エニアグラムとは?ビジネスで活用するための3つのポイント

理念・社風

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、石崎です。

企業経営者の方々なら「エニアグラム」という性格論、もしくは性格診断法について聞いたことがある方も多いでしょう。

当社では十数年前に専門家を招いてエニアグラムの研修を受けたのが最初ですが、近年改めてそのメリットを見直し、今では私自身が講師となって全社員に対してワークショップを実施しています。

「エニアグラムって言葉は聞いたことがあるけれど、どういったものかわからない」「まったく知らない」という方もいるかもしれません。

そのような方はもちろん、ある程度ご存知の方にも、エニアグラムとはどのようなものか、エニアグラムをビジネスシーンへどのように取り入れると効果的であるか、この機会に知っていただきたいと思います。

目次

  1. エニアグラムとは?

  2. エニアグラムの9つの性格タイプ

  3. エニアグラムをビジネス活用するための3つのポイント

  4. エニアグラムとワークショップで理解度を深めよう!

エニアグラムとは?

エニアグラムとは、ギリシャ語の「9(エネア)」を語源とし、「人間の性格は9つのタイプに分類され、そのいずれかに属する」という考えです。

もともとの歴史は古く、口伝で受け継がれてきたためはっきりした記録はありませんが、紀元前のギリシャでは戦場で活用されたともいわれています。

近年になって、新しい人間学、心理学として世界各国に広がり、学問的な体系付けができてくると、アメリカのスタンフォード大学がエニアグラムの研究を始め、同大で教鞭をとっていた鈴木秀子さんが1980年代に日本へ紹介しました。

その後は国内でも研究が進んで枝分かれし、現在のビジネスシーンにおいては、企業のリーダーシップ研修などにも応用されるようになりました。

当社では木村孝氏(株式会社ヒューマックス)のプログラムに基づいて経営に活用しています。

エニアグラムで知る自分の「根源的価値観」と他者との違い

エニアグラムでは「根源的価値観」を見ていきます。

人にはそれぞれ持って生まれた気質があり、成長するとともに人格が形成され、さらに社会的役割や体面を意識するようになるといわゆる「外面(そとづら)」をまとうようになります。

この過程はよく卵に例えられ、「黄身=気質、白身=人格、殻=外面」と考えるとイメージしやすいでしょう。

まずはこの「黄身」の部分=自らの本来持っている気質を理解し、「自分はこんな価値観でこういうことを大切にする人間なんだ」と自覚すること。

次にほかのタイプを知ることによって「自分とは違う価値観の人がこんなにいるんだ」と認めること。

そしてその違いを受け入れて「白身」の部分を広げる、つまり他者への許容範囲を広げること。

このプロセスを経ていけば、コミュニケーションがスムーズになります。

そういうふうに活用しましょうというのがエニアグラムのスタンスなのです。

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エニアグラムの9つの性格タイプ

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エニアグラムの性格診断は「チェックシート」で行うのが一般的です。

1タイプ10項目×9タイプ分=90項目の中から自分の行動や思考に当てはまると思うものにチェックを入れ、もっともその数が多かったタイプが診断結果ということになります。

前項で書いたように生まれ持った気質を知るためのテストなので、社会人になる前の学生時代や子供の頃に戻ったつもりで受けてもらうのが適切です。

複数タイプが同数になる場合はそれぞれの気質があると考えてよく、無理にどれかに決めないといけないということではありません。

ただ、うちの社内でワークショップを行う際はさらに各タイプを説明する文章を読んでもらい、どちらかというとこっちかな、と「仮止め」してもらうようにしています。


それでは、各タイプの特徴と課題についてご紹介しましょう。

タイプ1:完全主義者(完全でありたい人)

特徴/完璧主義で真面目。理想を高く持ち、正しさ、倫理観、努力に重きを置く。

課題/融通がきかず、人の欠点に目がいきやすい。

タイプ2:献身家(人の助けになりたい人)

特徴/思いやりがある人情家。人を気遣い、気持ちがつながると力を発揮する。

課題/一人になるのが苦手。尽くして感謝されないと落ち込む。

タイプ3:達成者(成功を追い求める人)

特徴/自分なりのビジョンをもったチャレンジャー。目標を定めたらひたすら邁進する。

課題/人恋しい半面、他人を道具のように扱い、落ちこぼれを無視する。

タイプ4:個人主義者(特別な存在であろうとする人)

特徴/ロマンチストで芸術家肌。自分らしさを表に出さず、変わり者と見られる。

課題/好き嫌いが激しく臆病なところがある。接し方が難しい。

タイプ5:観察者(知識を得て観察する人)

特徴/知性的で分析が得意。冷静かつ客観的で俯瞰で物事を見る。

課題/冷めていて引いて見ていることがある。

タイプ6:堅実家(安全を求めて慎重に行動する人)

特徴/リスクを避けて慎重に行動する。組織・和・平等を重んじる。

課題/阻害要因から考え始め、思い切った行動に出ない。信頼できないと殻を作る。

タイプ7:楽天家(楽しみを求めて画する人)

特徴/前向きで好奇心旺盛、お祭り好き。人生は明るく楽しいものと考えている。

課題/思いつきで行動・発言する上、熱しやすく冷めやすい。

タイプ8:統率者(強さを求めて自己主張する人)

特徴/負けず嫌いの親分肌。白黒はっきりさせたい性分で突破力がある。

課題/意外と孤独で寂しがりや。無理して自分を大きく見せる。

タイプ9:調停者(調停と平和を願う人)

特徴/感情を表に出さず、のん気で穏やか。調和を重んじる。

課題/優柔不断で尻に火がつくまで動かない。期待しすぎると重荷に。

エニアグラムのタイプからどんなことがわかる?

ざっくりご紹介しましたが、他にも簡易的なチェックができるウェブサイトもあるので、もし自分がどのタイプかわかっていたらほかのタイプと見比べてみてください。

「こういう感覚って自分にはないな」と思う部分がきっとあるでしょうし、そもそも重視するもの、望むものが違っているので、同じ物事に対しても感じ方が違うだろうということも想像がつくのではないでしょうか。


例えばワークショップで「時間についてどう思いますか」と質問すると、タイプによってバラバラの答えが返ってきます。

  • タイプ1(完全主義者):追われている感覚があり、きちんとしたい
  • タイプ2(献身家):守らないと信頼を失う
  • タイプ3(達成者):効率よく同時にいろいろやりたい
  • タイプ4(個人主義者):物思いにふける
  • タイプ5(観察者):無駄に過ごすのはイヤ
  • タイプ6(堅実家):決めたことは厳守する
  • タイプ7(楽天家):ゆっくり流れる
  • タイプ8(統率者):自分で決めたらやる
  • タイプ9(調停者):気にしない


私はタイプ7(楽天家)なので時間は「ゆっくり流れる」と感じることに同意できます。

ですが、例えば3分遅刻して「これくらいはいいだろう」と思っても、タイプ6(堅実家)からすれば「時間は守るもの」だから許せない。

一緒に仕事をしていれば、そのことに気が付かないままでいるのと、理解した上で一言「ごめん」と言えるのとでは人間関係やコミュニケーションに差が出てきますよね。

こういうところがエニアグラムの"妙"だと思うのです。

また、どのタイプがよくてどのタイプがダメという優劣をつけないのもエニアグラムのいいところです。

この中で「リーダーに多いのは、タイプ3(達成者)やタイプ8(統率者)かな?」という傾向はありますが、「リーダーに向いているのは?」と聞かれればどのタイプでも当てはまるのです。

ですから各タイプで「課題」としている点は短所や欠点ではなく、しいて言うなら「弱い部分」とか「弱点」ということになります。

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エニアグラムをビジネス活用するための3つのポイント

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それでは、ビジネスシーンでエニアグラムを活用する際のポイントを押さえていきましょう。

自己の価値観を知り、課題を克服する

社会人になると自らの役割や責任を意識するので、気質が表に出にくくなることも多いです。

とはいえ各タイプそれぞれ本能的に生来の価値観を持っているため、それに沿った判断をとりたくなる傾向はあるもの。

タイプ7(楽天家)の私自身、その場の思いつきで行動したり口にしたりしてしまうことがありますが、それがタイプ7の課題だと自覚していれば一旦立ち止まって考えることもできるのです。

「新規事業をやろう!」なんて場面では、お祭り好きの気質から「おおーっ!」と賛同したい方なのですが...。管理系の役職でもありますし、あえて「ちょっと待ってください。本当に大丈夫ですか?」とか(笑)

良い部分を活かしつつ良くない方向に行きがちな傾向も知っておくと、自分の中でもバランスの取れた働き方ができると思います。

他者の価値観を理解して受容し、チームパフォーマンスを高める

当社の幹部にゴリゴリのタイプ3(達成者)がいるのですが、エニアグラムを学んだことによって価値観が激変したといいます。

このタイプは「目標を定めたら達成に向かって一直線」という気質。

そして彼は周りの人もみんな同様にタイプ3だと思っていたのだそうです。

会議でも問いかけに対してポンポン答えが返ってくるのを期待するのですが、タイプ5(観察者)やタイプ6(堅実家)の人の反応が薄いことに内心イライラしていました。

でもタイプ5やタイプ6の人って実際はすごくよく考えていて、じっくり考え抜いてから発言する気質なので、少し待たないとだめなんです。

それがわかるのとわからないのとでは、先ほどの「時間とは」という話のように、マネジメントを考える上で大きく差が出るんですよね。

違いは「間違い」ではなく「多様性」と捉え、チーム運営の場でこそ他者を理解することは必要です。


タイプによって褒められると嬉しいポイントも違っていて、タイプ2(堅実家)なら「ありがとう、助かったよ」と言われると満たされるし、タイプ3(達成者)なら「目線が高くて達成力があるよね」、タイプ8(統率者)なら「頼りになって心強い」と言えば頑張ってくれる。

それによってチームパフォーマンスが高まるということもあるのです。

タイプを決めつけてしまう「ラベリング」には要注意!

ラベリングとは「レッテル貼り」のこと。

タイプが分かったところまではいいのですが、相手の課題の部分にばかり目が行って「ああ、あんたタイプ◯だもんね」「タイプ◯はこうだからな」...

これではエニアグラムがまったくの逆効果となってしまいます。

自分にレッテルを貼るのも同じ。

「タイプ◯だからこれは無理です」と決めつけるのも間違った使い方です。

ちなみに当社ではほぼ全員がワークショップを受けているのでエニアグラムは社内の共通言語となっています。

嫌味なく「タイプ何番だっけ?」という話ができるので、そういう意味でもコミュニケーションツールの一つとして活用されていると思います。

組織にはいろいろなタイプの人がいてそれぞれが必要だし、互いに補完関係にあるというところが重要なのです。

お互いを尊重し理解し合って、良いところを生かしながらチームワークで仕事を進めていくのが目的だということを忘れてはいけません。

エニアグラムとワークショップで理解度を深めよう!

エニアグラムでもっとも重要なのは自分と他者の違いを知り、多様性を認め合うこと。

今回は概要程度に留めましたが、より深く学んでいくと、他者の良い点を身につけることで自分の気質をより高めることができ、ストレスを受けた時に陥りがちな心理状態にも対処できるようになりますよ。


タイプ診断自体はウェブサイトや書籍などで簡易的にできるとはいえ、エニアグラムをビジネスシーンで最大限に活用するためには、やはりワークショップの効果が絶大です。

タイプ別にグループを作り、さまざまなワークを通じて体感し、体験して解説も聞くとなると4〜5時間かかるのですが、納得度が違ってきます。

私はエニアグラムはコミュニケーションツールの一つと捉えています。

そういう意味ではリーダー・マネージャークラスに留まらず、一般社員から経営者クラスまで、組織の各層がエニアグラムを理解することで得られるメリットは非常に大きいと思うのです。

ですので、もし身近にそういったイベントがあれば、ぜひ一度参加されることをおすすめします。


私自身、講師としてワークショップを開催するノウハウは持っていて、経営実践塾でエニアグラムの話をすることはありますが、なかなかそこまでの時間を割けません。

もしニーズがあれば当社でも機会を持ちたいと思っていますので、よかったらご意見・ご要望をお寄せください。

ヤマチユナイテッドでは、会社の成長に関するノウハウや効果的な会議の導入方法など、ワークショップやセミナーなどのイベントを随時開催しています。
ぜひ、参考にしてみてください。

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