管理部門とは?多角化経営に必要な役割や業務内容などを紹介

組織・給与制度

石崎 貴秀
石崎 貴秀

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こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。

会社の規模が大きくなっていくにつれ、さまざまな業務を分散させる必要性が生じてきます。

「間接部署」ともいわれる管理部門は地味なイメージがありますよね。

利益に直結する業務を担う営業部門に比べると「利益を生まない」といわれてしまうことも。

ですが、多角化経営は管理部門の存在なしには進めることができません。

今回は改めて管理部門の役割と重要性を解説します。

多角化経営の基礎固めに役立てていただければ幸いです。

目次

  1. 管理部門とは?組織における管理部門の重要性
  2. 中小・中堅企業が管理部門を置くことのメリット・デメリット
  3. 多角化経営に必要な管理部門の役割とは?
  4. ヤマチユナイテッドにおける管理本部の業務内容
  5. 管理部門の役割を知り、経営戦略的に活用しよう

管理部門とは?組織における管理部門の重要性

一般的に、営業部門が「攻め」であるとすると、管理部門は「守り」の役割を担うものといわれています。

営業部門が利益追求を第一目的として動くのに対して、管理部門はその後方支援に当たるというような感覚です。

管理部門の守備範囲はとても広く、会社の規模にもよって異なりますが、主に以下のような役割が求められます。

  • 財務...支払い、資金繰り、バランスシートの最適化、債権管理、銀行対応、投資
  • 経理...会計、帳簿管理、経理関係、決算管理、資産管理
  • 税務...税務処理、調査などがあった場合の税務署対応
  • 人事...採用、教育
  • 労務...評価制度や賃金制度などの運用、残業管理と改善指導
  • 法務...契約行為、内部統制、規程(規定)作成、訴訟対応、リスクマネジメント
  • 情報...情報セキュリティ管理、機器やシステムの提案・導入、サーバー管理 など

これらすべてに「総務」といった一つの部署として対応したり、役割・担当ごとにいくつか分担したり、外注や業務委託することもあるでしょう。

例えば、人事と労務をまとめて一つの部署で兼任したり、あるいは外部の専門家に委託したりということもあると思いますが、会社の規模や組織の構成などを考慮しながら体制を整えていくべきだと思います。

また、業績や売上については以下のコラムでも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

業績と売上の違いとは?社員自身が業績管理を行う方法とポイント《システム経営の3本柱》 第2回:自主管理

組織における管理部門の重要性は?やりがいも確認

管理部門はともすると役所っぽくなりがちで、つまり「ダメなものはダメ」とお堅い対応をする必要がある部門です。

そこにもきちんと経営を考えた上での理由があって、なぜなら営業部門が安心して攻めていけるように存在しているのが管理部門であるから。

新規事業を立ち上げる際には資金繰りをしなければいけないし、法的に問題ないかどうかのチェックが必要な場面も出てくるかもしれません。

また、会社を大きく、多角化していくために人材採用・育成は避けて通れません。

社員が気持ち良く働くための環境づくりも同時に進めるべき。

さらに、コーポレートガバナンスにコンプライアンス、防犯防災まで含めたリスクマネジメントは今の時代非常に重要になっています。

クラウドツールを導入していれば情報システムの整備・管理は欠かせません。

こういったことを考え合わせると、「管理部門はいかに効率良く、生産性高く事業を進めていけるか」という観点において、経営戦略的にかなり重要な役割を担っているといえるのではないでしょうか。

さらにいえば、管理部門は会社経営の根幹にタッチしているということ。

当グループでいう「経営参加」ですね。

どんな事業を始めようと、その根となり幹となるベースの部分を支えるのが管理部門の仕事です。

経営計画のとりまとめなど高度な業務を請け負うケースもありますから、時には全社に影響を及ぼすような改革を先導することも。

そんなダイナミズムを体感することができるのは、管理部門ならではの"やりがい"だとも思うのです。

中小・中堅企業が管理部門を置くことのメリット・デメリット

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管理部門の重要性は理解していただけたと思いますが、中小・中堅企業において部署を一つ新設しようとなるとなかなか簡単ではないですよね。

管理部門を置くメリット、デメリットだけでなく、知っておきたいポイントもご紹介しますので、自社の規模や人員配置、仕事の分担や兼任の度合いを考慮しながら検討していただけたらと思います。

中小・中堅企業が管理部門を置くメリット

利益を生み出す営業部門と比較して、管理部門は「利益を生まない」といわれてきましたが、実は利益を生むことも可能です。

管理部門の働きによって業務を効率化したり、ウォッチ、チェック、牽制、場合によっては指導によって、現場で発生するミスやロス、不正を未然に防ぐことができれば、出さなくても良い損失を回避できる=それが利益となるのです。

こうして統制を取ってくれる部門が社内にあれば、幹部も安心して経営に取り組めるのではないでしょうか。

だいたいミス、ロス、不正が起こるのは、起こした本人に悪意がある場合を除けばすべて会社の責任です。

そう考えると、このような事態を起こした人も、それで不利益を被る会社もどっちも不幸ですよね。

ミス、ロス、不正が発生してから責任者探しをしても仕方ありません。

そもそも会社の責任なので、防ぎたければそのための機能、つまり管理部門を社内に設置しなければならないと、私は考えます。

中小・中堅企業が管理部門を置くデメリット

管理部門にはやはりコストセンター的な性格があることは否めません。

部署を新設すれば当然固定費が発生するので、これをどう捉えるか。

メリットも大きいのですが、検討が必要な部分だと思います。

また、「せっかく部署を設置したのだから」と不要な業務を作り始めて、やらなくても良いことまでやりだす可能性もないとは言い切れません。

本当は暇なのに、それに気づかれたくないがために新しい仕事を無理やり作ってやっているなどということが常態化すると、本当の意味でコストになってしまいます。

管理部門を置く際に知っておきたいポイント

管理部門を置くメリット・デメリットに加えて、もう一つお伝えしておきたいのは、「営業部門の責任者と管理部門の責任者を兼任させるものではない」ということ。

営業責任者は「売りたい」という思いが一番になりますから、「今回はいいかな」と自分たちに都合が良いようにルールを作ったり、解釈を多少変えたりすることがあり得ます。

でももしそのルールが甘かったり、都合良く解釈したことが法的に微妙な部分に触れるとしたら?

こういうことに気が付かず事業を進めてしまうと、大きな事故に発展する可能性もあるのです。

管理部門の責任者を別に配置していれば「ダメなものはダメ」で、「正当な方法をもって事業を進めましょう」と軌道修正してくれるはず。

営業部門と管理部門の責任者を兼任するということは、相反することを1人でやれと言っているのと同じです。

だから営業部門の責任者はそのまま置いておくとして、管理部門のトップは社長が兼任しても良い。

そもそも管理部門とは社長直轄の部門ですから、営業部門にぶら下げてはいけないのです。

多角化経営に必要な管理部門の役割とは?

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多角化経営を目指し、事業を複数展開して権限委譲していくにあたって、管理部門はその役割をどう果たしていくか。

まず、既存の事業に対しては各事業を分析し、問題点や課題を管理部門的な目線から洗いだしていくということが求められます。

売り上げや利益といった生産性の分析はもちろん、賃金は適正かというような人事・労務の分野など、あらゆる観点から分析して見つかった課題を現場に指摘し、改善を促すことが管理部門の重要な役割です。

もちろん一方的に指示・命令できるわけでなく、社内の第三者機関として事業責任者と改善策をすり合わせ、目標を定めて進めていくという関係性ですね。

事業が増えればそれぞれやっていることも違うので、いろいろな種類の問題が起こります。

それに対して、会社の全体感も考慮した上で現場を理解し、現場と連携・協働するのがポイント。

ある程度寄り添うスタンスも必要ですが、相手の言い分を聞きすぎるのでもなく、会社全体、グループ全体という視点で見た場合に「それはおかしなことを言っているよ」とたしなめる立場でなくてはなりません。

また、新規事業に着手する際には今までの管理ノウハウが通じない、その事業に対して何をチェックして管理すべきかのノウハウがないという場合があります。

こういう時に事業部だけで「この事業、面白くて利益も出そうだからやります」と管理部門のチェックなしで進めてしまうと、ミス、ロス、不正が起きやすいのです。

本来なら管理部門と打ち合わせ、すり合わせを行なって、業務フローやお金の扱い、法的な部分の確認などをするのが正しい手順といえます。

ですから新規事業を始める時には、今までに経験のない事業を守っていくために必ず管理部門が一緒に入り、もろもろチェックしながら問題なく運営ができる下地を一緒に作っていくことが必要です。

ヤマチユナイテッドにおける管理本部の業務内容

当グループにおける管理本部は、社長直轄の独立機関であることが特徴です。

うちはグループ経営なので持ち株会社の下に事業会社があり、さらにその下に事業部が複数存在しているという図式。

ヤマチユナイテッドの組織図を図示すると下のようなイメージです。

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<資料:PDF 第6段階グループ横断型組織>

各子会社にはそれぞれに管理部門がありますが、各社管理部門のスタッフの集まりが管理本部になっているわけではなく、情報共有や共通事項の整備などを通じて連携する形。

そういう意味で管理本部は横断型の組織となるのです。

各社の管理部門が自社を優先的に考えるのに対して、グループ全体の最適化を図るという目的のもと、完全に公正中立の立場として各社の管理部門と会議を行なっています。

そして現在、グループ管理本部のトップは私(石崎)が務めています。

具体的な業務としては、総務・経理部門の取りまとめ、グループの経営計画の取りまとめ、それからグループ全体の資金調達、金融機関対応といった財務、新卒採用の担当など。

各社管理部門との会議は管理系の情報収集ルートであり、社内にいくつもあるルートの一つです。

その中に営業系の会議のツリーもありますが、営業系はやはり営業系の情報に偏るので、管理部門の守備範囲である財務や人事、労務、コンプライアンスといったリスクマネジメントに関連する課題は出てきにくいのが実情です。

だからこそ、あえてそれぞれ会議を分けてあるのは、営業系、管理系のそれぞれの情報を取得するルートを確保しているという意味合いも。

先の項目で「営業部門と管理部門とで責任者を分けたほうが良い」というお話をしましたが、情報ルートを分けるということも、バランス良く経営判断をするために、多角化経営を目指す皆さんに意識しておいていただきたいところです。

このほかに私自身は経営企画室的な役割、いわば社長秘書のような動きもしていて、わかりやすくいえば「社長のニーズに答える何でも屋」ですね。

社長をはじめ経営陣の時間効率化のため、あるいは生産性を上げるために立ち回ったり、グループ全体を俯瞰する立場として社長から状況説明を求められたり、新規事業のアイデアについて「どう思う?」と聞かれれば意見を述べたりというようなこともしています。

実はうちが多角化経営を始めた頃、管理本部の前身は私の一人部署でした。

それまではグループ全体の管理本部は存在せず、各社に管理部門があるだけ。

事業が増えるに伴って子会社も増えてきたので、「グループ経営推進本部」としてどこにも属さないバーチャルな機関を作り、「石崎はそこの所属ね」と言われたわけです。

当時の私はハウジングヤマチ(現在のヤマチコーポレーション)の社員のまま、役割としてはグループ経営推進本部の名のもとに全体の統括を行うということをしていました。

そのうちにヤマチマネジメントという会社を作り、その中にグループ管理本部を設置して私はそこへ正式に転籍。

そこでようやく3名体制になり、その後人材採用・育成専門機関としての「HRD(Human Resource Decelopment)」ができ、新しいスタッフも入り...というように人数が増えてきたという経緯があります。

※HRDについて詳しくは「人材開発の役割とは?HRD部門がつくる未来の組織と手法について」をご覧ください。



中小・中堅企業の皆さんがこれから管理部門を設置するかどうか検討するにあたって、自社のことをよくわかっている自社のメンバーで始められればベストですが、初めは営業部門と管理部門を分けて、経理を外注するというところから始めるケースもあるかもしれません。

でも、こうやって徐々に進めていっても良いのです。

管理部門が最終的に目指すのは?やりがいを感じて働くことはできる?

ここまで管理部門は現場と分かれていて「社内の第三者機関だ」「社長直轄の部門だ」「現場で発生するミス・ロス・不正を未然に防ぐ役割牽制だ」などと説明しましたが、目指すところは社員みんなと一緒です。

グループ全体として掲げる目標とビジョンを共有し、事業の達成を願っていることに変わりありません。

世間では、営業系と管理系とで部門間に溝ができてしまう、ひどい場合は敵対しているという声も聞かれますが、目指すところは一緒であり、本来は連携し、協働する関係性であるという感覚を互いに持つことが大切です。

これから管理部門で働く人材を育てていくのであればそういう位置付けの部門であるということを全社に周知し、教育も含めて進めていくことができると、管理部門のスタッフもやりがいを感じて働けるのではないかなと思います。

管理本部の業務に携わり、私が特にやりがいを感じるのは「グループ全体をいかに良くするか」を考えながら、そのための取り組みを自分たちの手で動かしていけるという部分です。

社長をはじめとした経営陣が安心して生産性を高めていくことができる環境づくりと、現場のスタッフがのびのびと仕事ができてかつ間違いが起きない体制づくりを目指す。

その中で、日々改善すべき点やさまざまな問題がたくさん発生するのですが、一つひとつ解消していくことがグループ全体にとってプラスになっていますし、それによる経営的なインパクトはやはり大きく、そこが面白いと思っています。

管理部門の役割を知り、経営戦略的に活用しよう

営業部門が「攻め」であるとすると管理部門は「守り」だといわれており、その守備範囲は一般的に、財務、経理、税務、人事、労務、法務、情報のように、非常に広くなっています。※会社の規模によっても異なります。

管理部門は、営業部門が安心して攻めていくために重要な役割を担っているところもポイント。

資金繰りに人材採用・育成、リスクマネジメントなど、直接利益に結び付かなくても必ずやっておかなければならないことは山ほどあり、これらを管理部門が請け負っているからです。

経営計画のとりまとめといった高度な業務を請け負うケースもあり、時には全社に影響を及ぼすような改革を先導していく...そんなダイナミズムを体感することができるのは、管理部門ならではの"やりがい"といえるでしょう。

中小・中堅企業で管理部門を設置することのメリット・デメリットは以下の通り。

  • メリット:ミス、ロス、不正を防ぎ、経営陣の安心感が増す
  • デメリット:新たな固定費が発生し、不要な業務を創り出す可能性がある

会社によって状況が異なるのでどのような体制にするかはそれぞれで良いのですが、営業部門の責任者と管理部門の責任者を兼任させることはおすすめしません。

多角化経営においては、いくつもの事業を俯瞰して問題点や課題を管理部門の目線から洗いだすことが役割の一つ。

また、新規事業立ち上げにおいて、事業部と一緒に業務フローやお金の扱い、法的な部分に問題がないかといったことを事業部と一緒にチェックし、安心して運営できる下地を作った上で事業を守っていくことが管理部門の重要な役割です。

ヤマチユナイテッドでは各社の管理部門のほかに、私が所属しているヤマチマネジメントのグループ管理本部があり、トップとしてグループ全体の統括を行なっています。

管理部門について説明すると本当はもっと深いのですが、これから管理部門の設置を検討したいという中小・中堅企業の皆さんには、もっと経営戦略的な役割を与えて活用することを考えていただきたいと思います。

一般的には雑務や事務作業など「誰でもできるようなことをやってもらうための部署」という認識の人も多いようですが、そのようにしてしまうにはもったいない。

当然そういう業務も必要ですが、経営にいかに巻き込んで、会社改善・経営改善のために力を発揮してもらうか、役割の定義付けや育成も含め、管理部門のさらなる活用法を考えてみてください。

すでに管理部門を設置している企業の皆さんにおいても、こういう意思と気概を持ち、全社で共有すれば、管理部門のスタッフにとっても今やっている仕事の意味が変わってくるかもしれませんよ。

これからの管理部門は「利益を生まない部門」のままではいけません。

現場と連携・協働するためのバランス感覚を持った管理部門にするために、スタッフの育成にも力を入れていただきたいと思います。

当グループが主宰する各種セミナーや研究会では、新入社員の段階から自律型人材を育てるプログラムのご紹介なども行なっています。

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