トップダウンは本当に古いのか?業績が横ばいの会社に必要な次の一手
組織・給与制度

こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
「トップダウンはもう古い」「時代遅れだ」
そんな声を耳にして、これまでの経営スタイルに不安を感じていませんか?
しかし、本当にトップダウンは古い経営手法なのでしょうか?
今回は、「トップダウン経営は古い」「時代遅れ」といわれる理由から、トップダウン経営・ボトムアップ経営のメリット・デメリットをご紹介します。
また、業績が横ばいの会社が成長を続けるために必要な経営手法について、ヤマチユナイテッドの実体験を交えながら解説します。
「社員にもっと主体的に動いてほしいが、任せるのに不安がある」と思っている経営者の方にとって、次の成長ステージを考えるヒントが見つかるはずです。
目次
- トップダウン経営はもう古い?時代遅れと思われる理由とは
- トップダウン経営・ボトムアップ経営のメリット・デメリットを比較
- 成⾧する組織になるには?ミックス型経営に転換したヤマチの事例を紹介
- トップダウンが古いわけではない!フェーズに応じたミックス型経営への転換が持続的成長の鍵
トップダウン経営はもう古い?時代遅れと思われる理由とは
「トップダウン経営は古い」という話を耳にすることがあるかもしれませんが、トップダウンそのものが悪いわけではありません。
トップダウン経営が有効に働く場面がある?トップダウン経営の限界も確認
会社のフェーズや規模によっては、トップダウンが最適に機能する場面は確実に存在します。
スタートアップでは統制も必要ですし、トップダウンでスピーディに進めることが重要です。
特に起業したての頃は、経営トップの強いリーダーシップが組織を引っ張る原動力となります。
そもそも起業は個人の「やるぞ」という意志からスタートするものですから、初代経営者にとってトップダウン型は自然なスタイルといえるでしょう。
社員数が少ないうちは社長の目も行き届きやすく、スピード感のある判断が競争優位を生み出します。
ただし、企業が成長し、組織が大きくなってくると状況は変わります。
具体的には、企業が以下のようなフェーズに入ったときに、トップダウン経営に限界が訪れる可能性があります。
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社員数の増加により、社長の目が行き届かなくなる
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事業の多角化により、社長一人では全容を把握できなくなる
トップダウンでは意思決定が経営層に集中するため、現場は指示待ちになりやすくなります。
組織規模が社長の管理可能範囲を超えると、統制が取れなくなり、コントロールができなくなってしまうのです。
現代の環境変化がもたらすトップダウン経営の課題
近年では、以下のような現代的要因がトップダウン経営の限界を加速させています。
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市場や技術の変化スピードが速く、現場での迅速な判断が求められる
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働き方改革や価値観の多様化により、画一的な指示が機能しにくい
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主体性を重視する若手人材の増加
このような背景から、「現場からの声」こそが競争力の源泉となりつつあります。
顧客に近い現場で変化を捉え、その場で判断・対応できる体制、つまり「ボトムアップ」が必要となってくるのです。
「任せる=放任」ではない、ボトムアップの本質
ここで注意したいのは、「ボトムアップ=放任」ではないということです。
ボトムアップといいつつ、「任せたから、好きにやってほしい」という放任スタイルでは、組織としての統制が取れず、方向性がバラバラになってしまいます。
ボトムアップ経営とは、現場に裁量や権限を与える一方で、企業としての方向性やルール、評価基準をしっかり共有した上で成り立つものです。
つまり、信頼に基づいた責任ある自律性を育てる必要があり、それを支える仕組みや文化を整えることが欠かせません。
会社の成長フェーズに応じて、トップダウンとボトムアップをバランスよく組み合わせた経営スタイルを確立することが重要です。
トップダウン経営・ボトムアップ経営のメリット・デメリットを比較

トップダウンとボトムアップの経営手法には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
自社の現状と目指す方向性を踏まえ、両者の特徴を正しく理解し、使い分けることが求められます。
トップダウン経営のメリット
トップダウン経営には、組織運営において以下のような強みがあります。
意思決定が速い
トップダウン最大のメリットは、意思決定のスピードです。
トップが決めて指示するため、迷いや議論による時間のロスがありません。
方向性がブレない
一人のリーダーが方針を決めるため、組織全体の方向性がブレることがありません。
トップがビジョンを明確に示すことで、組織に一体感が生まれます。
トップダウン経営のデメリット
一方で、トップダウン経営だけに依存し続けると、次のような課題が生じやすくなります。
社員が受け身になる
トップダウンが続くと社員は指示待ちになり、自ら考える力が弱まり、物事を決められなくなります。
その結果、「自分で考えない組織」になってしまいます。
責任の所在が曖昧になりやすい、他責思考が生まれやすい
「自分は言われた通りにやっただけ」という責任回避が起きやすくなります。
自分の責任ではないと考え、当事者意識が薄れていきます。
いずれ社長の把握力に限界がくる
社長一人の把握力には限界があります。
組織が大きくなると、経営トップが全体を把握できなくなり、一方的な指示・命令だけでは対応するのが難しくなるのです。
ボトムアップ経営のメリット
続いて、ボトムアップ経営についても確認しておきましょう。
ボトムアップ経営の最大の価値は、組織全体の力を引き出せることにあります。
現場力を最大限に生かせる
顧客に最も近い現場の声や気付きを経営に生かすことで、変化への柔軟な対応が可能になります。
能動的な組織風土が育つ
社員が自ら考え、行動する風土が形成されます。
自ら提案・改善する文化が根づき、社員一人ひとりの当事者意識や責任感が高まります。
ボトムアップ経営のデメリット
ボトムアップ経営を効果的に機能させるために、運用上の課題や注意点も確認しましょう。
意思決定に時間がかかる
全員の意見を集約するプロセスに時間がかかり、スピード感を欠く可能性があります。
情報共有が煩雑になりやすい
関わる人数が増えるため、情報を共有すべき相手が増加します。
情報共有や報告体制を整えるための手間と時間がかかるでしょう。
仕組みや制度の構築・整備が必要になる
ボトムアップを適切に機能させるためには、報告・連絡・相談の仕組みを制度化し、情報の流通システムを整備する必要があります。
成長し続ける会社に必要なのは「トップダウン×ボトムアップのミックス型」
トップダウン経営のみでは限界があると同時に、ボトムアップ経営のみでも正常に機能はしません。
成長し続ける組織に必要なのは、方針はトップが決める・具体的な戦術や対応は現場が考えるという、両方の良い面を生かした「トップダウン×ボトムアップのミックス型」の経営です。
このミックス型経営を成功させるためには、上司から部下、部下から上司への情報流通を効率良く行う仕組みが不可欠です。
現場の正確な情報が経営陣に届き、経営方針が現場に確実に伝わる双方向のコミュニケーション体制を構築することが重要になります。
トップダウン経営とボトムアップ経営についてさらに詳しく知りたい方は、「トップダウン経営とボトムアップ経営(社員参加型経営)の違いとは?」もあわせてぜひご覧ください。
成⾧する組織になるには?ミックス型経営に転換したヤマチの事例を紹介
ヤマチユナイテッドも、創業当時はトップダウン経営からのスタートでした。
しかし、組織が大きくなるにつれて限界を感じ、段階的にボトムアップ経営を取り入れていきました。
ヤマチユナイテッドがミックス型経営に転換したきっかけは、事業の多角化です。
卸売業の単一事業から事業を多角化・拡大していく中で、事業、拠点、人が増え、社長一人で全てを把握し指示することが物理的に不可能になったのです。
何かトラブルがあればそちらに駆けつけ、少し収まったと思えば、別の場所で問題が発生する。
全てが後手に回り、対応の順番待ちのような状態では、これ以上の成長は望めません。
そのため、権限委譲を含めたボトムアップ経営の要素を取り入れることが必要になったのです。
ボトムアップを取り入れたミックス経営確立の具体的な流れ
ボトムアップを取り入れたミックス型経営への転換は、一朝一夕にはできません。
実際にヤマチユナイテッドでも取り組んだ、具体的なアプローチの流れをご紹介します。
第1段階:経営情報の公開
ボトムアップ経営の導入は、まず経営情報の公開から始めました。
売上、利益、経費、営業利益などの数字情報を、上位職から順番に段階的に共有していきます。
いきなり情報を見せても理解できなかったり、勘違いが生じたりする可能性があるため、説明や教育をしながら順に情報を開示していくことが重要です。
第2段階:経営計画策定への参加
情報公開の次は、経営計画策定に社員も参加してもらいます。
情報がオープンな状態で一緒に計画を作ることで、当事者意識が育ちます。
このとき、個人面談の実施やモラルサーベイの活用などを通じて、社員が計画作りに参加しやすい環境を整えていくことも必要です。
第3段階:自主計画・自主管理の実践
社員が自分たちで計画を作り、実行し、振り返るサイクルを回す。
この流れ自体が、もうすでにボトムアップ経営の実現につながっているわけです。
自分たちが考えた計画だからこそ、実行に対する責任感と主体性も生まれます。
ミックス型経営を実現するヤマチの戦略は「多角化」と「権限委譲」
ヤマチユナイテッドでは、ミックス型経営を実現するための戦略として、「多角化」と「権限委譲」を両輪で進めています。
これは単なる事業拡大にとどまらず、組織の成長と人材育成を同時に実現する手法でもあります。
事業を多角化し、それぞれの事業責任者のポストを創出。
そこに適切な人材を配置し、権限委譲を進めることで、組織全体の成長につなげています。
同時に、システム経営の仕組みを整えて社員の経営参加度を高めることで、人材育成も並行して行います。
この仕組みの中で社員が育っていくため、事業責任者を継続的に育成でき、さらなる多角化も可能になるという好循環が生まれています。
重要なのは、ただ事業を増やして人を配置するだけでは機能しないということ。
経営システムを構築し、その仕組みの中で社員に考えさせ、実行できる環境を整えることで初めて人材が育つのです。
トップ自身は「自分が考えてしまう」ことを我慢し、社員に権限と機会を与える姿勢が求められます。
これは最初はもどかしく、じれったく感じるものですが、教育的指導期間として辛抱強く任せることが重要です。
ヤマチユナイテッドがシステム経営をいつから、どのように始めたかについては「ヤマチの連邦多角化経営と自主自律型の経営はいつから始まった?」で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
トップダウンが古いわけではない!フェーズに応じたミックス型経営への転換が持続的成長の鍵
トップダウン経営が古いのかといえば、決してそうではありません。
会社のフェーズや規模によっては、トップダウンこそが効率的かつ効果的な経営スタイルである場合も多くあります。
特に創業期や組織が小さい段階では、統制の取れたスピーディな意思決定が競争優位性を生むからです。
しかし、組織が大きくなるとトップダウンだけでは限界が生じます。
そこで必要になるのが、トップダウンとボトムアップを適切にミックスした「ミックス型経営」への転換です。
方針はトップが決め、戦術は現場が考える。
この役割分担を明確にしながら、双方向の仕組みや制度を整えていくのが、持続的成長の鍵となります。
組織の停滞を感じている経営者の方は、現在の経営スタイルが会社のフェーズに適しているかを見直してみてください。
組織の成長段階に応じた経営スタイルを選択することで、新たな成長のステージへと進むことができるでしょう。
変化を恐れず、社員の力を信じて権限移譲を進めていく勇気を持つこと。
それこそが、次の成長フェーズへの扉を開く第一歩になるのです。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
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「連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。

