「アンゾフのマトリクス」を使って多角化戦略の事例を紹介!
多角化・新規事業
こんにちは、ヤマチユナイテッドの山地です。
既存事業が安定し、さらに会社規模の拡大を図るためには新規事業への着手が必須。
でもどのように事業案を発想したら良いのかと迷ったときに、活用されるフレームワークが「アンゾフのマトリクス」です。
今回は、これから新規事業を立ち上げようとしている経営陣のみなさんはもちろん、すでに事業が多角化していて今後の方向性を整理したい方々にも役に立つ発想法をご紹介します。
ヤマチユナイテッドの多角化戦略の事例についても解説しますので、ご参考になれば幸いです。
目次
アンゾフのマトリクスとは?
アンゾフのマトリクスは、「経営戦略の父」とも呼ばれる経営学者イゴール・アンゾフが考案したフレームワークです。
「既存の市場」と「新規の市場」を縦(あるいは横)軸に、「既存の商品・サービス」と「新規の商品サービス」を横(あるいは縦)軸に配置して4分割の表を作成。
それぞれをかけ合わせたところから、どのような成長戦略を描けるかを可視化して考えることができます。
当グループでは「新規事業発想マトリクス」として、以下のような形で作成したものを使い、新規事業開発の整理に役立てています。
ヤマチの「新規事業発想マトリクス」
うちでは縦軸を「商品(ノウハウ)」、横軸を「市場(顧客)」として整理しました。
①「細分化」による多角化
既存の商品(ノウハウ)を、既存の市場で(既存の顧客に対して)発展させる。
「細分化」による多角化は、既存事業の基盤を活かしながら、商品やノウハウを細分化することで、既存顧客へより的確な商品やサービスを提供することができます。
顧客を深く理解し、顧客満足度を高める戦略です。
②「商品開発」による多角化
新規の商品(ノウハウ)を、既存の市場で(既存の顧客に対して)売り出す。
「商品開発」による多角化は、新たに開発した商品やサービスを既存顧客に提供することで、事業を拡大する戦略です。
既存事業で培ってきたノウハウを活かし、顧客ニーズに合致した新たな価値を提供することで、顧客満足度を高める戦略です。
③「市場開拓」による多角化
既存の商品(ノウハウ)を、新規の市場で(新規の顧客に対して)展開する。
「市場開拓」による多角化とは、既存の顧客層とは異なる新しい市場に既存の商品を展開することで、新たな顧客を獲得する戦略です。
④「飛躍」による多角化
新規の商品(ノウハウ)を、新規の市場で(新規の顧客に対して)展開する。
「飛躍」による多角化とは、既存事業と全く異なる新しい商品やサービスを、新規市場に投入することで、事業を飛躍的に成長させる戦略です。
既存の市場や顧客層にとらわれず、革新的なアイデアや技術を活かして、新たな市場を切り拓きます。
④はなかなかハードルが高く、FC加盟や他社からノウハウを買う、あるいはM&Aによって新しい技術などを取り入れるといったことを検討しないと難しい領域です。
現在の経営資源を生かしつつ、①②③の方向性で新規事業を模索するほうが手堅いでしょう。
新規事業はいずれ既存事業となり、①「細分化」による多角化の位置に戻ります。
そこから②商品開発、③市場開拓、時には④飛躍へと新規事業の開発を繰り返して、多角化を進めていくのです。
アンゾフのマトリクスについては下記コラムでも紹介していますので、こちらもご一読ください。
新規事業のアイデア発想法とは?決断するための具体的なポイントを紹介
【ヤマチの事例】新規事業発想をアンゾフのマトリクスで整理
それでは、ヤマチユナイテッドの新規事業発想について、アンゾフのマトリクスで整理した3つの事例を紹介していきます。
事例1:木質建材商社(ヤマチユナイテッド)
ヤマチユナイテッドの元々の始まりは、木の建築資材を扱う卸売会社でした。
②「商品開発」による多角化
グループ代表である私(山地 章夫)が海外へ行くのが好きだったこともあって、やがて輸入建材の販売を始めたのが②「商品開発」による多角化の領域です。
建材や住宅をコンテナに丸ごと入れて輸入し、外国にある仕入れ先の「日本代理店」のような形でオリジナルとして、商品開発し販売したことが多角化のスタートになりました。
そのうち輸入建材販売と並行して、オリジナル建材に自分たちで値付けして売るということも始めます。
③「市場開拓」による多角化
時代が下ると販路が広がり、③「市場開拓」による多角化の領域ではネット販売に対応する事業も生まれました。
④「飛躍」による多角化
そうしてこれまでにない商品で、これまでに出ていかなかった市場へ打って出たのが輸入住宅建築会社。
④の「飛躍」による多角化は、そもそもハードルが高く、何かしらの障壁も多く含んでいる領域です。
うちの従来の取引先様(工務店さんや住宅メーカーさん)のフィールドへ参入するため、センシティブな面が、ある意味障害となりました。
しかし、「社長である山地さん自身の発想だから」ということでお許しをいただきながら徐々にスタートしていきました。
新たに挑戦した住宅ボランタリーチェーンについても、社員から「これはちょっと難しいのでは?」という声が上がったようですが、社長である私が発想し、決断したことであるという点が尊重されました。
④「飛躍」による多角化の領域で事業を形にすることに関しては、経営者だからスピーディに決断して事業案を固められるというアドバンテージもあるでしょう。
そういう意味では一般社員の発想を実現まで持っていくのは、④の領域ではなかなか難しいのではないかと思います。
当時、私がどうしても多角化を進めたかったのには、建材卸だけでは利益率が低く、新しい事業を追加することで全体の利益率を上げていく方向にシフトしようとしていた事情がありました。
これが、ヤマチユナイテッドの本当に初期の初期の歴史です。
事例2:イベント業
当グループのイベント業は当初、大手レンタル会社のフランチャイズに加盟し、家庭用品のレンタルを主な業務としていました。
例えば、運動会でお子さんの活躍を収めるビデオカメラのレンタルなどが人気でした。
①「細分化」による多角化
時代が進むにつれて家庭用品のレンタルのニーズが薄れてきたため、次はイベント用の機材、つまり一般家庭では使わないような品も加えてレンタル事業を継続。
②「商品開発」による多角化
そのうち大きなイベントのお手伝いができるようになってくると、自分たちでもイベント企画ができるのではと、②「商品開発」による多角化の領域へ進みます。
それまではイベント会社さんから発注を受けてレンタル商材を用意するスタイルでしたが、小さなイベントなら自社で企画から機材準備、現場の施工まで請け負う流れができてきました。
③「市場開拓」による多角化
レンタル商材も大きな物を扱えるようになって種類を増やし、例えばビアガーデンなどの大規模イベントで見られるような外国製の大型テント「ローダーテント」に関しては、今でも正規の日本代理店になっています。
これが③「市場開拓」による多角化の領域で、この領域に当てはまる事業としては他にもイベントの主催、オリジナルイベント機材販売といったことも行っています。
④「飛躍」による多角化
④「飛躍」による多角化は、イベントで使う大きな看板の制作業や広告代理店業になります。
看板印刷の技術も持っているので、今はうちだけで企画から会場設営までトータルプロデュースすることができ、小規模・中規模イベントを丸ごとお任せいただけるケースも増えています。
事例3:注文住宅
①「細分化」による多角化
当グループの注文住宅事業を基本事業に、まず顧客ニーズの多様化に合わせて価格帯やコンセプトの異なる複数のブランドを立ち上げ、多ブランド化しています。
②「商品開発」による多角化
②「商品開発」による多角化の領域へと移るにあたっては、住宅業界ではよく見られる流れですが、アフターサービスを充実させる流れでリフォームにも対応し、戸建てリフォームのノウハウでマンションのリフォームも請け負うところまで事業を拡大しました。
③「市場開拓」による多角化
そして③「市場開拓」による多角化の領域では、これまでBtoCであったビジネスモデルをBtoBに転化し、住宅販売のノウハウを他社へ販売するフランチャイズ事業へと発展。
ここではマンションの建築販売や中古住宅を含む不動産仲介業、そして建売住宅の販売も始めています。
④「飛躍」による多角化
④「飛躍」による多角化の領域にある家具ショップについては、「輸入住宅にあう家具やインテリアを揃えたい」という顧客ニーズに応え、最初は輸入建材と同じコンテナに外国製の家具を入れて持ってきてお客様に提案するところからスタート。
その後、2007年頃にある出逢いとチャンスがあり、北海道で第一号のアクタス代理店「inZONE with ACTUS(インゾーネ ウィズ アクタス)」が誕生。
自社直営店としては「ナチュリエスタジオ」というインテリアショップもあり、そこでは自分たちのオリジナル商品を販売しています。
基本的に本業は注文住宅(新築住宅)ですが、家具ショップはその住宅に合うテイストの家具や雑貨を提案するために派生してできた事業です。
ただ、今では、純粋に家具や雑貨がほしいお客様にも、住宅を建てた後にその住宅にあう家具やインテリアがほしいお客様にも、双方のニーズに応えられる事業になっており、市場は拡大しています。
④「飛躍」による多角化の領域にあるレストランに関しても、元々は住宅ブランド「inZONE」から派生してできたものです。
新しいお家で暮らし始めたオーナー様に「住んでからの楽しみ」もご提案したいという考えのもと、ご家族の記念日やお出かけの際の外食に使っていただけるレストランとして「inZONE TABLE」ができました。
現在は、総合インテリアショップ「The JOHNSON STORE」内にお茶の専門店、札幌ステラプレイスにハンバーガーショップと、飲食事業にもバリエーションが増えてきています。
アンゾフのマトリクスを使用した多角化戦略の事例を参考に、業績アップを目指す環境を作ろう
アンゾフのマトリクスは、「経営戦略の父」とも呼ばれる経営学者、イゴール・アンゾフが考案したフレームワーク。
既存の市場と新規の市場を縦(あるいは横)軸に、既存の商品・サービスと新規の商品サービスを横(あるいは縦)軸に配置して4分割の表を作り、それぞれをかけ合わせたところからどのような成長戦略を描けるかを可視化して考えることができます。
当グループでは、以下のように縦軸を「商品(ノウハウ)」、横軸を「市場(顧客)」として整理し、「新規事業マトリクス」として役立てています。
事業が増えれば増えるほどセクト主義が足かせになってくるケースもありますが、ヤマチユナイテッドが取り入れている「連邦・多角化経営」によってグループオールでの業績アップを目指す環境を作っておけば、そういったデメリットも回避できます。
当グループの経営ノウハウを詰め込んだ「連邦・多角化経営実践塾」は、コラム内でおすすめしたように「幹部と一緒に」参加していただくことになっています。
「これから幹部陣を新規事業開発に巻き込んでいきたい」という経営者のみなさんにも、参加をご検討いただければ幸いです。
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Authorこの記事の著者
ヤマチ連邦多角化経営実践塾 塾長
山地 章夫
ヤマチユナイテッド代表。経営を楽しみ、社員700名、50事業・年商256億円の企業グループの舵を取る。本業を中心に事業を次々と立ち上げ、売上げを積み増す「連邦多角化経営」を実践。経営の安定化と人材育成を両立する独自の経営手法が、多くの中小企業経営者の注目を集める。