いくら知識を身につけても本当の意味で機能しないのです。
どんな研修をうけてもらうにしても、それを受ける前には「なぜその研修を受けてもらうのか」「何のためにその能力を身につけてもらいたいのか」を理解してもらう必要があります。
「目的の共有」と「ビジョンの共有」がセットでなければ、幹部候補は本当の意味でそれを受け取ってくれません。
経営者が次世代経営者に伝えるべき「期待と役割」
価値観や目的を共有してもらうには、経営者自身が会社の目的やビジョン、そして幹部への期待する役割を明確に伝えることが不可欠です。
例えば、次のようなメッセージを伝えることが重要です。
会社を大きくして、事業も広げていきたい。
社員数も増やし、収益を上げながら、地域にも貢献していきたいという大きな目的がある。
しかし、それは経営者一人では実現できない。
これ以上成長していくには、幹部に組織をまとめ上げ、引っ張っていく役割を担ってもらう必要があり、あなたに任せたいと考えている。
このように、会社の方向性と幹部に期待する役割を具体的に語ることで、幹部候補の中に初めて「経営視点を持つ理由」が生まれます。
経営者はよく「経営目線で考えてほしい」と言いますが、社員が自発的に経営目線を持てるようになるわけではありません。
本人の中に「経営視点を持つ理由」と動機がなければ、それは浸透しないのです。
価値観共有に必要なのは「時間と対話」
もちろん、こうした期待や役割を一度伝えただけで、価値観の共有ができるわけではありません。
価値観の共有には、継続的で質の高いコミュニケーションが必要です。
ここでいう「コミュニケーションの質」とは、単なる会話の量や内容ではなく、経営者と幹部候補が同じ時間と場を共有し、対話を重ねること。
その中で、経営者の思考回路、判断基準、何を重視し何を優先するのかといった価値観を、幹部候補が理解していきます。
価値観の共有には時間がかかります。
社長がどのような思考回路で判断しているのか、どんな場面でどんな優先順位をつけるのか。
こうしたことは、会話や会議の場を共有し、実際の判断場面に立ち会うことでしか知ることができません。
制度が生きるのは、人が育ったあと
こうして価値観が共有され、目線が揃った状態になって初めて、制度や仕組みが意味を持ちます。
「この制度を導入したい」と経営者が提案したとき、幹部が「これは必要なものですね」と理解し、一緒になって取り組む。
そうなれば、制度はうまく機能します。
制度構築は、人が育ったあとに行うべきものなのです。
中堅社員から幹部へと育成していくプロセスや、幹部候補を育てる環境づくりについて知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。
中堅社員を幹部へと育成する方法とは?中小企業においての重要性も確認
幹部候補育成のポイント!社員全員が成長できるヤマチ流の研修と環境づくり
「⼀枚岩」の経営チームをつくる実践型のアプローチとは?「連邦・多⾓化経営実践塾」をご紹介
理論や座学ももちろん大切ですが、それだけでは次世代経営者は育ちません。
真に頼れる、任せられる幹部を育て、一枚岩の経営チームを作るには、共通の課題に取り組む「経験の共有」が不可欠です。
同じ課題に向き合い、同じ問いを考え、同じ時間を過ごすことで、相互理解が深まり、目線が揃っていきます。
しかし、普段の業務の中では、お互いに忙しく、こうした時間を確保することは難しいものです。
「幹部の育成が大事だとわかっているけれど、忙しくてできていない」
これは多くの経営者に共通する現実です。
だからこそ、意図的に「経営者と幹部候補が同じ場と時間を共有する機会」を作ることが重要になります。
ヤマチの「連邦・多角化経営実践塾」の特徴
ヤマチユナイテッドが提供する「連邦・多角化経営実践塾」は、こうした課題を解決するための実践型プログラムです。
経営者と次世代経営者候補がともに参加
連邦・多角化経営実践塾の最大の特徴は、経営者だけでなく、幹部候補も必ず一緒に参加するという点です。
経営者だけが参加する研修、幹部だけが参加する研修は数多く存在します。
しかし、経営者と幹部が一緒になって学ぶ研修は、実はそれほど多くありません。
なぜなら、経営者と幹部陣の時間を同時に確保することは、非常にハードルが高いからです。
特にプレイングマネージャーとして現場で活躍している幹部を2日間業務から離すことは、一見すると機会損失にもつながるように見えるでしょう。
しかし、だからこそ価値があるのです。
そのコストと時間をあえて投資する覚悟を持つことが、組織が次のステージへ進むための第一歩となります。
同じ時間、同じ場所で、同じ問い、同じ課題に向き合う
連邦・多角化経営実践塾では、参加者全員が同じ時間、同じ場所で、同じ話を聞きます。
そして、同じ課題に向き合い、ディスカッションを重ねます。
プログラムの実施形態は、移動を含めた丸2日間の合宿形式です。
全6回を約10カ月間、2カ月に1回のペースで実施します。
札幌での開催となるため、「その場に来ている」という物理的に会社から切り離された環境が、集中と対話の質を高めています。
プログラム内容
- 講義によるインプット
- ワークショップ形式の対話・ディスカッション
- 宿題の提出と発表
- 自社の経営課題を改善する計画の作成
毎回、宿題が出され、それを会社で経営者と幹部陣で話し合いながら、自社の改善計画を作っていきます。
そして、次回の実践塾でその進捗を発表するという強制力が、確実に実行を促します。
「意思統一」や「信頼関係」が自然に育つ
同じインプットをした上で、それをもとに同じ課題について自社の今後を考え、一緒にアウトプットする。
この繰り返しによってこれまで距離のあった経営者と幹部の相互理解が一気に深まり、幹部が経営者目線に引き上げられていきます。
経営者が幹部のレベルに降りてくるのではなく、幹部が経営者の視座に上がってくるのです。
「経営者視点を持て」と指示するだけでは、経営視点は育ちません。
一緒に会社の経営課題について悩み、議論し、答えを出していくプロセスを共有することで、自然と経営者視点が身についていくのです。
参加者の声:「目線が揃い、幹部が本当に成長した」
実際に連邦・多角化経営実践塾に参加した経営者の方から寄せられた感想をご紹介します。
「幹部たちと同じ時間を過ごし、宿題に取り組むために毎週のように打ち合わせを重ねたことが最も効果的だった。目線が揃い、相互理解が深まった。幹部たちの意識が明らかに変わり、発言の質も変わった」
「それまでは社長一人で事業全体を見ている状態だったが、実践塾を経て、幹部から『この事業は私たちが見ますので、社長は新規事業に専念してください』と言ってもらえるようになった。本当に助かった」
また、多くの参加者が共通して語るのが、「移動や宿泊を含めた合宿形式で、同じ話を聞き、同じ課題に悩む時間を共有できたことが何よりも良かった」という点です。
日常業務から離れ、経営者と幹部がともに学びに専念できる環境が、価値観共有と信頼関係の深化を加速させているのです。
「連邦多角化経営」にご興味がある方は、こちらもぜひご覧ください。

-安定と成長を同時に叶える経営戦略-「連邦多角化経営とは?」
次世代経営者育成は「制度構築」よりも「人」を育てよう
経営者が「任せられる」ようになるには、まず「任せられる人材」を育てなければなりません。
組織の成長を支えるのは「制度」ではなく「人」です。
どんなに優れた制度や仕組みを導入しても、それを理解・共感して運用する人がいなければ意味がありません。
そして、その人材を育てるために必要なのは、共有された目的意識と共通体験です。
経営者と幹部候補が同じ時間を過ごし、同じ課題に向き合い、一緒に答えを出していく中で、価値観や判断基準を共有する。
こうした長期的なプロセスを経て初めて、真に頼れる「一枚岩の経営チーム」が生まれます。
制度構築に走る前に、まずは「人を育てる」ことに時間とコストを投じる姿勢が求められます。
その覚悟を持つことが、次世代経営者育成の第一歩となるのです。
制度も人もどちらも大切ですが、「制度の前に人」という順序を意識することで、組織はより持続的に成長していきます。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。

