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株式会社 丸山運送さま

写真:丸山運送のスタッフ

丸山運送はこんな会社です

業界の枠も国境も超えていく運送会社

丸山運送は、1962年創業の運送会社です。八幡製鐵(現・日本製鉄)の関連会社である九州製罐(現・大和製罐)を荷主として、トラック1台からスタートしました。当時日本は高度成長期。2年後に東京オリンピックを控え、あらゆる産業が活況でした。ていねいな仕事で取引先からの信用を得た丸山運送も、順調に業績を伸ばしていきます。

それから約60年、努力と成果を積み重ねてきました。その実績をもとに、現在は運送の枠を超えて、総合物流へと活動の幅を広げています。これからの目標は、ワンストップ物流サービスをさらに発展させること。そのための取り組みも着々と進んでいるようです。

この人に話を聞きました

写真:取締役 三浦 大さん

専務取締役 三浦 大さん

さわやかな笑顔と落ち着いた話し方が印象的な三浦大さん。丸山運送に入社したのは、2017年のこと。実は、お祖父さまが立ち上げ、お父さまが大きく育てた家業を「継ぐつもりはなかった」といいます。当時は、アパレル会社の社員。道理でおしゃれなわけですね!「自分の企画や選んだ商品が、世の中に受け入れられていくこと」は楽しく、また、自信がついて前途洋々だったのです。

しかし、社長である父に入社を請われたとき、「いままで自由に生きてこられたのも親と家業のおかげだと思い、最終的には転職を決めました」と三浦さん。丸山運送に入社後は、各部署で研修して、2年ほど国際物流本部に所属しながら、広く全部署の仕事を学びました。現在は専務取締役として、会社全体を統括しています。仕事におけるモットーは、「お客さま第一主義」。お客さまに喜ばれる仕事は何かと、常に考えています。経営を担う役員が、お客さまと真剣に向き合ってこそ、よいサービスが生みだせると思うからです。

プライベートでは、1年前に結婚した新婚さん。なんと、予定していた結婚式は、新型コロナ禍で延期に…。早い終息を願うばかりです。休日は、趣味の洋服と楽器に時間を費やし、リフレッシュしています。公私ともに充実している若きリーダーが、丸山運送のいまとこれからを語ってくれました。

事業内容

運送会社から物流会社へ、仙台から世界へ

創業時の丸⼭運送は、トラックで製⽸⼯場から⽸詰⼯場へと⽸を運んでいました。現在、取扱品⽬は増え、⾝近なモノではコンビニの⾷品や半導体製造装置の運送を担っています。このように、トラックを⽤いてA地点からB地点へ製品を運ぶことが「運送」という仕事です。製品がつくられて消費者の⼿にわたるまでには、「⼊出庫保管」「梱包」「通関」などのさまざまな⼯程があります。その⼀連のプロセスのなかで、丸⼭運送は、製造者と消費者をつないでいるのです。

丸⼭運送の拠点は宮城県仙台市にあり、社名のとおり、基盤は運送です。しかし、それだけにとどまりません。東⽇本⼤震災の被災を契機に⼤型の倉庫を持ち、通関業やNVOCC(船舶を所有しない海上輸送業者)の許可を得て、事業を総合物流へと拡⼤してきました。「丸⼭運送が提供できる物流サービスの幅を広げ、商流・物流のもっと川上からお客さまとの関わりを持ちたい」と三浦さん。いま、特に⼒を⼊れているのが、国際複合⼀貫輸送です。国内外からの製品の引き取り、各種⼿続き、運搬と輸出⼊に伴う通関、納品などを、お客さまに合わせてさまざまなアレンジを加えながら、⼀⼿に引き受けています。「国際ルールはあるものの、各国と⽇本の商習慣の違い、時差までも考慮した仕事の段取り、レスポンスなど、⼾惑うこともあります」と⾔いながらも、着々と「総合物流企業」への地歩を固めてきました。さらに、将来を⾒据えて、留学⽣の採⽤に着⼿しています。

インタビューのなかで意外な⾔葉を聞きました。「お客さまに、運送会社らしくないと⾔われる」というのです。運送に誇りを持ち、誠実な仕事をしているのになぜ? それは、仕事のことではなく、来客時のあいさつのこと。「お客さまがいらしたとき、社員全員が⽴って声を出してあいさつします。確かに、運送会社では珍しいかもしれません」と、三浦さんは話してくれました。ほかにも、業界や企業「らしくない」、丸⼭運送「らしさ」がありそうです。四つの取り組みを⾒ていきましょう!

社風

朝から褒めちぎりあうほめワーク

丸山運送の朝は、朝礼で始まる。ラジオ体操の後に実施しているのが<ほめワーク>。これは、二人一組となって1分間ずつ相手を褒めちぎるというもの。ポイントは以下のとおりである。

  • 内容は仕事に限定しない仕事のほか、その日の服やネクタイのセンスでも、ネイルや髪型でも、相手のいいところなら何でも褒めポイントになる。
  • 二人の組み合わせは毎日変わる毎日違う人と組んで褒めあうようなシステムにする。
  • とにかくポジティブワードを浴びせる褒められすぎて、相手が頬を真っ赤に染めるくらい褒めちぎる。
  • 役員も参加する社員だけではなく、社長を筆頭に役員も参加する。
写真:ほめワークの様子

ほめワークを取りいれた理由を尋ねると、三浦さんは「何事も否定から入らないようにしたかったこと」「笑顔で気持ちよく仕事を始められるようにしたかったこと」の二点を挙げました。ちなみに、三浦さんがこれまでに褒められてうれしかったのは、「周りをよく見ていますね」。全社を見わたす立場にある三浦さんにとって、これは最高の褒め言葉でしょう。褒めた社員も、三浦さんをよく見ていることに脱帽します。現在は本社のみで実施している、ほめワーク。社内で組織されている「コミュニケーション委員会」が、全事業所へと広げるべく、活動中です。

お話を伺っていると、ほめワークの成功には、「役職ではなく、名前で呼ぶ」という社内ルールが功を奏していると感じます。普段から、新入社員も社長を「一夫さん」と呼んでいるそうです。「社長のネクタイ、すてきですね」よりも「一夫さんのネクタイ、カッコいいですね」のほうが、構えずに褒め言葉を口にできそうですよね !

写真:ほめワークの様子
写真:ほめワークの様子

会社と家族をつなぐツール社内報

丸山運送では、毎月25日に社内報を発行している。その名も「輝き」。全社に関わるトピックスや部署の最新ニュース、オススメのグルメ、誕生月の社員一覧など、社員同士がお互いを知るきっかけになる話題が満載である。

写真:社内報「輝き」
  • 編集方針社員と社員、会社と社員の家族をつなぐコミュニケーションツール
  • 配布方法給料明細とともに配布する

三浦さんによると、「東日本大震災で被災して以降、休刊していましたが、2年前に社長の意向もあって再開しました」。目的は、「社員がほかの社員の仕事を知ること」「社員の家族が会社を知ること」

運送会社あるあるとして三浦さんが教えてくれたのは、家族のみなさんの不安。「特にドライバーは、事故などの危険と隣り合わせ。また、運ぶ製品によって勤務時間や曜日が不規則です。それを心配して、別の職業についてほしいと願っているご家族も少なくありません。その心配を払拭してもらうために、会社の環境や取り組みを知ってほしいと思ったのです」と、社内報に込めた思いを明かしてくれました。

採用

採用のコツは、幹部は控えめに求人チームの創設

丸山運送には、人材採用のための「求人チーム」がある。求人媒体の選定から会社説明会の企画まで、採用にまつわることを担当しているという。掟は二つ。それは、ほしい人材を獲得する秘訣である。

  • メンバーは自薦の若手で構成する
  • 幹部は最終選考まで口をださない
写真:求人チームの様子
写真:求人チームの様子

いま、求人チームを引っ張っているのは、入社3年目の社員。「自分からやりたいと手を挙げただけあり、誰よりもいきいきと熱く会社について語ってくれます。業界や会社全体の仕事、人事に詳しいのはベテラン社員でしょう。でも、大好きな会社や仕事のことを同年代の就活生に伝えたいという思いは、誰にも引けを取りません。心の底からの言葉だからこそ、相手に伝わり、その思いに共鳴してくれた人は、きっとうちの会社にふさわしい人だと考えています」と、三浦さんは、求人チーム創設の真意を語ってくれました。

将来を見据えた採用計画を留学生の採用

国際複合一貫輸送に注力している丸山運送。さらなる発展のために取り組んでいることがある。それが、留学生の採用だ。

  • 日本で働きたい留学生を採用する
  • いずれ帰国する予定の留学生を採用する

国際物流をさらに強化していくためには、言語はもちろん、日本と海外の文化や習慣に詳しい人材が必要です。いま日本で学んでいる留学生は、まさに適任でしょう。「自国と日本のパイプ役になってくれる」と、三浦さんは期待しています。「すでに採用している外国人社員は、拠点のある中国で国際物流のハンドリングに努めてくれています」と、その根拠を教えてくれました。

写真:採用された留学生の様子

教育

1年で新入社員を次世代の経営者を育てるフレッシャーズキャンプ

丸山運送の新入社員は、<フレッシャーズキャンプ>に参加しなければならない。これは、「連邦・多角化経営実践塾」でもおなじみ、1年間で新入社員を戦力に育てる研修だ。丸山運送では、カリキュラムをつくるとき、下記の三つを大事にしている。

  • 経営感覚を磨く
  • 多様な考え方を知り、受容する力を培う
  • 直球&素直な心で、超積極的に参加する

丸山運送が、はじめて新卒を採用したのは2018年度のこと。それまでは、即戦力を期待して中途採用のみでした。では、なぜ新卒採用に踏みきったのでしょうか。それは、多角化経営に向けた布石でした。業界の常識に染まっていない若い感性が必要だと考えたのです。
ディスカッションやプレゼンテーションの機会を多くすることで、確実に発表力が養われているようです。

入社したばかりのころは、右も左もわからずにドギマギしていたフレッシャーズも、2年目を迎える頃には、問題点を指摘して、アイデアを提案するまでに! いまではすっかり定着した「来客時に全員であいさつする」も、若手社員のひと言から生まれたそうです。先輩や上司に臆することなく、発言できるのはすごいこと。育て方のコツを尋ねると、大事なヒントがありました。三浦さん曰く「私たちが、業界の慣習や会社の常識にとらわれすぎて、大切なことを見逃す可能性があるかもしれない。それが、会社の成長の妨げになってはならないと考えています。だから、どんなことでも話してほしいと伝えています」。ポイントは、話しやすい環境づくりにありそうです。

写真:フレッシャーズキャンプの様子
写真:フレッシャーズキャンプの様子

全社を挙げて「安全」をつくる安全教育

トラックを運転する以上、運送の仕事は、交通事故と常に隣り合わせである。だから、丸山運送では、交通事故の芽を摘む<安全教育>に力をいれている。ポイントは二つ!

  • 防衛運転の徹底危険を予測して事故を起こさないだけではなく、道路上では常に危険があることを意識して、もらい事故をなくす運転を指導する。
  • 安全な運行管理スケジュールに余裕を持たせたり、安全な経路を選んだりすることで、事故を防ぐことに努めるように指導する。

どれだけ安全運転をしていても、事故に巻き込まれることがあります。それを防ぐために、防衛運転を徹底してきました。例えば、道を譲り合えば、コミュニケーションの行き違いで事故になりかねません。こういう場面では、とにかく譲る。譲られるという選択肢を排除して、相手が発進するまで絶対に動かないのだそうです。

丸山運送では、内勤社員にも安全教育を徹底しています。運行管理に「安全」を織り込むことで、ドライバーがハンドルを握る前に考えられる事故の芽を摘んでおくのです。

写真:安全教育の様子
写真:安全教育の様子
写真:安全教育の様子

売上の1〜3%を投資する人材育成術

丸山運送は、人を大事にする会社だ。お客さまはもちろん、社員を大事にしている。それは、人材育成にも現れる。

写真:人材育成術の様子
写真:人材育成術の様子
  • 社員のための教育費年間売上の1〜3%

これは、<フレッシャーズキャンプ><安全教育>といった社内に用意されるプログラムだけではありません。学校に通ったり、通信講座を受けたりすることを推奨しているのです。条件は、インプットしたことをアウトプットすること。学んだことは、会社や仕事へと還元してもらうことにして、社員の「自分育て」を全力でサポートしています。

例えば、社内報「輝き」の編集長である大友淳一さんは、いま、アドビオンライントレーニング通信講座で、ビデオ編集ソフト「Premiere Pro(プレミアプロ)」を受講中。丸山運送のブランディングに関わる分野で、あたためてきた企画があるとのことなので、これからの動きに注目です。

多角化

新たな挑戦STUDIO 080

丸山運送の多角化経営を支えるのが「the080ビジョン」。これは、運送を主軸とする物流事業に相乗効果を生みだす80の事業と80人の経営者を社内で育てる計画である。2019年4月、満を持して始動した。

シェアオフィス「STUDIO 080」オープン

丸山運送の多角化経営への第一歩が、STUDIO 080です。これは、東北エリアで最大級のシェアオフィス。もともとは新聞の印刷工場でした。東日本大震災で旧社屋を失ったとき、再出発のための事業拠点として取得した建物だったそうです。新社屋が完成して役割を終えましたが、それではもったいない、シェアオフィスとして有効活用するべきだという意見がでました。そのアイデアをだしたのは、栃山剛さん。いま、「STUDIO 080」の管理者を務めています。

当初のイメージは、「スタートアップ企業の物流までをバックアップするシェアオフィス」のつもりだったと、三浦さんは教えてくれました。蓋を開けてみると、さまざまな企業の入居があったそうです。広さを生かして、倉庫やイベントスペースとしても使用できるようにしていて、これまでに、講習会やライブなどが開催されました。さまざまな異業種の方が交流する場所なのでこれから、さらに新しい活用法、新しいビジネスのヒントがでてくることでしょう。そこから、次の事業や経営者が生まれることでしょう。「STUDIO 080」から目が離せませんね。

写真:シェアオフィス「STUDIO 080」の外観
写真:シェアオフィス「STUDIO 080」の様子
写真:シェアオフィス「STUDIO 080」の様子

Movie

動画

Company

会社概要

株式会社 丸山運送
本社/宮城県仙台市宮城野区港4丁目1番地2
代表者/代表取締役 三浦 一夫
創業/1962年
資本金/3,000万円
社員数/297名
お問い合わせ/HPの問合せフォーム

写真:丸山運送の外観
写真:丸山運送の社内
写真:丸山運送の運転手
写真:丸山運送のトラック

Editor’s note

編集後記

丸山運送さまの四つの取り組みはいかがだったでしょうか。共感できたり、感銘を受けたり、また明日から頑張ろうと思えるお話がたくさん伺えました。

三浦さん曰く、「組織を強くすることはあくまで手段の一つ。よい人材を育て、よい仕事をして、お客さまの繁栄に貢献し、よい世の中をつくっていける会社になりたい。だから、社員教育に時間とお金をかけることを惜しみません」。これが、創業以来、時代の波を乗り越えて、発展を続ける丸山運送さまの強さでしょう。社員を育てることを置き去りにしてきた現代だから、心に刺さる言葉です。

三浦さんの言葉でハッとしたことがあります。「運送業界、物流業界の社会的価値を上げたい」。この新型コロナ禍によって、運送・物流が暮らしを支えていることが認識されるようになりました。でも、それ以前は、生活者の意識にあまりのぼることのない仕事でした。「非常事態だから、私たちの仕事とその価値が認められたと思います。これから、さらに社会の発展に寄与することで、業界全体の価値やイメージを向上させたいです」という三浦さんの意気込みに、丸山運送さまの誇りと運送・物流の明るい未来を感じました。

次回も、どうぞお楽しみに!

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