社風
朝から褒めちぎりあうほめワーク
丸山運送の朝は、朝礼で始まる。ラジオ体操の後に実施しているのが<ほめワーク>。これは、二人一組となって1分間ずつ相手を褒めちぎるというもの。ポイントは以下のとおりである。
- 内容は仕事に限定しない仕事のほか、その日の服やネクタイのセンスでも、ネイルや髪型でも、相手のいいところなら何でも褒めポイントになる。
- 二人の組み合わせは毎日変わる毎日違う人と組んで褒めあうようなシステムにする。
- とにかくポジティブワードを浴びせる褒められすぎて、相手が頬を真っ赤に染めるくらい褒めちぎる。
- 役員も参加する社員だけではなく、社長を筆頭に役員も参加する。
ほめワークを取りいれた理由を尋ねると、三浦さんは「何事も否定から入らないようにしたかったこと」「笑顔で気持ちよく仕事を始められるようにしたかったこと」の二点を挙げました。ちなみに、三浦さんがこれまでに褒められてうれしかったのは、「周りをよく見ていますね」。全社を見わたす立場にある三浦さんにとって、これは最高の褒め言葉でしょう。褒めた社員も、三浦さんをよく見ていることに脱帽します。現在は本社のみで実施している、ほめワーク。社内で組織されている「コミュニケーション委員会」が、全事業所へと広げるべく、活動中です。
お話を伺っていると、ほめワークの成功には、「役職ではなく、名前で呼ぶ」という社内ルールが功を奏していると感じます。普段から、新入社員も社長を「一夫さん」と呼んでいるそうです。「社長のネクタイ、すてきですね」よりも「一夫さんのネクタイ、カッコいいですね」のほうが、構えずに褒め言葉を口にできそうですよね !
会社と家族をつなぐツール社内報
丸山運送では、毎月25日に社内報を発行している。その名も「輝き」。全社に関わるトピックスや部署の最新ニュース、オススメのグルメ、誕生月の社員一覧など、社員同士がお互いを知るきっかけになる話題が満載である。
- 編集方針社員と社員、会社と社員の家族をつなぐコミュニケーションツール
- 配布方法給料明細とともに配布する
三浦さんによると、「東日本大震災で被災して以降、休刊していましたが、2年前に社長の意向もあって再開しました」。目的は、「社員がほかの社員の仕事を知ること」「社員の家族が会社を知ること」。
運送会社あるあるとして三浦さんが教えてくれたのは、家族のみなさんの不安。「特にドライバーは、事故などの危険と隣り合わせ。また、運ぶ製品によって勤務時間や曜日が不規則です。それを心配して、別の職業についてほしいと願っているご家族も少なくありません。その心配を払拭してもらうために、会社の環境や取り組みを知ってほしいと思ったのです」と、社内報に込めた思いを明かしてくれました。
採用
採用のコツは、幹部は控えめに求人チームの創設
丸山運送には、人材採用のための「求人チーム」がある。求人媒体の選定から会社説明会の企画まで、採用にまつわることを担当しているという。掟は二つ。それは、ほしい人材を獲得する秘訣である。
- メンバーは自薦の若手で構成する
- 幹部は最終選考まで口をださない
いま、求人チームを引っ張っているのは、入社3年目の社員。「自分からやりたいと手を挙げただけあり、誰よりもいきいきと熱く会社について語ってくれます。業界や会社全体の仕事、人事に詳しいのはベテラン社員でしょう。でも、大好きな会社や仕事のことを同年代の就活生に伝えたいという思いは、誰にも引けを取りません。心の底からの言葉だからこそ、相手に伝わり、その思いに共鳴してくれた人は、きっとうちの会社にふさわしい人だと考えています」と、三浦さんは、求人チーム創設の真意を語ってくれました。
将来を見据えた採用計画を留学生の採用
国際複合一貫輸送に注力している丸山運送。さらなる発展のために取り組んでいることがある。それが、留学生の採用だ。
- 日本で働きたい留学生を採用する
- いずれ帰国する予定の留学生を採用する
国際物流をさらに強化していくためには、言語はもちろん、日本と海外の文化や習慣に詳しい人材が必要です。いま日本で学んでいる留学生は、まさに適任でしょう。「自国と日本のパイプ役になってくれる」と、三浦さんは期待しています。「すでに採用している外国人社員は、拠点のある中国で国際物流のハンドリングに努めてくれています」と、その根拠を教えてくれました。
教育
1年で新入社員を次世代の経営者を育てるフレッシャーズキャンプ
丸山運送の新入社員は、<フレッシャーズキャンプ>に参加しなければならない。これは、「連邦・多角化経営実践塾」でもおなじみ、1年間で新入社員を戦力に育てる研修だ。丸山運送では、カリキュラムをつくるとき、下記の三つを大事にしている。
- 経営感覚を磨く
- 多様な考え方を知り、受容する力を培う
- 直球&素直な心で、超積極的に参加する
丸山運送が、はじめて新卒を採用したのは2018年度のこと。それまでは、即戦力を期待して中途採用のみでした。では、なぜ新卒採用に踏みきったのでしょうか。それは、多角化経営に向けた布石でした。業界の常識に染まっていない若い感性が必要だと考えたのです。
ディスカッションやプレゼンテーションの機会を多くすることで、確実に発表力が養われているようです。
入社したばかりのころは、右も左もわからずにドギマギしていたフレッシャーズも、2年目を迎える頃には、問題点を指摘して、アイデアを提案するまでに! いまではすっかり定着した「来客時に全員であいさつする」も、若手社員のひと言から生まれたそうです。先輩や上司に臆することなく、発言できるのはすごいこと。育て方のコツを尋ねると、大事なヒントがありました。三浦さん曰く「私たちが、業界の慣習や会社の常識にとらわれすぎて、大切なことを見逃す可能性があるかもしれない。それが、会社の成長の妨げになってはならないと考えています。だから、どんなことでも話してほしいと伝えています」。ポイントは、話しやすい環境づくりにありそうです。
全社を挙げて「安全」をつくる安全教育
トラックを運転する以上、運送の仕事は、交通事故と常に隣り合わせである。だから、丸山運送では、交通事故の芽を摘む<安全教育>に力をいれている。ポイントは二つ!
- 防衛運転の徹底危険を予測して事故を起こさないだけではなく、道路上では常に危険があることを意識して、もらい事故をなくす運転を指導する。
- 安全な運行管理スケジュールに余裕を持たせたり、安全な経路を選んだりすることで、事故を防ぐことに努めるように指導する。
どれだけ安全運転をしていても、事故に巻き込まれることがあります。それを防ぐために、防衛運転を徹底してきました。例えば、道を譲り合えば、コミュニケーションの行き違いで事故になりかねません。こういう場面では、とにかく譲る。譲られるという選択肢を排除して、相手が発進するまで絶対に動かないのだそうです。
丸山運送では、内勤社員にも安全教育を徹底しています。運行管理に「安全」を織り込むことで、ドライバーがハンドルを握る前に考えられる事故の芽を摘んでおくのです。
売上の1〜3%を投資する人材育成術
丸山運送は、人を大事にする会社だ。お客さまはもちろん、社員を大事にしている。それは、人材育成にも現れる。
- 社員のための教育費年間売上の1〜3%
これは、<フレッシャーズキャンプ><安全教育>といった社内に用意されるプログラムだけではありません。学校に通ったり、通信講座を受けたりすることを推奨しているのです。条件は、インプットしたことをアウトプットすること。学んだことは、会社や仕事へと還元してもらうことにして、社員の「自分育て」を全力でサポートしています。
例えば、社内報「輝き」の編集長である大友淳一さんは、いま、アドビオンライントレーニング通信講座で、ビデオ編集ソフト「Premiere Pro(プレミアプロ)」を受講中。丸山運送のブランディングに関わる分野で、あたためてきた企画があるとのことなので、これからの動きに注目です。
多角化
新たな挑戦STUDIO 080
丸山運送の多角化経営を支えるのが「the080ビジョン」。これは、運送を主軸とする物流事業に相乗効果を生みだす80の事業と80人の経営者を社内で育てる計画である。2019年4月、満を持して始動した。
シェアオフィス「STUDIO 080」オープン
丸山運送の多角化経営への第一歩が、「STUDIO 080」です。これは、東北エリアで最大級のシェアオフィス。もともとは新聞の印刷工場でした。東日本大震災で旧社屋を失ったとき、再出発のための事業拠点として取得した建物だったそうです。新社屋が完成して役割を終えましたが、それではもったいない、シェアオフィスとして有効活用するべきだという意見がでました。そのアイデアをだしたのは、栃山剛さん。いま、「STUDIO 080」の管理者を務めています。
当初のイメージは、「スタートアップ企業の物流までをバックアップするシェアオフィス」のつもりだったと、三浦さんは教えてくれました。蓋を開けてみると、さまざまな企業の入居があったそうです。広さを生かして、倉庫やイベントスペースとしても使用できるようにしていて、これまでに、講習会やライブなどが開催されました。さまざまな異業種の方が交流する場所なのでこれから、さらに新しい活用法、新しいビジネスのヒントがでてくることでしょう。そこから、次の事業や経営者が生まれることでしょう。「STUDIO 080」から目が離せませんね。
Movie
動画
Company
会社概要
株式会社 丸山運送
本社/宮城県仙台市宮城野区港4丁目1番地2
代表者/代表取締役 三浦 一夫
創業/1962年
資本金/3,000万円
社員数/297名
お問い合わせ/HPの問合せフォーム
Editor’s note
編集後記
丸山運送さまの四つの取り組みはいかがだったでしょうか。共感できたり、感銘を受けたり、また明日から頑張ろうと思えるお話がたくさん伺えました。
三浦さん曰く、「組織を強くすることはあくまで手段の一つ。よい人材を育て、よい仕事をして、お客さまの繁栄に貢献し、よい世の中をつくっていける会社になりたい。だから、社員教育に時間とお金をかけることを惜しみません」。これが、創業以来、時代の波を乗り越えて、発展を続ける丸山運送さまの強さでしょう。社員を育てることを置き去りにしてきた現代だから、心に刺さる言葉です。
三浦さんの言葉でハッとしたことがあります。「運送業界、物流業界の社会的価値を上げたい」。この新型コロナ禍によって、運送・物流が暮らしを支えていることが認識されるようになりました。でも、それ以前は、生活者の意識にあまりのぼることのない仕事でした。「非常事態だから、私たちの仕事とその価値が認められたと思います。これから、さらに社会の発展に寄与することで、業界全体の価値やイメージを向上させたいです」という三浦さんの意気込みに、丸山運送さまの誇りと運送・物流の明るい未来を感じました。
次回も、どうぞお楽しみに!
公開日:2020年7月3日
※内容はインタビュー当時のものです。