これからの社長に求められるのは、支援者の役割
組織運営ノウハウ

こんにちは、山地です。
経営者の中で「自分はワンマン経営ではない」と言い切れる方はいるでしょうか?
中小企業の場合、もしかしたら意外に少ないのではないでしょうか。
確かに、トップダウンの経営は効率的かつスピーディーです。
けれども私は、数人で運営している会社や創業時ならともかく、社員が20名以上になったら、組織による経営をするべきだと考えています。
カリスマ社長頼みの経営では、遅かれ早かれ会社はダメになってしまうでしょう。
そうであるなら、経営者の役目とはどういうものなのか。
今回は、リーダーシップについて考えてみました。
目次
1.社長に必要なのは支援者のスタンス
私が目指しているのは、トップが指示して、部下に思い通りのパフォーマンスを出してもらうトップダウン経営ではなく、幹部中心にいろいろ相談して運営していく経営です。
自律型社員を育成する経営でもあります。
この場合、社長に必要なのは支援者のスタンスです。
20年ほど前にそれに気づいてそれ以来、私は経営がとっても楽になりました。
最近、読んだ本『リーダーシップ3.0―カリスマから支援者へ』(小杉俊哉、祥伝社新書)でも、新しい経営者像が紹介されています。
2.メンバーの支援を重視する「リーダーシップ3.0」
本書の中では、リーダーシップを3つの段階で説明しています。
旧来の中央集権型の「リーダーシップ1.0」、
スティーブ・ジョブズのような変革型の「リーダーシップ2.0」、
そして現在、必要とされているのは支援型の「リーダーシップ3.0」だと述べているのです。
従来のリーダーは、一般的に決断力があって、メンバーを1人でぐいぐい引っ張っていく強さが必要と考えられてきました。
しかし、「リーダーシップ3.0」では、リーダーがチームのメンバーを支援することを重視するのだそう。さまざまな能力や可能性を持ったメンバーが、十分に力を発揮できる環境を整えることで、チーム全体の能力を上げていく。それがリーダーの大切な役割だというのです。
「リーダーシップ3.0」の例として、元サッカー日本女子代表監督の佐々木則夫氏や、スターバックスコーヒー、ザ・リッツ・カールトンなどの企業が挙げられています。
なかでもブラジルの「セムコ」という企業は、究極の「リーダーシップ3.0」を実現しているといいます。
3.人事部も組織図もない、社員を管理しない会社!?
ブラジルの「セムコ」は、多様な業種を扱うコングロマリットで、3000人の社員を抱える大企業。学生が就職したい企業ナンバーワンに輝いたこともある人気企業です。
同社の多角化経営の特徴は、社員をコントロールしないこと。
ノルマやマニュアルもなければ、組織図、人事部さえない。社員を管理する仕組みが全くなく、社員の自主性に任されています。
経営者は「人の行動を監視することは、窃盗よりも危険な行為」とまで言っているのです。
例えば、出張旅費の精算も「いくらまで」という明確なルールがあるわけではなく、社員の自主性に任せる。管理部門を置くコストがもったいない、というわけです。
性善説にもとづいた経営は、不正が起きないか心配になりますが、社員同士が数字を自主管理すると同時に、お互いを牽制しているので、意外とそうした問題は起きないとのこと。むしろ社員のモチベーションを上げることに成功しています。
セムコ社ほどではありませんが、当社がこれまで実践してきた「丸投げ経営」も、社員一人ひとりが主体性をもって利益を出すために知恵を絞り、それを社長である私が下支えするという意味では「リーダーシップ3.0」の一種といえます。
社長は社員やメンバーをコントロールしようとせず、支援に徹する。これからの新しい経営スタイルとして定着していくような気がしています。
4.まとめ
経営者に求められるのは支援者のスタンスだと気づいてから、私はとても気持ちが楽になりました。
中小企業の組織づくりのお手伝いができれば、と「連邦・多角化経営実践塾」を始めたのも、そうした私自身の経験があったからです。
経営者はぐいぐいと引っ張る先導者でなくてもいい。後ろから支えにまわる支援者であればいい。まずは意識をそう変えてみてください。
ヒントを簡単にひとつだけいうと「なんでも自分一人で決めないで、周囲に相談し巻き込んでみる」こと。それだけで組織に変化が生まれていくでしょう。
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Authorこの記事の著者

ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員620名、50事業・年商160億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。