報告しない部下へのルール作りとは?報連相を過不足なく実行できる業務報告の仕組み
採用・育成
こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
部下がどのように日々の業務を進めているか、上司としてはしっかり把握し、状況によっては新たな指示を出す必要があります。
いわゆる「報・連・相」は基本中の基本ですが、案外しっかりできていないケースは多いもの。
「報告がなかなか上がってこない」「共有すべき情報があるのに連絡がない」「上司の判断が必要な場面でも相談しない」など、部下に対して不満を抱えているという声をしばしば耳にします。
今回のコラムでは、報告しない部下に「報・連・相」を徹底させるためのルール作りや、業務報告制度を立ち上げるときに押さえるべきポイントなどを紹介していきたいと思います。
目次
- 業務報告の意義とは?
- 報告しない部下はなぜ「報・連・相」が徹底されないのか?
- 報告しない部下のために業務報告制度を立ち上げるときのポイント
- 報告しない部下に「報・連・相」を徹底させるためには?
- 報告しない部下に報連相を徹底させるには、ルールを明確化しよう
業務報告の意義とは?
「業務報告」とは、すなわち仕事を進める上での「報・連・相」だといえます。
正しい情報が過不足なく、しかるべきタイミングでしかるべき人に伝わるようになっていることが前提です。
このコラムを読んでいる方の中には「上司」の立場の方が多いかもしれませんが、さらに上の上司へ報告する機会もあるでしょう。
そういう意味では、業務の報告を「する側」「される側」の両側から考えていく必要があります。
社員数人で構成されている会社で、毎日顔を合わせ、詳しい内容を話さなくても話が通じ合える関係性であれば良いですが、これが10人20人と人数が増え、立場によって階層が分かれるような組織になっていくと、報告の仕組みやルールの確立は不可欠です。
会社の規模が大きくなるに従って権限委譲をしていかなければならず、仕事を任せるにあたっては報告がセットでないと任せることができません。
業績にしろ利益にしろ最終的な責任はトップにありますが、権限委譲することはトップの仕事を次の階層へ下ろしていって任せるということです。
そのため「権限委譲を受ける」=「報告する責任を課される」と考えていただきたい。
新入社員が習うような基本ですが「報告までして初めて仕事が完了する」のです。
ヤマチユナイテッドでは、社員が自主的に経営に参加する「システム経営」の手法を取り入れており、権限委譲できる範囲を広げていくことを社員教育の主軸としています。
権限移譲の条件
権限移譲の条件は、以下の3つです。
- 「任せられるだけの能力がある(任せる側と任せられる側の能力が近い)」
- 「任せる側と任せられる側の意思が同じである」
- 「必ず報告があること」
任せる側としても任せっぱなしではいられませんし、任せた仕事に対する責任は結局自分のところへ戻ってきます。
そのため「報告がないと怖くて任せられないよね」となるのです。
三面等価の原則
組織経営においての「三面等価の原則」では、「権限」「責任」「義務」がどれも等しく重要で何一つ欠けてはいけないとしています。
権限
「権限」は「やって良い」という権利。
例えば、会社の電話を使うにしても「仕事を進めるために好きに使っていいですよ」という権利を与えられているのです。
責任
「責任」は遂行責任で、やって良いという「権限」の範囲内で任せられた仕事を完遂することが求められます。
義務
「義務」は報告の義務のこと。
任せられた仕事をやり切ったらそれで終わりではなく、報告することによって元へ返す必要があるということです。
権限委譲の条件や三面等価の原則からも、業務報告が非常に重要なものであることをおわかりいただけたでしょうか。
報告しない部下はなぜ「報・連・相」が徹底されないのか?
報告しない部下はなぜ「報・連・相」が徹底されていないのでしょうか?
理由はさまざま考えられるものの、基本的にはコミュニケーションロスが大きな部分を占めていると思います。
そもそも報告を軽視する社風であることが問題ですが、多くのケースにおいては「正しく適切な報告が行われるような環境づくりがなされていない」ことが推測されます。
正しい情報が適切なタイミングでしかるべき人に伝わらないとなると、行動にロスが生まれ、判断ミスにもつながります。
また、部下から報告がないと任せた仕事がどうなっているのか上司にはわかりません。
「やってもやらなくても同じ」というルーズな環境は、組織として良い状態とはいえませんね。
さらに、職場のコミュニケーション不足は突発的で大きなクレームを招く原因にもなり得ます。
これによって利益にロスが発生する場合もありますから、報告は軽視できないのです。
また、上司の側に改善すべき点があるケースも考えられます。
報告は部下への教育の場でもありますから、上司がフィードバックすることによって最高のOJTとしても機能するはず。
ただ報告書を見ているかどうかもわからないような態度を取っていては「どうせ見ていないから適当でいいや」と、おざなりな内容になっていくのも無理はありません。
報告しない部下のために業務報告制度を立ち上げるときのポイント
正しい内容かつ適切なタイミングで、しかるべき人に伝わる業務報告を求めるのであれば、先述のように仕組みやルールを作ることが必須です。
そのためにまず必要なのが組織図です。
指示命令系統を明確にしつつ、どの仕事、どの案件がどの責任者に属しているかが一覧できるよう名前入りで作ると良いですね。
具体的には、一旦すべての報告業務をトップに集約し、その中から「これは一つ下の階層へ任せて良い」「これは現場レベルで知っていればいいから、経営者まで上げる必要はない」「これは要約して週1回伝えてほしい」などと仕分けをしていきましょう。
もちろん、質の高い経営判断のためには業務報告を全部確認できるのがベストですが、組織の規模が大きくなればなるほど難しくなりますから、情報をそぎ落としたり要約したりする作業が必要になるのです。
手法やフォーマットは組織の人数や階層によって適したやり方が異なると思いますので、自社ではどうするのが良いか決めていってください。
普段の業務報告としては、日報・週報・月報など、場合によっては年間報告という形で上げてもらうと良いと思います。
稟議書、決裁書といったものについては決裁までの手続きがどのようなルートで上がっていくか、最終的に誰が決裁するのかといったことも整理して明示しましょう。
これによって報告するべき相手やタイミングがより明確になります。
このほか事故やクレーム、事業の撤退報告などに関わる重要事項報告書は知見として蓄積されるので、再発防止の観点からも必ず備えていただきたいです。
これらの業務報告制度を立ち上げるのにもっとも重要なのは「トップや経営幹部が何を知りたいか」を考えるところから始めること。
「何を」「どういうタイミングで」「どんな内容を」ということをしっかり検討して制度に落とし込んでいくことが質の高い報告を受けるための一番のポイントです。
「当事者意識がない部下をゼロに!社員の当事者意識を上げるポイント」もあわせてご確認ください。
報告しない部下に「報・連・相」を徹底させるためには?
報告しない部下に「報・連・相」を徹底させるためにはどんなことが必要でしょうか?
「報・連・相」を徹底させるためには、ルール化することが一番です。
明確に「会社のルール」としないと、「やっている人」と「やっていない人」の差が必ず出てきます。
「やっていない人」が許される環境をなくすためには、やはりルール化するしかありません。
ルール化に際し、報告書提出の頻度は「週1回、毎週金曜5時まで」などと決めておけば良いのですが、報告の質に関しては個人差が出やすい部分でもあります。
「どんな情報を」「どんな内容で」といったこともあらかじめ明確にしておきましょう。
さらに上司からのフィードバックで「ここはこのように書いてほしい」ということをちゃんと伝えて、個人差をなくしていくと良いですね。
そういう意味でも、上層部の教育を同時に進めていくべき。
報告を受ける上司がルールを活用しないと、部下の報告の質が低下する原因にもつながります。
また、部下の「報・連・相」からどのような情報を読み取るかも重要なポイント。
例えば、普段から問題意識を持って報告書を読んでいれば「これは緊急度合いが高い」「これは重要視しなければいけない部分だ」と気が付くことができるのです。
何のための「報・連・相」かというと、業務効率を上げるため、業務改善のためなどといろいろありますが、最終的には業績を上げることが目的です。
まずは「報・連・相」の重要性をきちんと認識し、それを活用するための感覚を養うといったことが上位者に求められます。
クレームが発生した場合の報連相
クレームが発生した場合の早期解決体制も整えておいていただきたいですね。
内容に応じてどの部門、どの会議で扱うのかを事前に決めておきましょう。
悪い報告ほど早く対応しないといけませんから、「どこへ報告を上げよう」と迷っている時間がもったいない。
まずは上司、それからその上、場合によってはトップまで上げる体制を緊急度合いに応じて整えておいて、即時対応できるようにしてください。
特にクレームに関しては、社内に報告しづらい空気が漂っていると傷口を広げる可能性もあります。
また、社内の不正を正すための社内通報、内部告発といったこともしやすい環境でないと健全だとはいえないでしょう。
そのためルールの一つとして、報告の有無によって信賞必罰があることも示しておく。
クレームにつながるようなことがあったとして、上司に報告なしに1人で対応しているうちに問題が大きくなってしまうというのが最悪のパターンです。
最終的にクレームに発展し、補償が発生するようなことになったとしても、「報告があれば個人の責任は問わず、会社が対応しますよ」と取り決め、逆に「報告なしで勝手なことをしたら故意に被害を大きくしたことになってしまう」ことを社内に周知してください。
もちろん良い報告を上げてくれる社員には良い評価がつくことも必ず知らせておきましょう。
報告しない部下に報連相を徹底させるには、ルールを明確化しよう
「業務報告」=仕事を進める上での「報・連・相」は、正しい情報が過不足なく、しかるべきタイミングでしかるべき人に伝わるようになっていることが前提です。
「報・連・相」が徹底されていないと経営者の方が感じているのであれば、コミュニケーションロスが問題となっている可能性が高いです。
コミュニケーションロスによって、無駄な手間や判断ミス、ひいては突発的に大きなクレームが発生するなど、経営上のダメージを受けるケースも考えられます。
また、「報・連・相」が徹底されていないのは、報告を受ける上司の側が業務報告をしっかり活用しようとする姿勢を見せていないことも一因となっているかもしれません。
正しい内容かつ適切なタイミングでしかるべき人に伝わる業務報告を求めるのであれば、仕組みやルールを作ることが必須です。
組織図を作って指示命令系統と責任の所在を明確にし、一旦トップに集約した業務報告を内容に応じて次の階層に下ろしていくといったやり方で仕分け(整理)していくと良いと思います。
普段の業務としては報告日報、週報、月報、場合によっては年間報告。
稟議書、決裁書といったものについては決裁までの手続きを示し、報告するべき相手やタイミングをわかりやすくしましょう。
このほか事故やクレーム、事業の撤退報告などに関わる重要事項報告書は知見として蓄積されるので、再発防止の観点からも必ず備えていただきたいです。
クレームや事故が発生した場合の早期解決体制の整備や、「報告しやすい=コミュニケーションが取りやすい環境づくり」を進めましょう。
報告の有無による信賞必罰もしっかりルールに組み込んでいくと「報・連・相」の徹底につながっていくはずです。
ヤマチユナイテッドが採用している社員全員参加型の経営手法「システム経営」では、権限委譲を社員教育のメインテーマとしている以上、「報・連・相」もしっかり徹底させるためにあらゆる工夫をしています。
これから会社を大きくしていきたい、多角化していきたいと考える経営者の方こそ、組織人として基本のキである「報・連・相」の重要性をいま一度見直してみませんか。
さらに、詳しい仕組みづくりや皆さんの経営に役立つ実践的なアイデアに興味のある方は、当グループが主催する「連邦・多角化経営実践塾」や、自主業績管理システムの実践導入講座「KATAKA(カタカ)」ほか、各種セミナーやイベントなどもぜひチェックしてみてください。
SHARE! この記事を共有する
Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
br>
「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。