若手社員に自主性を持たせる教育プログラム事例「業績共有ワーク」とは

採用・育成

山﨑 舞
山﨑 舞

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの山崎です。

経営者および幹部陣のみなさんのほとんどは常に業績に目を配り、その数字を次なる戦略を立てるための指針として活用していることだと思います。

そんな経営層の方々から見ると、若手社員は「どうも業績に興味を持っていないようだ」「数字に関心がない」と言われがち。

「会社に貢献する気がないのだろうか」「いつまでもお客様気分で困る」といった声も聞こえてくることがありますね。

今回は、若手社員に自主性を持たせる教育プログラム「業績共有ワーク」についてご紹介します。

もしみなさんが困り事を抱えているのなら、ぜひ今回のコラムを読んで「業績・数字に興味がない若手社員」を「業績に貢献する若手社員」に変える方法を実践してみてください!

目次

  1. 業績に貢献する若手社員の教育に必要なものとは?
  2. 若手社員の教育プログラム事例「業績共有ワーク」とは?
  3. 若手社員の教育事例!新入社員がプレゼンした「業績共有ワーク」発表資料
  4. 「業績共有ワーク」で若手社員とベテラン社員の距離が縮まる
  5. 「業績共有ワーク」の事例や進め方を知り、若手社員に経営感覚の下地を作ろう

業績に貢献する若手社員の教育に必要なものとは?

「若手社員が業績に貢献する気がないようだ」という話を聞くと、私は「本当にそうかな?」と思ってしまいます。

中には本当に関心もやる気もない若手社員がいるかもしれませんが、多くのケースでは「十分な情報が与えられていない」ことが原因だと考えているからです。

業績に関する数字を見たことがない、もしくは損益計算書の読み方がわからない...こういった状況では、興味を持てと言われても辛いのではないでしょうか。

「お客様気分」についても同様で、例えば入社1年目では業績インパクトを出すことが難しいし、インパクトが出てくるまでの間に自分がやっていること自体が事業部ないし会社のどの部分に寄与しているかを意識できないことが多いでしょう。

「業績に貢献する若手社員」になってもらうためには、まず数字をオープンにし、損益計算書の読み方をしっかり学ばせることが必須です。

加えて、部署ないし会社がどのようなビジネスモデルで、どのような形で業績を上げているのかを意識させるための教育・指導も必要でしょう。

「企業の血液は利益である」とよくいわれる通り、売上が高くても利益が残らなければ会社は死に至ります。

これを早期に理解させず、数字を見せず、損益計算書の読み方も教えずに会社側が全部担ってやっていると、若手社員はいつまでも「お客様気分」のままかもしれません。

若手社員に業績を意識させる第一歩として、会社側がなすべきことは業績に興味を持たせるための環境づくりです。

そのためには、以下のようなことを実践していく必要があると思います。

業績に関する数字をオープンにする

数字に強い社員を育てるための環境づくりとして、会社の業績に関する数字や情報を公開することは前提として必要です。経費の内訳など、見せたくない部分がある場合はそこは丸めるなど、管理会計で数字をオープンさせることで、その辺は解消できることも多いです。

損益計算書の読み方を教える

若手社員には目先の売上額だけでなく、損益計算書を読み解いてそれぞれの数字の意味や関係性を理解できるようにしてあげてください。

事業部ないし会社のビジネスモデルを理解させる

売上から経費を差し引き、営業利益が出るという「業績が出るまでのプロセス」の計算単位を細分化し、問題の所在を明らかにする思考の流れを早期から刷り込んでいくための教育・指導が必要です。

これらを実践することで、業績インパクトが出にくい若手社員でも、自分たちが日々行なっていることが大きな業績へを生み出すための足がかりになっていることをしっかり説明してあげましょう。

こうして全体像が理解できるようになると、今任されていること以外にも「もしかしたらここもやってみると数字につながるのでは」「これをやることで会社に貢献できるかも」というロジックが成立するようになります。

会社側が行うべきことは、そういった業績に貢献する行動を若手社員が自分たちで探し出せるような環境づくりなのです。

若手社員の教育プログラム事例「業績共有ワーク」とは?

ヤマチユナイテッドで取り入れている若手社員の教育プログラム「業績共有ワーク」の事例をご紹介します。

「業績共有ワーク」概要と導入の背景

ヤマチユナイテッドでは新入社員向けに「フレッシャーズキャンプ」という独自の研修制度を取り入れています。

月1回、約1年にわたって研修日を設け、理念の共有・浸透はもとより決算書の読み方やビジネスモデル分析など、将来的に経営者人材として活躍してもらうための実践的な教育を施すという内容です。

この研修で2024年度からレギュラー化しようと考えているプログラムの一つが「業績共有ワーク」。

2021年から試験的に取り入れてきましたが、実際に教育効果が高いとわかって継続的なプログラムとして導入したという流れです。

新入社員それぞれ、自分が所属する事業部の業績の進捗を、他事業部の人たちにいかにわかりやすく伝えるかがこのプログラムの主眼となります。

当グループでは「THE 100VISION」と銘打って、100の事業を成功させるために100人の経営者人材を育て、100年続く企業になるという目標を掲げ、多角化経営に邁進してきました。

フレッシャーズキャンプも「THE 100VISION」を意識しているからこそ、1年目から数字の読み方などを教えているのです。

こういった前段があって、2023年、グループとして「THE 100VISION」を実現するだけの力が付いてきたと実感できるようになったことから、初めて達成期限を「2030年」と決めました。

さらに、「1事業1億円の利益を上げて100億円の高収益企業となろう」という新たな指標も加えて、よりリアルな目標として再設定しています。

そうなると、若手社員の育成を今まで以上にスピーディに進めていかなければなりません。

業績共有ワークを導入したのは、「2030年、THE 100VISION達成」のために業績を我が事として捉えることをより強化して定着させたい、浸透させたいと意図したことが一つ。

もう一つは、多角化すればするほど隣の事業部のビジネスモデルをどの段階で意識するか、他事業部と連携する際のシナジー効果にどう着目するかといったことが会社を大きく飛躍させるために重要なポイントになってくるので、若手社員のうちからそういったところに興味を持ってほしいと考えたからです。

「業績共有ワーク」の進め方

業績共有ワークの初回となる4月には、新入社員にプログラムの概要を伝えた上で「来月までに発表内容を考えてきてね」と宿題を出します。

同時に「『会社に貢献する』という意識を持つこと」、そして「目標を決めてPDCAをきちんと回すこと」が彼らに課されます。

翌月の発表に臨むにあたって、こちらからは特に「レポート何枚にまとめて。配布資料も作って」というような大々的な準備は求めません。

自分の事業部の業績の達成進捗について、例えば「単年度の目標に対してどのような方針で動いているか」「現状では何パーセント達成していてうまくいっているのか、いないのか」などを、先輩社員に教わって来るよう指示します。

発表に盛り込んでもらうものとしては、自分の事業部のビジネスモデル、利益が出るまでの流れ、事業部の達成進捗・分析・対策と新入社員自身の達成進捗・分析・対策です。

発表当日は互いに違う事業部の新入社員同士で2~3人のグループを作ってもらい、各自3~5分の持ち時間で業績進捗を発表し合い、質疑の時間も設けます。

ちなみに、グループメンバーは毎回変更して行います。

発表方法は紙の資料を配布する、パワーポイントを活用して解説する、口頭で説明するなど各人の自由です。

「自分が所属する事業部ではこのようなビジネスモデルで利益が出るのだ」ということを説明。

「売上目標がこれくらい、原価がこれくらいで経費を差し引いて利益率はこのくらいである」「去年の営業利益はここまでだったが今年はさらに上を目指すので、こういった方法で利益を上げようとしている」なども自身の言葉で語ってもらいます。

さらに、業績共有ワークでは「個人レベルではどんなことで業績に貢献できるか」も発表。

新入社員ですから業績インパクトの話に限らず、例えば一般に「雑用」と思われがちな作業に対して「自分がこの仕事をすることによって先輩の手が空いて営業の成果を上げやすくなる」と理解した上で取り組むことも「貢献」に値します。

このあと毎月、業績進捗、事業部の達成進捗・分析・対策、個人の達成進捗・分析・対策を発表していくことになりますが、若手社員が月ごとにどんどん成長していくのが見て取れます。

特に会社への貢献度への意識が高まり、「次はこれに取り組んでみたい」といった言葉が各人から出てくるので、発表を聞いている私たちもわくわくしたり、感動したりするのが楽しみになっています。

若手社員の教育事例!新入社員がプレゼンした「業績共有ワーク」発表資料

それでは、実際に2023年11月の「業績共有ワーク」で発表を行った1年目社員の事例を、彼が用意した資料とともにご紹介しますね。

2023年度に新入社員として入社したAくんは、住宅販売を手がける「ジョンソンホームズ」所属。

新築戸建て事業部に配属され、規格住宅「COZY」というブランドで営業担当として頑張ってくれています。

彼はパワーポイントを使って「業績共有ワーク」の発表に臨みました。

一部を抜粋し、紹介いたします。

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発表資料のデザインもなかなかのもので、うちの若手社員は割と無料(一部有料)のオンラインサービスを利用して見やすく作ってくれる子が多いです。

新入社員・Aくんの発表資料では、表紙、目次ときて、初めに「サービス紹介」(図の3・4ページ目)としてCOZYの特徴について説明しています。

「家はシンプルでいい」という現行のコンセプトのもと、新築戸建て5ブランドの中でどのようなターゲットに向けた商品なのかといったことを説明しました。

次に「契約までの流れ」(図の5・6ページ目)として、住宅がどのように売れるのか、その流れをオープンハウス見学に始まってプランの提案、土地勉強会、住宅ローン事前審査から契約までを提示。

図の7〜9ページはタイトルのみ公開とさせていただきますが、「業績の進捗、分析」「個人の進捗、分析」「来月の目標」と進んでいきます。

「業績の進捗、分析」では、「新築戸建て事業部はこのような目標に対して、達成率はこうでした」という話がありました。

「業績共有ワーク」の発表では単に事実を羅列するだけではなく、現状の結果につながるポイントもきちんと説明してもらいます。

そして「個人の進捗、分析」については、このあたりが新入社員・Aくんの営業デビューの時期だったようで、アポイントを取れた人数とそのきっかけの内訳を発表してくれました。

最後に「来月の目標」は「確実に1棟契約を取る」とし、そのためには他社の商品情報についても勉強すること、アポイント率を「○○%目指す」など具体的な目標数値、具体的な行動を挙げた上で、これらによって会社に貢献していきますと締め、とても良い発表内容だったと思います。

先述の通り入社1年目では業績インパクトを出しにくいですが、先輩を裏から支えるような業務を自分たちがやっていると意識することで貢献意識が芽生えますし、それをやればやるだけ業績が上がるのだから、自分自身も事業部の一員として数字を作っているのだという気持ちにもなりますので、これが主体性に結びついていくと考えています。

また、他事業部の話を聞くにしても、同じ営業部門でもBtoB、BtoCでそれぞれ違う収益構造をしているためとても勉強になりますし、会社への貢献度が数字で出にくい間接部門の若手社員にもやりがいを感じさせるために非常に有効。

繰り返しになりますが、「業績共有ワーク」においてもやはり数字をオープンにしていること、損益計算書の読み方を理解していることが大前提であり、肝心です。

数字の意味がわかっていれば自分の事業部やよその事業部、ひいては会社がどういう状況なのか、点ではなく線で物事を考えられるので戦略意図も見えるようになり、その中で自分がやっていることに対して納得感も深まると思うのです。

教育・育成を担当する側からしても、用意するものはほぼないといって良いので、プログラム運営が非常に楽だというメリットもあるんですよ。

毎回の準備が大変だと続かないので、そういう意味でも「業績共有ワーク」はぜひおすすめしたいです。

「業績共有ワーク」で若手社員とベテラン社員の距離が縮まる

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もし時間を作ることができるのであれば、ベテラン社員も「業績共有ワーク」の発表を見学すると良いと思います。

どの年代の社員も頑張っていますが、先ほどもご紹介したように特に若手社員は数字で貢献度を測りにくいため、日々の努力が見えづらい傾向にあると思います。

「業績共有ワーク」の発表の場では「自分はこんなところで貢献したい」「自分のこういうところを改善したい」と、若手社員が日々何を思い、どう頑張っているのかが本人の気持ちを含めて伝わってくるので、発表を聞いている側としても楽しみですし、勉強になり、感動を覚えることすらあります。

グループ代表の山地 章夫は自らフレッシャーズキャンプの主宰者となり、若手社員の育成には力を入れていますが、特に「業績共有ワーク」の発表は前のめりになって聞いています。

もちろん各事業部の業績は上層部の会議の中で共有されているのですが、「先月こういう発表内容だったけれど、今月こうしてうまくいったのはなぜ?」などと質問する場面もしばしばあって、若手社員にも社長自身の期待感が伝わっているのではないかと思います。

前の項目でご紹介した2023年11月の「業績共有ワーク」では新入社員Aくんの発表のほかにも、良い発表がありました。

イベント事業部の営業スタッフ・Bくんは、最近音響の仕事が増えてきたという話をしていました。

「コロナ禍が落ち着いてきて各種イベントが再開されるようになってきた昨今、音響の知識がつくと営業としてお客様により幅広い提案ができるようになった」とのこと。

「実際に現場を回す音響スタッフにもスムーズに仕事を渡せるようになり、より効率的である」「だから来年度は自分の目標として、営業手法だけでなく現場の音響に注力して学んでいきたい」という内容でした。

私もその場で聞いていましたが、山地と一緒に「ずいぶん考えているのだなぁ」と感動しました。

同時に、研修初期の5月、6月に比べると約半年で発表のクオリティが格段に上がり、聞いている人が知りたいと思うことを的確に捉えて発表できるようになったのだと感心したことを覚えています。

ゆくゆくは業績検討会議で自分たちが発表する立場になっても、上長が知りたいことをきちんと報告できるというように、「業績共有ワーク」で培った経験が非常に役立つことでしょう。

部署異動があった場合にも他事業部の事情がわかっているので対応しやすいし、新規事業を開発する際も他事業部の営業戦略がいろいろと頭に入っているので、効果的なアイデアを挙げてくれるものと期待しています。

経営陣含めベテラン社員は「若手社員が何を考えているかわからない」「何を思って日々仕事をしているのか」と疑問を持っても世代間ギャップで片付けてしまうケースもあるかもしれません。

ですが、「業績共有ワーク」といったそれぞれの思いを聞く場を設け、フィードバックすることによって互いの理解が進み、距離が縮まると実感しています。

社員の自主性を育てたいという方は、以下のコラムもあわせてご確認ください。

社員の自主性を育てるためには計画づくりに参加させよう!《システム経営の3本柱》 第1回:自主計画

「業績共有ワーク」の事例や進め方を知り、若手社員に経営感覚の下地を作ろう

若手社員が業績に興味を持っていないように見えるのであれば、興味を持つだけの十分な情報がそもそも与えられていないケースが多いと感じています。

会社側としては、若手社員に業績・数字に興味を持ってもらうための教育と環境づくりが必須です。

業績に貢献する若手社員の教育として、具体的には「業績に関する数字をオープンにする」「損益計算書の読み方を教える」「事業部ないし会社のビジネスモデルを理解させる」といったことを行う必要があります。

その上で、若手社員の教育プログラムとしてぜひ導入していただきたいのが「業績共有ワーク」。

自分の所属する事業部のビジネスモデルと毎月の業績を、事業部ごと、個人ごとの達成進捗・分析・対策と併せて発表してもらうという内容です。

入社1年目では業績インパクトを出しにくいですが、先輩を裏から支えるような業務を自分たちがやっていると意識することで貢献意識が芽生えますし、それをやればやるだけ業績が上がるのだから自分自身も事業部の一員として数字を作っているのだという気持ちにもなりますので、これが主体性に結びついていくと考えています。

また、ほかの若手社員の発表を聞くことによって他事業部の収益構造も理解できるようになりますから、将来的に異動があったり、新規事業開発を手がけることになったりしたときにも非常に役立つ経験がこの「業績共有ワーク」を通じて培われることになるでしょう。

ベテラン社員にとっても、発表を聞くと勉強になったり、感動したりと、メリットがたくさんあります。

「若手社員が何を考えているかわからない」「何を思って日々仕事をしているのか」と疑問を持っても世代間ギャップで片付けてしまうケースもあるかもしれません。

ですが、「業績共有ワーク」といった彼らの思いを聞く場を設け、フィードバックすることによって互いの理解が進み、距離が縮まると実感しています。

この「業績共有ワーク」を含めたヤマチユナイテッド独自の研修「フレッシャーズキャンプ」は全国の中小・中堅企業の経営者のみなさんからお問い合わせをいただくことも多く、当グループが主宰する「連邦・多角化経営実践塾」や各種セミナーで実践ノウハウをお伝えしています。

今後の予定としては、数社合同・短期集中型の研修プログラム「成長合宿」で実際に「フレッシャーズキャンプ」の内容を体験していただく機会を設けているので、ホームページからスケジュールをご確認いただければ幸いです。

また、多角化経営に特化した会員制研究会「PEAKS」では「フレッシャーズキャンプ」の見学会を実施する予定があります。

幹部陣一体となってシステム経営全般を学びたい企業様においては「連邦・多角化経営実践塾」へのご参加もご検討ください。

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