理念
全員参加の理念づくりビジョン委員会
2020年1月、ビジョンの策定を目的とする「ビジョン委員会」が設置されました。委員長 を務めた伊藤さんが、「きっかけは社長の号令」と明かします。リヴにはもともと経営理念がありました。ところが、多角化経営が進み、事業も新しい社員も増え、だんだんと実情に合わなくなっていたのです。それを懸念した波夛野社長が、経営理念の見直しを命じました。社員それぞれが自分のこととして考え、話し合い、つくりあげた経営理念でなければ、機能しないと痛感していたようです。
ビジョン委員会のメンバーは、3カ月ほどかけて、策定計画を練りました。それが決まり、まず取り掛かったのは、創業当時を知る社員たちの話を聞くこと。伊藤さん曰く「社長が日頃からよく口にする〈温故創新〉です。リヴが重ねてきた歴史を知って、リヴの進むべき新しい道を探るべきだと考えました」。それから、社員をチーム分けして「リヴの使命」「リヴがつくる未来」「リヴが大切にしていること」について語り合ったといいます。そのときに出てきた言葉を、委員会メンバーがまとめ、8月に中間報告。さらに半年ほどかけて、部署ごとのディスカッションを繰り返し、言葉をブラッシュアップしていきました。
2021年2月に完成したのが、リヴの「ミッション」「ビジョン」「バリュー」です。
- 委員会を立ち上げる委員会を活用することで、部署を横断する全社的な取り組みを推進しやすくする。
- 〈温故創新〉を心がける若手が新しいものをつくりだすときは、歴史に学ぶべきである。
- 話し合う場をたくさん用意する時間がかかっても、話し合いの過程を大事にする。
理念を浸透させる仕組み朝礼
創業以来、リヴが守ってきたことがあります。それは、「掃除」「挨拶」「朝礼」の三つ。朝 礼では、全社員による経営理念の唱和と朝礼当番のショートスピーチを欠かしません。
この2月からは、経営理念に変えてミッション・ビジョン・バリューを唱和しています。
- ミッション
お客さまの理想の暮らしを実現します。 - ビジョン
京都で一番ワクワクするまち「おとくに」を創ります。 - バリュー
人情 × 元気 × 堅実- 一つ一つの約束を必ず守ります。
- 相手の立場になって物事を考えます。
- 誰かがではなく、自らが行動します。
- 何事も正面から向き合い、責任を全うします。
- 楽しむ気持ちを忘れず挑戦し続けます。
ミッションとは「リヴはこんな会社です」、ビジョンとは「リヴはこんなゴールを目指して います」、バリューとは「リヴで働いているのはこんな人です」を表現したもの。そう説明しながら、伊藤さんは「それが明確になり、全社員が同じ意識を持てるようになりました。何かあったとき、冗談めかして〈自らが行動します〉とバリューのひとつを唱えながら、動いていますよ」と、社内の変化を教えてくれました。
ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるためのもう一つの工夫が、朝礼スピーチ。お題をビジョンにまつわることと決めたのです。「ビジョン委員会でのディスカッションの時間がとても有意義だったので、そのときに考えたことでも、いま実践しながら感じていることでも、とにかくビジョンに関するそれぞれの思いをスピーチしてもらうことにしました」。
- ミッション・ビジョンを唱和する朝礼当番の掛け声を合図に、全社員でミッション・ビジョンを唱和する。
- ビジョンにまつわるスピーチをする朝礼当番が 3 分間という限られた時間内で、ビジョンについて語る。
- 「リヴの人宣言(バリュー)」を唱和する朝礼当番がバリューを読み上げ、全社員で復唱する。
一生モノのお付き合い指名制度
リヴには、おもしろい制度があります。それが「指名制度」。美容室のそれのように、お客さまが担当者を選べる制度です。導入のきっかけは、家という大きな買い物をするときに、担当者を選べないことへの疑問だったのだとか。
その根底にあるのは、ただ家を売っているだけではないという自負でしょう。「いろいろな工務店やハウスメーカーが、いろいろな住宅をつくっていますが、商品にはそれほど大きな 違いがありません。大事なのは、お客さまとの信頼関係だと考えました」と、伊藤さん。しかも、それは家の引き渡しと同時に終了してしまう短い関係性ではなく、ずっと続くようなお付き合いだといいます。それは、「リヴは幅広く事業を展開していて、地元との縁も深い。家だけではなく暮らしの困りごとは相談していただければ、解決のお手伝いができる」と考えているからです。
- 社員を「リヴの人」として前面に出すリヴの強みである「人」を前面に出して、社員の顔が見える会社を目指す。
- 社員の人となりを知ってもらう社員の仕事内容・経歴のほか、仕事に対する考え方、特技、趣味などを動画で披露する。
- 一緒に家づくりしたい「人」を選んでもらう社員の人となりを知ったうえで、お客さまに担当者を指名してもらう。
採用・育成
体験を重視した実践型新人教育リヴ流フレッシャーズキャンプ
連邦・多角化経営実践塾ではおなじみのフレッシャーズキャンプ。リヴでもアレンジして取り入れています。特徴は大きく二つ。まず、「リヴの強みプレゼン」です。新入社員は研修として、さまざまな事業部でひととおりの仕事を研修します。このとき、就活生としてではなく、会社の一員としてリヴを分析させて、そこから見えてくる強みをプレゼンさせるのです。山田さんによると、「自分でスケジュールを立て、先輩や上司にアドバイスをもらいながら、与えられた課題に取り組む−入社後はじめての仕事といえます。これをやり切れると、わずか1カ月でグンと成長しますね」。
もう一つの特徴が「イベント運営」です。リヴでは「おとくにマルシェ」というお客さま向けイベントを開催しています。このとき、出店ブースの企画や運営を新入社員に担わせるのです。目的は、成功体験をさせること。自分でイベントを企画して、集客して、当日の運営をするという一連の流れを経験することは、成長につながります。山田さんによると、〈知っている〉と〈できる〉は違うというのが波夛野社長の口癖であり、失敗も含めて実践を通じて成長してほしいという思いがあるようです。
- リヴの強みを分析、プレゼンさせるさまざまな事業部でのOJTを通じて、リヴの強みを分析、発表させる。
- 成功体験をさせるイベントの企画・運営を任せることで、さまざまな体験の機会をつくる。
- 先輩社員の成長の場とする入社3年ほどの若手社員にフレッシャーズキャンプの運営を任せることで、新入社員と共に成長できる場にする。
同じ志の仲間を採用する方法価値観型の採用
人事担当として山田さんが入社した年、リヴ史上はじめて14名の新卒者を採用したといいます。それ以来コンスタントに新卒採用を行い、バランスよく中途採用も続けてきました。その方針はいまも変わりません。ただ、今年2月にミッション・ビジョン・バリューが完成したことで、採用にちょっとした変化があったといいます。
「ようやくクレドをもとにした採用に着手できました」と、山田さん。リヴの場合、クレドはバリューにあたります。「人情・元気・堅 実の三つをバランスよく持つ人材はなかなかいません。どれか当てはまれば〈リヴの人〉であり、私たちの求めている人なのだと、応募者にはお話します。
さらに、ミッションとビジョンを示して、一緒に目指したいゴールを説明します。そのうえで、来る者は拒まずという採用スタンスですね」。
- クレドを採用基準とするミッション・ビジョン・バリューの策定によって、採用基準が明確になる。
- 地域の縁を大切にする地域との縁が深いから、紹介やリファラル採用を受け入れている。
- 採用スタンスは来る者を拒まないミッション・ビジョン・バリューを明示し、それに共鳴した人材を拒むことはない。
多角化
木造建築とホテル業への挑戦地産地消!5階建て木造ホテル
多角化戦略を着々と進めていたリヴは、2019年、ついにホテル事業に乗り出しました。理由は、乙訓にはホテルがなかったからだといいます。「京都駅や大阪駅からのアクセスが良く、観光資源に恵まれながら、観光客に通過されてしまうまちでした」と、竹内さん。地域の声を拾い上げると、「乙訓にホテルがほしい」という話が沢山聞こえてきました。それがきっかけとなり、ホテル事業に挑戦することになりました。
木造ホテル(1〜2階はRC造、3〜5階は木造)としたのには、三つの理由があります。まず、本社ビル「SU・BA・CO」を建設して培った大型木造建築の技術があったこと。次に、2016年の熊本地震でコンクリートビルの脆さを痛感したこと。そして、所属するNPO法人京都くらし方研究会で「地産地消の建築」を推進していたこと。
そうして完成したのが「ホテルディスカバー京都長岡京」。2020年にグッドデザイン賞を受賞しています。評価ポイントの一つが、ホテルという旅行者のための施設を地域に開放したことでした。竹内さん曰く「宿泊者だけではなく、地元の人たちも立ち寄れる、人と人の交流の場所にしたかったのです」。新型コロナウイルス感染拡大の前は、外国人の観光客が多く訪れ、地元の人たちと交流していたといいます。そのためのイベント企画と仕組みづくりも竹内さんの仕事でした。
嵐山に二つ目のホテル「嵐山邸宅 MAMA」を建設しました。古い建物をリノベーションした、京都らしい和風の外観に、スタイリッシュな内観のおしゃれなホテルです。ここもまた、地域に開かれ、旅人と住民の交流の場となっていくのでしょう。
- 技術と経験を生かして、新しい事業に挑戦するリヴは、建設業で培った大型木造建築の技術と、飲食事業で培ったサービスを生かして、ホテル事業に挑戦した。
- 「地産地消」などのこだわりを貫く地産地消の家づくりを発展させて、大型木造建築、飲食店の経営、ホテルの建築・運営へと進出した。
- 地域に開かれた場づくりをする本社ビル「SU・BA・CO」「ホテルディスカバー京都長岡京」など、自社の建物を地域に開かれた場として、まちの活性化を促進している。
連邦・多角化経営実践塾の思い出他社との交流のなかで、新たな視点と刺激を得られた
社長の波夛野が「地域に根ざして成長していくためには多角化しかない」という考えで、連邦・多角化経営実践塾に参加したときは、すでに多角化を進めていました。ただ、成長は頭打ちになっていたのです。システム経営やブランディングなど、講義内容はどれも新鮮で、勉強になりました。刺激的だったのは、日本各地から集結した異業種の人たちとの出会い。
同じ志を持ちながら、異なる視点や考えがあり、それを知れたのは収穫でした。
(第1期 連邦・多角化経営実践塾の卒業生/竹内良和さん)
Company
会社概要
株式会社 リヴ
本社/京都府向日市寺戸町七ノ坪141番地
代表者/代表取締役社長 波夛野 賢
創業/1998年
資本金/3,000万円
社員数/90名(パート・アルバイト含む)
お問い合わせ/HPの問合せフォーム
Editor’s note
編集後記
リヴさまの3分野6つの取り組みはいかがだったでしょうか。地域に根づき、地域を活性化するための多角化戦略には、人々を幸せにするためのヒントがたくさんありました。インタビューで印象的だったのは、竹内さん、山田さん、伊藤さんがそれぞれの立場から語ってくれた「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の効能です。社員みんながなんとなく共有していた思いが、研ぎ澄まされた言葉になったことで、好循環が生まれたのだろうと感じました。
もう一つ印象に残ったのが、三人のご縁です。そもそも、幾つもの偶然が、絶妙なタイミングで重なると、人は出会うものなのかもしれません。とはいえ、必要なときに必要な人とめぐり会えるという強運は、日頃から「人」と「縁」を大切に考えている三人だから手にできたのだろうと思います。きっと〈リヴの人〉たちは、そのようにしながら、乙訓(おとくに)のあちこちに根を張りながら、ワクワクを創り続けているのでしょう。
次回も、どうぞお楽しみに!
公開日:2021年6月24日
※内容はインタビュー当時のものです。