組織の⼀体感を⾼めるには?成長した中小企業が一体感を再構築するステップ
組織・給与制度
こんにちは。ヤマチユナイテッドの石崎です。
「創業当初は自然と同じ方向を向いていたはずなのに、事業が増え、社員が増えるにつれて、何となく噛み合わなくなってきた...」
そんな悩みを抱える経営者は多いのではないでしょうか。
一体感の消失は、会社の「成長の証」ではあるものの、会社をさらに成長させるためにはその問題を放置しておくことはできません。
今回は、成長する組織で再度一体感を高めるためにはどうすれば良いのか、一体感を再構築するための具体的なステップと、その前提となる経営層の心構えについてお伝えします。
目次
組織の一体感はなぜ重要?少人数・単⼀事業の頃は自然と生まれていた理由
組織における一体感は、生産性向上、離職率低下、顧客満足度向上など、経営成果に直結する、重要な要素です。
従業員の帰属意識が高まれば、モチベーションとパフォーマンスが向上し、サービスの質や売上が高まっていくでしょう。
多くの企業が、創業期にはこうした一体感を自然と持っていたはずです。
では、なぜ少人数体制の頃はこうした一体感が自然と生まれていたのか。
それは距離の近さと情報量の多さという、シンプルな理由からくる偶然の産物です。
人数が少ないから社長の目が行き届く
上司がほぼ社長で、全員が直属のような関係にある
社長との距離が近く、会話量が圧倒的に多い
この時期は、指示・命令・報告・相談の全てが社長から直接マンツーマンで行われ、社長の考えや判断がそのまま隅々まで伝わります。
創業初期は、メンバーもその世界観に共感した者たちで構成されています。
社長のリーダーシップが会社を引っ張り、「社長のためなら」「一緒にやろうぜ」という空気が醸成されていたのです。
つまり、少人数期の一体感は、距離の近さと接点の多さ、そして社長の影響力が直接的に行き渡ることによって「自然に維持されていた状態」に過ぎなかったのです。
しかしこの状態は、組織が成長すれば必然的に失われていく運命にあります。
事業拡⼤・人員増加で、組織の⼀体感が徐々に失われていく理由
組織が成長し人員が増えるにつれて一体感が徐々に失われていく変化は、多くの経営者が経験するものです。
しかし、これは決して失敗ではなく、組織が成長する際に必然的に通るフェーズです。
一体感が失われていく典型的な過程
会社の規模が大きくなっていくと、社長の時間はどうしても分散します。
人数が3人から30人になれば、社長が一人ひとりと話す時間は単純に10分の1になるでしょう。
さらに、事業が複数になって階層が増えれば、社長の考えや意図は複数の人を介して伝わるようになり、伝わり方にズレが生じます。
かつて社長が直接伝えていた熱量は、階層を経るごとに半減してしまうことも。
各事業部門が見ている世界が異なり始め、部門や役割ごとに「自分たちの正解」ができあがっていきます。
結果として、社員の視野は限定され、関心の範囲も狭くなり、会社全体としての一体感が失われてしまうのです。
一体感が失われた組織で起こること
そもそも、創業期はトップダウンで社長が全てを決めていたため、現場は「指示待ち」の状態になっています。
社長も、スピード感があり間違わないトップダウンでこれまで上手くいってきたため、その方法を続けてしまいます。
しかし、事業が増え、階層が増えて、距離が離れると、部門ごとの役割が固定化し、視野がさらに限定されていきます。
指示は守られるものの、主体性や当事者意識は弱まります。
全社視点の発言や提案も減り、「自分の仕事はここまで」という線引きが強くなる。
それぞれが自分たちの部門の中で最適化を目指すようになり、全体の最適が見えなくなるのです。
そして、組織が一定以上の規模になると、社長一人では全体を見切れなくなります。
どんどんと現場に振り回され、社長が忙しくなり、気づいたときには「これ以上伸びない」という状況に陥っているのです。
認識の転換が必要
ここで経営者が自覚すべき点があります。
業績が伸びない、組織が機能していないと感じたとき、最初に疑うべきは部門や部下ではなく「自分の経営姿勢」なのです。
「あの部署が弱い」「社員のレベルが低い」といった他責思考から、自責へのシフトが不可欠です。
組織が大きくなったのに、マネジメント手法が変わっていない。
これに気づけるかどうかが分岐点だと言えます。
気づければ、あとは仕組みを整えるだけです。
組織の一体感が薄れるのは、組織が成長した証拠であり、当然に通るフェーズです。
問題は「一体感がなくなったこと」ではなく、成長した組織に合わせて「ここからどう再設計するか」にあります。
⼀体感を再構築するには?経営者・経営幹部が同じ目線に⽴つことが第⼀段階
成長した組織で一体感を再構築する際に、最も重要で最初に取り組むべきステップがあります。
それは、経営者と経営幹部の視座をそろえるということです。
創業期は、社長という大きな星が機関車のように全てを引っ張っていました。
創業社長はそもそも起業するだけあって優秀ですし、本人の能力と強いリーダーシップだけで前に進むことができたのです。
しかし成長段階では、社長と同じような推進力で動ける幹部人材を育成し、複数の「エンジン」を持つ組織体制へシフトする必要があります。
経営者と経営幹部が共通認識を持つべき3つの要素
この段階で経営者と経営幹部が同じ認識を持つべき要素は、以下の3つです。
1. グループとして目指す方向性と存在意義
「なぜこの組織は存在するのか」「どんな会社になりたいのか」という社長の頭の中にある理想像や価値観を、ビジョン、パーパスとしてしっかり表現する必要があります。
最初はざっくりでも構いません。
どのような領域で、どのような規模を目指し、どのような道筋で進むのか。
売上や利益の目標、事業領域の定義など、幹部と同じ方向性を共有することが大切です。
2. グループ全体としての業績目標と優先順位
単年度の目標から中長期的なビジョンまで、複数の時間軸での目標を明確にします。
その際、目標数字だけでなく、その目標が達成されるとどのような状態になるのかまで含めて共有することが重要です。
3. その目標が「何のために存在するのか」という意味づけ
売上や利益の目標を達成すれば、こんな未来を実現できる。
こうした意味付けが、そこで働く社員にとっての誇りや原動力になります。
例えば、こんな未来があるのではないでしょうか。
採用を増やせる
給与を上げられる
新規事業にチャレンジできる
職場環境を改善できる
事業を通じた社会貢献や地域への貢献ができる
「認識の統一」が、制度や施策より先
これら3つの要素が経営層で揃っていないと、幹部がそれぞれの解釈で現場に伝えることになってしまいます。
同じ指示でも、Aさんはこう解釈し、Bさんは別の解釈をして伝える。
これでは、下の階層ほど認識がバラバラになってしまい、組織全体での一体感は生まれません。
組織の一体感づくりは、制度や施策からではなく、経営層の「認識の統一」からしか始まらないのです。
そして、社長は一度だけでなく、繰り返し、何度でも伝え続ける必要があります。
全体会議の場で、全員が集まるキックオフで、しつこいくらいに伝え続ける。
新入社員には、採用段階で「うちの会社はこういう会社だけど、共感できますか」と確認し、入社時研修で価値観を繰り返し伝える。
そのときに幹部が社長と全く違うことを言っているようでは「全て台無し」になってしまうので、まず目線を揃えなくてはいけないのです。
縦割り組織の課題や部門間のギャップ、そしてそれらの解決方法については、こちらのコラムでも解説しています。あわせてご覧ください。
縦割り組織のデメリットを改善!セクト主義を防ぐ多角化企業の運営体制
経営層と現場でなぜギャップが生まれる?戦略をやり切るためのポイント
組織の一体感を高めるためのステップ
経営層の認識が統一されたら、一体感の再構築のために具体的なアクションを起こしましょう。
以下の5つのステップを、幹部の理解や成長に合わせて段階的に進めていきます。
①ビジョン・パーパスの共有と行動指針の明確化
まずは、社長の頭の中にあるビジョンとパーパス、そこに至るための行動指針を明確にして幹部と共有し、それを組織全体に伝え続けます。
全体会議、キックオフ、入社時研修などの場を活用し、何度も何度も伝え続けることが重要です。
こうして初めて、組織全体に価値観が浸透していきます。
②定性目標と定量目標を含めた共同の目標設定
グループ全体としての売上目標、利益目標といった定量目標はもちろんですが、「このような風土の会社になる」といった定性目標も含めて、経営計画を一緒につくり、共有します。
その過程で、自分たちの仕事が全社目標とどうつながっているのかが認識されるようになります。
「自分の仕事は全体の利益につながっている」という認識は、当事者意識の醸成にも重要なポイントです。
「当事者意識がない部下をゼロに!社員の当事者意識を上げるポイント」もぜひ参考にしてみてください。
③経営層と現場のコミュニケーション機会の設定
定期的な会議、ミーティング、複数事業を横断する委員会などを設定し、コミュニケーションが活発化する仕組みをつくります。
特に、複数事業がある場合は、「組織に横串を刺す」仕組みを構築することが大切です。
そして、繰り返しになりますが、ここで同じメッセージを何度も伝え続けます。
④建設的なフィードバック文化の醸成
アンケート、1対1ミーティング、面談制度、モラールサーベイなど、定期的に社員の声を聞く仕組みを設定し、それに対して適切なフィードバックを行います。
ここで重要なのは、上司が部下をしっかり「見ている」ことです。
フィードバックを与えるためには、相手のことを理解していなければなりません。
社員の本当の声、組織への違和感やズレの認識を把握することで、状況の改善につながります。
⑤成功事例の共有と称賛する仕組みづくり
部門や個人の成功事例を、朝会など定期的な場で共有します。
「こういうことがあったよ」というレベルでも構いません。
こうした情報共有の仕組みが、全社視点を育み、互いに学び合う文化を醸成します。
組織の一体感を高める継続的な仕組みづくりと社長の役割転換
一体感を高めるための取り組みに「終わり」はなく、継続的なプロセスです。
新しく入社した社員には改めて伝える必要がありますし、市場や事業環境が変われば、ビジョンやパーパスも進化させる必要があります。
当たり前のように価値観が組織に浸透していれば、新しく入った人もそれを自然に吸収する。
それが仕組みとして機能している状態です。
同時に、このプロセスを通じて社長の役割そのものが変わることに気づくでしょう。
創業期は、社長が現場で全てを判断し、指示を出す体制が効果的でした。
しかし、成長段階では社長は現場から少し距離を置き、「ビジョンと価値観の伝播」に注力する立場へとシフトしていく必要があります。
この役割転換こそが、組織が次のステージへ進むための鍵なのです。
意識改革のタイミングについては、「社員の意識改革を促すタイミングやポイントは?ヤマチの成功事例も確認」で詳しく解説しています。
成長する組織で一体感を高めるには、経営層の認識統一が不可欠
組織が成長する過程で一体感が薄れるのは、「失敗」ではなくある意味「必然」。
その状態を「成長の証」として受け止め、新たな組織設計に取り組むことが重要です。
一体感を再構築するための第一段階は、経営者と経営幹部が同じビジョン、同じ目標、同じ意味づけを共有することです。
この認識の統一がなければ、どのような制度や施策を導入しても、組織内に矛盾や混乱が生じます。
その上で、これら5つのステップを段階的に進めていきましょう。
ビジョンの浸透
目標設定
コミュニケーション強化
フィードバック文化
成功事例の共有
そして、この全てのプロセスを支えるのは、社長が現場のディテールから距離を置き、ビジョンと価値観の伝播者へとシフトする覚悟です。
一体感を再構築するための取り組みに終わりはありませんが、仕組みとして機能し始めれば、組織は自ずとその文化を新しいメンバーに受け継いでいくようになります。
成長段階の企業だからこそ、この仕組みづくりに今、取り組む価値があるのです。
ヤマチユナイテッドの連邦・多角化経営実践塾では、企業の成長や多角化経営への転換に伴う組織設計やマネジメント体制の構築について、実践的に学ぶことができます。
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Authorこの記事の著者
株式会社ヤマチマネジメント|取締役 |グループ執行役員
石崎 貴秀
1996年入社。営業課から国際課を経て、総務部チームリーダーへ。その後グループ経営推進会議事務局にて経験を積み、2009年(株)ヤマチマネジメントを設立、移籍。グループ管理本部の統括マネージャーとして采配を振るう。2017年(株)ヤマチマネジメント取締役就任。
連邦・多角化経営実践塾」の開塾にも携わり、2014年以降、第1期~現在までシステム経営のメイン講師として活躍。
入塾した企業約70社にシステム経営を指導してきた。現在はシステム経営のコンサルティングも担当。



